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S&Sさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2385
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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241.  徳川セックス禁止令 色情大名 《ネタバレ》 
いわゆる東映時代劇ポルノでもかなり後期の作品。時代の進展により初期と比べるとエロ度のパワーアップはかなりのレベルに達しています、なんせにっかつロマンポルノという強力なライバルが登場していますからね。というわけで今回はカネをかけていますね、なにせヒロイン(なのかな?)におフランスからあのサンドラ・ジュリアンを呼んできました。サンドラ・ジュリアンと言えば日本でだけ人気が爆発した伝説のポルノ女優、もちろんリアルにスクリーンで観たことはなく自分は今回が初体験です。しかしよく見るとボディに関しては良く言えば日本人向きという感じの大人しさ、やはりウケたのは清純的と言えなくもないルックスなんでしょうね。初期のポルノ映画界隈ではやはり欧州系の方が日本では流行ったみたいで、ケバケバしい女優が多いUS製はまだ刺激が強かったんじゃないでしょうか。たしかにサンドラよりも一緒に登場する無名の黒人女優の方が、目を奪われるナイスバディでしたからね。そんなサンドラをお殿様に献上する豪商・博多屋を演じるのが渡辺文雄、サンドラとはフランス語で会話したりしてさすが東大卒だけあって様になっています。でもなんでフランス娘が江戸中期の日本にいるの?それはね、彼女は処刑されたフランス人宣教師の娘だからよ、っていう設定みたい。はぁ、女人禁制の宣教師になんで娘がいるの?なんて突っ込むのは野暮ってもんですよ(笑)。エロ以外にもサービス精神過剰なのか、女性の作法通りの切腹まで見せてくれます。この映画は切腹シークエンスの演出に見られるように、とてもコメディとは思えない重い撮り方をところどころでしているんです。あとバカ殿の近習若侍や途中から登場する山城新伍の様に、ふつうはストーリーの核になるようなキャラが途中で消えちゃんですよ。まさか監督は、この映画を群像劇のつもりで撮っていたのかも(笑)。 まあ基本はそのぶっ飛んだバカバカしさを愛でる類の映画ですけど、下品さくだらなさの陰に意外と製作当時の状況をシリアスにぶっこんだ脚本でもあります。バカ殿が押し付けるセックス禁止令・法令175條とは猥褻物頒布等の罪・刑法175条のパロディであるのは明白。ラストの字幕ももろにその反175条のスローガン。でもこんなおバカ映画で気勢を上げても、説得力ないんですけど…
[CS・衛星(邦画)] 6点(2022-05-09 22:53:10)
242.  勝手にしやがれ!! 成金計画 《ネタバレ》 
このシリーズもたいがいマンネリ化してるよな、と舐めていたら五作目にして突然の大変調!なんと言いますか、リミッターが解除されたようなぶっ飛びぶりとかなりシュールなセンスのギャグで、なんか鬼気すら感じてしまいました。ヒロインはシリーズ中で最豪華といえるあのWinkの鈴木早智子、トレードマークの無表情を活かした大根芝居なんですがそのキャラのバカっぷりと訳の分からなさは、これまたシリーズ随一!八億円分のヘロインを拾った(?)OLに振り回される哀川翔と前田耕陽のコンビという図式なんですけど、今回はそのヘロインを競り落とそうとするヤクザたちのキャラが立ちまくっています。ヤクザなんだからヘロインは強奪するのが普通なのに、めちゃくちゃにダンピングしながらもまるでオークションみたいに落札しようとするのが可笑しい。そのヤクザ・トリオのうちの金髪野郎は、首輪で繋がれて犬みたいに吠えるだけ、まるで人間ドーベルマンです。東京湾で捨てたヘロインが富士五湖に流れつくなどいい加減なストーリー展開は相変わらずですけど、散りばめられるギャグは今までにないセンスがあって自分にはけっこうツボでした。映像的にも遠景ショットや長回しの多用が見られ、今まで薄かった黒沢清風味が濃厚な感じがしました。ラストもパスポートを持って旅に出る哀川と前田の姿を見せてエンド、こりゃあ最終第六作では波乱の展開になるのかな?とはいえ、本作がシリーズ中でいちばん面白かったとは言っておきます。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2022-05-03 23:41:25)
243.  妖怪百物語 《ネタバレ》 
