341. マイ・ライフ(1993)
《ネタバレ》 ベタで凡庸なストーリーなのに泣ける。それは誰もが経験するような親子の愛憎や、生と死などの普遍的で身近なものだから。 お互いの悪いところばかりに目がいき、相手を責めるだけで自分の正しさを疑わず、聞く耳を持たない。そうなると、親子、兄弟、夫婦、恋人同士の関係も破綻に向かうしかない。寛容と感謝の気持ちを持ったときに、その関係が変わっていく。 子供の頃は、親が約束を守らなければとてつもなく許しがたい裏切りに感じてしまう。サーカスを親に見せてもらえなかったことのトラウマが、死ぬ直前でようやく解消された。 ニコール・キッドマンのような綺麗で優しい奥さんの支えがあれば、早死にしてかわいそうとも思わない。良い人生だったという救いの感じるラスト。 [DVD(吹替)] 7点(2016-10-25 00:54:31) |
342. 薄氷の殺人
《ネタバレ》 魔性の女がキーパーソンになったフィルム・ノワール系。 わかりにくいところや不自然なところもチラホラ。最初に射殺された容疑者兄弟は、結局事件には関係なかったのか。 雰囲気や情緒を重視して辻褄の合わない不自然なところが出てくる映画は苦手。 女のキャラもブレてるように感じたが、グイ・ルンメイの美貌は印象に残った。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2016-10-23 22:51:50) |
343. 星の旅人たち
《ネタバレ》 息子の遺灰を撒きながら巡礼の旅を引き継ぐ老人、メタボ対策で痩せようとしている大食漢、禁煙しようとしてるヘビースモーカー女、スランプでネタを探しに来ている作家。たまたま出会った4人が800キロに及ぶ聖地巡礼の旅に同行するロードムービー。 巡礼の目的もそれぞれ。ヘビースモーカーの女は禁煙目的とは言っているが、DV夫との離婚という過去を背負っており、そのトラウマ解消が本心か。大食漢の男も単なるダイエットの他に何かわけがありそうにも思える。自分探し、再生の道のり。 断絶していた父と息子は、父が息子の巡礼を経験することでその気持ちを理解しようとした。遺灰を撒き終えて幻影の息子と見つめ合う父の顔からは、二人の距離が縮まった喜びが感じられた。 じんわりとくる良作だと思うが、聖地巡礼というのがそもそもいまいちピンとこない。今では信仰心がなくてもこの映画のように自己実現やスポーツ的に挑戦する人も多いようだけど。やってみればわかるのかな。 [DVD(字幕)] 5点(2016-10-23 22:49:55) |
344. ひゃくはち
《ネタバレ》 甲子園常連強豪校の補欠を軸にした青春もの。苦しいことばかりで試合にも出られない。なのになぜ続けているのか? 前半はたわいないライトな野球コメディかと思っていたら、後半にわかにシリアス青春路線になってくる。 煙草を吸ったり、女子大生とコンパしたり。野球強豪校にもこうした部員は実際にいるのだろうと思わせるリアルさ。新人女性記者はそうしたいい加減でふざけた姿に憤りを覚えるも、部員たちの真摯な面も知っていく。皆が寝ている朝早くからバットを振ったり、泥にまみれヘドを吐くまで練習しているのも事実。 甲子園でベンチ入りできるかどうかというのは、当事者にとっては一生を左右するくらいの重大事に思えるだろう。レギュラーになれなかった試合での応援席ではチームの敗退を内心喜んだり、レギュラーの怪我でメンバー入りできたのを喜びもする。テレビの高校野球では決して描かれない球児の本音がここにはある。 ラストは試合の結果が描かれていないが、この映画にふさわしい良い終わり方だと思う。 [DVD(邦画)] 7点(2016-10-21 21:15:02)(良:1票) |
345. 愛情物語(1956)
《ネタバレ》 事前情報なしで見て、病気で二人も死ぬのはあまりにドラマ的に都合がよすぎると感じて共感できなかったが、実在のピアニストであるエディ・デューチンを基にしていると知って驚き。事実は小説よりもってやつか。 エディが愛する妻が死んだからといって、息子を何年もほったらかしにしたのはいただけない。忘れ形見だからより大切に育てなきゃいけないところなのに。その後、息子への態度は変わりはしたものの、感情移入はできなかった。 タイロン・パワーの指の動きは見事で、本当に演奏しているかのように見えた。 [DVD(字幕)] 4点(2016-10-20 22:14:45) |
