3201. 怪竜大決戦
とりあえずこのテの映画は、ヘンテコな所にツッコミを入れながら観るのがひとつの楽しみではあるのですが、そういう意味では本作はかなりの強敵。細大漏らさずツッコミを入れるのは至難の業で、本気で取り組んだ日には、もう休むヒマもない程。いわばツッコミどころのみでできたような映画。でも若き日の松方弘樹は元気いっぱいに演じている。観てて涙が出そうです。本当にいい人だなあ。大蛇丸を演ずる大友柳太朗はさらにキレてる。怪演ではなく、敢えて快演と言うことにしましょう。さらには小川知子も・・・いやこれは少々イモっぽいか。この映画、とにかくふんだんにSFX(ではなくて「特撮」)が盛り込まれてますが、その悶絶しそうな程のクオリティはまさに手作りの味わい。ある種の達観すら感じられるような感じられないような。でも最後の竜とガマの対決は、大掛かりなミニチュアセットを用いたなかなかのもの。前半で首をちょん切られても平気だったイカズチ丸が、クライマックスではあっけなくやられて「無念~」とか言ってるのはなんだか情けない。まあでもいいや。この映画なんだか観てて楽しいもん。 7点(2004-06-27 01:51:40) |
3202. 仕立て屋の恋
シムノンの原作は、描写が特に細かいというわけではないものの、生々しさがあり、読んでいる最中、イメージが強く喚起されるので、改めて本作を観ると、なんだかリメイク作品を観ているような妙な気分になりました。が、原作そのままではなく、原作は。イール氏と尾行刑事のやりとりなどがもっと描かれていて、サスペンス色を出していますが、本作の方は、そういった部分は抑え気味。その分、幻想味が増していますが、「作られた不健康さ」みたいなのが垣間見えるのがちょっととまどうところ。ところで!イール氏の覗きのシーンでは、ブラームスのピアノ四重奏曲第1番の第4楽章の一部が繰り返し、執拗に流れます。本当にシツコイです。私は上記の曲が昔から大変に好きです。私は好きな曲は頻繁には聴きません。時間の流れとともに音楽もまた流れ去ってしまう儚さ、それこそが音楽の魅力であり、あまり頻繁に聴くとその魅力が台無しになる気がするから。それに好きな曲は頭に入っているから、それで十分なのです。しかるにその曲をこれだけしつこく(無意味に)繰り返されると、なんだか嫌な気分に。この曲のこの引用部分、特筆すべき大変美しいメロディであり、おそらく「それゆえに」ブラームスはこのメロディを曲の後半で再現する際には敢えて不完全な形でしか出さなかった(惜しげもなく!)。これが「音楽」の凄みだ。「映画」というジャンルは、この刹那的凄みとは無縁なのか?このように「好きなもの」を「好きなだけ」垂れ流すものなのか?そうでは無いと信じたい。 6点(2004-06-26 03:52:58)(良:1票) |
3203. ファンダンゴ
これ、アンブリンの映画ではありますが、何だか自主制作映画っぽい雰囲気。いかにも「金はなくとも工夫とアイデアさえあればOK!」みたいなノリで、カメラにやたら才気がみなぎってます、が、おそらく撮影の設備や技術がそれに追いついていないため、何となく不安定。でまあ、自主制作っぽいと言うと、何となく独りよがりでキザな映画を想像するかもしれませんが(「ゴダールみたいな映画なら自分も作れる」と思っている奴は結構いる)、この映画に関してはそんなことは全然なくって、しっとりした部分もある一方で、ドタバタギャグもたっぷり盛り込んだ痛快な作品になっています(もちろん自主制作映画にはこういう楽しいのも沢山ある)。何と言ってもパラシュート学校のくだり、可笑しいのなんの。またここでの選曲が振るっていて、背景に流れる音楽はなんとショスタコーヴィチの交響曲第8番。あまりにふざけていてかつピッタリな選曲にめまいが。しかも、第3楽章~第4楽章冒頭を(おそらく)そのまま使用しており、むしろ映像の方を音楽に合わせてる!降参です。パラシュートのコーチがまたトンデモないオヤジで(ちょっとマッドマックス2のジャイロ・キャプテンを思い出す)、ゴーカイな空中アクションも見せてくれます。昼間はバカやって、夜のシーンはしんみりと。これは素敵な映画だと思います。 8点(2004-06-26 03:10:46) |
