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花守湖さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

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241.  空中庭園 《ネタバレ》 
家族に翻弄される子供たちがいました。隠し事をしないという家族は一見理想的な家族のようにみえて、話しが進むにつれて、異常なところが露出されていく。 むしろ主役の小泉今日子よりも、子供たちのほうが、「家族ってなんだろか?」と必死になにか答えを探し出そうとしていたように思います。この家族を作り上げたのは妻役の小泉今日子。 「わたしは母親のせいで、苦しい子供時代をおくってきた。だから自分は理想の家庭を作って良い母親になろう」と考えていた。あの計画妊娠なんてスゴイですね。 それから母と娘の確執はあまりにも強烈。娘である小泉が母親に「死ねよ」という言葉でそれを表現していましたが、回想シーンでは小泉の母親が泣いていたシーンがありましたよね。母親は子供の前では泣くべきではないのです。あの母親は泣くことによって自分を守ったのは一目瞭然。本来は我が娘を守るべき母親が子供よりも自分を守ることを優先した様子に、娘である小泉は怒りに・・いや恐怖に震えたのだと思う。別にこの映画は最後に母娘を氷解させる必要などないのである。永遠に和解できないほど傷つけあった親子は実際に存在するのだから。 一般的にみても私は、母親と娘ほど親子関係で難しいものはないと思う。母が同じ同性の娘よりも異性の息子を強く愛してしまうのは仕方のないことかもしれません。もちろん母親はそのことに無自覚です。しかし愛を受ける子供は敏感にそれを感じ取っている。 通常、母から受けた仕打ちに娘は自分が母親になったとき、絶対に繰り返さないようにしようと決意する。しかしその決意はかなり高い確率で失敗する。小泉今日子はそういう難しい役を見事に演じていたと思います。 
[DVD(字幕)] 9点(2006-10-09 18:44:08)(良:1票)
242.  ホテル・ルワンダ
この映画をみて国連の批判や、国益重視の先進諸国の批判はできるが、だからといって自分たちだったら何ができるのか??寄付ならできる。しかしある1人のアメリカ人はお金を3万円だけ日本人に渡してこう言う。「お金は僕が出すから君がかわりに戦場に行ってくれよ」と。ルワンダの現状はわかった。我々日本人はクーラーのきいた映画館で、馬鹿な国連に腹をたて、この虐殺に無関心だった人間たちを軽蔑し、そして殺されたルワンダの国民に涙を流す。しかし頭の片隅には明日の仕事の段取りを考えている。せめて寄付でもして良心を満足させたいが、そういえば、家族とディズニーランドへ行く予定なのであまりお金を使いたくない。しかしこんな大虐殺が実際に起こっていたなんて信じられない。本当に素晴らしい映画だった・・と思っていたら友人から「今日は焼肉でも食いに行こう」と誘われる。ルワンダの事件は確かに深刻だったが焼肉は食べよう。多少良心は痛むが最初のうちだけだ。ルワンダの惨状に涙は流すが食欲はなくならないのだ。そして今日の夜もビールを飲み続ける。酔い加減も気持ちよくなってきたらさっそく、この素晴らしい映画のレビューをつけよう。もちろん10点をつけて、ルワンダに無関心な人間を哀れんでみせよう。私だけはこの映画をみて目が覚めた、この事件に強い関心を持つようになったのだ。そういう自分に満足をしながら温かい布団の中にはいってぐっすりと眠る。さあ来週はディズニーランドだ。なんとか今年のクリスマスまではこの事件のことを忘れないようにしよう。そうやって今日という日が過ぎていく。この映画を知って無関心だった事件に関心を持つようになった・・しかしそれだけである。 
[DVD(字幕)] 10点(2006-09-12 17:58:54)(良:2票)
