1. 壬生義士伝
《ネタバレ》 <原作未読・映画版のみの評価> 「梟の城」以来、偏見を持っていた中井貴一演ずる吉村貫一郎が思いのほか良かった。田舎侍の朴訥とした雰囲気が彼の茫洋とした顔と合っている。ただ残念ながら、この作品で評価できたのは彼くらい。 はっきり言えば、激動の幕末や滅び行く新撰組をネタにすれば、それなりに面白くなるのは当然。ならないとしたらよほどキャスティングや演出が悪いとしか言いようが無い。 今作も数ある新撰組もののひとつではあるが、長くてクドい割には、時代の趨勢よりも武士として義を貫くのか、それとも個として生き延びることを選ぶのかという吉村貫一郎の生き様の描き方が中途半端で、彼の葛藤が伝わりにくい。 また、他の方の指摘にもあるように、ラスト30分は完全に蛇足。監督の感性を疑いたくなるくらい恐ろしく下手クソな演出。とにかく無駄に冗長すぎる。死ぬ間際の人間にいつまでもクドクドとしゃべらせるなよ!ああ言うシーンは長引けば長引くほど感動が押し付けがましくなるだけで逆効果。 [地上波(邦画)] 4点(2007-02-04 01:31:58)(良:1票) |
2. ミート・オブ・ザ・デッド
まあ期待はしてなかったけど、案の定、「ゾンビ」という既に完成されたシチュエーションのみを間借りしているだけのB級映画。実質的にはB級のさらに劣化コピー映画だけど。 製作者が何も考えていないので、低予算であることを逆手に取ったり、ストーリー展開に工夫を加える発想も無し。低予算のままゾンビ映画として「通り一遍」のことをやってるだけの作品が面白くなるはずがない。悪い意味でチープさのみが際立ってしまっている。 舞台が片田舎なのでゾンビ映画としての規模が小さく、パニック感や終末観に欠けている。場面変化にも乏しい上に、あまりにも展開や演出がありきたりなので中盤以降は、もう飽き飽き。後半の夜の場面も暗すぎて、怖い以前に見づらいだけ。 せめてゾンビ牛の大群を出すくらいの根性を見せてくれ。B級にはB級なりの矜持が無ければ、それこそこんな映画に存在価値は無い。 [DVD(字幕)] 1点(2006-11-04 15:03:16) |
3. ミミック
《ネタバレ》 今までタイトルは知っていても、「どうせつまんないだろうな」と言う偏見から未見だったが、たまたまテレビ放送してくれたので見てみたところ、自分の直感は外れていなかった事が分かった(w。 とにかく中途半端。おバカホラーと言うには大真面目だし、バイオホラーと言うにはリアリティが無く、パニックものとしてはスケールが小さすぎる。おまけにストーリー展開や演出のパターンはどこかで見たことのあるものばかり。 いくら十年前の作品とは言え、「遺伝子改造された昆虫がでっかくなっちゃった!」と言うだけの設定で最後まで通すのだから、あまりにもシナリオに工夫が無さすぎる。おまけに、ホラーによくある「出そうで出ない」シーンがダラダラと続くばかりで退屈。 主人公の女性昆虫学者、靴磨きの親子、浮浪者の少年など、登場人物は個性的なキャラが揃っているのに、主人公以外、ストーリー展開上、必然性のあるキャラ設定はひとりもいないのも難点。 さらにラストのガス爆発も、ゴキブリを一掃する程の大爆発なのに、男は無事ってのもご都合主義的すぎでしょ。 個人的には続編を見たくなるような出来ではなかった。 [地上波(吹替)] 3点(2006-02-17 23:01:05) |
4. mute ミュート(2001)
《ネタバレ》 日常の中に見られるグロテスクなフェティシズム、時折かかる不協和音のようなBGM、対話の可能性を拒否したかのような無言劇、そして解釈が出来そうで出来ない不可解なシナリオなど、ヤン・シュヴァンクマイエルとデヴィッド・リンチを足して二で割ったような独特な作品。 そんな何とも言えない不気味な雰囲気は出ているが、内容は良くも悪くも「解釈お任せホラー」。見る人によって評価は大きく変わるだろうし、いくらでも否定的にも肯定的にも解釈できる。 当初、個人的に予想していた展開(主人公が殺人鬼本人で、痴呆症によって過去の記憶と現在を混同している)とは違ったが、後半に行くほどストーリー的には収束していく。