3204. アタック・ナンバーハーフ
こ、この世のものとは思えん・・・。まさに一発企画もの、ギャグは冴えないし、試合のシーンはしょぼいし・・・。でも、チャイって、何だか、川崎麻世似でステキよねぇ(←感化された。) 6点(2004-06-26 02:46:15) |
3205. ローズ家の戦争
ロマンシング・ストーンの続編はナイルの宝石だというのが定説だけど、ホントはローズ家の戦争こそが続編ではなかろうか?要するにですね、冒険の末に愛が芽生えてハッピーエンド、なんてのは映画だからこそ許されるわけで、実生活ではその後にながいながい倦怠期がバッチリ待っている。あの2人だってそうなんだよ。そうそう、二人の馴れ初めについての設定は、珍しい観音像(我々日本人が見ても珍しい)じゃなくて、いっそ、巨大なエメラルドにしても良かったゾ。ま、それはともかく。ストーリーの方は、タイトル通り2人の夫婦喧嘩に終始してしまって十分に拡がりきらず、やや単調な印象もありますが、それを補うのが、楽しいカメラワークの数々。こういう滑稽味のある映画には非常にマッチしております(ただし、その後こういう手法がスタンダードになってきてしまったので、今の観点からすると、別に珍しくもなく、むしろしつこいように思えるかもしれませんが・・・)。監督のダニー・デビートという人、なかなかやりますねえ。噂では彼には双子の弟がいるが、優秀な遺伝子は兄ダニー・デビートが全て奪ってしまい、弟はただの筋肉のカタマリになってしまったそうです。 7点(2004-06-26 02:36:25) |
3206. どら平太
お蔵入りになっていた「四騎の会」共同脚本作品がついに日の目を見る!というわけなんでしょうが、市川崑監督はまるで「あくまでこれはオレの映画だ!」と言わんばかり、まるで犬がションベンで電柱にマーキングしていくがごとく、遠慮会釈なく市川色に染めて行っております。時に艶っぽく、時にバカっぽいこの映像は、誰が何と言おうと市川映画。鶴太郎の役どころも何だか、今にも手をポンと打って「ヨシわかった!」なんて(加藤武の代わりに)叫び出しそうではないですか。さて一方、主人公のどら平太を演じるは役所広司・・・この配役は難しいですねえ。役所さんがやるとどうしても「ホントはきっとマジメな人なんだろう」みたいに思えてきて、あまり意外性がない。ま、でも楽しく観られたので、OKです。ただ、殺陣はちゃんとやって欲しかったなあ(スローなんか使ってカッコつけたのはちょっとガッカリ)。 8点(2004-06-26 02:07:10) |
3207. 怒りの荒野
オープニングがカッチョよい。というか、ダサい。というか、ものすごーくアタマ悪い。シビレた。ジュリアーノ・ジェンマ演じる主人公は冴えないお掃除ボーイ、観てるとどうしても、悪魔の毒々モンスターにおけるメルビン君を思い出してしまう。しかしそこに現れた、渋くてダサくてカッチョよいオヤジ、リー・ヴァン・クリーフ! ジェンマにガンマン心得十か条を伝授していくのだが、これがどうも、非常に成り行き任せというか、テキトーにその場の思いつきで言ってるとしか思えない。でもジェンマは(何故か)メキメキ腕を上げていく。すばらしい。映画の内容的には、それなりにアクションを交えて飽きさせないものの、あまりまとまりは感じられない。俄然盛り上がるのはやはりラスト。両雄並び立たず、何はともあれ決闘!であるが、ジェンマが手にする「ドク・ホリデイの銃」などという味のあるギミック、そして添えられた手紙には元師匠の「これを読む頃には自分は死んでいるだろう」などという出来すぎた文句が。う~む。やっぱりラストもシビレてしまったのであった。そして私もガンマン十か条を反芻し、明日からの生活に役立てていこうと決心するのであった・・・。そんなバカな。 7点(2004-06-26 01:47:24) |
3208. グロリア(1999)