346. 早熟のアイオワ
《ネタバレ》 母親がヤク中の売春婦で、娘にも売春させようとするクズ女。娘が客引きの黒人にレイプされても、抱きしめて慰めることもしない。クズな大人に対する報いも描かれないので、ストレスが溜まる。 ジェニファー・ローレンスの駆け出しの頃と、「キックアス」より前のクロエ・グレース・モレッツの可愛さが見れるだけ。 [DVD(字幕)] 3点(2016-10-20 22:12:39) |
347. 博士と彼女のセオリー
《ネタバレ》 ホーキング博士の名前と顔、病気のことくらいは知っていたが、その人となりはほとんど知らなかった。スティーヴンの妻・ジェーンの自伝が基にしているだけあって、プライベートなこともかなり忠実に描かれているようだ。主演俳優もホーキング博士によく似ている。妻のほうはまったく似てないけれど、もともと顔を知らないから違和感はない。 ジェーンはスティーヴンが一、二年の命で、それまでは全力で彼を支えようとしたのだが、これほど長生きするとは考えもしなかっただろう。障害者の夫に加えて子供も二人抱えては、一人ではどうにもできなくなるのは当たり前。そこで手伝いを牧師のジョナサンに頼んだのが運命の出会い。あからさまな不倫関係には描いていないが、ジェーンがジョナサンのテントの中に入っていくシーンでサラッと示唆していた。 ジェーンとジョナサンが別れて、スティーヴンの世話をしたのが看護師のエレイン。スティーヴンがジェーンより心の繋がりを感じるエレインのほうに傾いていったのは自然の流れか。スティーヴンとジェーンの別れのシーンも印象的。エレインと一緒にアメリカに行って面倒を見てもらうと告げた時、それですべてをわかり合えた二人。離婚や再婚、三角関係など、普通の人と変わらない。 映画では描かれていないが、スティーヴンは結局エレインとも別れたとか。乙武氏もそうだが、色恋に身体的ハンデキャップをまったく感じさせないエネルギッシュな生命力とタフな精神力には舌を巻く。 宇宙の理論はさっぱりわからなかったが、誰もが身近に感じる人間ドラマにはなっている。 [CS・衛星(吹替)] 6点(2016-10-20 22:11:19) |
348. デルタ・フォース(1985)
ロケット弾やマシンガンを発射する特殊バイクでテロ集団に突っ込んでいく主人公。 昔の少年漫画や特撮ドラマのようなわかりやすさ。 今の迫力あるアクション映画に慣れてしまうと、陳腐でアラばかり目についてしまう。 [CS・衛星(吹替)] 3点(2016-10-16 20:24:42) |
349. メルシィ!人生
コメディは難しい。周囲の評判が高いものであっても、笑いのツボに入らないと笑えない。 オカマネタは昔からあるけど、それで面白いと思ったことがない。 下ネタはあるけど全然下品にはなっておらず、フレンチっぽいシャレた印象さえある。トータルで悪くはないけどインパクトもないって感じ。 [DVD(吹替)] 5点(2016-10-16 20:23:26) |
350. 後宮の秘密
《ネタバレ》 権謀術数が渦巻き、魑魅魍魎が跋扈するドロドロした世界。後宮がそっくり日本の大奥のイメージと重なる。 ファヨンの産んだ子が実は王の子ではなかったり、大妃が自分の息子を王にするために王を毒殺したり。肉親の間でもやるかやられるかという殺伐としたものもあり、日本の戦国時代を思い起こさせる。 岡本夏生に似た大妃が悪の根源で、対するファヨンはか弱く美しくて清純な王妃というよくある構図かと思えば、ラストは意外だった。クォニュが毒と知りながら飲んでファヨンと我が子を守り、死に際にファヨンに伝えた言葉。「俺たちの子を守ってくれ」それに対するファヨンの言葉に戦慄する。「俺たちの子? 私の子よ」この時、第二の大妃、モンスター妃が誕生した。 結局ファヨンも幼い我が子を王にするために、手段を問わず邪魔者は抹殺する。また同じような権力闘争の歴史が繰り返されることを暗示している。勧善懲悪ではない、なかなかブラックなストーリー。 お人形さんのような顔のチョ・ヨンジョが思い切りのよい脱ぎっぷりを披露。B級お色気もののようなタイトルだが、エロシーンはしっかりあるもののストーリーは意外と骨太で十分楽しめる。 [DVD(字幕)] 7点(2016-10-16 20:20:36) |
