1. ミスター・ノーバディ
この監督にとって、創造のテーマは常に「人生とは何ぞや?」というあまりにも根源的なものであり、そしてそれに、恐らく自問自答することに生涯を捧げるつもりなんだろうなー、と、エンドロールを見ながら思いました。というか、このテーマから離れられないんでしょう、きっと。寡作なのは無理もない話です。さて、本作ですが、そーですねぇ、評価は分かれるんじゃないでしょうか。「なんだよ、トト・ザ・ヒーローと同じやんけ!」か、「今度はそーきたか!」か。と書いておきながら恐縮ですが、私はそのどちらでもなく、「やっぱしそーか」でありました。予備知識はなるべく得ずに見たのですが、オープニングの鳩のシーンで「やっぱし・・・」と思ってしまったのでした。別にガッカリしたのではなく、むしろその逆で、ホッとしたというか。『ハロルドとモード』のオマージュと思しきシーンや、『トト・ザ・ヒーロー』とソックリのシーンもあり、相変わらず音楽は素晴らしい。映像も美しく、やっぱりこういうところのこの監督のセンスがすごく好きなんですね、私は。・・・きっと、ニモにとってのリアルはアンナとの人生ではなかったのだろうけれども、心の中ではそれがリアルだったのだと思う。これは、もの凄くそう思う。私は「あの時ああだったら・・・」という妄想はほとんどしないけれども、リアルとは別の人生がやはり心の中にあり、それもまた、私にとってのリアルに違いない、という状況にまさに今あるからで、そういうことって、歳を重ねると大なり小なりあって不思議ではないと思うのです。人生は、いくつかの必然と、無数の偶然で構成されているのだと、やっぱり本作を見て確信しました。どの偶然も、ただの偶然ではなくて、選ばなかった大多数の偶然も、それらは全て意味ある偶然なのです。若い頃見ても、きっと共感できなかった、あるいはサラ~ッと流してしまったであろうと思う作品です。 [映画館(字幕)] 8点(2011-05-23 22:09:08)(良:1票) |
2. ミルドレッド
見終わってしばらくしてからジンワリ来ます。「母であること」を自ら降りて、一人の人間として、女性として生き直そうとする彼女の潔さに胸を打たれます。JJとのお別れのシーンでついつい涙腺が緩んでしまいますが(やっぱり子どもは最強)、その他は全編爽やかで微笑ましい作風もイイです。ミルドレッドの家がまた素敵で内装にも目が行ってしまいます。ジーナ・ローランズがとにかく魅力的。こんなふうに歳を重ねられるなんて彼女の実人生が透けて見えるようで感嘆します。これからの自分の人生、どうありたいかを彼女の姿に垣間見た気がします。こういう出会いがあるから映画って素晴らしい。 [ビデオ(字幕)] 8点(2009-11-30 13:55:40) |
3. 未来世紀ブラジル
私の中では、良い映画というのは、1)もう一度見たいと強く思う、2)分かりやすい、3)2時間未満、の3条件が大前提。1)から順に絶対要素が強いので、3)は必ずしも当てはまらなくともお気に入りは少々ある。で、この作品である。1)もう二度と見たくないと激しく思う、2)意味不明、3)140分以上、ということで、世に言う名作でありながら、私の中では駄作の極みに近いと言えます。基本的に、妄想映画はキライなんで。見た後に激しい頭痛に襲われたのもトラウマになりそうだ。見たことを後悔する映画に出会ったのは初めて。 [DVD(字幕)] 1点(2008-07-22 14:59:01)(良:1票) |
4. ミス・ポター
《ネタバレ》 とてもサラ~ッとした質感、でも、きちんとミス・ポターやその周囲の人間性が伝わってくる素敵な一品。婚約者が急逝するシーンは、もう号泣・・・。ところどころで絵の動物たちが可愛く動くのもナイス。こういう嫌味のない作品は、イイですね。衣装、美術も素敵で見ていて楽しいし。彼女のように、自分の腕一本で世を渡っていける人は、本当に魅力的。人生のどんな修羅場も、それを糧にして乗り越えて行けるもの。一握りの才能に恵まれた人々よ、と遠巻きに羨望の眼差しで見るだけでなく、自分も努力しなくては、と励まされた気分。 [DVD(字幕)] 7点(2008-07-04 10:55:02) |
5. 乱れる
《ネタバレ》 この評価平均点の高さは何? とちょっとビビリましたが、よくよく拝読し、ちょっとというか、かなり納得いたしました。数名不明ですが、ほぼ100%、男性レビュアーによる評価でした。なるほど、なるほど。これって、男心をそこまでワシ掴みにする映画なんですねえ。まあ、男だ女だとガタガタ言うのは好きじゃないが、この評価の高さは、どう考えても「男の理想とする女像」を高峰秀子に見たから、としか思えませぬ。たった半年だけをともにした亡き夫を18年経てもなお慕い、なおかつ、亡き夫の弟の愛の告白(?)に女として身悶えしながらも、貞節を貫く。この一途さと身悶え、これぞ、男心を捉えて離さぬ幻の女像。確かに、時代背景から言えば、このような女性は珍しくなかったかもしれませんが、一方では、復員したらかつての自分の嫁さんが弟の嫁さんになっていた、といった類の話は枚挙に遑がなく・・・。こんなに美しい女性が、かくも強く清らかに生きたのは、まさに映画そのもの。現実世界の女どもは、大して美しくもないのに、計算高くしたたかで・・・、ってのに辟易した世の殿方がググッと来るのもムリからぬ話。で、女の私はどう感じたか。故郷への列車の中、義弟の寝顔を見て、涙を目に一杯ためるその美しさには感動しました。・・・が! 途中下車して温泉宿まで行って、「堪忍して!」はないでしょうよ、ネエさん。ハイ、風情も何もない、身も蓋もない感想を抱きました。それがこの映画のミソであることは重々承知の上です。集う男性レビュアーの皆々様、ぶち壊しレビュー、および平均点下げ評価点、申し訳ございません。 [DVD(邦画)] 6点(2008-04-15 14:29:50)(笑:1票) (良:1票) |
6. ミラーを拭く男
そもそも、最も重要な“なぜミラー拭きなのか?”という理由がサッパリ分からないので、主人公に共感も何もありはしないし、ましてやこの主人公はほとんど何も話さないので、ますます感情移入なんて出来ない。よって、この映画を見終わった後は、“なぜミラー拭きなのか?”を分からないお前が悪い! と製作者に言われているようで、ちょっと不愉快。単なる放浪の方がまだ分かる。そこに“ミラー拭き”が付け足される意味づけをちゃんとしてくれよ! 豪華キャストが泣くぜ。 [CS・衛星(邦画)] 3点(2007-10-03 14:55:20) |