1. ルパン三世 カリオストロの城
ヒットを出せず干されていた当時の宮崎監督の飢えたエネルギーと、ルパン三世への深い作品理解からくるTVシリーズへの怒りのエネルギーが生み出した、ルパン三世シリーズ中、および世界アニメ史に燦然と輝く傑作。これが予算などの制約上たったの4ヶ月で制作されたなんてまったく信じられない。 この作品の素晴らしいところは、作り込まれたシーンの数々(とりわけ冒頭のカーチェイスシーンは最高)、少ない枚数のなかで動きに動くアニメーション、ちりばめられたユーモア、魅力的なキャラクター、声優たちの的確で魅力的な演技、事件の背景にある巨悪のリアリティなど上げればきりがない。なかでもルパン三世ファンとって嬉しいのは銭形警部が原作どおり、正義感に溢れたカッコイイ凄腕警部として描かれていること。「ルパン三世」に絶対不可欠なものが、不二子ちゃんのお色気でも仲間との友情でもなく、大泥棒とキレ者刑事という緊張感がありながらもその向こうに不思議な友情を感じさせるルパンと銭形の関係であると、宮崎監督はしっかり理解しているのである。そのあたりはTV第2シリーズの大傑作「死の翼アルバトロス」や最終回「さらば愛しきルパン」にもハッキリみてとれる。逆にやりすぎて銭形が主人公かと突っ込みたくなるほどである。本作が好きな方にはこちらもDVDなどで観られるのでとてもおすすめ。宮崎監督の後の作品の原型もみてとれる。 そしてこの作品が傑作に仕上がった背景には、宮崎監督の先輩で、TVシリーズ「未来少年コナン」でもコンビを組んだ作画監督・大塚康生氏の功績も見逃せない。本作でルパン一味が醸し出す軽妙でふざけていて男くさい雑多な雰囲気は、当時を語る著書などで語られる宮崎さんや大塚さんらアニメ仲間たちの現場エピソードとオーバーラップする。こうした男くささが最近のジブリにみられないのは、もちろん子供向けに作られているからなんだろうけどちょっと淋しい。またハードボイルドやってくれないかな。 [DVD(邦画)] 10点(2003-08-05 03:15:45) |