351. さらば、わが愛/覇王別姫
《ネタバレ》 四面楚歌でもよく知られる項羽と虞美人を描いた京劇を軸に、とてもよく練られた中国映画の大作。3時間近い長尺で、前半は少しダルいのだが、文化大革命からの終盤は物語に引き込まれる。因果応報、諸行無常、人間の弱さ、人生の悲哀がたっぷりと詰まっている。 親に捨てられ京劇の養成所に女形として育てられ、心も女になっていき、兄弟子の石頭を愛してしまう小豆。石頭が小楼、小豆が蝶衣の名でスターに登りつめたものの、蝶衣のほうは醜悪なパトロンに目を付けられて慰みものに。一個人ではどうにも抗えない運命に流されてしまう悲哀を感じる。 小楼と付き合う女郎の菊仙に、激しい嫉妬をぶつける蝶衣。完全に男1女2の三角関係だ。でも、体が男の蝶衣は、役の上での覇王と別姫で男女の関係を味わうしかない。体は男で心は女というギャップが蝶衣を常に苦しめる。 日中戦争、文化大革命と時代にも翻弄される。日本軍はまた例のごとく粗暴で極悪人としてしか描かれていないのだろうと思ったが、それよりも中国軍のほうが鑑賞態度が悪くて一座と騒動になる一幕も。蝶衣が目をかけた捨て子の小四が、新体制の共産思想にかぶれて反旗を翻したのも印象的だった。 蝶衣が小四に追い出される形で覇王別姫の役を奪われ、しかも小楼がそれを容認するという裏切り行為。小楼は少年時代に兄弟子として蝶衣の罰を引き受けたくらいなのに、あの頃の姿はいつの間にかなくなっていた。それどころか、文化大革命で処刑されそうになって、命惜しさに蝶衣と菊仙を売る姿は見苦しいことこの上ない。絶望した菊仙が首を吊ったのも十分共感できる。 蝶衣に取って代わって別姫役を得た小四が、新たな権力に突き落とされるのも皮肉がきいている。蝶衣が虞美人として自害したのもラストにふさわしい。 終盤は畳みかけるような展開で、思わず見入ってしまった。重厚な人間ドラマを見せてもらって満足。 [DVD(吹替)] 8点(2016-10-12 22:27:03) |
352. 忘れえぬ想い
《ネタバレ》 香港映画のラブストーリー。子持ちのバス運転手と婚約したものの事故で彼氏を失ってしまい、その事故したバスを引き継いで運転手になる女。ペーパードライバーがいきなりバスの運転などうまくできるわけもなく、乗客からクレームを浴びたり交通違反切符を切られたり。縄張りを侵してヤクザに怒鳴られ、客に偽札を掴まされ、ふんだり蹴ったりの毎日。おまけに彼氏の遺児を引き取っているので、生活にも余裕がない。 これが美人なものだから手を差し伸べる男もでてくる。どうにもいかなくなって子供を施設に預けようとするも、泣きじゃくる子供のかわいさに負けて二人して育てることに。 もともとギクシャクしていた女の家族だが、最後は父も何となく娘を受け入れているのがちょっと物足りない。女も男も結構あっさりと過去と決別しているようなハッピーエンド。特にこれといったインパクトのあるエピソードもなく、すぐに忘れてしまいそうな映画。実際に、以前見たのに後半部分をすっかり忘れていた。 [DVD(吹替)] 4点(2016-10-09 22:50:06) |
353. くちびるに歌を
《ネタバレ》 ベタで王道、爽やかな感動的学園もの。そういうのは大好きなのだが、これは感動しきれなかった。 その理由の一つは、あざとさが目につきすぎたこと。障害者の前で皆が自然発生的に大合唱する場面は、泣かせようとする意図があからさまで泣けない。逆に居心地の悪さのようなものを感じてしまった。 もう一つは、主人公の女性教師に魅力を感じなかったこと。新垣結衣はビジュアルは文句なくトップクラスの女優だけど、演技者としては惹かれない。それほど美形ではないのにドラマの中では光り輝く女優もいるが、それとは逆。なんでだろう。常に隙のなさすぎる美人というか、何の役をやってもイマイチ伝わってくるものがないというか。 なのでもうひとつ乗り切れなかったが、それでも生徒たちの演技は良かったし、音楽の力は感じられた。 [DVD(邦画)] 5点(2016-10-09 22:46:11)(良:1票) |
354. 彼女が消えた浜辺