243.  ALWAYS 三丁目の夕日 《ネタバレ》 
過去というものは人の頭の中で無意識のうちに美化されていくものだと思っている。現実が厳しくて辛いほど、過去というものは「古きよき時代」として徐々に美しいものに作り変えられていく。 三丁目の夕日は、リアルさよりもむしろ人の記憶が作り上げた美化された過去を再現したファンタジー映画ですね。 それと六子ちゃんの演技に涙しました。ケーキをこっそり食べて、おなかを壊しても、お茶目で微笑ましくうつる。しかしもし、おなかを壊して寝込んでいるのがブサイク女だったら、どんなに上手な演技をしても観客にはブーイングものだろう。ヒムラーだったら即刻銃殺だと考える。 小雪さんもしかり。美しいからこそ、あのくさい指輪をはめるシーンが絵になる。美人は得だ。 それと鈴木オートの社長をみて思ったのだけど、この時代に「過労死」という言葉はなかったと思いませんか?しかし現在以上に昔の人たちは働いていましたよ。そして労働は今よりも過酷だったはず。ではなぜ現代人だけが過労死するのか?その答えは簡単である。現代は働き甲斐がないのです。つまり働いているのではなくて働かされていると感じることが多い。鈴木オートの活き活きした仕事振りを見ていてそのようなことを漠然と感じたのでした。 
[DVD(字幕)] 7点(2006-09-12 17:52:58)(良:2票)
244.  シン・シティ 《ネタバレ》 
モテない中年男たちが「愛」という大義名分のもと、ずいぶん都合のいい虐殺を繰り返す様子をみて呆れましたよ。惚れた女のために人間の両手両足を切断して体を犬に食わせるような主人公に誰が共感できるのでしょうか? ネコパンチしか打てないミッキーロークがタフガイを演じてもまるで説得力がない。人を殺すのにみんなが理由をつけて自分を正当化しようとしている所も気に食わない。「罪の街」というタイトルを返上してぜひ「偽善者の町」に変更してもらいたい。いかにも怪しげな殺し屋ミホが、カマボコでも切るかのように人間の手や足をスパスパと吹き飛ばしていく・・・。開いた口がふさがらないとはまさにこのことだね。 監督よ、私たちにこの惨殺をみてクールだといって欲しいの?? なんてセンスの良い殺し方なんだ!なんて誰が言うもんか。殺す人間たちはカッコいいが殺される人間は痛そうな素振りすら見せない。むしろ半笑いを浮かべなら殺されていく・・。生命の感覚すら麻痺してくる・・。人殺しにセンスが良いもカッコ良いもクソも無いのですよ。ばいおれんす?ええ、はい、はい、「暴力」を横文字にすると、ばいおれんす・・笑えますね、子供だましもいいといころです。もしかして平和ボケして刺激が足りなくなった現代人を満足させるために作られた映画でしょうか?  ただよく考えてみると、ネコを虐待したりエアガンで人や動物を撃ったりしているおかしな人間もいるくらいだからこの映画にも需要があるのでしょう。だけどね、こんな映画に需要があると思うだけで病んだ現代人の心が見えてくるようで悲しいのです。
[DVD(字幕)] 0点(2006-09-05 18:44:03)(笑:3票) (良:2票)
245.  ミュンヘン 《ネタバレ》 
これが「バカの壁」と言うのでしょう。ユダヤ人のアヴナーとパレスチナ人の青年は、お互い自分の言い分を出張するがその情報は相手の脳に遮断されて決して届くことは無い。まさに馬の耳に念仏。両国はこれからもメビウスの輪のようにエンドレスに分かり合えることがないと考えると暗澹とした気持ちにさせられます。「話せば分かる」という言葉すら暴力の前では通じることも無い。問答無用といって憎き相手に復讐をするのみ。そして暗殺したものは暗殺された仲間たちからまた恨みを買って次は自分が追われる番となる。暴力の連鎖は何も生み出しはせずにさらなる暴力を誘発する。例えばマルコムXが黒人差別に立ち向かうために暴力に訴えかけたところで、けっきょく彼もその暴力の波にのまれてしまう運命であった、、同じように暗殺請け負い人アヴナーが暗殺の標的にされて怯える姿は、映画マルコムXの晩年の姿と重なるものがありました。だからといってキング牧師のように非暴力で立ち向かえというメッセージがこの映画にあるとは思えない。ただひたすら永遠に分かり合えない両者が存在するのみ。