“大映京都の妖怪三部作”の第一作目。当時は水木しげるがブレイクして鬼太郎ブームの真最中、水木漫画に登場する妖怪たちを勧善懲悪の時代劇にぶっこんだいわば『大魔神』のモチーフをそのまま流用したような感じ。この1968年から69年にかけての大映京都撮影所はどうかしちゃったんじゃないかと思うほどのペースで『大魔神』シリーズ三作とこの妖怪三部作を立て続けにリリース、思えば時代劇が青息吐息の中での大映京都が放った最後の煌めきだったのかもしれません。『大魔神』が暗い基調のお話しだったのに、怪談噺ながらも唐笠お化けの件などユーモアを交えての語り口が対照的です。『大魔神』のような大掛かりな舞台設定ではないので特撮自体は地味です、それでも毛利郁子のろくろ首なんかは今観てもインパクトは大で、子供にはトラウマものでしょう。若き日の藤巻潤は痺れるほどカッコよいし高田美和は相変わらず可憐で五味龍太郎はふてぶてしいほど悪辣で、子供向けとは思わせないアダルトな撮り方も大映京都らしいところです。そして怪談映画の音楽ならこの人しかいない、第一人者である渡辺宙明もイイ仕事をしています。ラストのお約束の百鬼夜行もなんか雰囲気があってシュールでした。 この映画は『ガメラ対宇宙怪獣バイラス』と二本立てで公開されています。ガメラ・シリーズは大映東京撮影所の製作ですけど、手間のかかる特撮映画を二本立てで興行できたというのは大したもので、やはり今は亡き大映は凄い映画会社だったんですね。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2022-04-29 22:13:49)(良:1票)
244.  オースティン・パワーズ 《ネタバレ》 
いやあ久しぶりに発見いたしました、このサイトで0~10のすべてに点が入っている作品を。おまけに二作目『デラックス』三作目『ゴールドメンバー』も同じで、シリーズ全作でこんだけ評価がばらけてるのは珍現象じゃないですか。理由はまあ理解できます、要はマイク・マイヤーズが生理的に受け付けないってのが最大の要因じゃないでしょうか。これは『Mrビーン』のローワン・アトキンソンが苦手というパブリック・イメージといい勝負じゃないでしょうか。どちらも英国系のキャラという共通点があります、モンティパイソンの例もありますが日本人には英国的ギャグは合わないんじゃないでしょうか。でも自分はローワン・アトキンソンよりもマイク・マイヤーズの方が全然イイと思ってますけどね。 とは言ってもこの映画のネタのひどさは相当なもんです。自分はCS系で放送された吹き替え版で鑑賞してみましたが、いやはやここまで下品な吹き替えは初めてです、えっとこれは非難しているわけじゃなく褒めているんですよ。でも下品極まりないマイク・マイヤーズの脚本と演技に付き合わされるロバート・ワグナーやエリザベス・ハーレーには同情を禁じ得ませんけどね(笑)。観ているときには全然気づきませんでしたが、キャリー・フィッシャーやクリスチャン・スレイターはたまたロブ・ロウまでカメオ出演していたとは、まあロブ・ロウは納得という感じでしたが(笑)。あとギャグは最低ですがセットやガジェットは意外と金をかけて立派で、ドクター・イーブルの秘密基地なんかは当時の007映画にも引けをとらないというか勝っている感じすらあります。頭を捻るのはこの脚本は60年代スゥインギング・ロンドンをリスペクトしているのかディスっているのかで、『欲望』などの当時の風俗最先端映画をパロっているのは判りますけどね。 オーステイン・パワーズは60年代にマイケル・ケインが演じたハリー・パーマーをモデルにしているという解説見かけましたが、この乱杭歯のチビのどこがハリー・パーマーなんじゃ(怒)。
[CS・衛星(吹替)] 6点(2022-04-26 22:58:25)
245.  愛の亡霊 《ネタバレ》 
『愛のコリーダ』に続いてフランス資本が主導で撮られた一編、仏語原題と邦題の『コリーダ』との類似性から未だにハードコア作品と誤解されている節があるのはちょっと残念です。自分は『愛のコリーダ』は一種のゲテモノ映画だと思っているので、物語として何の繋がりもない本作の方が評価されるべきじゃないかと思っています。 茨城県で実際に起こった事件を基にした脚本だそうですが、大島渚映画の中でもピカイチと言えるぐらい映像が美しい。それもそのはず、撮影の宮島義勇を始め主要スタッフが小林正樹の『怪談』を製作した人たちなんですから。武満徹の音楽がまた絵も言えぬ独特の雰囲気を出しています。お話しは吉行和子と愛人の藤竜也が夫の田村高廣を殺して古井戸に隠すけど、その後田村の幽霊に悩まされるという割と単純なものです。前半では藤と吉行が田村を殺すに至る経緯があまりに雑なのが気にかかります、殺人から三年たっても二人の関係が変わらないというかかえって疎遠になった様な感じで、これじゃなんで夫殺しに走ったのか?って言いたくなるけど、実話って案外と雑なことが多いんですよね、まあ生身の人間のすることですから。でもそれから田村の亡霊が出現するようになってからは、俄然見どころが多くなってきます。この亡霊は自分を殺した妻の前にだけ現れるのですが、彼女を恨む様子はまったくないんです。そりゃ女房の方は恐怖のどん底ですけど、彼女の注ぐ酒は飲むし勧められれば芋は食べるしでで、こんな人の良い亡霊は珍しいです。だいたい幽霊が現生のものを飲み食いするのは初めて観た気がします。でもこの幽霊・田村はいつも寂しそうに出現するけど不気味さは高レベルで、生前は車引きだった彼が吉行を人力車に乗せて走るところなんかゾクッとさせられますよ。粗野で自分勝手な男としか見えなかった藤も、後半になると亡霊に悩まされて半狂乱になる吉行と供に苦しむようになる演技には胸を突かれました。 斜に構えたような映画を撮っていた大島渚ですが、本作はそんな彼の残した珍しい正統派の映画だと思います。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2022-04-23 22:39:31)
