1. マーガレット・サッチャー/鉄の女の涙
首相になってから晩年の認知症まで、新聞やテレビニュースで知り得たサッチャー像は想像どおり。周囲の男どもを叱咤したりフォークランド紛争での対決姿勢などは報道された情報をなぞるだけのような印象で、自分の想定を超えるものではなかった。 ”女性宰相の奮闘物語”という意味合いに価値があるのだろうが“人間サッチャー”には深く斬りこんでいない。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2022-09-25 20:33:09) |
2. マイケル・ジャクソン/THIS IS IT
《ネタバレ》 延々と続くリハーサル映像の連続で平板だが、M・ジャクソンの思い「Love is my message」は心に強く伝わる。 [CS・衛星(字幕)] 2点(2021-09-12 12:37:13) |
3. 万引き家族
寓話性のある「本当の家族より絆の深い疑似家族」による、現代社会への問題提起。社会問題の象徴たる万引きを通して真の家族とは何かを問いかける。貧困、DV、犯罪、家族の崩壊、高齢者問題etc.多くの問題提起を通じて家族の在り方を問うことが主眼とはいえ、散らかしっぱなしの印象。 主題に合わせた暗いトーンと囁くようなセリフは自然体の表現だと思うが鬱陶しい。特にリリー・フランキーの呟き声が気に障る。 4番さんを亜紀がいたわるシーンで流れる音楽が出色。心理の綾を表現しており、この映画で一番心に残った。取り調べ中のやり取りは、一つの物事を多様な視点で見る“羅生門的な藪の中”と言えるだろう。だが、硬直的な警察官像はバイアスがかかっている。 ラスト、葛藤しながらも成長する少年の内面に微かな救いを見出した。 寸感:「本物より本物らしい疑似家族の織り成す映画」より、かつて某ドラマで語られたセリフ「本物よりずーっと本物らしい偽物」の方がずーっと心にしみる私である。 [CS・衛星(邦画)] 3点(2020-06-28 11:28:59) |
4. マッケンナの黄金
《ネタバレ》 先住民の伝説を地でいく黄金探しの冒険譚で、何度観ても面白いアドベンチャー西部劇。 雄大な大峡谷の描写は見事の一語に尽きる。朝日が輝いて巨岩の影が伸び、やがて金鉱が出現するときのワクワク感。地割れとともに岩壁が崩壊し金鉱が姿を隠すまで、飽くことなく楽しめる。実直そうな保安官を演じるG・ペックははまり役で、欲に目がくらむインガ(C・スパーヴ)も俗物的な庶民感覚を活写している。惜しむらくは、E・G・ロビンソン、A・クエイル等、名優陣の出演場面が少ないこと。彼らの絡みにもうひと工夫欲しかった 「黄金」「オーシャンと11人の仲間」「地下室のメロディー」等、多くの映画が描いた“悪銭身につかず”に通じる展開。最後は御多分に洩れずインガの砂金を捨て去るが、本人はちゃっかり金塊を持ち帰るとは意外。痛快なラストだった [CS・衛星(字幕)] 7点(2018-04-22 15:31:58) |
5. まあだだよ
過剰でベタついた湿り気の師弟関係。そしてここにもある黒澤映画の説教臭さ。摩阿陀会の群像描写も心に響かず。「戦に負けて終戦なり・・・オイチニ」等の批判精神はいいが。 先生のお祝い話と猫の捜索話で2時間超は深みに乏しく話が広がらない。 一風変わった人格を松村達雄はうまく演じたが、恩師礼賛の嵐には辟易。 [CS・衛星(邦画)] 3点(2017-08-20 13:20:58) |
6. 麻雀放浪記
焼け野原とバラックの風景をはじめとして「ギブミー・・・」やDDT散布、紙芝居屋など、戦後の世相を反映した画面の連続。見事なまでの画作りで、当時の日本社会の緻密な再現とともに独特の世界観が確立されている。わずかに、隅田川沿いを歩くシーンや上野の桜の特撮は画面の流れに溶け込んでいないのが残念。 ママが草笛を吹く中で流れ星ひとつ。酸いも甘いも一瞬の輝きに賭けるばくち打ちの心情を表す。「勝ち続けて丈夫な人は人間を失くす」・・・けだし名言、人生を語る問答は心に響く。 アウトローたちの生き様を描く群像劇の中で、賭博とともに生き賭博とともに死んだ出目徳が陰の主役とも思え、高品格は特異な存在感を放つ。天和をめぐる出目徳とドサ健の駆け引きも見どころ。だが冷静に考えればイカサマ合戦であるし“こんな世界に住む人たちもいたんだな”と受け止め、ヤクザな生き方に共感も反発もない。 自分の麻雀放浪を振り返ってみると、役満を1回振り込み・1回上がりの実害なし。ま、いっか。とかくこの世はゼロサム社会。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2017-07-23 13:02:01) |