[DVD(字幕)] 7点(2006-08-31 21:41:47)
246.  ドニー・ダーコ 《ネタバレ》 
一番最初の方も言っていますが、この話は人間が死ぬ間際にみる一瞬の夢なのだと思う。あのセミナーの雰囲気はいやだったなぁ。ああいう会合に行ったことが昔あるけど本当にぞっとした。その理由は「ぼくらはみんな仲間なんだ」というオーラがひしひしと伝わってくるからです。寂しいからみんなで寄り集まって共感しあいたいというのは結構です、しかしそういう連中に限って、仲間に溶け込めない異分子を目の敵にして攻撃しようとする。そして異分子をみんなで協力して排除することでまた連帯感を味わって気持ちよくなろうとする。人間は孤独である、ということを認めようとはしない連中が、孤独を回避するために集り、そしてドニーダーコのようなタイプの人間を餌食にする。他人と同化しきれない人は少なからずこの手の集団に痛い目にあっているはずです。この話が「ライ麦畑でつかまえて」と似ていると言った人もいましたが、まさに的を得ていると思います。ドニーダーコはホールデン君を思い出させる。誰もが自由と引き換えに寂寥感を募らせていきます。世界の終わりのタイムリミット(言い換えれば自分が死んでこの世から消えさるまでの時間)が最初から定められていて、それに向ってどんどん堕ちていく世界観は秀逸。青春はその感受性の強さゆえに希望と絶望が紙一重。  
[DVD(字幕)] 8点(2006-08-29 18:34:40)(良:1票)
247.  es[エス](2001) 《ネタバレ》 
人の人格は一朝一夕では変わることは決してありません。ましてや1週間足らずでここまで劇的に変化はしない。これこそ深層心理の常識ですよ。スタンフォード大学の実験がこのような事故につながった原因は、実験のせいではなくてあれは本当にただの喧嘩だったのです。ようするに、子供が夜中にまくら投げをして はしゃいでいるうちに、だんだんエキサイトしてきて喧嘩になるのと同じレベルでした。だいたい人が大勢集って閉鎖された空間で毎日顔をあわせていれば騒ぎは必然的に起きるものじゃないですか、それもタクシーの運ちゃんなどガラの悪い連中を集めているのだからなおさらです。それを無理やり実験のせいにしてしまうなど言語道断ですよ、本当の刑務所で看守と囚人の関係をみればこの実験が人間心理の真実だとは恥ずかしくて言えないはずです。権力を与えられた者に支配欲が発生することはわかりますが看守役に支配権はなかったと断言します。警棒がそんなに恐ろしいですか?冗談じゃありませんよ、それだけで囚人役をあそこまで奴隷扱いにすることは不可能なのです。実際の事件では支配と被支配の構図は存在しなかった。従ってこれは純粋な喧嘩なのでしょう。連中が酔っ払ってバカ騒ぎの喧嘩を起したというのが真相だと思う。「極限状態が人を変えてしまう」という宣伝文句も失笑ものです。なぜならはじめから最後まで何1つ変わっていないからです。最初から金目当てでやって来ているガラの悪い連中を集めて実験しているのだから、もともと暴力的だったのです(苦笑)そもそも「応募資格:不問」というのが間違っていましたね。以上です。 
[DVD(字幕)] 1点(2006-08-14 20:31:27)(良:3票)
248.  クラッシュ(2004) 《ネタバレ》 