むしろ、前半の方が不可解な事が多い。 ただ、それでもやはり説明出来ない部分は多く(殺人が本当なら、少女の死体が見つからないのは不可解だし、脳内妄想とすると、後半、施設で襲われるシーンが意味不明)、説明出来そうで出来ないもどかしさがある。結局、正解は見る人の解釈の数だけあるという事だろう。 まあ、それ自体は良いとしても、もう少し全体のテンポを上げて欲しい。この作品の味ではあるが、ちょっと展開がスロー過ぎるのはカンベン。 独特な世界観におまけで6点献上。 [DVD(字幕)] 6点(2005-12-31 18:30:47) |
5. ミュート・ウィットネス
《ネタバレ》 その意図的に演出された古ぼけた映像や緊迫感を煽るアップの多用などから、「サイコ」や「サスペリア」といった、古典的名作スリラーに対するリスペクトは感じるが、それゆえ残念ながら、数ある過去作品の模倣以上のものになっておらず、目新しい切り口や恐怖演出が何ひとつ見当たらなかった。 序盤の映画撮影のシーンがダラダラとしている割りに、その直後の殺人シーンへの持っていき方も唐突で違和感がある。殺人者に追われる者に聾唖者を持ってくるというのも、ちょっと露骨で単純。「真実が伝わらないもどかしさ」を演出したいなら、単に「口がきけないから」じゃなくて、もっと違う演出でアプローチすべき。 所謂マクガフィンとは言え、狙われる理由が「何だかよく分かんないけど、国家の陰謀とかヒミツを知ってしまった」と言うのも陳腐。そのためにロシアを舞台にしたと言うのもこれまた安易。 後半、撮影所に潜入する辺りからは、ほとんどコメディのような軽いノリで、前半の真剣さが損なわれている。あのオチもバレバレ。ホラーやサスペンスとしてどっちつかずな感じで中途半端。 [ビデオ(字幕)] 4点(2005-06-28 19:33:36) |
6. 身代金
《ネタバレ》 序盤から中盤にかけてのテンポの悪さがネックだが、後半、身代金を懸賞金に転用する辺りから面白くなるので、結果的にはプラスマイナスゼロ。 ただミステリー的な謎解き要素はまったく無い、単なる誘拐サスペンスなので、オチやストーリー展開上の意外性を期待すると肩透かしを食う。個人的にはやはり物足りない。 [地上波(吹替)] 5点(2005-05-01 08:45:57) |
7. ミステリー・ツアー
《ネタバレ》 また、邦題に騙された…。 ミステリー要素なんてまるで無し。無数に乱造されている有象無象のB級殺人鬼ホラーのひとつ。当然のように、オリジナリティ絶無。皆無。ゼロ。いやマイナス。同じジャンルでも、「誰が犯人か?」という一点に特化していた分、「スクリーム」の方が作品のスタンスとしては数段マシ。 前半はクリスティっぽく、真面目に見立て殺人を演出していたものの、後半に行くに従って、「そんなことは忘れた」と言わんばかりの、ただの「おバカホラーコメディ」に成り下がる。 犯人の意外性も必然性も無し。と言うか、なんであんたが犯人?なんでそんなにジェイソンばりに不死身なの?笑うところ? 本格にもパロディにも徹し切れていないことを、「どうせ私らの作るもんはB級ですから」と開き直り、始めから真面目に作る気が無い中途半端な駄作ホラーの典型。0点にも値しない。 [DVD(字幕)] 1点(2005-02-01 16:20:03) |
8. ミッション:インポッシブル
《ネタバレ》 TVシリーズ共々、有名作品ながら、もともとあまり「スパイもの」に興味が無い事もあり、最近まで見た事がありませんでした。 シナリオは丁寧に作られていますが、裏表の顔があるであろうスパイ家業なんですから、当然、身内に裏切り者がいるとか、「お前は死んだはず!」みたいな「どんでん返し」はデフォルトでしょう。そう言う意味では特に意外性のある展開も無く、良くも悪くもオーソドックスな内容です。 PS.電車の屋根の上でのアクションシーンは、ほとんどドリフのコントに見えました。 5点(2005-01-14 20:53:07) |
9. ミッドナイトクロス