246.  釈迦 《ネタバレ》 
日本初の70ミリ映画として有名だけど、最近はあまり語られることのない寂しい超大作でもあります。熱心な日蓮宗(あの宗教団体ではない)信者であった大映社長・永田雄一としては、やはり“自分がやらなきゃ誰がやる”という感じのテーマであったのは確かです。イエス・キリストの生涯を描いた映画は古今で数多製作されていますけど、マホメットを画像・映像化することがご法度であるイスラム教は別にしても、お釈迦様を正面から映画化したのは浅学ながら本作しか知りません。 製作費が七億円というのは確かに破格の超大作で、現代の貨幣価値でいうと何十億ということになりますかね。でも七億円というのは永田雄一お得意の大ぼらで、実際には一億七千万程度というのが真相みたいです。70ミリ撮影と銘打っていますが『スパルタカス』で使われた35ミリビスタビジョン・カメラをパラマウントから払い下げてもらい、それに圧縮レンズを装着して撮影して現像時に70ミリに焼き付ける“なんちゃって70ミリ”方式だったみたいです。でもそのカメラは重量860キロもある代物で、おかげで見せられるのは演劇公演の舞台映像みたいに動きが極端に少ない映像になってしまっています。 美術やセットには確かにカネをかけているのは判りますが、問題なのは脚本です。この映画では本郷功次郎演じるシッダ太子よりもダイバダッタの勝新太郎の方が目立ちすぎちゃってるんですよ。なんせ本郷は開始二十分あまりのところで悟りを開いて仏陀になってからは、影や遠景で存在を示しているだけでまったく画面に登場しないんですから!まるでマホメットの映画を見せられているみたいです(笑)。対する勝新は座頭市になる直前のキャリアで、『マグマ大使』のゴアみたいな風貌の悪役王子を熱演しています。ストーリー自体も史実を改変しているのは良しとしても、釈迦入滅後のエピソードまで同時代の出来事としたりして、要は詰め込み過ぎなんです。出演者はまさに大映オールキャストで豪華絢爛、雷蔵の義父である市川壽海まで登場するのは珍しい。 まあ言ってみると特撮スペクタクルは期待するほどでもなかったし、文字通りの“説法映画”というわけでした。これを70ミリスクリーンで観ればまた印象も違ってくるのかもしれませんが、現在70ミリスクリーンで上映できる映画館なんて日本にあるんかね?
[CS・衛星(邦画)] 5点(2022-04-21 11:10:55)
247.  恐怖の報酬【オリジナル完全版】 《ネタバレ》 
歴史的傑作をド変態監督ウィリアム・フリードキンがリメイク、編集権を持っていなかったので三十分もカットされたバージョンで劇場公開されて批評家からは酷評、おまけにこれまた歴史的大ヒット作『スター・ウォーズ』とモロにぶつかって興行的にも大惨敗、思えばこれ以降彼はハリウッドの裏街道を歩くハメになってしまったのでした。この人、出世作は『フレンチ・コネクション』だしジャンヌ・モローと結婚していた時期もあり、おフランスには思い入れがあるみたいですね。 ところがどっこい、この完全版を観てみるとオリジナルとは違ったテイストではありますが、決して引けをとらない傑作じゃないですか。まずニトロを運ぶ運命になる四人の男たちが転落してゆく顛末を、ソリッドに見せてくれる冒頭20分がフリードキン風味で展開するのが良い。彼らが流れつく地もオリジナルのような乾燥した土地ではなくスコールの降りしきる密林地帯、油井に通じる道に至ってはトラックを走らせるなんて無謀の極みのジャングルの中の獣道にすぎません。劇中で二回ある橋を渡るシークエンスではどちらの橋も壊れかけの吊り橋で、良くこんな撮影が出来たなって呆れてしまいました。そこは“映画を撮る狂人”とハリウッドでも恐れられたフリードキンの面目躍如、おまけに脚本を書いたのが『ワイルドバンチ』のウォロン・グリーンですからねえ。オリジナルでは巨石だった道路をふさぐ巨木をニトロで吹き飛ばすシークエンスも、四人のなかにかつての爆弾テロ犯がいるという納得がいく脚本なのもさすがです。油井火災発生で住民が暴動を起こしたりするのもリアルです、そりゃあんなに酷い環境じゃ暴れたくもなりますよ。 フリードキンですから50年代のオリジナル版と違って情緒で引っ張るような意図は毛頭なく冷たいタッチで物語は終息するのですが、ラストでロイ・シャイダーがダンスをするところには、オリジナルへのリスペクトが感じられます。オリジナルでイヴ・モンタンを破滅させたのもワルツのリズムでしたからねえ。そしてロイ・シャイダーを追ってきたマフィアが店に入ってくるアン・ハッピー・エンド、信じられないことに短縮バージョンではここがカットされているとのこと、そりゃ酷評されたのも当然かもしれませんね。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2022-04-17 21:55:29)
248.  マウス・オブ・マッドネス 《ネタバレ》 