救いと希望を感じました・・。修理屋の黒人の娘が射殺されそうになったときや黒人の妻が事故死しそうになったときは本当にもう駄目かと思って息がつまりそうになりました。なぜなら、ああいう場面では「差別は残酷なんだ」と伝えがたいために、彼らを不幸にして死なせてしまう映画が非常に多いからです。そしてそれがリアルなんだ、と製作者サイドはうそぶくわけです。だから黒人の娘が救われたときなどは、子供のように素直に嬉しかった。 差別というのは、ただ単にコミニケーション不足が偏見を生み、そして憎悪へと変化していくだけのことかもしれません。 とくに差別主義者の白人ライアン巡査がひどい差別をした黒人女性のことを、命をかけて救った場面にはあるメッセージが込められていたと考えます。 人を殺した人間には殺したかった理由があるはずですが、人を救った人間には救うための理由なんてありません・・・それは本能なのですね。 肌の色や国籍が違っていても、死にそうな人間を見かければ、とっさに人間は人間を救う・・よく人間の心の奥には誰もが差別を持っていると言われます。しかしもっと奥をのぞけば、同類である人間同士の共感が見えてきます。この映画の根本的なメッセージは差別問題ではないと思う。私には人間賛歌の物語にさえ感じました。
[DVD(字幕)] 10点(2006-08-13 18:01:07)(良:1票)
249.  SAYURI
注目はやはりアジアンビューティーことチャンツィイーであり、彼女がいまや問答無用の大御所になっていることは周知の事実なのですが、圧倒的な美的感覚に優れた映像を通して神々しいまでの彼女の美しさがひしひしと観客に伝わったことでしょう。その貫禄と風格は「厳か」という他ありません。チャンツィイー以外の俳優のすべてが彼女の下僕に見えて仕方ありませんでした。ところで無名のころのチャンツィイーは、キラリと光る原石のような天然の魅力があり、自分の美しさにまったく気がついていない無垢な「美」があったと思います。当時は末恐ろしい女優だと思ったものですが、ところが「SAYURI」では、絶頂を極めた彼女が、まさにアジアナンバー1と呼ばれる自分の美しさを自覚し、そしてその類い稀なる美貌を自ら思う存分に魅せようとしている、そして彼女には他を寄せ付けない圧倒的な武美があり、ゲイシャという役柄を通して、その端麗な容姿から縦横無尽の立ち振る舞いを惜しげもなく披露する、それはまさにこの映画がチャンツィイーの、チャンツィイーによる、チャンツィイーのための作品だということを誇っているように思う。その彼女の恋愛相手となるべく日本男児は、別所・渡辺謙。彼らは日本ではかなり有名な俳優ではあるが、チャンツィイーの前ではもはや奴隷に等しい。彼女の圧倒的な存在感は他の俳優の追随を許さない。ロブマーシャルの魅せる耽美な世界観と世界を美貌で屈服させたチャンツィイーによる美の競演に酔わずにはいられない。ブラボーチャンツィイー 
[DVD(字幕)] 9点(2006-07-14 22:42:24)
250.  メラニーは行く! 《ネタバレ》 
いまやルックスだけではなくて演技派としても名高いリース・ウィザースプーン。私は素直にメラニーに好感が持てましたよーー!メアリーの魅力は、自分をありのままに表現できることなのです。 そういうメアリーを街の人たちは愛し、そして赦している。問題のラストシーンですが、あえて市長の息子である婚約者を悪者にしなかったことを褒めたいです。普通だったら、婚約者を途中で悪い人間に豹変させて、メラニーがその男を選ばなかったのは当然である、という流れに持っていくのがハリウッドの常套手段です。しかしこの映画はメラニーを愛する2人の男がどちらも誠実で良い男となっている。こういう場合、どちらの男を選んでも女性は非難されるでしょう。しかし、ここで一番大切なことは、周りの空気に流されずに自分の本心に従って正直に行動することだと思う。メラニーはまさにそのお手本となる女性ではないでしょうか??可愛いだけではなくて、心の奥底に毅然とした芯の強さを秘めている女性です。彼女は最後まで自分の本心に忠実であり続けたのです。これは、女性の、女性による、女性のための成長と再生の物語。見事に自立した女性を演じたウィザースプーンに拍手。私は断固として彼女を支持します。ブラボーメアリー!
