1. U・ボート
これ程の緊張感や焦燥、絶望などをほとんど音だけで作り出してしまう所が凄いと感じました。絵としては艦内が振動して物が倒れるだけなのに、徐々に接近してくるスクリュー音とアスディックの探知音、そして突然起こる爆雷の炸裂、これの繰り返しに過ぎないのに胃が収縮しそうに緊張しました。そして、匂いが感じ取れる所も多いですね。積みこんだばかりのバナナやパンなどの匂い、ヒゲもそれない乗員達の体臭、それと被害を受けた後の配電盤から漂う煙の匂いやバッテリーの焼ける匂い、酸素の薄くなっていく感触。数時間ぶりに浮上した際に、乗員達がハッチの周辺に集まって貪る様に深呼吸してるシーンをみて、さぞかし空気は旨いんだろうなぁと感じました。ストーリーも一切飾った所が無いのがいいですね。馬鹿騒ぎする乗員達に、泥酔した英雄、毛じらみ、そして敵船から逃れた乗員達を見捨てて、まるで逃げるように後進するなど言い訳の無い感じがしました。ラストシーンの救いの無さも含めて考えると、この作品はただUボートという存在がどういう物だったのかという事のみを後世に伝えるための物なのでは、と感じました。 10点(2002-08-27 09:44:47) |