2. マスク(1984)
障害者を“かわいそう”という、ある種、差別的視点から描いていないところが、よくある感動の押し売り映画とは決定的に違う。しかし、障害者の負った宿命はきっちり描き切っていて、冷たい視線や心ない言葉を投げかけられるなどの差別を受けるシーンは、観ていて痛々しくなってしまう。主人公がハンディキャップを軽々と乗り越えて周囲の環境と違和感なく溶け込んでいく過程をスクリーンを通して観ていると、観客も、まったくキレイごとではなく、彼がなんら一般の人々と変わりない存在であるばかりか、彼の回りに集う人々に明るさと励ましを与えてくれる素晴らしい存在であることに気づかされ、そのときには、そのおぞましい容貌もあばた程度の欠点にしか感じられない好青年に見えてくるのだから不思議だ。スクリーンに存在する彼らの親友と同じように、私たちも、2時間の映画鑑賞という体験を通して、肉体という障壁を破壊して主人公の純真な人格を発見するに至るのだ。障害者を描いた映画の中でもぬきんでた作品と言えるだろう。最後に、遊園地の迷路(?)で、主人公が湾曲した鑑に映った自分の顔に戸惑いを見せるシーンがとても衝撃的であった。 8点(2002-12-29 06:24:21)(良:1票) |