途中でプロットがずれてきて迷走しがちなカーペンター映画の中では、安定している部類に入るんじゃないかな。まあ脚本は彼が書いたわけではないし、お話し自体がラヴクラフト風のグチャグチャでメタフィクショナルな展開なので、カーペンター親父のツボに上手く嵌った感はあります。 私はラヴクラフトを読んだことはないですけど、『マジソン郡の橋』みたいな屋根が付いたトンネルみたいな橋を渡るとそこは異世界だった、といういかにもな雰囲気は大好物です。そこは小説の中の町で主人公も実は小説に描かれた登場キャラ、そしてラストでその小説の映画化作品を観ることになるが、それはこの『マウス・オブ・マッドネス』の冒頭シーンだったというメタなストーリーテリング。主人公を演じるのがサム・ニールだけに、超合理主義者の男が狂ってゆく演技はもう彼の十八番です。登場するクリーチャーもチラ見させるだけで詳しい説明描写もないのが、かえって怖さが増してきますね。正体不明の作家がユルゲン・プロホノフというのも、ツボに嵌ったキャスティングだったと思います。でも正直言ってこの映画でいちばん背筋がゾワッとしたのが、真っ暗闇の中で走っている金髪の老人がこぐ自転車で、これは同感な人もいるんじゃないかな。 この映画で唯一笑わせて頂いたシーン:サム・ニールが精神病院にぶち込まれる冒頭のシークエンス、院内放送で流れる『愛のプレリュード』に合わせて患者たちが合唱し始めてサム・ニールが絶叫「よせよカーペンターズなんて!」、なかなかの楽屋オチでした(笑)。
[ビデオ(字幕)] 7点(2022-04-14 23:47:41)
249.  アフリカの女王 《ネタバレ》 
今観ても、アフリカ・ロケの映像は一見の価値ありです。何度も急流に翻弄されるアフリカの女王号はホントに船を流してなかなかの迫力ある映像ですが、もちろんボギーやヘプバーンはもちろんスタントも乗っていない無人船なのはミエミエです。これらは名カメラマンであるジャック・サーティースの匠の技なんですが、肝心のジョン・ヒューストンは現場をほったらかしてハンティング三昧のご乱交、つまりこれがイーストウッドの『ホワイトハンター ブラックハート』の元ネタというわけです。 序盤は割とシリアスに始まるけど、ボギーとヘプバーンの女王号での河下りが始まるとたちまち大人のラブコメになっちゃうのが面白い。ボギーは本作でオスカー受賞したわけですが、やはり彼は『カサブランカ』みたいな気障なキャラより粗野で豪快だけど気の良い漢を演じた方が合っています。でも彼のフィルモグラフィには、このパターンの役を演じた例は意外と少ないんです、まさに本作でのアフリカの女王号船長こそが彼のベスト・アクトだったのかもしれません。ヘプバーンも宣教師の器量の悪い妹というのは、彼女にはうってつけだったんじゃないでしょうか。でも気位の高い英国女がボギーのような酒浸りの男に惚れちゃうのはまあイイとしても、ほとんど揉めることもなくまるでJKのラブコメみたいにラストまでイチャイチャするというのは、なんか甘い脚本のような気もします。まあ原作が、ホーンブロワー・シリーズで有名なセシル・スコット・フォレスターの小説だというところも驚きですがね。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2022-04-11 20:46:31)
250.  デジャヴ(2006) 《ネタバレ》 
職人監督トニー・スコットが撮った唯一のSFもの、原点がSFといえる兄貴のリドリーとは対照的。「ほんとはこの映画はSFにしたくなかったんだ」とコメンタリーで語っているそうなので、ある意味でSF嫌いだったんじゃないかな。でもジェリー・ブラッカイマーが関わっているにしてはしっかりと観れる佳作に仕上がっている、これはやはりトニー・スコットの力量の成せる業でしょう。そして“トニー・スコットとデンゼル・ワシントンのコンビに外れなし”という定理を実証してくれている一編でもあります。 冒頭から暫くはテロが絡むポリス・アクションかというストーリーテリングなんですが、FBIが運営する秘密の監視システムが登場してからは俄然SF風味が濃厚になってきます。あの“4日前の過去から監視できるシステム”、まるでグーグルアースのストリートビューを観ているみたいで、製作時期を考えると斬新な映像かなと思います。しかし壁は透視できるしアングルやアップも自由自在で音声まで聞けるって都合よすぎ、まあSFだからいいか。「なんで4日前?」という疑問もとうぜんありますが、現在人類が観測している一億光年離れた星の光は一億光年前に発せられたものであるように、量子力学的には過去を見るだけならタイムマシンを造るより実現性があるそうです。 この映画のタイムトラベルでユニークなところは、送られる先で人間が心肺停止状態で出現することで、なんかあり得そうな感じがします。問題はタイムスリップした先で同一人物が同時間に存在してしまうということで、“一つの原子内で二個以上の電子が同じ状態で存在できない”といういわゆるパウリの排他律に反するというパラドックスをいかにクリアするかというのがタイムトラベル映画脚本の腕の見せどころとなるわけです。