2181. ザ・タウン
《ネタバレ》 前作もそうだったけど、ベン・アフレックという人は、どこに監督の才能を隠していたのかなあ。実に堂々とした安定した進行っぷりです。いくら晴天でも決して爽快にはならないどこか鬱屈とした空気感(しかもそれが作中の重要なキーワードとリンクしている!)、当事者がわーわー勢いで犯罪を行うのではなくて、何か流れる血の中からいつの間にか行動があふれてくるような自然感。そのようなトーンの統一が見事です。俳優陣も、いかにも呼吸するように悪事を働きそうな自然な悪人顔のジェレミー・レナーを最右翼に、他人を生かす技を心得たアンサンブルを展開しています。隙間からふと外を見るとびっちり警察がスタンバイしているカットなど、いろいろなところで職人芸的なポイントがあるのも楽しい。 [ブルーレイ(字幕)] 7点(2013-06-01 02:27:34)(良:1票) |
2182. モンタナの風に抱かれて
雰囲気しかなくって中身はほとんど何もないんですけど、その雰囲気だけで3時間近くもひたすら押してしまえるある種の執念は、もしかしたら凄いのかもしれない。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2013-05-31 02:49:49) |
2183. この愛のために撃て
《ネタバレ》 ハリウッド・テイストな分かりやすいサービス満載のアクションながら、警察内部の対立であるとか、決戦の場所が警察署内であるとか、それを導くためのさまざまな道筋であるとか、あまり見ないネタもちりばめてあってなかなか美味しい。ただ、臨月の妊婦の人質という設定は、よく考えると反則ではないかと思う。もうすぐ産まれるかもしれないという一事だけで自動的に状況を設定できてしまうし、最後に無事産まれたらめでたしめでたし、というのも、ほかの展開と関係なく成立できてしまうから。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2013-05-29 03:25:11) |
2184. しゃべれども しゃべれども
《ネタバレ》 ところどころ優れた描写もあるのだが、全体の流れとしては、平板で表層的。そもそも、子役以外の2人は、いや主人公も含めれば3人は、ほとんど何の変化も成長も描かれてないのではないか?(というより、スタートの問題点が掘り下げられていないので、描きようがないともいえる)あと、画面に陰陽がほとんどなく、照明がえらくいい加減に見えるのが気になった。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2013-05-28 00:51:56) |
2185. 怒りの河
何だか、ひたすらみんながワーワー騒いでいるだけで、見ていて疲れました。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2013-05-28 00:43:55) |
2186. 僕らのワンダフルデイズ
《ネタバレ》 人物設定とか、バンド再結成に至る経緯とか、危機の迎え方やその乗り切り方とかが、いちいち説明的で、かつありきたりなのです。この安直な脚本だったら、俳優陣もどう演じていいか困ったのではないでしょうか。あと、肝心の演奏シーンが(本職ミュージシャンの稲垣潤一を除いて)それほど格好良くないのも問題で、そんなんで作品としてオヤジロックを語るなよ、と思ってしまいます。救いは、それ目当てで見た紺野美沙子の出番が、予想よりは多かったこと。 [CS・衛星(邦画)] 3点(2013-05-22 03:12:19)(良:1票) |
2187. マダムと女房
昭和6年の邦画ってどんなんなんだ?という歴史的興味だけで見てしまったのは不純な動機かもしれませんが、その意味での目的は達成できました。ただ、単純ストレートな表現こそが最も説得力を持つ、という観点からは、今日でも参考になるかもしれません。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2013-05-22 02:54:04) |
2188. 未来を生きる君たちへ