《ネタバレ》 割りと高評価だけど、個人的には良さが分からない作品のひとつ。 実際の製作年代よりも古臭く感じる。基本的にシナリオに意外性がまるでなく、展開に緩急もないので見ているのが苦痛だった。中盤頃、ビデオ残量を見て、まだ残りが一時間もあるのにウンザリしてしまった。 大統領候補の知事暗殺事件に巻き込まれる序盤からストーリー展開に変化がなく退屈。結局、事件の背景や黒膜にも意外性がなく、サスペンスとしてもミステリーとしても中途半端。基本的に謎解き要素がないので、最後まで興味を持続させる「求心力」に欠けている。 事件の顛末もいまいちはっきりしないまま。あそこまで徹底的に真相を公表しようとしていたのに、結局はビビってあきらめたってこと?あきらめて、せっかく撮ったからってことで、彼女の悲鳴を自分の映画に残して終わり?なんかすっきりしない終わり方だなあ~。めちゃくちゃバッドエンドじゃん。 そもそも彼女の悲鳴をB級ホラー映画に使うという神経に共感できない。生前に録音した彼女の声(実際にはそういうシーンは無かったはずだが)を使うとしたら、自分が監督なら、例えばデート中にふざけて録音した「愛してる」というセリフを使うとかさあ…。なんでよりによって本当に襲われている時の悲鳴を使うかなあ。彼女の声を「真実の証拠」として残したい気持ちは分かるけど、ちょっと悪趣味&自虐的すぎじゃないか? 評判の良い「花火のシーン」も、あそこは恋人が無残に殺されたところなんだから、あんなに綺麗に演出するべき場面じゃない。これを見て「美しいラストが大好き」なんて評価はさすがに違うでしょ。原因が殺人なのだから、花火で「儚さ」や「美しさ」を表現する場面じゃない。 何にしても後味の悪い映画。 [ビデオ(字幕)] 2点(2004-11-23 20:36:31)(良:4票) |
10. ミスティック・リバー
《ネタバレ》 うん、言いたい事は分かりますよ。ただこのいかにも、「人間には闇の部分があり、運命とは残酷なものなんですよ。こういうのが「リアリズム」です!」と言わんばかりの押し付けがましさをひしひしと感じて、少なからず閉口しました。 人生の残酷さや運命の皮肉をテーマに据えた作品は数多いと思いますが、特にこの映画が突出しているという部分は見当たりませんでした。各登場人物も、誘拐事件後の子供時代から現在に至るまでの経緯がほとんど描かれないため、人間描写に深みが無く、子供時代とのギャップも感じます。 また、「ミステリー仕立ての展開と、そこに見られる人間ドラマ」という狙った脚本構成のわりに、肝心の人間ドラマは希薄だし、中止半端なミステリー要素のせいで、どっちつかずな結果になっています。 作品全体を通しては、「真犯人とその動機」という謎解きの原動力で引っ張っておきながら、最終的には、ただの誤解や偶発的事故であるというリアリズムをもって、「現実の残酷さ」というテーマを際立たせようとしますが、しかし、それを表現するためには、やはり登場人物のしっかりとした人間描写をメインに据えなくては成り立たないはずです。登場人物たちの、まるで「設定のための設定」による葛藤の薄っぺらさが目につきます。 「ハリウッド的な軽い映画じゃないんですよ」と言いながら、結局その見せ方は「ハリウッド的」であり、監督や脚本家の自己満足から来る、表層的なニヒリズムやリアリズムしか描かれていないように感じました。 似て非なる作品として「プレッジ」等と見比べてみるのも面白いかも知れません。 5点(2004-09-10 16:43:30)(良:1票) |
11. 未来世紀ブラジル