さて、ジーナ・ローランズの役をシャロン・ストーンがやるとは、まさに使用前・使用後。いやあ、やるもんだ。元映画では鬼ババアとクソガキという素晴らしい黄金コンビだったが、本作はそういう味わいも無く・・・いやいや、こちらも捨てがたい、そう、この関係はまさに「メーテル&鉄郎」ではないか!ちょっと懐かしいゾ。でも鉄郎があまりにイケ好かないのでメーテルもぶち切れ寸前。そうそう、車掌さんがいないのも物足りないな(どうでもいいっての)。ま、80年の『グロリア』があまりにも独自の世界を築き上げているので、リメイクにあたってかなりアレンジして来たのは、当然のことでしょう。それで盛り上がればいいが、バカに徹するなり何なりの割り切りも無く、よって何だか中途半端(しかしバカに徹したら、80年版のファンはさらに激怒しただろうけど)。イマ風に無難に映画をまとめつつ、それなりに元映画と付かず離れずの展開(公共交通機関を使うのがポイント)、そしてしだいに打ち解ける二人。ベッドを共にし、う~む、少年はきっと筆下ろししてもらったにちがいない(失言ですスンマセン)。ラスト、こりゃくどすぎ。感動するより笑ってしまったよ。ところで、いまだに(99年当時で)なんでフロッピーディスクなんだろう。リメイク作品が時流に乗り遅れてるのは悲しい。 4点(2004-06-12 02:45:16)(笑:1票) |
3209. 黒いジャガー
クールでセクシーなブラザー、黒人探偵ジョン・シャフトの活躍を描く映画・・・なのか? だったらもっと活躍して欲しかったぞ(ビルの窓から敵を投げ捨てるまではよかったが。笑)。いや、まず主題歌がね、シャフトの事、やたらホメるんですよ。じゃあ、こりゃまあお約束事として、「シャフト=カッコいい」と思って見なきゃいかんのかなあ、と何とか自分に暗示をかけつつ観るわけですが、なかなか難しい。結局、モミアゲが気になるんですよ!まったく。それはよいとして、特に街角のシーンでは人物中心のカメラで、広範囲を映さず、これがなんとなくゲリラ撮影っぽいインディー臭さを感じさせて、意外と小気味よかったりもします。はっきり言えば、ようするに低予算っぽいっちゅう事ですが。映画にあまりヒネリがなく、ほとんど唯一のヒネリが、ここぞというところでシャフトが撃たれてしまうというガックリな展開、ちょっと寂しゅうございました。 5点(2004-06-12 02:04:10)(笑:1票) |
3210. わが故郷の歌
イラン・イラク国境を舞台にした、クルド人の爺さんと2人の息子の珍道中であります。あまり馴染みのない風景や風俗描写に目を奪われますが、一方、どっからこんな俳優見つけてきたのやら、というイイ味出しまくりの登場人物たち、なんだかカウリスマキ調とでも言いたくなる雰囲気も。かつて爺さんの元を去った女性から手紙が届き、その女性を探しに行く物語ですが、途中のエピソードが何ともユーモラスで、ウマい。喧嘩のシーンなんか、いかにも「ポカスカ」っちゅう感じでマンガっぽい。子供たちが紙飛行機飛ばすシーン、一人早まって飛ばしてしまう奴がいるのには笑ってしまいました(リアルすぎるが、演出なのか?ホントに早まったのか?)。また、ロードムービーでは「行きずり」で終わってしまうような脇役たちが、この映画では思わぬところで再登場するなど、エピソード間に繋がりがあるのにニヤリとさせられます。でも映画全般があまりにもナチュラルな描写なので、作為的な感じはしません、何か映画全体が一種の変奏曲であるかのような印象も受けます。そして、映画を通して鳴り響く通奏低音が、戦闘機の爆音なのです。ユーモラスな描写の合間に、執拗かつ不気味に響き、映画の背景を暗示し続けます。イラクに入ってくると、戦争の臭いが強くなり、舞台は雪に閉ざされて寒々としてきます、それと共に、フセイン政権下での悲劇がより強く押し出されてきます。しかしそれを決して「絶望」としては描いておりません。ラスト、雪の中を、子供を背負って歩くミルザ爺さんの姿は確かに心細い、しかし有刺鉄線を踏み越えて行く姿には、奥底から湧き上がる力強さも垣間見えるように思えます。 それにしても、お茶が本当においしそうでありました! 9点(2004-06-12 01:41:47) |
3211. ハッド