[地上波(吹替)] 7点(2006-07-14 22:16:57)
251.  そして、ひと粒のひかり 《ネタバレ》 
あの聖母マリアを連想させる神々しい名前とは裏腹にコロンビアに住むマリアは妊婦でありながら麻薬を体内にいれて密輸を行おうとして「母親失格」」と友達から罵られていましたね。もちろんこれはマリアの行動や考え方を批判する映画ではないと考えます 。マリアを通してコロンビアという国がいかに問題を抱えているのかよく分かりました。胃の中に麻薬を詰め込んでアメリカへ密輸する運び屋の報酬は5000ドルで、マリアがその仕事のために62粒の麻薬入りのカプセルを飲み込むシーンは、簡単にいうと、「おえー」となります。目を蔽いたくなってくる。しかし、しょせん日本人には理解できない状況なのでしょう。なぜなら日本ではそういうことを行う可能性が限りなくゼロに等しいからです。コロンビアには可能性がある。この国では日常的に麻薬というものが横行しており、そのうえ貧困を抱えている。つまりいつでも麻薬に身を委ねる可能性があるのです。 たとえばお金に困っていたら、突然、知り合いから「バイトでもしないか?」という軽い口調で「麻薬でも運んでみないか?」と言われるのである。 もし私にその可能性が訪れた時、果たして断りきれるのだろうか?それとも確実に自分は絶対そんなことはしないと言って、それを行ったマリアを非難するのだろうか。 ・・・・・・・。アメリカから再びコロンビアに帰ろうとした空港でマリアは、今度行く予定の産婦人科の検診日のカレンダーを見て、急に気が変わりアメリカに残ることを強く決意する。マリアがコロンビアを捨てた理由は彼女が母性に目覚めたからだという見方ができる。しかしそれ以上に子供を持とうとする女性の強烈な防衛本能がそうさせたのだと思う。現状のコロンビアがいかに危険な場所であるかということを、母親の本能をもって伝えている。巧い映画だと思います。  
[DVD(字幕)] 9点(2006-07-09 22:30:22)
252.  シンデレラマン 《ネタバレ》 
ボクシングといえばKO。KOといえばボクシング。しかし「判定勝ち」をここまで劇的に描いたボクシング映画はかつてあっただろうか?素直に驚いた。人を感動させるものが何か監督は熟知している。ベアーにボコボコに殴られるブラドッグは、シンデレラ、というよりもむしろ死んでれら。彼は満身創痍だったがそれでも何かにとりつかれたように無敵のチャンピオンに向っていく姿に体が震えた。ただしあれじゃ、もしブラドッグの奥さんが近くで見ていたらショック死するだろう。それとチャンピオンのベアー役の俳優が素晴らしい。彼の狂気を含んだ演技がこの映画の勝因である。彼が無敵のチャンピオンを見事に演じたから、挑戦するシンデレラマンであるブラドッグの勇気が鮮明になった。(ちなみに実話でもベアーはボクシングで人を殺したことがある豪腕ボクサーだったらしいが、性格のほうは気さくで愉快な人だったと断っておきます) ラッセルクロウも何かと問題のある俳優だけど、この人はもともと武闘派だから、今回はボクシング界で有名な名トレーナーまで雇って猛トレーニングをしたらしい。やる気満々だった様子が演技からも伝わってくる。水を得た魚のように生き生きしていた。はまり役だったのだろう。大恐慌で苦しむ人々はこのシンデレラに自分を投影させて応援していたのだと思う。こういう時代だからこそ夢は必要。シンプルイズベストの良作です。 
[DVD(字幕)] 7点(2006-07-02 21:42:02)(良:1票)
253.  おわらない物語 アビバの場合 《ネタバレ》 
八変化するアビバを救ったママサンシャインは、障害者や社会的弱者に積極的に手を差しのべる神さまのような人にみえて実はテロリストという一面も持っている。宗教を信仰する人間の優しさと残酷さの表裏を垣間見ることができる。1つだけ言えることはママサンシャインたちは、とても弱くて限りなく愚かだということです。アビバもその1人でしょう。しかしその弱さと愚かさを全面的に肯定しているのがこの映画の見所だと思う。弱さを全面的に受け入れた人間たちに嫌悪感を覚えつつ目が離せなかった。たとえばママサンシャインに属する人間が、中絶を行う医者に天誅を加えるために暗殺したのにすぐにそのことを後悔してしまい、警察に返り討ちにあって射殺されてしまう様子は呆れるくらい愚かだったし、その男が最後に「もう一度、生まれ変わりたい」と悲鳴をあげたところでそれは叶わぬ夢にすぎない・・。その男と行動を供にしたアビバもまた愚かであり、そんな彼女に共感できなかった、と言うことは簡単だけど、弱くて愚かだから人間なのだ、というメッセージがそこに確実に存在する。そういう気がしてならない。愚かなアビバが愚かな母親に言った言葉・・「人間は誰でも過ちをおかす」というメッセージがすべて。 久々に衝撃を受けた作品でした。 
