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イニシャルKさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

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21.  警察日記 《ネタバレ》 
田舎の警察署を舞台にした人情もの。とにかく登場する警官みんなが情に厚く、演じる森繁久弥や三國連太郎といった面々の演技も実に温かみがあって素晴らしい。彼らを狂言回しに事件を起こした人々の人間模様を描いているのだが、その事件というのが殺人事件や誘拐事件といった凶悪事件ではなく、捨て子や万引きといったこの時代ならどれもが貧しさから来るようなものばかりで、戦後10年で日本がまだまだ貧しい時代だったのだなと痛感させられる。また、東野英治郎が演じた戦争で子供を亡くし、おかしくなってしまった老人などにもリアリティーが感じられる。森繁久弥演じる吉井巡査が面倒を見る捨て子の姉弟のエピソードが特に泣ける。二人に対しての吉井巡査の温かい眼差しも感動的なのだが、姉を演じた子役時代の二木てるみがなんといっても素晴らしく、弟に会いたいばかりに一人で会いに出かけていくシーンや、名乗り出た母親の乗ったジープを見つめる表情などなんとも切なく悲しげで、本当にうまく、思わず泣かされた。久松静児監督の映画を見るのはまだこれが2本目だと思うが、人間の持っている心の温かさというものを見事に描き出した正に名作だと思う。あと、書き忘れていたが、署長を演じる三島雅夫のユーモラスな演技は、普段腹黒い悪役や嫌味たらしい役のイメージが強いだけにすごく新鮮に感じられた。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2010-04-11 14:47:47)(良:1票)
22.  最高殊勲夫人
最初にタイトルだけを見た時は若尾文子が悪女を演じるドロドロ系の映画かと思ったが、「青空娘」の源氏鶏太が原作ということで、ドロドロした重みの全く無い軽快なラブ・コメディーに仕上がっており、「青空娘」同様にとても気楽に楽しめた。初期の増村保造監督らしいハイテンションでスピード感あふれる演出は見ていて気持ちがいいし、電車の中で噂が広まっていくシーンやその後の会社で若尾文子を口説きまくる男性社員たちの滑稽さをコミカルに描いているほか、書道の先生のオーバーなアクションや生放送ドラマの本番直前にしゃっくりが止まらなくなる主演俳優などちょっとしたさりげない笑いも盛り込まれていてこういう喜劇でも増村監督はうまいと感じさせるし、後年のドロドロした人間ドラマで魅せる作品群とはまた違った魅力がある。若尾文子も「青空娘」で見せた清純な可愛さがまさにそのままでとーっても素敵で魅力的だった。はっきり言ってあの会社の男性社員たちや川口浩が羨ましくなってしまうほどの可愛さではないか。おっとちょっと興奮しすぎたか。脇の船越英二の女房の尻に敷かれたダメ男ぶりもいつものことながら見ていて楽しいし、ヒロインの父を演じる宮口精二も良かった。作風上、増村作品って他人に気軽に薦められる映画が少ない気がしてたけど、「青空娘」とこの映画は何の気がねもなく気軽に他人に薦められそうだ。
[DVD(邦画)] 8点(2010-01-12 14:06:31)(良:1票)
23.  潜水艦イ-57降伏せず 《ネタバレ》 
松林宗恵監督の訃報はとても驚いたし、「社長シリーズ」をはじめまだそんなにたくさん松林作品を見たわけではないのにとても寂しい思いがする。そんな中で松林監督の追悼の意味を込めて本作を見た。潜水艦に女というシチュエーションは「ローレライ」を思わせるが、あり得ないほど荒唐無稽な映画でしかなかった「ローレライ」に対してこちらは一切の荒唐無稽さもなく、時々笑えるシーンをはさみつつもシリアスな戦争映画としてかなり見ごたえのある映画に仕上がっており、池部良や三橋達也ら出演者の熱演もあって「ローレライ」に比べるまでもなくはるかにまともである。これは既に青観さんが書かれているとおり、戦時中松林監督は海軍におり、主演の池部良も戦後しばらくは抑留生活を送っていた経験があるなどこの映画に関わったスタッフやキャストが実際に戦争を肌で感じている世代だからこそ出せるリアリティがあり、今現代の戦争映画とは比べ物にならないくらいの深みを感じられるからだと思う。ドラマに置いても最初は潜水艦の乗組員たちに偏見を持っていたミレーヌが高熱を出したときに乗組員全員が協力して氷を作ってくれ、それがきっかけで偏見を解くという展開は松林監督のメッセージが込められているようでとても印象に残った。乗組員の中に僧侶がいるのも松林監督らしい。それにしても松林監督の戦争映画を見ているとこの監督は必ずしも「社長シリーズ」だけの監督ではないと思えてくる。最後に、松林監督、お疲れ様でした。ごゆっくりとお休みください。
