181. 男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け
《ネタバレ》 男はつらいよと言うのは、半年間隔で見るようにできているんだなあ、とつくづく思う。ここ数作の寅の酷い言動を毎日立て続けに見ていると、ちょっとうんざりしてしまうというか、寅のことが嫌いになってくるのだ。実際とらやの人たちも、赤ちゃん連れ帰って放ったらかしたり、見知らぬ爺を連れ帰って朝風呂使わされたりが半年ごとでなければ、あんなにいい人では居られないのではなかろうか?……というか、おばちゃん人がいいにほホドがあるぞ。ま、それはともかく。 今作は宇野重吉と岡田嘉子の会話が、もちろん現実世界でのあの事件を彷彿とさせているのだが、実際人の人生の決断なんて後からアレコレ言っても、詮無いことなのだよなあ、としみじみ思わされる良いシーンだった。こういう時に、タラレバを思いめぐらしてもしょうが無いと、さっぱりと現状を見据える女と、ウジウジと過去を捏ね繰り回す男の違いを、思い知らされる。 さて、画家先生とぼたんと寅の話だが、それほどのいい話とは思えない。というより、ありがちな展開だ。先生が困り顔で奥へ引っ込んだ時に結局絵を描いちゃうだろうことも、ぼたんが寅を自分の部屋へ引っ張っていった時に、絵が送られたんだろうことも、そしてこの人はこの絵を金になんか変えないだろうことも、みんな画面で説明される前に分かってしまっていたものな。 まあ、そういう予定調和を楽しむのが『男はつらいよ』なのだと言えば、そのとおりなのだが。しかし、それならそれで、寅さんはキッチリ振られて欲しいものだ。 だって、そうしないと次が作れないじゃん。 [DVD(邦画)] 6点(2014-06-08 05:46:18) |
182. 男はつらいよ 葛飾立志篇
《ネタバレ》 今回の大学の先生は、何だか裏寅さん、あるいは賢い版寅さんだなあ、なんて思ってたら最後一緒に旅しているとは…。あの人はアレはアレで、女の人には受け入れてもらえないタイプの人なんですね。バカ(寅)とジジイ(教授)はダメってことかなあ?まあ、それはともかく。 それにしても、勉強すると言ったにも関わらず、寅のあの態度で怒らない先生はエライなあ。 それと桜田淳子もっと膨らませて欲しかったなあ。予告編見ると、もっと出てくると思ったのだが。 [DVD(邦画)] 6点(2014-06-07 14:22:01) |
183. 男はつらいよ 寅次郎相合い傘
《ネタバレ》 なーるほど、世間の人は嘘は言わねえ。シリーズ中最高点だけのことはある。この後約30本続くのは百も承知だが、それでもここでハッピーエンドかと思わせるほどの、寅とリリーの相合傘が切なく美しい。だがこのシーン、いつもの寅の羽織り方といえばそれまでだが、リリーの組もうとした背広の腕に寅の腕は入っていないというのが、後の展開を暗示させて薄寂しくもある。そしておそらくシリーズでも異色なのだろう、寅の側から身を引く展開も良い。リリーの気持ちを察せないとか、今までの様に意地を張ってしまうとか有りえたが、悲しいまでの寅の思いやりを見せられ、「アンタは一生独り者だよ」と悲しいその運命に涙してしまう。 まっ、それにしても、メロンが一切れ足りないくらいのことで「ワケを聞こうじゃないか」って面白すぎだが、リアルタイムで見ていたらナカナカどうして、笑えないくらい当時は貧しかったよなあ、なんて思ってしまった。これは個人差が大きかもしれないが。 ところで、見終わってこのシリーズにしては初めて、サブタイトルに合点がいった。 [DVD(邦画)] 8点(2014-06-06 20:32:51)(良:1票) |
184. アポロ18
《ネタバレ》 こういうホラーっぽい映画はあまり好きではない。最初にこの映画がフィクションっぽいことを匂わすが、何しろ地球外生命体(しかも蜘蛛みたいなスタイルがなんとも安っぽい)が出てきた時点で、それらは破綻する。 発見された映像、という体を装うならまあ帰還するんだろうと思っていたら、帰れなかったという結末。最初に掲げた作品のスタンスをも貫けない、つまり途中でフィクションと判っちゃったら後はもういいや、展開的にびっくりさせてやろうという、映画というよりアトラクションのノリのような姿勢に好感を抱けない。それにしては、最後のクルーたちのその後の公式発表を装ったりして、チグハグ。誰がフィルムを持ってきたんだよ? こういうのは、最後まで「ひょっとして、こんな国家陰謀があったのかも?」と思わせて終わらないと、ダメなんではなかろうか? せめて、どうして11号から17号までが無事だったのかくらいの謎解きは用意しておいて欲しい。 [DVD(字幕)] 3点(2014-05-28 05:12:40) |