[DVD(字幕)] 7点(2006-07-02 21:39:50)
254.  ボン・ヴォヤージュ 《ネタバレ》 
混沌としたフランスの映像に酔いしれました。パリ陥落でパニックになったフランス政府は刑務所を解放してしまう(実話)。。。すでに法治国家として体をなさないほど混乱しきったフランスは混沌(カオス)状態なのに、なぜか映像は美しい。ナチスから逃げるフランス人、もうぐちゃぐちゃなのに煮詰まった道路や溢れかえった道路のシーン、カミーユが海辺で小説の原稿を飛ばしてしまうシーン、雨のシーンはどれも見事な景観でした。このような混沌とした状況では、失業者も、金持ちも、殺人者も警察官も、一個の人間に戻ることができる瞬間だと思う。ある意味では混乱とは、何もかもリセットにするチャンスなのかもしれない。本作は「混乱」というなかで、逆に平和なとき以上に生き生き輝いている人々の姿が素晴らしい。  
[DVD(字幕)] 7点(2006-06-23 22:27:28)
255.  素晴らしき哉、人生!(1946) 《ネタバレ》 
自殺しようとしたら神さまが助けてくれて、無くしたお金をみんなが寄付してくれて、家族や町の人たち全員から祝福されて一件落着。今どきのハリウッドのご都合主義でも、恥ずかしくてこんな決着のつけ方はできないだろうな、と考えると逆に拍手を送りたくなる。もしかして究極のファンタジー映画でしょうか?素直に泣けました。フェリーニの「道」も内容としてはちょっと似ていて、「こんな自分でも誰かのために役立っている」と思えることは幸せなことなのでしょうね。この映画には「あなたがいなかったらこの世は駄目になってしまう、あなたは必要な人間だ」という極端にファンタジックなメッセージが込められていたように思います。基本的に人生は辛いものです。だけど夢があるから生きていける。そして映画は夢を与えてくれるから素晴らしい。まさに映画は素晴らしき哉。 
[ビデオ(字幕)] 7点(2006-06-21 18:45:42)
256.  バタフライ・エフェクト/劇場公開版 《ネタバレ》 
じつにおかしい。子供のエヴァンが記憶もなく包丁を握っていた理由は、日記を使い、タイムトラベルでやってきたエヴァンに、体と意志を一時的に支配されていたためだと思われます。父親に首を絞められていた理由も同じです。けっきょく子供時代の記憶が抜けていた原因は、タイムトラベルでやってきたエヴァンに、子供のイヴァンが操られていたからという理由になっている。 ここでよく考えてみると、日記というのは本来、子供時代の記憶が抜けている場面に戻ることができるという設定になっている。しかし最初に説明したように「過去に戻るから記憶が抜ける」と言えるのではないでしょうか。すなわち、極論を言いますと、日記が存在するから記憶が抜け落ちたのです。それなのに、記憶が抜けるからという理由で日記はつけられはじめた。ここに大きな矛盾が生じてきます。まあいいか。どうでもよいことです(だったら最初から言うなと突っ込まれそうですが)基本的には映画に矛盾があるから面白くない、とは言いません。その逆で、面白くないから矛盾が気になるのです。けっきょく自分の都合の良いように過去を変えてしまったのだからギガゾンビと一緒だっつーの。 
[DVD(字幕)] 3点(2006-06-20 18:22:49)
257.  マーサの幸せレシピ
人は感情的な動物ですから、いくら有名な料理人がつくった食べ物でも、作った人が嫌いならば、どんな食べ物のあまり美味しいとは感じないでしょう。これがブラックジャックだったならば、医者の性格がひねくれていても、腕さえ良ければ患者は治るでしょうが、料理人の場合は腕だけでは人の舌を満足させることができないのだと思います。逆にまずい料理でも愛する人の作った食べ物はどんなものも美味しく感じられるものです。料理人のマーサは心の面を改善していくことで、人間として、そしてシェフとして成長していく様子がとても自然で共感がもてました。これは料理に名を借りたヒューマンドラマなんだと思います。
[DVD(字幕)] 7点(2006-05-24 19:48:38)
258.  ランド・オブ・プレンティ 《ネタバレ》 