[DVD(邦画)] 8点(2009-09-03 13:47:22)(良:1票)
24.  さらばラバウル 《ネタバレ》 
昭和19年のラバウル戦線を舞台にした東宝の戦争映画で、本多猪四郎監督と円谷英二のコンビが「ゴジラ」の直前に手がけた作品としても知られている。怪獣や宇宙人、変身人間など一切出てこない本多監督の作品は初めて見たが、「ゴジラ」には及ばないと思うものの、この映画も人間ドラマがしっかりとしていてとても良かった。でも、主人公の鬼隊長と言われる若林大尉を演じる池部良はストイックに演じているもののちょっと鬼隊長というには貫禄不足のような気がする。この鬼隊長が捕らえた米軍パイロットの取り調べで米軍と日本軍の違いに愕然とするあたりから変わっていくという展開なのでもっと演じる俳優に貫禄がほしかった。「ゴジラ」で芹沢博士を演じていた平田昭彦が本作でも若林の部下役で出演しており、ここでも現地の女性(根岸明美)と悲恋を演じる役どころというのがちょっと興味深い。男中心に展開する映画にもかかわらず岡田茉莉子(可愛い。)や中北千枝子、根岸明美といった女性の登場人物の描き方がうまく、エンドマーク直前もこの女性たちが船の上で「ラバウル小唄」を合唱するシーンで終わりというのが本多監督らしいところ。実録映像も交えた円谷英二による空中戦の特撮も見事。ほとんど機会がないのが残念だが本多監督の怪獣映画やSF映画以外の映画ももっと見たいと思う。
[DVD(邦画)] 8点(2009-04-21 23:25:13)(良:1票)
25.  血槍富士 《ネタバレ》 
内田吐夢監督の映画ってそういや「宮本武蔵」シリーズと「真剣勝負」しか見ていなかったなあなどと思いつつ本作を見たのだが、スタートからゆったりほのぼのしていて笑えるユーモラスなシーンも多く、すんなりと入っていけたし、作品自体も痛快な娯楽時代劇という感じで面白かった。片岡千恵蔵といえばなにかとっつきにくいというイメージがあるのだが、この映画では今まで見た出演作とは印象が少し違っていて、子供とのやりとりなどで実に温かみのある演技を見せていてかなり良かった。加東大介の相変わらず人懐っこいキャラクターはこの映画でも親しみやすいし、片岡栄二郎の酒癖のよくない主人もなかなかいい味を出してる。それだけにそんな三人の道中を描いた人情時代劇という雰囲気が一変するラストには驚かされた。「東映時代劇」の殺陣といえば「華麗で、舞うような」という印象で、ましてこれは1955年というまだ東映設立後数年しか経ってない時代の作品のハズなのに迫力あるリアリズム重視の殺陣シーンとなっていて、千恵蔵の演技も鬼気迫っており、規模は違うが工藤栄一監督の「十三人の刺客」のような感じを受けた。(そういえば、あれも主演は千恵蔵だったっけ。)それにこの映画、娯楽的な部分だけでなく社会的な要素も盛り込まれた作品になっていて見ごたえのじゅうぶんある傑作時代劇だと思う。内田監督のほかの映画にもちょっと興味がわいた。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2009-03-06 02:35:40)
26.  次郎長三国志 第五部 殴込み甲州路
シリーズ第5作。今回は冒頭から祭りのシーンでマキノ雅弘監督らしい盛り上がるスタート。既にぐるぐるさんや青観さんが書かれているけど、この前半ではお蝶さんに酒を勧められた次郎長親分が久しぶりに酒を飲むシーンの親分のものすごくうれしそうな表情がたまらなくよく、そこでお蝶さんが親分との馴れ初めを語るんだけど、ここのお蝶さんの表情も最高で、ああ、この二人は本当にいい夫婦だなあと感じさせてくれるまさに名シーンだと思う。後半は後半で前半の和やかな雰囲気とは一転して人質にされたお仲さんを救出すべく殴り込みをかけるという展開。クライマックスのこの殴り込みのシーンもマキノ監督らしいどこかお祭り騒ぎ的な演出なのだけど、そこにいたるまでの大人数相手の喧嘩を前に不利とわかっていながら行かねばならぬ次郎長一家が見ていて実にかっこいい。それに人質にされるシーンのお仲さんの啖呵もかっこ良かった。マキノ監督のテンポのいい演出も見ていて心地よく、充分に楽しめる映画だったと思う。ただ、前回登場したばかりの豚松が、演じる加東大介のスケジュールの都合(黒澤明監督の「七人の侍」に出ることになった。)で早くもここで退場なのはなんか惜しい気がする。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2009-01-10 16:21:55)