《ネタバレ》 「別離」「ある過去の行方」で唸らされたファルハディ監督のデビュー作ということで、期待をもって鑑賞。さすがに人間描写が上手いし、サスペンス性も高くてどうなるのかと最後まで引きつけられる。 楽しい旅行が一転して修羅場になる様がリアル。勧善懲悪ドラマにあるような悪人や正義のスーパーマンは一人もいない。良かれと思ってやったことが、歯車が狂ってどうしようもない結果に。実社会でも誰の身にも起こりうることだけに、身につまされる。 ただ、ラストは後味が良くないし、尻切れトンボの印象も。 [DVD(字幕)] 7点(2016-10-08 10:05:53) |
355. コンドル(1975)
《ネタバレ》 CIAの謀略に主人公が触れてしまって大変なことになるのだが、話が込み入りすぎてわかりにくい。ターナーがCIAに報告したミステリのレポートが、CIAの謀略とたまたま同じだっただけで、何も知らない事務所皆殺しにするのもリアリティがない。レッドフォード全盛期なので、ファンなら楽しめるかな。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2016-10-08 10:03:35) |
356. さらば愛しき女よ
《ネタバレ》 レイモン・チャンドラーのハードボイルド小説が原作。 特有のキザで気怠い雰囲気が漂い、洒落たジョークが散りばめられているが、照れ臭くもなる。今ではチャンドラーのパロディっぽいコントで見かけるくらい。 ストーリーは黒幕に意外性があったが、終わり間際で一気にネタバラシがあって急すぎる印象だったので、中盤にもうひと盛り上がり欲しかった。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2016-10-08 10:02:40) |
357. 永遠の片想い
《ネタバレ》 よくあるお涙頂戴ラブストーリーだと思っていたら、意外な展開もあって最後はちゃんと感動もできた。男一人に女二人の三角関係で話は進むが、女二人(ソン・イェジンとイ・ウンジュ)がどちらも魅力的。ヒロインと引き立て役が実は逆だったのは面白かったが、イ・ウンジュに病気の影がまったく見えなかったことはちょっと都合が良すぎるか。それでも、写真の送り主の正体を謎にしながら、切ないラブストーリーに仕上がっていた。 そのイ・ウンジュが実生活で自殺していたことを鑑賞後に知ってビックリ。あのキュートで溌剌とした笑顔を思うと、つくづく惜しい。 [DVD(吹替)] 8点(2016-10-06 21:19:40) |
358. 彼女を信じないでください
《ネタバレ》 ひと昔前の昭和ラブコメディーのよう。笑えないし、ベタすぎて感情移入もできない。服役していた女詐欺師が急に良い人になったり、妹を敬遠していたはずの姉がすんなり受け入れたり、あまりに都合の良すぎる展開ばかり。 ただ、ラストは良かった。ヨンジュがヒチョルの妹についた嘘の出会いを、ヒチョルが再現したのはオシャレ。 [DVD(吹替)] 4点(2016-10-06 21:17:45) |
359. 風の丘を越えて~西便制
《ネタバレ》 詩情あふれる映像美。朝鮮民族の恨の精神はとても好きになれないけれど、この映画ではそれを超越していた。 求める芸術のために、娘ソンファの目を奪う父の愚行。それを知っても父に恨みをぶつけるでもなく、唱い続けるソンファが健気で美しい。 さほど美形とは思えなかったソンファが、生き別れた弟と共演するシーンでは、限りなく崇高で美しく感じられた。 [DVD(字幕)] 7点(2016-10-05 23:09:44)(良:1票) |
360. ものすごくうるさくて、ありえないほど近い
《ネタバレ》 アスペルガーを相手にするには、寛容の心がないと神経が擦り切れる。できれば関わりを持ちたくないのが本音。ただ、そんな息子を持った親の気苦労はどれほどだろうか。 オスカーを愛した父。その父を9.11で失って、父の死を乗り越えられずに、父との思い出にすがって鍵に合う鍵穴を探し続けるオスカー。そのオスカーを気遣って、先回りして根回ししていた母。 ハートウォーミングな話だけれど、少年に魅力を感じないので琴線に触れるまでにはいかない。また、祖父のことや貸金庫の中身が消化不良で、まとまりきれなかった印象が残る。 [CS・衛星(吹替)] 5点(2016-10-05 23:08:02) |