強いアメリカ、戦うアメリカは知っていますが、これは弱くて小さなアメリカの物語。ポールの精神状態がおかしいことには、すぐに気がつくのですが、それでも監督は執拗にポールが妄想にかられてテロリストを追いかける様子をミステリータッチで撮り続ける。あまりにも延々とポールの妄想劇を繰り返すので、多少閉口させられますが痛々しさだけは伝わってきます。しかしポールが酔ってラナのいるホテルにやってきたシーンは見事です。彼女は人の心の弱さをすべて受け入れ、包み込み、そして赦し、癒そうとする。この映画で彼女が泣いて神様に助けて欲しいと願ったものはポール叔父です。ポールは「アメリカ」の隠喩として用いられていたと思います。つまりラナは、心身ともに衰弱しきったアメリカという国そのものを助けて欲しいと神様に祈ったのではないでしょうか。久しぶりに素直に感動しました。同時多発テロでは大勢の罪のない人たちが亡くなりましたが、ラナがいた中東では、普通の人たちがその事件を知って、歓声があがったという話が恐いほどリアリティがあります。アメリカに対する憎しみの連鎖はこれからもこの国を襲うかどうかは分かりませんが、ポールの存在はアメリカそのもの。ベトナムでドロ沼に陥り、9・11で報復され、そして今も顔の見えない相手から憎しみをぶつけられていることに対して、怒りと不安を感じながら、神経をすり減らし生活している。これが大国アメリカの1つの側面だと思います。この映画は監督の思惑と外れて観られているかもしれない。でもそれで良いと思う。たしかなことは想像力を刺激させられる映画だということです。
[DVD(字幕)] 10点(2006-05-24 19:27:22)(良:1票)
259.  クローサー(2004)
男が女に比べて恋愛下手なのがよく分かった気がします。男2人は好きな女から愛情ばかり求めるばかりで自分から愛情を与えることを忘れてしまっている。しかも終始いじいじしている。めそめそするなよって感じですね。1つの嘘も許せない男たちが女にしつこく求めていたものは、「本当に自分だけを愛しているのか??」という真実。つーか愛されることに執着するから他人を愛することを忘れてしまうのです!女性がなんのために嘘をついたのか考えようともせずに労わりもしない。ただひたすら自分だけが愛されたいだけである。もう一度言いましょう・・。自分だけが愛されたいだけなのです!こういう人たちがいずれストーカーになるのでしょう。また宇梶剛士に似た俳優がいましたが、名前など知りたくもないので、あえて宇梶剛士といっておきますが、彼の粘着質さは凄まじいですね。しかも宇梶剛士!顔が暑苦しいんだよ。濃すぎます。そしてキレのあるヘタれっぷりを見せてくれたジュドー!あなたをぼんやりと眺めていたら、男ってつくづく馬鹿だと思ってきました。実際に男は馬鹿なのでしょう、クソガキなのでしょう、わがままなのでしょう。これじゃ女に勝てるわけがない。女は頭が良い。女は人を好きになる天才だ。男はそれが下手だ。そういうことがよ~く分かる映画です。
[DVD(字幕)] 6点(2006-05-18 20:07:33)(笑:1票)
260.  海と毒薬
戦国武将が人を殺しまくって成し遂げた革命は、それが異常であっても織田信長や徳川家康のことを大量殺人者だから嫌いだという人はあまりいないと思いますが、戦国武将たちも見方をかえれば、人の命の重さが分かっていないだとか、生命に関する感覚が麻痺していると言えるのです。しかし彼らが成し遂げた偉業のほうが大きいので「罪」はほとんど問題にされません。そういう事実を最初に問題提起したのは「罪と罰」のラスコーリニコフでしょうか。人類の利益のためになるならば人殺しも賞賛されるという犯罪哲学、1人殺せば殺人者、大勢殺せば悪魔か英雄になる。罪は公共の利益を生むならば帳消しにされるのか?善悪は時代の流れとともに変化するのか?「海と毒薬」は私たちがいつもは感じない「罪」を意識させて疑問を持たせてくれます。原作は「罪を感じずに生きている人間」と「罪を背負って生きている人間」を対比させて描いていたので分かりやすかった。 戦争中だから人は良心が麻痺して異常だったという見方が一般なのかもしれませんが、人はどんなときも罪を背負って生きているというメッセージもあるのではないでしょうか。この世に「罪」のない人間など誰1人いなく、罪に気がつかない人間と、罪を自覚している人間の2種類しかいないのだと思います。
[DVD(邦画)] 7点(2006-05-13 23:13:00)
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