321. まぼろしの市街戦
《ネタバレ》 戦争の狂気がこのような形で描かれている事に驚きました。「現実の世界は苦しいことばかりよ」 確かに生きる事は苦しみもありますが、苦しみながらも現実の中で皆生きているのではないでしょうか。患者達の御伽噺の如く戯れる様子は現実逃避の卑怯者のように最初は感じました。そうではありませんでした。プランピックにラスト彼らのもとへと門を叩かせたのは、その方法でしか現実から逃れられない、そうまでしてまでも居られない戦争という現実の世界だったのですね。皆様ご指摘の通り、命令のもと個人的に何の恨みも無い者同士が破壊し合い殺し合う戦争という行為、そして、己と家族は絶対安全な場所に身を置いた上で、己の欲望を正義と言う美名で覆い、警察官気取りで戦争を起こし、苦しみ・悲しみ・痛みを何にも感じない指導者こそまともな神経を持たない狂った輩であると言えます。素晴らしい作品でした。 10点(2004-11-28 21:38:02)(良:1票) |
322. 穴(1960)
《ネタバレ》 無実の罪でなく、刑務所内で虐待された訳でもなく、犯した罪を償う責任を果たす事から逃れたいという身勝手な理由で練られた脱獄計画。最初は、あの手この手で知恵を絞って成功にこぎ着けようとするも結局は失敗、その原因は何か?の興味津々で観ていました。五人の知恵とチームワーク、特に砂時計を作る件には唸らされましたし、頭だけでなく力ずくでひたすらに穴をあけ続ける姿に成功させるという強い意志を感じました。あの異常な程の音は彼らの意志を表していました。ガスパールの描かれ方が絶妙で、裏切る、裏切らない、どちらにもとれて、もしかしたら成功するのではと次第に手に汗握って観ていました。鏡に映った光景は思わずアッと口走ってしまった強烈さでした。裏切り行為は情けないといえばそうですが、ガスパールと寝起きを共にしながら察知できなかった己の不明さを棚に上げて、目くそが鼻くそを笑うように感じました。署長もそう思っているのではないでしょうか、彼らより何枚も上手だったようで、やはり最後の一歩を踏むことは難しいようでしたね。 8点(2004-11-27 00:27:23) |
323. 座頭市物語
《ネタバレ》 初めて観ました。共に裏街道に生きる平手と市。死期を悟り、己の死に場所を探す平手と、世間にも自分にも負けずに生きてゆこうとする市。ラストの二人、最高の死に場所に本望の思いを胸に息絶えた平手と、彼の思いを汲み取って無念の涙を堪える市。死ぬ事より生きてゆく事の方が辛いのですね。天知茂の演技を終生忘れる事はないでしょう。 9点(2004-11-06 07:33:03)(良:1票) |
324. 恋人よ帰れ!わが胸に
無茶苦茶な邦題は別として、見応えのある素晴らしい作品でした。優しさや思いやりなど一銭の得にもならん、生きるのには不必要が信条のようなウイリーの、知恵を働かせ、絶対に引き下がる事無く何が何でも目的を果たそうとするえげつなさと、果たせなくても決して反省もせず落ち込みもしないド厚かましさは、何故か憎めない所があったせいか少し羨ましく感じました。人を疑う事を知らぬような、お人好しで純真な好青年ジャクソン。この両極端な二人が強烈なればこそ、どちらにもなりきれず、ご都合主義的に心が揺れ動くハリーの情けなさ、やるせなさが際立っていました。ジャック・レモンとビリー・ワイルダー監督の真骨頂を見せてもらいました。 9点(2004-10-31 00:46:20) |
325. 恐怖の岬
リメイク版は何度か観ていますが、こちらは初めて観ました。弁護士一家は上品でリメイク版の濃い三人に比べてずっと良かったです。デ・ニーロが見せるあからさまな狂気より、ロバート・ミッチャムのふてぶてしい面構えの中に見える狂気の方に怖さを感じました。川の中での肉弾戦は観ていて物凄く力が入りました。 7点(2004-09-17 00:37:07)(良:1票) |