185. ヘルファイター
《ネタバレ》 油田火災の消火って、意外と原始的なことに驚かされる。特に吹き出してる原油にバルブを取り付ける場面での、チカラワザ的なやり方で作業員が原油ザブサブかぶってる様子は、「目に入ったりしたらエライ事になるんじゃなかろうか?」なんて心配になる。そのような、冒頭に描かれる消火シーンで、一気に物語世界に引き込まれた。 そうした現場仕事のプロフェッショナルな凄さとは裏腹に、二人の消火士の妻の話は、ちょっといただけない。 ベテラン中年の妻は「夫の仕事が怖くて心配で、傍にも居られない病」で挙句の果てに別居→離婚。その夫婦の娘で若者の妻は「夫の仕事を見たくてしょうがない病」で、来るなと言っても現場に来て危険に巻き込まれる。どっちも度が過ぎていて、殊に若妻の方は普通なら保安関係者につまみ出されるレベル。実にイライラさせられる。 危険な夫の仕事に対して正反対の反応を見せるこの母娘が、とても意味ありげなんだけど、結局たいしたドラマチックな展開もなく、双方とも夫と上手くいってメデタシメデタシで、あまり面白くない。 そんな話よりも、軍事の類によらない危険で過酷な油田消火の男たちの話をもっと見たかった。 [DVD(字幕)] 6点(2014-05-23 00:05:21) |
186. 男はつらいよ 寅次郎子守唄
《ネタバレ》 2代目おいちゃんの期間が短かくて驚いた。そして今作より登場の、期間的には一番長かった下條おいちゃんは、少し淡白すぎて物足りない感が残る。それと関係するのか不明だが、今回の寅はあまりにも酷い人なので、ちょっと嫌気がさしてしまう。殊に、さくらの「少しは子守りくらいしろ」という苦言に対する態度はもはや、寅はバカだからしょうがない、という限度を飛び越えている。 今回は寅がマドンナと青年を(結果的に)取り持ったりしているおかげで、そのフラれた感が少なくて、何も出て行かなくても、という思いが残る。 ただ、滅多に帰らぬのに部屋があって当たり前と考えていたり、前作での相手女性の気持ちも確認せぬ自己中ぶりや、本作での前述の無責任ぶりを見ると、今更言うことでもないが、この人は一生放浪するしか無いんだろうなとも思い、ちょっと悲しい気持ちになったりもする。 [DVD(邦画)] 6点(2014-05-16 21:09:18) |
187. 男はつらいよ 寅次郎恋やつれ
《ネタバレ》 複数回出ているマドンナというと、リリーさんをすぐに思い浮かべるが、その最初の人は歌子さんだったのか。しかし、やはり前回の後日談感が否めない。 当然DVDではそうだが、公開時でもマドンナが誰かは公表されているので、最初の話で寅の結婚(希望)相手が焼き物師と聞けば、そこに(歌子やその旦那との)つながりを期待するのだが、そんなことは全くないのが残念。 基本的にこのシリーズは同じ事の繰り返しとは言うものの、同じ演者で同じようなことを繰り返すのはいかがなものか?と感じずに入られなかった。 [DVD(邦画)] 5点(2014-05-16 21:08:58) |
188. 男はつらいよ 私の寅さん
《ネタバレ》 今回は、会った途端の一目惚れとは違うパターンだと思ったら、とらやに現れたりつ子にたちまち陥落した寅さん。ここの所、どうも納得がいかない。アトリエでの剣幕と再開時の笑顔との、もっと分かりやすい落差を見せるとか、寅があえてここで惹かれた訳を納得させてくれないと、ええ!?という感じ。 [DVD(邦画)] 6点(2014-05-15 19:52:42) |
189. 男はつらいよ 寅次郎忘れな草
《ネタバレ》 歴代マドンナNo.1の呼び声高い、リリー松岡・浅丘ルリ子の登場回。美しいことももちろんだが、寅さんと一番心通っていたマドンナなのだろう。物語も他作に見られるような、前半の寅の騒動とマドンナの話との断絶感が薄く、綺麗にまとまっている。 ただ、あれだけ独り身の女の不幸感を醸していたのに、最後にあっさり旦那と店を構える展開に、腰砕けの感あり。 ちなみに、この二人を見ていると、(もちろん歌のほうが後発だが)中島みゆきの『二人は』という曲を思い出してしまう。 [DVD(邦画)] 8点(2014-05-15 19:52:11) |