本作は『12モンキーズ』ほど巧みではないですが、なんかフワッとすり抜けた感はありますね。死体置き場で携帯が鳴る場面、鳴っているのは死体袋に入っているダグの携帯ではないかと思わせるシーンがあります。でもタイムスリップのときには下着だけ何も持っていかなかったはずで、思わせぶりな演出ですがダグの携帯ではないということに理論的にはなるでしょう。気になるのはダグがクレアの部屋で見る「君は彼女を救う」というメッセージで、テロが失敗した時空でダグがこのメッセージを作成しているので、テロが起こる世界でダグが見るはずはありません。やはりこれは、映画では描かれていないけどタイムスリップは一回ではなく二回以上行われたという解釈が正しいのでは。それはタイムスリップをするときにダグが発する、「これが二度目だとしたら?」というセリフの謎を解くカギになるのではないでしょうか。 ということで『TENET テネット』ほどではないにしろ回収されない伏線もあるけっこう複雑なお話しで、時間をおいてもう一回観てみたいと思っています。しかし本作の15年後にデンゼルの息子ジョン・デヴィッド・ワシントンが『TENET テネット』でより難解なタイムトラベルもので主演するとは、この親子のタイムスリップ映画との不思議な縁を感じてしまいます。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2022-04-10 11:12:52)
251.  ザ・スピリット 《ネタバレ》 
原作はフランク・ミラーじゃないそうですが、出来上がりはいつもの“フランク・ミラー・ワールド”というか“『シン・シティ』ワールド”という感じですかね。まあ言っちゃえば“ハードボイルド・コメディ”というジャンルになるかと思います。主人公がガチガチのヒーローなのに女癖が悪いというのが、アメコミ・ヒーローものとしては珍しいパターンじゃないでしょうか。ストーリーの方は“ヘラクレスの血”やローレライを出してきて雰囲気を盛り上げようとしていますが、正直なにが言いたいのか判りませんでした。たしかに出てくる女性キャラがすべてフランク・ミラー好みのナイスバディ美女ばかりというのは、いいサービスです。とは言っても、そこら辺はすべてサミュエル・L・ジャクソンの怪演に持っていかれてしまった感は否めませんけどね。サミュエルとスカヨハがいきなりナチス・コスプレで登場するシークエンスはほんと理解不能でした。しかし黒人がナチスの制服を着ると、ほんと似合わないものですね。そして爆死して粉々になったスカヨハが回収したサミュエルの体の一パーツは、やっぱりオ〇ンチンですかね、こんなところでベタな下ネタぶっこんでくるなよ! あのラストではどう観ても続編を撮る気満々という感じでしたが、幸か不幸か14年経っても実現していないみたいなのは、まあ当然と言えば当然でしょうね(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 4点(2022-04-08 20:45:42)
252.  ザ・バニシング-消失- 《ネタバレ》 
なるほど、サイコパス気質のキューブリックが怖がるぐらいですから、やはりこの映画の禍々しさはタダもんじゃないという証左になるでしょう。しかしこの真綿で首を絞めてくるような恐怖の盛り上げ方は、たしかにトラウマ級です。オランダの映画にはこういったヤバさや不快感といった嫌な後味が残る作品が見受けられますが、ヴァーホーベンなんて可愛く感じてしまうレベルでした。 反社会性サイコパスの犯人像がリアル過ぎて恐ろしい。二人の娘を持つ理科教師、夫婦仲はごく普通で性格は几帳面で高血圧を気にする一見平凡な中年男。この男の恐ろしいところは、何度も失敗しながらもなんで女性を狙うのかが理解不能なこと。ナンパが目的なら判るけど、失敗から教訓を得てひたすら犯行手口を改善させてゆく執念には、淡々と見せられるだけにゾッとするしかないです。“キーホルダー”や“閉所恐怖症”といった伏線が戦慄のラストで回収されるところも見事です。また失踪したサスキアを探し回るレックスを執拗に狙う心理も、常人には理解しがたい。でも彼なりのレックスを追い詰める作戦は理にかなっており、5回も匿名手紙の呼び出しに応じるレックスから彼の心理を深く理解するまでに至る知性は驚異的ですらあります。レックスはこうなると蛇に睨まれたカエルも同然、理性は激しく警告しているのに催眠術にかけられたように睡眠薬入りコーヒーを飲んでしまうのは人間心理の闇を見せられたような気分です。これはオーウェルの『1984』的な現在の権威主義国家が、民衆を操る手法に通じるものがあるかと思います。 やはりあの絶望のラストは、『キル・ビルvol.2』のユマ・サーマンに影響を与えたんでしょうか、タランティーノなら本作を観ている可能性は十分ありますね。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2022-04-05 22:56:22)
253.  勝手にしやがれ!! 逆転計画 《ネタバレ》 