《ネタバレ》 評価が難しい。「管理社会」を極端化したような近未来的な世界観自体はよくあるもので、特に目新しくはないし、このB級テイスト満点の映像感覚と独特なノリには好き嫌いがはっきり分かれそう。 当時の感覚から、来るべき情報管理社会に対する危機意識があったのか、それとも社会主義という既存の管理社会に対する批判なのか、どちらにしても根底に監督なりの痛烈な社会批判があることは間違いない。 ただ、その真面目さの裏返しなのか、もともとの監督の個性なのかは知りませんが、内容はブラックユーモアや不条理な風刺に満ち溢た悪夢的な世界で、まともな法則や道理が存在しない世界に描かれている。街やビル内の描写は近未来的でありながら、人間的な居住性に欠け、機械類も機能性に欠け、故障が多い。情報を搾取、管理されている人間達はまともな判断能力や常識を失っているようにも見え、滑稽ですらある。この世界観はやはりどう見ても、社会(共産)主義に対するドラスティックなパロディと捉えるしかないだろう。 しかしそうした社会批判モノとして見ると、メッセージ性もストレート過ぎて、ちょっと単純に思えてしまう。どうせなら、この個性とセンスを活かしてサスペンスやホラーを撮って欲しいところ。PS.ところで、なんで「ブラジル」なの? 5点(2004-07-10 22:08:42) |
12. 未知との遭遇
いまいち何が言いたいのか分からん作品。文字通り「未知なるもの」を映像化するスピルバーグのセンスは確かに素晴らしいが、相変わらず、この頃から見られる、「万人受けを狙った無難なヒューマニズム」でまとめようとする感覚はどうしても受け付けない。 音楽や手話であっさり宇宙人とコミュニケーションが取れたり、素直に誘拐した人間を帰したり、研究のための人間にやたら協力的だったりと、まるで「愛さえあれば世界はハッピー、ラブ&ピース」と言わんばかりの能天気な内容。 まあ宇宙人に限らず、人間でも見知らぬ者同士の意思疎通では、相手を敵と見なして警戒するも信用するも、色々な偏見を含めた第一印象の良し悪しに左右される点では同じだけど、そんなことは分かりきってるワケで、やはり基本的に作品としての問題提起が弱いと言わざるを得ない。 そうかと言って、エンターティメント性が高い訳でもなく、全体的にダラダラしている割に、登場人物にこれといった活躍も無いし、ラストの終わり方もえらく唐突であっけない。途中に出てきた牛や羊の死体がキャトってあったら笑えたんだけど。どうもこの作品も自分の感覚からすると、少し神格化され過ぎているように思えてなりません。 PS.関係ありませんが、個人的には「宇宙人はいても宇宙船を建造して地球にまでやって来ることはないだろう」派です。 4点(2004-06-28 11:31:44)(良:1票) |
13. ミザリー
自我の肥大した現代人特有の病である「自己愛」の究極の形態。他者への愛や奉仕が、結局は自分のためである、ということに気付いていない狂気。そして気付いていたとしても、そこに気付かない振りをし、気付かない振りをしていることすら忘れてしまう。精神安定のため、「自分は悪くない」「相手が悪いんだ」とする自己欺瞞による防衛本能は、誰の精神にも内在するからこそ恐ろしい。ただ、そのため内容的に先が読めるし、実際、意外性のある展開も無いまま映画としてあるべき着地点に着地する終わり方は少し物足りない。キャシー・ベイツの演技力に敬意を表して+2点。 6点(2004-04-13 14:39:31)(良:2票) |
14. みんなのしあわせ
人間の欲望の醜さを描くブラックコメディ。個人的にはイマイチ。コメディにしてもサスペンスにしても中途半端な印象。もう少し「暴走」があったら面白かったかも。 4点(2004-03-01 02:48:38) |
15. 耳をすませば(1995)
《ネタバレ》 この作品は「スタンド・バイ・ミー」同様、見た時の年齢によってかなり評価に差が出るタイプの作品。登場人物と同世代の子共達から見るとちょっと恥ずかしく、「こんなヤツいねーよ」と反感を持たれてしまうかも知れないが、私のように汚れた大人から見るとw、逆に「あ~、こんな絵に描いたような青春時代を過ごしたかったな~」という郷愁混じりの気持ちで、ほんわかと見れる。 「ありそうでない、でもどこかにありそうな」理想と現実のまさに中間に位置する世界の物語。その描き方が上手いと思う。ただ、さすがに私もラストの「結婚しよう」というセリフにはシラケた。あのシーンがマイナス。物語の中くらい、最後まで少年少女らしく爽やかに終わって欲しかった。 [映画館(字幕)] 7点(2003-09-18 21:54:17) |