《ネタバレ》 主人公が悪の親玉をキャンプから追い出すシーンでは、てっきり、後で配下たちが報復にやってきて(その前に、わざわざナンバー2っぽい人物が紹介されている)、そこでこの作品のテーマである「暴力の連鎖にどのように対峙するか」という問いに対する回答が示されると思っていたのですが・・・。その辺はまったくなしでスーッと流れていっているため、設定や展開自体が制作者側の都合よく設けられているように感じる。子供たちの側で爆弾が登場するというのも、設定として唐突なような。要するに、視点として本当に現実に立ち向かおうとしているのか?というスタンスのところで引っかかってしまうのです。 [DVD(字幕)] 5点(2013-05-22 02:44:51) |
2189. キッド(1921)
《ネタバレ》 物語の展開という点からいえば、子供を奪い去られた後にこそドラマがあってしかるべきではないか?趣旨不明な夢の国のシーンも相まって、せっかくのそれまでのストレートな描写の効果が半減してしまった。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2013-05-21 02:44:34) |
2190. 青い鳥(2008)
《ネタバレ》 導入部で、生徒たちが類型的な悪ガキではない描写をしているところで、作品が他の類作とは一線を画するものになることを予感させる。生徒たちは、一見して礼儀正しく真面目であるし、問題は解決されたかのように見えている。しかし、本当に問題なのは、日常生活の当たり前の中で当たり前に起こる邪で傲慢な何かなのだ。また、主人公以外の先生たちも、ありきたりな描写を脱却し、彼らなりに熱心な活動を行っているものとして位置づけられている。例えば、作文を合格するまで何回も書かせるというようなことは、熱意がないとできないし、場合によっては正しい(それによって生徒が到達するのは建前論だけかもしれないが、建前論を生徒に理解させるだけでも、本当は大変なことだ)。しかし、この事件の発生の経緯からすれば、それでは不足だったのだ。また、手法論的にも、何気ない教室の風景のフレームの隅の生徒まできちんと演技がついている指導、沈黙の時間を恐れず、むしろそれを有効に使っている演出、光の使い方やカメラの動き、ここぞというところで言葉を大切にする脚本など、制作者のなみなみならぬ決意が随所に表れている。 [DVD(邦画)] 8点(2013-05-21 01:58:28) |
2191. 勇気ある追跡
《ネタバレ》 導入部はなかなか緊張感があると思っていたのですが、そこからはさして盛り上がる展開があるわけではなく単調に対象を追いかけているだけだし、何よりもキム・ダービーが始終ワーワーうるさいのが気になる。というか、人に助けてもらって、最後の最後までワガママの言いっぱなしじゃん。これは、これが格好良いと思って作られたのか? [CS・衛星(字幕)] 4点(2013-05-20 02:11:17) |
2192. 海峡
《ネタバレ》 せっかくこんな日本の誇りともいうべき題材を対象としていながら、このいい加減な制作は何なのか。撮っている風景は「ただ掘っているだけ」と、「ときどき、机上で作ったような適当な危機が起こるだけ」で、それを可能とした技術の発展も、当事者の熱意や執念も、年月の経過も、社会的な背景も、なーんにも描写されていない。こんなスタンスは、実際に命とプライドを賭けて工事にあたった人たちにも失礼なのではないか。大体、吉永小百合が絡むパートなんて、そのすべてについて、なぜ必要だったのかさっぱり分からない。 [CS・衛星(邦画)] 3点(2013-05-19 02:53:22) |
2193. ウィンターズ・ボーン
ひたすら作品を取り巻く重苦しい雰囲気と寒々とした光景、特に何かを強調しているわけでもないのに随所に滲み出てくる救いのない暗さ、その中にあって作品世界を見事に体現している俳優陣の巧演、とりわけその重さに何ら負けていないジェニファー・ローレンスの存在感。この作品はそれだけで十分。しないで済む説明は全部カットしている脚本も良い。 [DVD(字幕)] 7点(2013-05-18 20:45:55) |
2194. 椿三十郎(2007)
オリジナルも別に好きなわけではないが、それなりの一つの完結した世界であるオリジナルに対して、何をいじったり新解釈をしたりするわけでもなく、そのまんまそのまんまのリメイクというのは、創作行為としての根本を疑われても仕方がないのではないだろうか。その志の低さにおいてすでに評価することはできないし、そのような作品に出させられることによってキャリアに無用のマイナスを残してしまうことになる役者陣が不憫だ。 [CS・衛星(邦画)] 3点(2013-05-16 00:37:06) |
2195. チャップリンの殺人狂時代