懲りもせずにまたまた観てしまったシリーズ第四作、やはり今回も同パターンのストーリー展開です。哀川翔が惚れる今回のマドンナはタバコ屋の一人娘。今までにない真面目な娘で観ているときは「いよいよ新パターン展開か?」と思いきや、期待を裏切ってくれません、娘の競馬狂いの父親が登場してからは毎度おなじみの怒涛の展開に。だいたい、哀川翔がなぜか行倒れるヤクザの持っていた1千万円を盗むところからして、「なんじゃ、こりゃ?」という脚本。そしたらあの真面目な娘が父親もたじろぐ無謀ギャンブラーにキャラ変して、なんと1千万円を1レースにぶっこんで溶かしてしまう。まあこの1千万円が盗み盗まれて持ち主が転々とした挙句に、中央競馬会に巻き上げられたというわけです。ヤクザがカネを取り戻そうと追ってくる状況で、なぜか前田耕陽が買っていた馬券が大穴的中ですった1千万円が戻ってくるという、相変わらずいい加減な脚本です。そしてこれもお馴染みのいい加減な展開でエンド、ちっとは工夫しろよ、黒沢清!でも今回は父親役の河原崎健三がとぼけた良い味を出していたのは、良かったです。 今回気が付きましたが、このシリーズはビデオ・スルーのVシネマじゃなくていちおう劇場公開されていたんですね。さすがバブル時代の余韻が感じられる90年代、邦画界にはまだいい時代だったのかも。
[CS・衛星(邦画)] 5点(2022-04-03 10:46:28)
254.  ある愛のすべて 《ネタバレ》 
『ある愛のすべて』、まず邦題からして如何なもんでしょうか。これは言わずと知れた70年の『ある愛の詩』のパクり、まあこの大ヒット映画とは似ても似つかないグチャグチャの三角関係の愛憎劇なんですからねえ。 セレブな建築家のマイケル・ケイン、その有閑マダムを絵に描いたような豊満な妻がエリザベス・テイラー、ケインが浮気のつもりで手を出したがだんだんマジになってゆくブティック・オーナーがスザンナ・ヨーク、というのが基本的な登場人物、というかこの三人だけで進行するストーリーです。この頃のケインは男の色気が絞ったら滴りそうな絶頂期、そのキャラ付けは60年代の出世作『アルフィー』の主人公がセレブに成り上がったという感じ。そのケインとリズの夫婦喧嘩が凄まじく、これを延々と見せられる前半はほんとうんざりさせられます。リズは『バージニア・ウルフなんかこわくない』を彷彿させる役柄、仲の悪い夫婦の悪妻はもはや彼女の十八番と言えそうな域に達しています。浮気相手のヨークにも面と向かって悪態をつくし、素のリズも口が悪いことでハリウッドでは有名だったので、けっこう本人も愉しんでいたんじゃないかな。でもそれを見せられる方としては愉しめるかと言うと、そんなわけないですよね。ケインもロールスロイスを乗り回す身分ながらリズのクリーニング代金にも文句をつけるケチ臭い男、小物感は否めません。 大喧嘩を繰り返した挙句ヨークとアパートを借りてリズと離婚するという展開なのに、リズがケインには未練たっぷりでお話しはすんなり進行せず行きつ戻りつ状態、挙句の果てにはリズがリストカットして自殺未遂という波乱のストーリー。「こりゃ、いったいどういうオチになるの?」と呆れているとヨークがリズに打ち明けたある秘密から予想外の展開になり、ラストカットのケインの表情と同じく観ている方も啞然茫然となる幕の閉じ方でした。 けっきょく誰にも感情移入できず、大人の恋愛というレベルのお話しにも達していない。三人ともキャリアに脂がのりきった時期の作品なのになんでこんなに埋もれた映画になってしまったのか、そりゃ観れば納得できますよ(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 3点(2022-03-29 11:20:06)
255.  TENET テネット 《ネタバレ》 
いやぁ、こんなに手こずる映画は久しぶりでした。よく難解な映画だと言われますが、私には“何が起こっているのかさっぱり判らない”映画としか言いようがないです。鑑賞後に物理学者が書いた解説を読みましたが、TENETという言葉と登場人物や組織の名称は、ヴェスヴィオ火山の噴火で全滅したヘルクラネウムの遺跡で発見された謎のラテン語の回文“SATORスクエア”がネタ元らしいです。その解説によると、この映画での時間の逆行は量子力学におけるエントロピー理論に基づいているそうですが、私にはもう珍ぷんかんぷんでした。物理学者からアドヴァイスは受けているでしょうけど、量子力学やラテン語回文まで駆使してこのストーリーを考えつくとは、クリストファー・ノーランの知性は半端ないです。 デンゼル・ワシントンの息子が名もなき“主人公”を演じる基本シークエンスは、まるで007の一話みたいな派手な展開。でも話がややこしいうえに展開が速すぎて、もう序盤から置いてけぼり状態です。なんせ私、中盤のカーチェイスではどうして敵(?)の車がバックで突進するのか理解していなかったぐらいですからね。またタイムトラベルの道具が回転ドアというのは斬新すぎでしょ、歴代タイムトラベル映画の中でももっとも地味なタイムスリップじゃないでしょうか。そしてラストの戦闘は、赤の順行組と青の逆行組が入り乱れているのでもう脳みそがパンクするかと思いました。 けっきょく最後は“主人公”の正体が明らかになるのですけど、例えれば『ターミネーター』のジョン・コナーが自覚のないうちにカイル・リースの役目を果たしていたってことなんですかね。でも“主人公”自身がタイムスリップしているわけではないので、ちょっと違うか。それにしてもノーラン、ほんと時間軸をいじる映画が好きですね、これは彼のライフワークなんでしょうね。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2022-03-28 22:44:12)(良:1票)