『シェーン』のブランドン・デ・ワイルドの成長した姿が見られるということで、どの人が彼か判るかな~とドキドキして見始めたら、ははは、一発で判るこの顔、時に少年っぽく、時におっさんクサい。変わらんのう。この映画、現代のBSEや鳥インフルエンザ問題にもつながるものがありますね(ポール・ニューマン演じるハッド、シャレにならんほど的確な問題発言!)。牛を「処分」するシーンは凄まじくも切ない、印象的なシーン。いつまでも止まない銃声が、リアルな描写で、心に迫ります。そしてその背景に描かれる、噛みあわぬ人間関係。映画自体がとても丁寧に作られており、好感が持てます。 7点(2004-06-06 00:55:55)(良:1票) |
3212. 聖なる嘘つき/その名はジェイコブ
これは困った映画。どうして、出てくる連中はどいつもこいつもこんなにオシャベリなんだろうか。ロビン・ウィリアムズは職業病だからとりあえず大目に見ようかとも思ったが、誰もかもよくしゃべる、しゃべる(ドイツ兵までよくしゃべる)。さらには大声でヒトリゴト言うのもしつこく、しまいにゃ死人までしゃべるってか? こんなに何でもかんでもセリフで説明されたんでは、映画を「観る」楽しみは損なわれる一方。セリフが多いなら多いで、そこに生活感が滲み、間接的に映画の背景を醸し出す役目を果たしていれば結構だが、そんな器用さも無い・・・。しかも映画の舞台はよりによってゲットー。別に無理矢理、悲惨さ一色で描く必要は無いが、「しゃべり過ぎ」から来る緊張感の無さは、この映画にとって致命的。要するにどう見ても、あくまで「アメリカ人」、なんだな。無論、全編をお涙頂戴で埋め尽くさなかった点は、ひとつの良心ではあるし、ラストを盛り上げるのにも効果的、ではあります(それにしたって安直なオチだと思いますが)。 4点(2004-06-06 00:34:25) |
3213. エルダー兄弟
母の死により故郷に集まったエルダー家の4人兄弟。う~む、見事に似てないなあ。ぴんから兄弟よりも似てない(どうでもいいっての)。長男と四男ではほとんど親子ほど歳が違いますからね、結構お歳の長男ジョン・ウェインに動きにキレが無いのが、もどかしい。「昔よりも銃を抜くのが速くなった」などと褒められても、お世辞にしか聞こえず、ちょっと寂しくなります。しかしそれを補うかのごとく、4人兄弟のバカ話が楽しげに映画を盛り上げます。何かにつけ、4人のヨタ話とじゃれ合いが挿入され、これはまさにタランティーノ映画の先駆け!というと大袈裟ですが(どないやねん)、なかなか愉快であります。これが後半では一変、ジョン・ウェイン怒りの形相での壮絶な戦いへ。ひとりまたひとりと倒れて行く兄弟、その中で明らかになる父の死の真相(あまりヒネリの無い展開だけど。笑)、ラストのダイナミックな決闘は必見です。また、明るい前半と壮絶な後半を結びつけるかのように、亡き母を象徴する「揺れる安楽椅子」のシーンが節々に挟み込まれ、これが映画を統一するモチーフのひとつになっております。心憎いですね。 7点(2004-06-05 23:58:00) |
3214. 三匹の侍
いや~コレめちゃくちゃオモロイですねえ。娯楽の鏡と呼びたくなる程、よくできたストーリー。悪代官の娘を農民が人質にとっている所に偶然出くわしたGメン丹波哲郎。ひとまずは高見の見物を決め込むのだが、演じている丹波自身は、おそらく農民の味方をする気マンマンなのである。顔に出ている。ただ、脚本の都合上、いきなり農民の味方をするのもヘンなので、一応ここは態度を保留する。しかし勿論、映画観ている側にすれば、丹波がいずれ農民側に立つのは明らか、そればかり待っているのだから、少し焦らせば充分である。そして丹波さえ農民側に立てば、二匹目の長門勇が農民につくまでの描写など、時間を割く必要もない(見たまんま)。こうなりゃあとは三匹目の平幹二朗が態度を決めるのをゆっくり見守ればよい(気のせいか、少しSHINJOに似てるなあ)。何しろその間、丹波哲郎が大サービスで映画を盛り上げてくれるし。そしていよいよクライマックスの一大チャンバラへ。見ごたえあります。でも最後の1対1の決闘はなんか中途ハンパでしたね。いっそ『スパルタンX』みたいに3人で戦った方が・・・なんてことはナイけど。というわけで、ストーリーの方はオモシロすぎるくらいオモシロいのですが、その一方で五社監督の演出、1シーンごとに入念に練り、工夫を凝らして撮っている、そのハリキリ具合もよく感じられて、なんだかゴーセイな一本を観たなあ、という充実感があるのでした。 8点(2004-05-30 02:26:45) |