326. 夜霧の恋人たち
アントワーヌの危なっかしいのだけど飄々としている所が微笑ましかったです。若い時はこういう試行錯誤があっていいと思います。鏡に向かって「ファビエンヌ・タバール、クリスティーヌ・ダルボン、アントワーヌ・ドワネル」と延々と連呼しているシーンに、会いたいのに会えなくて、家で何気なく鏡を見た時に、思わず相手と自分の名を連呼していた事を懐かしく思い出しました。 7点(2004-08-21 23:14:42) |
327. Z
《ネタバレ》 脚本・演出・撮影・音楽・キャスト、全てが素晴らしい。自分の欲を満たすために、相容れない主義・主張を国家権力を駆使して抹殺しようとする権力者達。身の危険に動じないイブ・モンタンや、検事に良心を問われてそれに起訴で応えたジャン・ルイ・トランティニャンの静かな怒りと気迫(渋すぎる)に、信念を持った人間の強さを感じた。ラストで実話を元にした作品のせいか、国家の力が個人の力よりも圧倒的に優位だという絶望的な現実を見せつけられる中での僅かな希望、ナレーションの『Z』の意味が胸に響いた。 10点(2004-05-26 22:42:44)(良:1票) |
328. 男と女(1966)
二十年ほど前に観てジャン・ルイ・トランティニャンに一目惚れした作品。今回、久しぶりに観てもやはり素晴らしい作品だった。お互いに心にブレーキをかけながらも少しずつ惹かれあってゆく様子はもどかしいようだが、分別ある大人の恋というのはそういうものだと思う。ジャン・ルイがレースの車でアンヌのもとへ向かう途中のああして、こうしての独り言とアンヌが抱かれながら死別した夫を思い出しているシーンは当時は理解できなく印象に残っていたが、今回は解かる気がした。ジャン・ルイの140㎞/hで走るコーナーを139㎞/hだと負けて、141㎞/hだとスピンするという台詞は凄く印象深い 9点(2004-03-16 00:35:30)(良:1票) |
329. パリの大泥棒
生きるためでなく生甲斐のために盗みを止められない男。自分の弱みを打ち明けられる愛する人が一人いるのに、自分の末路を覚悟しているのが淡々とした表情から感じられて悲しい。 5点(2004-01-06 00:09:04) |
330. ピアニストを撃て
ストーリーはいまいちだったけど、ピアノを弾くシャルル・アズナヴールが粋でカッコ良かった。任侠映画の着物姿でも似合う人だと思う。 6点(2003-12-29 22:14:29) |
331. 2001年宇宙の旅
美しい風景の映像は数多くあるけれど、造り上げた映像でこれ程美しいものはなかなかお目にかかれない。まして1968年作というのには仰天してしまう。この作品見るのは初めてで確かに?という場面はあったが、気の遠くなるような時間を経て猿からヒトへ、また気の遠くなる時間を経てヒトから何かに進化するのだろうなあと思った。それとコンピュータの完全無欠ぶりが強調されていたが、この世に完全無欠なものなんてないんじゃないかと思った。いろいろと考えさせてくれた映画でまた見てみたい。 7点(2003-12-29 00:16:44) |
332. ローズマリーの赤ちゃん
《ネタバレ》 ポランスキー監督ならではの上質なサスペンス。とりわけミア・ファローが素晴らしかった。妊娠を喜ぶみずみずしい笑顔から不安と皆に対する不信でどんどんやつれていく姿は見ていてゾッとした。悪魔に魂を売り渡した夫(しかも己の出世の為)の顔に唾をはきかけ、悪魔の我が子をいとおしく見守り、育てようと決意する姿に強烈な母性を感じた。 8点(2003-12-26 16:12:05) |
333. 鬼火(1963)
《ネタバレ》 アランが自殺するまで印象的な音楽とともに淡々と描かれていて、アランの心情が訥々と語られていた。「誰からも愛されなかった、誰も愛せなかった」昔の自分を思い出し、見ていて悲しくなった映画。 7点(2003-12-09 01:05:44) |