256.  野獣死すべし(1980/日本) 《ネタバレ》 
いやはや、本作の松田優作を観るたびに、ほんとに日本映画界は惜しい俳優を若くして失ってしまったな、と痛感させられます。もうあの眼が怖すぎです。役作りで減量して奥歯を四本も抜いたそうで、こりゃ完全にロバート・デ・ニーロかクリスチャン・ベールの域に達しています。頭のおかしいキャラを演じさせたら右に出る者がいないデ・ニーロとの共通点を感じますし、彼はきっと長生きしていたら“日本のデ・ニーロ”と呼ばれる存在になったと思います。リップ・ヴァン・ウィンクルのシークエンスなんかは、演技と判っていても相手役の室田日出男は怖かったんじゃないかな。もっともこのシーンのカメラアングルを見ると、松田優作を正面からとらえる映像では向かい側の座席に座っているはずの室田日出男は映さないし、なんかそこには誰もいなくて松田が一人芝居しているようにも見えます。 しかし原作ものとしては?な部分だらけで、大藪春彦の『野獣死すべし』とはまったく別物だと言い切っても差し支えないでしょう。こりゃ大藪春彦が怒ったというのは当然でしょうけど、彼が怒ったのは脚本を書いた丸山昇一に対してで、当時メディア・ミックス戦略で大藪春彦作品を売りまくってくれた角川春樹にはさすがに何も言えなかったみたいです。監督がまた“カネがかかった映画になればなるほど粗が目立つ”村川透ですから、彼特有の雑な演出のおかげで冗長かつ意味不明なところが多すぎ。たしか泉谷しげるもちょっとだけ出ていたけど、ほとんどエキストラみたいなもんで、なんで彼を引っ張ってきたのか理解不能でした。この人はこういうのがカッコよいと確信しているけど、劇中何ヵ所かで使われている長回しシーンもセンスのなさが感じられ、相米慎二の足元にも及びません。 この映画のラストについては個人的には伊達邦彦の夢オチだったようにも取れる気がして、そりゃ大藪春彦が怒るのはムリもないと思いますよ。
[CS・衛星(邦画)] 4点(2022-03-27 11:51:04)
257.  13日の金曜日(1980) 《ネタバレ》 
『13日の金曜日』シリーズと言えばジェイソンが暴れまわるお話しだと思いきや、この第一作ではジェイソンのおかしくなった母親が殺しまくる犯人だという設定なんですね。最後に登場するジェイソンはこの設定では死者、つまりスピリチュアルな存在だったというわけで、単なるモンスター映画と成り果てた続編群との違いは大きいんじゃないでしょうか。このシリーズは “『13日の金曜日』フランチャイズ”とも称されているそうですが、『ソウ』シリーズなんかと違って毎回の監督・脚本家・製作者が異なっているので“フランチャイズ”とは言い得て妙かと思います。 カーペンターの『ハロウィン』と並んで70年代から80年代にかけてのスラッシャー・ジャンルのパイオニア的な立ち位置ですけど、製作者の発想といいストーリーと言いほぼ『ハロウィン』のパクりみたいなもんです。それも製作者や監督たちの出自もあり、B級映画の域を脱していないのも確かです。尺を稼ぐためか登場人物たちの何気ない意味もない行動を長々と見せたりして、これも監督の力量のなさが成せる技なんでしょう。俳優たちもジェイソンの母親役の他は若手の安い無名俳優ばかり、その中でケヴィン・ベーコンだけがビッグな存在になれたのは目出たい事です。スラッシャー・シーンは若き日のトム・サヴィーニが担当、ちなみにラストのジェイソン登場も実は彼のアイデアだそうで、まあ当時は『キャリー』のパクりだとしか評価されなかったみたいです。 はっきり言えばほんと大したことのないB級映画なんですけど、インデペンデント系としては初めてメジャーが配給したことは、本作の最大の功績なのかもしれません。「映画界にはびこる最も卑劣な生き物」と監督ショーン・S・カニンガムを罵倒した批評家もいたそうですが、いくら何でもそりゃ可哀そうです。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2022-03-22 19:44:43)
258.  座頭市(2003) 《ネタバレ》 