7. M★A★S★H/マッシュ
あえてジョークがわからない無粋な視点でこの映画を語ろう。 ベトナム戦争当時の反戦気分を反映した戦争風刺。ホークアイやトラッパーらが内輪で連む姿は、軍医の立場を利用し「冗談」という言い訳を用意したイジメの構図を内包。野戦病院を学校現場に置き換えれば一目瞭然。そりゃあイジメる側からみれば痛快だろうが、この種の閉鎖的な「仲間意識高い系」は気持ち悪い。実社会でも似たような例をみているからね。 手術場面のリアリズムやフットボールの予定調和(注射のインチキや逆転勝ち等、黒人差別の味付け含め)は免罪符にならない。いつの間にかホットリップスは無邪気に豹変したが、彼女の訴えは回収されていない。 戦争に対する風刺を大義名分にすれば、何をしてもブラック・ジョークで笑い飛ばせるとでも? [CS・衛星(字幕)] 1点(2017-04-09 11:22:47)(良:1票) |
8. マタンゴ
《ネタバレ》 アダムとイヴの昔から禁断の果実・食物は人を惑わせる。本作は漂流サバイバル+怪奇映画の形を取りながら人間の本質に迫ったもので、マタンゴが核実験の産物と臭わせるところに批判精神が読み取れる。文字通り「キノコ雲」を想起させる造形だが、デザインは小松崎茂?ほほお―。 孤島を舞台に、極限状況に追い詰められた人間がむき出すエゴイズムと欲望が描かれ、ネオン輝く大都会と無人島の対比を通して、生きるとは何かを問いかけてくる。所詮、一皮むけば大都会に渦巻く欲望も孤島の欲情も似たようなものだろうが。 理性(人としての死)か欲望(キノコ化しての生)か究極の選択を迫られたとき、人はどのような行動をとるか。人間本位で考えがちであるが、一歩引いて考えればマタンゴ化して生きるのも自然の営みの一部といえる。生き残った村井が発するセリフ(島に残った恋人への思い)が象徴的だ。 7人の登場人物中、妖艶な悪女を演じる水野久美は最もインパクトがある。マタンゴ化して姿が変り果てる男たちに対して、キノコを食べるごとに妖しさ・毒々しさを増してゆく久美サマは怖く、美しい。 マタンゴの襲撃を逃れ、最後まで人間性を保った男が精神病院の中で後ろを振り向く一連の展開は、「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド」に先立つこと5年、ゾンビ映画の先駆者的な位置付けができるだろう。衝撃的なラストシーンはトラウマのごとく記憶している。 この映画を観てからキノコを食べられなくなった体験談がネット上で散見されるが、自分は何ともなかったなあ。いろんなキノコを喰ったが、幸か不幸かマタンゴには成ってない・・・・・フォッフォッフォッフォッフォッ。 [映画館(邦画)] 7点(2016-07-10 10:58:41)(良:1票) |
9. マダムと泥棒
《ネタバレ》 イギリス流ブラックユーモアの逸品。とぼけた味わいの老婦人役K・ジョンソンが男優5人を食っちゃった。冒頭、警察署に現れた彼女がいつもの調子で宇宙船の話をし、署員をうんざりさせるのだが、これがラストへの伏線になっている。 現金輸送車強奪を計画した5人組が彼女を利用してまんまと成功する。犯罪の実行を決めるにあたり、力だけが取り柄の大男にキャスティング・ボートを握らせるところは民主主義の皮肉を感じさせるシーン。5人組は盗んだお金を運ぶ際にうっかり彼女に見られ殺そうとするが果たせず、お互いの疑心暗鬼で結局殺しあうことに。婦人が亡夫の話をする場面では、A・ギネス扮する教授登場のシーンがホラーっぽかったので、ひょっとして彼女が夫を殺したのでは?とまで思わせるようなブラックな展開。今の映画だったらそこまでありかな? ラストで彼女が真相を警察に届けても相手にされず、盗まれた大金を返さなくてよいと言われる。ここで冒頭の伏線が回収される。いつものほら話と署員が軽く受け流すのも当然で、若干の疑問は感じつつも、見事に「やられたなあ」と感じた。盗まれたお金も保険で補てんされるし、実害は保険料がちょっと上がるだけ、というのも社会風刺気味。関口宏主演の土曜ワイド「殺しの連鎖反応」(傑作!)を思い出した。上司が次々死亡し最後は主人公が得するブラック・コメディだが、この映画と関係なかったかな? [CS・衛星(字幕)] 7点(2016-02-21 16:24:52) |