3215. 血槍富士
《ネタバレ》 この映画、「作られた話」って感じではなく、まるで、巧みにちりばめられたキャラクターたちが勝手に人間模様を編み上げていって映画が進行させられているような、自然な活き活きとした感じがあります。中心の三人、まるで黄門様と助さん格さんみたいな取り合わせですが、別に世直しもしないし、千恵蔵もヒーローとはとても言い難い朴訥ぶり、まるで加東大介が二人いるかのような・・・。で、細かいエピソード群が絡み合いつつ、なんとなくケリがついたような雰囲気になってきた矢先、突然の悲劇が! そう、これまで穏やかに編み上げられて来たストーリーの流れを突如ブチ切る大事件、黄門さまと格さん(?)が惨殺されてしまう! 二人がここまで実に活き活きと描かれて来た分、その死は衝撃的です。駆け付ける千恵蔵の姿、それは『血煙高田馬場』のバンツマを彷佛とさせ・・・るようなカッコいいものではないのですが、そのモッチャリ感がまた、その後の壮絶な殺陣に、凄みを加えているのも確か。そしてラストは↓にもありますように、「チエゾー、カムバーック」の叫びを背に聞きながら、ひとり静かに去っていくのでありました。ぺぺぺんぺん(笑)。 8点(2004-05-30 01:56:53)(笑:1票) |
3216. シシリアン(1969)
基本ストーリーはただの宝石ドロのお話なもんで、わりと軽いタッチですね。すくなくとも、マフィア映画と聞いて連想するような重厚な作品じゃありません。ジャン・ギャバンがシチリア・マフィアの大物、なのにセリフはフランス語でもイタリア語でもなく英語、っていう時点で、深刻さを放棄してます。軽いといえば、あの飛行機は実に軽そうでしたな(特撮による合成がブレている)。このシーンの味わい深さは『エアフォース・ワン』に匹敵しますよ(しかし『ジョーズ3』の味わいには及ばない。関係ないが)。でまあ、荒唐無稽な話なんですけども、宝石を狙うマフィアと立ち向かう捜査当局が並行して描かれ、なかなかの緊張感。さらにそこにイマイチ手際がよくない(ような気がする)アラン・ドロンが加わることで話はこじれ・・・そういや、海辺でウツボを釣り上げるアラン・ドロン、片や全裸で横たわる美女、これはなんだかシュールなシーンでした。結構、変ですよ(笑)。それにしてもジャン・ギャバン、ずいぶん腹が出ているなあ・・・。 7点(2004-05-30 01:20:03) |
3217. 愛の集会
パゾリーニの街角インタビュー集、みたいな作品で、まあ別に「映画としての面白さ」は特に感じないんだけど・・・。性愛に関するインタビューに、この時代において挑戦してる事自体が貴重なんですな(今の日本で同じ事やってもしょうがないわな。でもそれはそれで面白いかも?)。しかも、いかにもサエない一般ピープル相手に昼間っからそんな質問しているのが、まだ殺される前の(←当たり前だけど)パゾリーニですからね、感慨深いものが無くも無く。構成も一応、考えてはいる(らしい)のですが、とにかく雑然としていて、まあそれが同時期の作品『奇跡の丘』を思わせるような気もすれば、ただ単に収拾がついてない気もいたします。労働者はエネルギッシュで、性に関するタブーもなんのその、質問には気前良く答えてくれます。しまいにゃ、後ろの方にいたオヤジ、「オレにもしゃべらせろ」と割り込んできたはいいが、全然関係ない話を始めちゃう。何とか話題を戻すと、オヤジはノリノリで暴走、いきなり音声が途切れて「自主規制」のテロップが! まあ、この「自主規制」テロップは他の場面でも何度か出てきて、時代を感じさせるところでもあるのですが。さて、このドキュメンタリに収められた人々の声、これこそが当時の人々の性意識をそのまま反映しているのか、というと、やはり気をつけねばならぬ面はあるでしょう。カメラを向けられマイクを向けられた時点で、それらは「意識」され、何がしかの「演技」が開始されるのは避けられない。