21世紀にもなって、これほど「め〇ら」というセリフが多用される日本映画が観れるとは、もう嬉しくなっちゃいます(笑)。「北野武が座頭市を撮る」と聞いてびっくりしたもんですが、観てみれば勝新太郎の『座頭市』とは似ても似つかず、“リブート”というよりも“リコンストラクション”と呼ぶのが相応しいぶっ飛びぶりでした。その強さはもう超能力者レベル、だいいち座頭市が金髪というところからしてどうかしています。自分は本作の特徴は“リズム”をとことん重視した撮り方じゃないかと思います。タップのリズムで野良仕事する百姓など時には意味不明なところもありますが、シーンが切り替わるタイミングなんかも含めて快調なリズム感はなかなか心地よい感じすらありました。まるでポリウッド・ムーヴィーみたいなラストはちょっとやり過ぎ感すらあり賛否が分かれていますが、自分は好みです。初めて観たときはまだ『踊るマハラジャ』などのポリウッド・ムーヴィーを知らなかったので、そりゃびっくりしましたよ。このセンスならダンス・ミュージカル映画を撮らせたら面白いんじゃないかな。思うにこの映画での座頭市は狂言回しみたいな役柄で、浅野忠信の浪人夫婦や盗賊一味を追う姉弟のエピソードがメインなのかなとすら思ってしまいます。だとすると、このサブストーリーの描き方(とくに浅野忠信パート)が弱いのは気になるわけで、ここが本作の最大の弱点なのかと感じます。またラストで座頭市の座頭市たる所以を否定する驚愕(?)のオチが用意されているわけですが、これなんかも勝新版『座頭市』のファンから嫌われる理由なのかもしれません。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2022-03-20 17:30:17)
259.  アイ・スピット・オン・ユア・グレイヴ 《ネタバレ》 
上映禁止とまではいかなかったけど、日本ではポルノ映画なみの扱いで公開された伝説のクソ映画『発情アニマル』のリメイク。オリジナル版の監督メイル・ザルチが製作総指揮だけど、30年たって『ソウ』シリーズがヒットして悪趣味なゴア描写に対する世間の寛容度が緩くなってきたので、「現代のエグさでリメイクしたら受けるんじゃね?」とビジネスチャンスを発見したってのが製作経緯だと思う、たぶん。たしかに本作はシリーズ化されたぐらいだからそこそこヒットしたみたいで、ザルチの思惑は見事に的中したみたいですね。 自分は未見ですけど、『発情アニマル』とは逆でレイプ・シーンよりも殺害・拷問シーンの方に比重が明らかに置かれています。というか、やはり『ソウ』シリーズの影響が強いみたいです。極悪非道なシェリフはオリジナルにはいないキャラみたいで、犯人5人の中で唯一の家族持ちで失うものが大きい存在だからストーリーの盛り上げには一役買っていたと思います。そして彼の衝撃の最期、『ソウ』でも滅多に観れないエグさです。シェリフのシークエンス以外はほぼオリジナル通りみたいですけど、一応普通レベルの監督・スタッフが関与しているのでそこそこの水準には達しているかな。と言っても真面目に撮れば撮るほど陰湿なカタルシスしか残らず、これは元ネタがあれだけに致し方ないって感じでしょうか。主演女優に、いろんな面で魅力が乏しかったのも難点でした。
[CS・衛星(字幕)] 4点(2022-03-16 22:05:52)
260.  妖婆・死棺の呪い 《ネタバレ》 
ゴーゴリの中編小説『ヴィー』の映像化。社会主義リアリズム・唯物史観のソ連で製作された珍しいホラー映画、まあ文豪ゴーゴリの作品の映画化だからお目こぼしをいただいたって感じなんでしょう。ゴーゴリにはこういうフォークロア的な怪奇譚を題材にした作品が散見され、言ってみれば小泉八雲の『怪談』の一エピソードを映像化したようなもんです。当初若手の監督が映像化を手掛けたが上手くいかず、ソ連発のカラー映画『石の花』を撮った大御所アレクサンドル・プトゥシェンコが引き継いで完成させました。 神学生が夏休みの帰郷途上で道に迷って気持ち悪い老婆の家に泊めてもらいます。老婆は夜中に神学生に迫ってきてあわや貞操の危機かと思いきや、実は彼女は魔女で神学生に馬乗りして空中浮遊を愉しみます。ここは原始的な合成特撮ですが、幻想的な雰囲気は良く出ていました。またここまでのストーリーテリングはコメディ調で、民話的な軽快さがあります。地上に降り立った魔女に神学生は反撃しこん棒で滅多打ち、瀕死になった魔女は若い美女に変身、彼はビビって逃げます。この魔女転じての美少女が確かに目を瞠るような美形で、これは眼福です。学校に逃げ帰った神学生は、校長から死にかけている地主の娘が彼を指名しているので、最期の祈祷をして来いと命令されます。行ってみると娘はすでに死んでおり、そして彼がボコボコにしたあの美少女でした。そして父親から三晩連続の祈祷を依頼されますが、それは恐怖に満ちた三晩になるのでした…ここからは死棺から夜な夜な蘇る娘と学生の対決になりますが、結界を造って籠ったので娘には中に入り込むことはもちろん彼を視認することすらできません。しかし三晩目には彼女は霊界から悪鬼と妖怪ヴィーを呼び込んで攻めまくってきます。やはりこの映画がカルトとして映画史に残ったのは、この悪鬼とヴィーのビジュアルのおどろしさでしょう。短いシークエンスでしたが子供が観たら悪夢に悩まされるのは必定でしたが、ヴィーの造形が水木しげるの描く妖怪みたいだったのには苦笑でした。  ランタイムも70分余りと中編でしたが、フォークロア調の語り口が印象的な秀作です。原作の舞台もロケ地もウクライナで、登場人物たちもウクライナ・コサックです。現在この地がとでもないことになっていると思うと、心が痛みます。
[DVD(字幕)] 7点(2022-03-14 02:18:41)
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