190. 男はつらいよ 寅次郎夢枕
《ネタバレ》 今回は、いつもの寅さんの役回り的な東大の先生がいるが、これに対する寅さん、ワリと意地が悪くて笑う。 80年代の中頃からだろうか?寅さんが、他人に説教をしたり世話を焼いたりするのを批判する向きがあって、私も寅さんとしてそれはどうかと思っていたが、こんなに早くからそういうパターンがあったとは。 今回ここまでのたった9作を見てきただけだが、それでも寅さんの代理プロポーズへのまさかの返球に、思わず涙してしまった。ずいぶんと寅さんに心寄せている自分に驚く。 それにしても、本作に限らないが、サブタイトルの意味がわからない。 [DVD(邦画)] 7点(2014-05-14 20:22:54)(良:1票) |
191. 男はつらいよ 柴又慕情
《ネタバレ》 寅と血続きだというセリフと、おいちゃんまでもがタコ社長に酷いこと言ってしまい、寅との血縁感を強調している様に見えるのは、今回から変わったおいちゃんのファミリー感を表現しているということなのだろうか。 27・8のさゆりちゃん、可愛いと美しいの中間点くらいの、絶妙な頃合いである。 話は相も変わらずの、寅の部屋を貸す貸さないの一悶着だが、今回はヒロシたちのマイホーム話や、さゆりちゃんの家を出て彼氏と暮らす話と絡んで、巣立ちがテーマとなっているようだ。 だが、さゆりちゃんの彼氏の話が、最後に唐突に出てきてる感が否めず、ちょっとうまく描ききれてない感じ。 それでも、寅さんに結婚の話をする星空のシーンは、作り物感ハンパ無いのになぜか美しく、映画ってすごいと改めて感心する。 [DVD(邦画)] 6点(2014-05-14 20:22:00) |
192. 男はつらいよ 寅次郎恋歌
《ネタバレ》 まくら、さくら取ってくれ、はもう3回目だ。……なんて思ってたら4回目も同作でやるのか……。まあ、いいや。 それより今回寅はフラれていないのに、なぜ柴又を後にしたんだろう?女の不幸に手を差し伸べてやることが出来ないから、身を引いたのだろうか?なにか、寅さんらしくない気がする。 池内の借金問題もちゃんと解決したのかどうかもわからず、いろいろと謎のうちにいつもの大団円とは。 [DVD(邦画)] 5点(2014-05-13 23:06:55) |
193. 男はつらいよ 奮闘篇
《ネタバレ》 冒頭、当分会えなくなる親子の別れの時間に、延々ととら家の話をする寅に違和感。『続』の最後に二人で仲よさげに歩いた寅と菊の間が、また元に戻ってる風なのも違和感。 だが、そいうったモノを完全にぶっ飛ばしてしまう榊原るみの可愛さ!知恵遅れという設定が少々卑怯な感じだが、「弱い女の子」の誇張表現として受け止めておく。 灯台下暗しを言い換えただけでこれだけ笑わすのはさすが、と思ったが、今回はなんといっても「知りませんか?」だなぁ。真面目一方だと思っていたヒロシが、こんなに笑いに入ってくるとは。 [DVD(邦画)] 6点(2014-05-13 23:05:48) |
194. 男はつらいよ 純情篇
《ネタバレ》 「もしその男が2000円ぽっちの金で、妹の体をどうこうしようなんて思っていたら、おれぁそいつを殺すよ」今回のベスト名言は、序盤で寅が宮本信子に言ったこの台詞。自ら寅に輪をかけたダメ兄貴ゆえ、一層そう思うのかもしれない。 ところで今回のマドンナは、なんだかちょっと消化不良な感じ。個人的にこの女優さんの魅力にピンと来ないというのもあるが、とら家からの去り際があんまり薄情じゃないか、と言う気がするからかも知れぬ。物語の話しだし、おいちゃんおばちゃんも「気にするな」とは言っているが、あんな唐突なやめ方はない、と思うのだ。店が困るじゃないか。 [DVD(邦画)] 6点(2014-05-12 17:20:22) |
195. 男はつらいよ 望郷篇
《ネタバレ》 「それから考えることも地道にね、あんまり飛躍しちゃダメよ。」という、さくらの台詞が最高でした。兄を傷つけずに言える精一杯の表現なのだろう。長山藍子の存在を知った時の表情といい、所帯を持つかもしれないという兄の電話を受けた時の表情といい、この人は寅の宿命を理解している。とら家の誰もがわかっていない兄の悲しみを知っている妹。 二作目、三作目と若干影薄かったが、やはりこの妹がちゃんと物語の中で生きていないと、男はつらいよという映画はダメなんだと再確認した気がする。 [DVD(邦画)] 8点(2014-05-12 17:19:17)(良:1票) |