27.  次郎長三国志 第三部 次郎長と石松
シリーズ第3作。「次郎長と石松」というタイトルのわりには次郎長一家の出番は少なめで、どちらかと言えば「石松と三五郎」という感じで石松と今回初登場の追分三五郎との絡みが中心。前回、最後にチョロッと出てきただけでも抜群の存在感を放っていた森の石松が、今回いよいよ本格始動して大活躍。演じる森繁久弥の持ち味がじゅうぶんに発揮されていて面白い。そして今回もう一人初登場となるお仲さんが色気があって美しくて気風の良い姉御肌で博打で壷を振る姿もかっこよく、見てるこっちまで石松や三五郎と一緒に思わず惚れてしまいそうじゃないか。お仲さんが酔った勢いで石松と一緒に旅に出る約束をするシーン。このシーンの二人はなんかいい感じで、そういえばお仲さんを演じる久慈あさみって「社長シリーズ」では森繁久弥演じる社長の奥さん役だったよなと思って見たり。そのほか、博打で捕らえられた次郎長一家に会うためにわざと見張りをぶん殴る張子の虎造も面白い。しかし、今回はなんと言っても森繁久弥演じる森の石松のキャラクターと久慈あさみ演じるお仲さんにすっかり魅せられた一本だった。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2009-01-04 22:34:34)
28.  次郎長三国志 第二部 次郎長初旅
シリーズ第2作目。冒頭の婚礼シーンのあと、次郎長一家が旅に出るのだが、それを見送るお蝶さんを演じる若山セツ子の演技がとても良かった。ただ、今回はちょっと最初からしんみりするような展開だったため、この先、どうなることかと思っていたが、あとは全体的に喜劇タッチで、料理屋でのドンチャン騒ぎ(一緒になって騒いでいる料理屋の主人佐太郎役の堺左千夫が女房に呼ばれて「ああ、そうか。」と下へ行くシーンが笑える。)とか笑えるシーンが前回よりも増えている感じで前回同様楽しめた。佐太郎の奥さんのお徳さん(この名前を聞くとなんか「洲崎パラダイス 赤信号」の千草のおかみさんを思い出す。)の優しさはたまらないし、おきねの父が娘の恋人である仙右衛門と和解するシーンは思わず感動した。そして終盤に登場する森の石松を演じる森繁久弥の存在感がすごい。これは、石松が本格的に物語に絡み出す次回が楽しみだ。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2009-01-04 15:02:18)
29.  次郎長三国志 第一部 次郎長売出す
マキノ雅弘監督の「次郎長三国志」東宝九部作の第一作。今まで「サラリーマン清水港」とかパロディーものしか見ていなく、本家を見るのはこれが初めてだったのだが、とにかく出てくるやつらがみんな個性的で魅力があって楽しく、明るい作品でとても面白かった。今回出てくる子分たちの中ではとくに最初に次郎長の子分になる鬼吉。このキャラクターは演じる田崎潤に渋い役者というイメージが強くこういう役のイメージが皆無だっただけにそのハイテンションな演技がとても新鮮に感じられて面白い。彼が棺桶を背中にかついで走るシーンは同じ監督だからだろうかどことなく「決闘高田馬場」を彷彿とさせている。ほかにも浪曲をうたう張子の虎三(演じる広沢虎三は実際に次郎長伝の浪曲で知られている人。)なんかも実にいいキャラクターで楽しかったし、「青い山脈」で笹井和子を演じていた若山セツ子演じるお蝶さんは可愛い。大政と女房が別れるシーンは全体的に見て、少ししんみりするが、このシーンの大政役の河津清三郎の演技が素晴らしく、ここはこの映画の中でも名シーンの一つだろう。それにしても、新年一発目に見た映画がこれなのだが、とても満足いく作品だったと思う。第二部も楽しみ。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2009-01-02 11:17:23)
30.  東海道四谷怪談
四谷怪談を題材にした映画と言えば深作欣二監督の「忠臣蔵外伝 四谷怪談」しか見たことがなく、ストーリーもあまりよく知らない状態だったので新鮮な気持ちで見ることが出来た。映画としては低予算なB級ホラー映画ではあるが、それでも歌舞伎のような音楽と演出がとても効果的に使われており、溝口健二監督の作品とためをはるぐらいの映像美にもあふれ、単なる怪談映画では収まりきらないような芸術的傑作になっていて正直驚いた。中川信夫監督の作品を見るのはこれが初めてだったのだが、これ一本でじゅうぶん巨匠のひとりだと感じた。出演している俳優陣も天知茂のニヒルな伊右衛門はハマリ役だし、名前は知らないがお岩役の女優もなかなか不気味で、とくに毒薬を飲んで顔が醜く変わった直後の演技はかなりインパクトがあり印象に残る。「忠臣蔵外伝 四谷怪談」で荻野目慶子が演じたお梅は高笑いだけが印象に残るだけの存在だったが、本作では若き池内淳子で清楚なお嬢様という感じで良かった。何はともあれ、いかにも日本的な怪談映画でありながらそれ以上に日本的な美しさ、様式美を感じさせてくれる、そんな映画だった。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2008-08-14 03:19:27)(良:1票)
