1. ボーダー(2008)
《ネタバレ》 もしかしたらこれが最後となってしまう可能性もあるパチーノ、デニーロ両御大の共演。待望の同一画面に登場は嬉しい限りですが安っぽい画面構成に、コッポラやマイケル・マンのようにとは言わないまでも、これはないだろうとガックリきてしまいます。そもそも企画自体が苦しく、10年前ならまだしもデニーロの暴力的かつ草野球を楽しむ刑事はムリがありますし、おそらく最高であったろう2人のコンビネーションもさっぱり感じられません。ひたすら観客のウラをかこうとするだけの面白味の無いどんでん返しなど用意しなくてもいいから、せめて2人の演技をしっかりと見せてくれっ! [映画館(字幕)] 4点(2011-05-17 18:46:05) |
2. ホテル・ルワンダ
《ネタバレ》 実際に起きた悲惨な出来事を題材とし、いかにも〝これが現実です〟と訴えている場合、どこまで真実を語っているか検証したくなるところですが、これはドキュメンタリーではなく映画であり(おそらく映画というメディアを使い、娯楽に寄ることが世界中で大勢の人々に見てもらう最善の策なのだが)、ドン・チードルが否応無しに巻き込まれるサスペンスの要素が多分に強いため、ここではその問題は度外視します。 そしてサスペンスの面で言えば巧くいっているとは言い難いです。例えば、砦となるホテルの見せ方は外からも内からも不明瞭ですし、チードルは賄賂を武器に闘うわけですが、お金や物資や水が段々と底を尽きてゆく様を見せてくれないと切羽詰ってゆく感じが乏しくなります。また、赤十字の車が無惨に引っくり返っている光景を映し出しておきながら、そのあと車の主である女性が何事も無かったかのように普通にフレームインしてくるのもいかがなものでしょうか。 ・・・と、文句ばかり書いてしまいましたが、すっごく集中して見ました。しかし、それはおそらく〝映画〟の強さではなく現実に起きた題材の強さによるものです。そして私は結局、ホアキン・フェニックスが言ったように「世界は大変だね」と思うだけの普通の平和ボケ人間なのですが、それは棚に上げておいて、行動に移らないのは残念ながら映画の力が及ばないからだとも思ったり。 [DVD(字幕)] 6点(2010-10-06 18:41:41) |
3. ほえる犬は噛まない
様々なシーンとその繋ぎで随所にユーモアが見られ、ついニヤニヤとしてしまいます。迷い犬と、行き詰まりつつも呑気に生きる人々だけでも十分に面白い映画が撮れるのだと見事に証明しています。ぺ・ドゥナの魅力と体格の良いその友人のアクション性が見所です。 [DVD(字幕)] 8点(2008-02-18 18:12:11) |
4. ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習
《ネタバレ》 お下品なネタを連発しながら異文化を揶揄する形式で逆にアメリカ人こそが不徳であると皮肉っていく。裸、セックス、排泄物、乱闘、差別、侮辱などなどの簡単で低俗な笑いがもっとも大勢に共通してウケるということを作り手は熟知しているようだ。保守的と言われる米国南部でのボラットの奇行の数々、ユダヤ人協会を始めあちこちの機関から訴えられているらしいのでもっと過激な内容を想像していたのだが、ボラットのキャラクターが濃過ぎるため核心に迫るものではなく表面的な過激さという印象が強い。そして最後はあらゆる映画で幾度となく出されてきた〝ありふれた結論〟へと落ち着く。やりたい放題のボラットなのに守りに入り安全地帯へ着陸したのは正直ガッカリだ。しかし、可笑しいのはこれがアメリカでは大ヒットしたということ。アメリカ文化やアメリカ人精神をボラットと共に学んだ結果、思うにこんなのが大ウケするアメリカに世界の主導権を握らせているなんて大問題だ・・・・・・・・・・・・・・ナ~ンテネッ! [映画館(字幕)] 5点(2007-06-05 18:20:21)(良:1票) |
5. ぼくは怖くない
割と軽いノリで観始めたのですが心に残る力作でしたね。まずあのイタリアの田舎の雰囲気が好きで美しい映像美にあっと言う間に引き込まれました。あのような場所で育った覚えも無いのに何だか懐かしい気持ちになってしまいましたよ。子供の視点から描かれているのも好印象。特に良いのは象徴的な空想の犬のシーンで、ミケーレの成長を何気ない子ども遊びの一つで描いているのが素晴らしいです。そしてこの映画を観ると大人になったつまらなさを感じてしまいますね。成長する、大人になるというのは身に付いていく事ばかりでなく、経験する事によって逆に失われてしまうものがあるのだと思います。犬に象徴されたもののように。犬が見えていた事がどんなにか素晴らしかったか。また犬を見たいなぁ~と、少し寂しい気持ちにもなってしまった作品でした。 [DVD(字幕)] 9点(2006-12-21 19:03:11)(良:1票) |
6. ボウリング・フォー・コロンバイン
《ネタバレ》 嘘をつかなくても全てを語らない事により真実は歪められます。本作がまさにそれに該当すると思います。例えばNRA(全米ライフル教会)の集会を開いた事を問題視していますが、あの集会は法律で定められていて中止に出来なかった事、そして実際自粛した事に関しては一切触れていません。こういう事が他にもいくつかあります。このような問題を論ずるのに多面的に考察せず、一部を誇張表現するのは方法として正しくないと思います。さらにカナダで銃がありながらの平和社会を写しながら、最後には再びチャールトン・へストン宅を訪ねるという論理の矛盾もあります。これをドキュメンタリーとしては評価できません。他の真面目なドキュメンタリー映画に対して失礼です。しかし銃問題に関して最も大切なのは一人一人が考える事だと思います。ですからその場を提供してくれたのは素晴らしいと思いますので、それは評価します。 [DVD(字幕)] 3点(2006-08-29 18:57:19)(良:2票) |
7. ポセイドン(2006)
《ネタバレ》 リメイクとは言え人物設定が変えられているのでシチュエーションだけを借りたかたちですね。モトの出来が良いのだから人間ドラマで勝負したところで勝ち目がある訳がない。そこでガラっと視点を変えて当時より遥かに進んだ映像技術で挑んだのが功を奏しています。私は特にこの手の映画によくある中途半端で陳腐な人物描写が好きではないのでさっぱりとまとめているのは好ましいです。感傷的なシーンも極力削ってパニックに徹しているのも好印象。我が身を守るために文字通り人を蹴落とさないといけなかったり、あっけなく死んでしまったりして容赦無いし、息つけない展開はまるで遊園地のアトラクションに乗っているような興奮を味わえます。もう少し観ていたいなと思えるぐらいの時間で終わるコンパクトさもグッド。ウォルフガング・ぺーターゼンなかなかやりますな。 [映画館(字幕)] 7点(2006-06-11 10:45:08)(良:3票) |