196. 新・男はつらいよ
《ネタバレ》 冒頭の歌、聴いたことのない歌詞だ。TV版主題歌の3番らしい。この監督はTV版男はつらいよの創作者の一人で、主題歌の作詞を依頼した人だという、その矜恃なのかもしれない。 お話は、寅が競馬で当てた金で、おいちゃんばちゃんをハワイに連れてこうとするも詐欺に会う話と、寅の留守中にその部屋を貸した美人先生との失恋話。 旅行に発ったはずが、家の中でじっと隠れるというシチュエーションはどこかで見た気がするが、本作の方が元なのかもしれないな。 今回の騒動は直接とら家の面々を巻き込んでおり、おいちゃん大活躍。「バカだねぇ、あいつは」のセリフも実にキマってる。 また、当時24歳だという栗原小巻のミニスカート姿がとてもキュートで、寅さんの目の前であの急階段を登らせるのは罪深くさえある。 [DVD(邦画)] 6点(2014-05-11 02:23:36) |
197. 男はつらいよ フーテンの寅
《ネタバレ》 監督が山田洋次でないということで、ちょっと心配したというか身構えたというか。だが、そんなことは杞憂だった。それより三本目のこの寅さんは、車寅次郎というキャラクタの魅力を決定づけたと評価されるべき名作だと思う。 今までの寅は、誤解を恐れずに言えば「純粋だけどバカ」。だが、今回の寅はそこに己を知る者の悲哀を感じさせる。ひろしに組み伏せられて己の弱さや愚かさを思い知ってしまうシーンや、最後の年始のTVに映り込んで、家族が見ていると知る由もなく虚勢を張っているところなど、泣いてしまったりはしないが、胸の奥底に重たいものが下りた感じがした。また、体を壊した同業の先輩に、仁義を切ってみせるあたり、ただのお調子者ではない、職業人・車寅次郎を見せてもらった。 ところで、とら家のみんなが見ているTVが白黒なのに、マドンナと医者が見ているのがカラーTVである事も、彼女がひどく遠くの世界へ行ってしまった感じがして、悲しい気持ちにさせる。 [DVD(邦画)] 7点(2014-05-11 02:21:54)(良:1票) |
198. スーパーマン リターンズ
《ネタバレ》 最初に描かれる活躍の、ジャンボ機の鼻っ先を受け止めるシーンは、その機体の波打つ描写を含め、ワクワクしながら見た。 数年ぶりに邂逅した、心通わせた男女の飛行シーンにもウットリした。 だが、あの子供が悪漢にした事を見た途端に、とても嫌な気持ちになった。『マンハッタンの怪人』とその舞台作品『Love never dies』を思い出さずに入られなかった。 少なくとも私としては、スーパーマンにこういう展開を求めてはいないのだ。このストーリーが続かなかったのは、幸いである。 [DVD(字幕)] 4点(2014-05-02 13:13:46) |
199. 続・男はつらいよ
《ネタバレ》 一作目の寅さんは、おなじみのフォーマットが少し色薄い感じは否めなかったが、今作はすっかりいつもの寅さん。しかも、寅の生みの親というごちそう付き。 寅の母ならさくらの母でもあるんじゃね?と思って調べてみると、どうやら腹違いだそうで。そんなこと劇中で言ってたっけ? 江戸っ子の代表格のように見える寅さんの母親が、関西弁なのはなぜ?なんて思うが、変に言い訳がましい説明を付けずにいるのも潔い。 まあ、それはともかく、この親子の再開場面でひどい展開になって、悲しい再離別をした寅と母が、最後にいい見せ場があるのは、マドンナ親子の描写とともにテーマを上手く盛り上げている。私自身、若い頃に母を亡くした身なれば、涙を禁じ得ない。 [DVD(邦画)] 7点(2014-04-26 16:58:46) |
200. 一心太助 天下の一大事
《ネタバレ》 いやー、痛快!太助の真っ直ぐさが、気持ちいい。 しかし、この中村錦之助という人の啖呵というのは、実に凄いものがあるな。 自分の始めて見た錦之助は、子連れ狼なものだから、どうしても物静かなスゴ味というイメージがあった。だが、殿様を演じている時の凛とした高貴さ、太助の時のチャキチャキの江戸っ子を感じさせる快活さ。双方見事に演じ分けるというのは、まぁ役者ってそういうモノと言ってしまえばそうだが、それでも唸らされる。 それと、こういう庶民の、侍の論理で事が運ぶ物語ではない時代劇をもっと見たいものだ。 [ビデオ(邦画)] 6点(2014-04-19 23:09:07) |