いわば、一種の不確定性原理でしょう(ある状態を「観測」しようとする時、「観測」という行為自体によって観測対象が摂動を受けてしまい、結局、元の状態そのものを観測することはできない。←こんな説明でいいのかな?)。しかし、一番ヒドイのはテレビ番組で垂れ流されるインタビュー、テキトーに街角で声を拾ってきて、その声自体アテにならないのに、さらにこれを番組の意図に沿うように切り貼りし、並べ替える。実にお手軽なテレビ番組製造方法だ。「街の声を聞いてみました」なんてコーナーが始まったら即刻チャンネルを変えたくなる。そんなテレビ番組よりは本作の方が、数百倍、聴き甲斐のあるインタビューと言えるでしょう。 6点(2004-05-29 02:25:56)(良:1票) |
3218. 十三人の刺客(1963)
七人の侍と忠臣蔵を掛け合わせると、戦争映画になっちゃった、という作品。ラスト30分の死闘はもはやチャンバラではなく、戦争です。映画の始めのほうは断片的な描写のためモヤモヤしているのですが、それが明石藩主暗殺計画へと収束していくあたりでスッと見通しがよくなり、もうワクワクしてきます。途中、藩主一行が行方不明になり、オヤ、と思わせるも、あんまり大したエピソードに伸びないのは残念でしたが。それでも、落合宿についに藩主一行が現れるシーンは、ゾクゾクします。そして壮絶な死闘へ。要塞と化した宿場町には光と陰が交錯し、さらに砂埃も舞い上がって凄まじいばかり。狭い路地での戦いでは、自然、登場人物の動きはカメラに対し前後方向に限られることとなり、それが、こちら迫りくるような独特の迫力をもたらします。う~む、それにしても実に潤いの無い話だ、命を投げ出しての殺し合い、たどり着く先などどこにもない。リアルすぎるほどの殺陣とは対照的に、何か夢の中の出来事のような現実感の希薄さ、まさに悲壮感のみで紡ぎあげたような映画です。ところで、ナレーションはやっぱり芥川隆行に限りますなア。無条件に説得力を感じてしまうこの声。安心感があります。伊福部昭の音楽はいつもどおりの怪獣映画風の音楽(?)で、人によっては真骨頂と呼び、また人によってはマンネリとも言う。わたしゃ結構好きですが。 8点(2004-05-23 16:09:40)(良:2票) |
3219. 民衆の敵(1931)
実録ギャングもの、といった趣きで、演出は地味な印象、『つばさ』のウェルマン監督もここでは何だかつばさをもがれてしまったかのような・・・。ギャングの姿を少年時代から描いているんですけど、「子供の頃はこんな不良少年でした、大人になったらやっぱりギャングになりました」ってな流れが、どうも貫禄を感じさせない。映画製作の意図はギャングを美化する事ではナイ、という、言い訳じみた冒頭のテロップとも相まって、なんとなーくセコイ印象が。しかし、いかにもあっけなさすぎる最期に至って、その割り切りぶりに確信犯的なものを感じさせ、まあ確かにこういうのもアプローチのひとつなのかな、と。そういうわけで、娯楽味あふれる映画とはさすがに言えない本作ですが、その「実録モノ」風味によって、当時の世の中の風俗なんかがよく反映されており(・・・たぶん)、興味深いものがあります。 6点(2004-05-23 11:28:36)(良:2票) |
3220. ゴーストタウンの決斗
《ネタバレ》 う~む。何が描きたかったのだろう。最後に行われる決闘が取ってつけたような感じ。というよりはむしろ、この決闘の前フリを延々と垂れ流したような映画で、しかもこの前フリに、どうも必然性が感じられない(先住民と戦うシーンの意味合いって、登場人物を減らすこと以外に何かあるのでしょうか??)。そういう澱みがちな流れの中で頑張るのが、リチャード・ウィドマーク、例によって実に実にアクが強い。他の出演者すべてを食っている。しかし所詮は悪役、最後の決闘では敗れて死ぬしかない。せっかくここまで頑張って(一人で)映画を引っ張ってきたのにもかかわらず!というわけで、最期の彼はヤケクソのように思いっきり「ガクッ」と事切れる。ホントに大袈裟である。色んな意味で痛ましい最期と言えよう(笑)。 5点(2004-05-23 02:49:49) |