《ネタバレ》 終盤入口くらいまで、同じような女性引っかけシーンの繰り返しで、これはやっぱりつまらないかなと思っていたのです。しかし、温室でのたたみかけるような笑いを経て、ホテル前での逮捕を覚悟した別れのシーンは突出しており、ここだけで作品の印象が一気に変わっています。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2013-05-15 02:23:50) |
2196. Laundry ランドリー
《ネタバレ》 小雪が逮捕される前後の心理の交錯とか、優れた描写の部分もあるんですよ。だけど、全体的には、「こんな感じでファンタジックに染めておけばそれっぽいかな」という雰囲気が漂っていて、やっぱり作為的なのです(ラストはその象徴)。それと、この内容ならば、尺は100分くらいで十分ではないか? [CS・衛星(邦画)] 5点(2013-05-15 02:15:11) |
2197. うた魂♪
《ネタバレ》 全体的に無機質でプラスチックで官僚的で、そもそも合唱シーン以外のところで、肝心の「歌う喜び」が映画としては全然表現されていないような気がするのですが・・・。出発点として、「顔が変だと言われて心が折れる」というような単純で煩悩的な問題を正面に据えた点は斬新で評価できるが、それを支える主人公の日常生活人格まで作り込まれていないので、物語が始まるに始まれず、無理矢理レールの上を走らされている。もっとも、妙にセンスの良い部分もところどころには見え隠れして、それに救われている。例えば、防波堤のシーンで突然左右に揺れてハミングを入れ出す後ろのメンバーとか。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2013-05-12 01:52:46) |
2198. キッズ・オールライト
《ネタバレ》 アネット・ベニングにジュリアン・ムーアにマーク・ラファロとなると、やっぱり見る前の期待値とハードルが上がってしまうなー。導入部分で、このレズビアン・カップルはどういうカップルなのかとか、この家族を構築するためにどういう生活を経てきたのかというところをかなりすっ飛ばして精子ドナーが登場しているため、レズビアン云々よりも、精子提供の方にテーマがスライドしてしまっている。しかも途中からは、ジュリアンの浮気についてのみテーマが収束してしまっているので、さらに設定の意味がなくなっている(子供たちは親の浮気の被害者としてのみ描かれ、精子提供による親子関係というものに対する洞察は何もなくなっている)。そんなわけで、主演の3人も、その表現力を駆使する場面があまりありませんでした。前半の食事の場面などは、ぎこちない心理の衝突がなかなかスリリングで、あの辺がもっと発展していくことを期待したのですが。 [DVD(字幕)] 6点(2013-05-10 02:06:49) |
2199. マッケンナの黄金
《ネタバレ》 何か見ているときから違和感があったのですが、これはウエスタンの皮を被ったアドベンチャーで、すでに書かれているとおり、インディ・ジョーンズやハムナプトラの源流だったわけですね。大平原と馬の疾走にひたすらこだわった映像は一見の価値ありですが、そればかり続くと単調になってきます。あと、あのラスト、「せっかく登ったのをわざわざ降りて、来た道をそのまま戻る」は予想外で逆に衝撃的だったのですが、ああしないとオチがつかなかったのですね。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2013-05-10 01:56:20) |
2200. Go!(2001・矢崎充彦監督作品)
《ネタバレ》 えらく自主製作っぽい、もっといえばちょっと貧乏くさい出だしから一転、女性との出会いが一段落つく頃からは、ドラマがぐいぐいと動き出す。一番良かったのは、主人公が最後までださくて格好悪いのを貫き通している点。しかしその描写は作為的ではなく、不要な部分はばっさりと切り落とし、自然に見る側をのめり込ませる力を持っている。格好良い台詞も目を見張る得意技もないけど、原付で長崎まで走ってしまう体力と根性だけは持っている。その主人公の特性を、描写の上でも大事に育てているのがよく分かる。あと、さりげなくキャストも豪華ですね。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2013-05-08 04:10:37) |