31.  巨人と玩具
この異様なテンションの高さは何なんだろう。とにかく巻頭の強烈な歌詞の歌からしてもうテンションが高く、映画が始まっても冒頭の山茶花究のまくし立てるような台詞回しに始まり、出てくる俳優たちがやたらとテンションが高い演技をしていて圧倒されっぱなし。そのまま最後までいってしまうのだからちょっとすごい。とくに高松英郎のテンションの高さは凄まじく、後半になって過労で吐血しているにもかかわらず、それでもテンションの高さを保っているのがすごすぎ。増村保造監督の初期50年代の作品はこれまでデビュー作の「くちづけ」と若尾文子との初コンビ作となった「青空娘」を見ていて2本ともハイテンポな展開だったけど、ここまでのテンションの高さはなかった。そんなテンションの高さを維持しつつ、現代でもじゅうぶん通用するような社会風刺劇としての面白さがあり、増村監督のパワーを感じさせる作品になっている。普通の女の子から大スターになるヒロインを演じる野添ひとみも明るい元気娘という前半の感じから、後半のワールドキャラメルを離れた後の少しタカピーな感じまでうまく出していて素晴らしい。彼女がステージで歌い踊っているシーンがやや悪趣味なのが増村監督らしい。先週見た「妻は告白する」のような深みはない作品だが、これもなかなかの傑作だと思った。
[DVD(邦画)] 8点(2008-07-24 15:19:03)
32.  青空娘
若尾文子といえば落ち着いた上品な大人の雰囲気が漂う女優、あるいはちょっと小悪魔的な魅力を持つ女優というイメージがあるのだが、増村保造監督との初コンビ作となる本作では、そのイメージとは違う明るく元気なヒロインを演じていて、川島雄三監督の「しとやかな獣」や「女は二度生まれる」でも印象的だった彼女だが、ここまで爽やかで清潔感溢れる魅力を感じるのは初めてだ。映画の面白さや完成度としては確かに「しとやかな獣」や「女は二度生まれる」、同じ増村・若尾コンビの作品なら「華岡青州の妻」のほうが上だと思うものの、この映画の若尾文子の明るい魅力にはとにかく「やられてしまった」という感じですごくかわいい。そして映画としても増村監督らしいハイテンポな演出も見ていて心地よく、軽い仕上がりになっていて、とても見やすく楽しいものになっている。脇のミヤコ蝶々や南都雄二もいい味を出していて楽しいが、とにかく本作「青空娘」は、何度も同じことをいうようだが、若尾文子、若尾文子の魅力に尽きる映画だ。
[DVD(邦画)] 8点(2008-07-08 20:28:32)(良:2票)
33.  あらくれ(1957) 《ネタバレ》 
とにかく荒々しい主人公を熱演する高峰秀子の演技に圧倒されてしまい、見終わった特にはなにかすごいものを見てしまったという気がした。とくに加東大介扮する夫との取っ組み合いの喧嘩のシーンはすごく、今まで成瀬巳喜男監督の映画何本か見てるけどここまでテンションの高いシーンのある作品はなかったし、ラスト近くでの主人公が夫が愛人と会っているところに乗り込んでくるシーンもものすごい。この二つのシーンは本当に今まで見た成瀬作品から考えれば異質であるし、青観さんが書かれてるように川島雄三監督の作品のような勢いを感じた。そんな中でもこの映画は運命に翻弄される一人の女の生き様を描いたドラマとしても見ごたえのある作品になっていると思うし、最初に書いたように荒々しく、強く、逞しいヒロインを演じる高峰秀子が圧倒的な存在感を放っており、演技力も抜群で素晴らしいの一言である。それから、最初の夫を演じる上原謙が陰険なダメ男というのも珍しい。いつもと印象が違いすぎてしばらく気がつかなかった。映画館のシーンは弁士がいたり、途中でフィルムが切れたりして舞台となった大正時代の時代性がよく出てる。劇中頻繁にかかるチンドン屋の音楽も印象的。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2008-06-23 00:16:40)(良:2票)
34.  人間の條件 第四部 戦雲篇 《ネタバレ》 
第四部。今回の見どころはなんといってもクライマックスとなる終盤の戦闘シーンだろう。戦争映画の大規模な戦闘シーンの場合、バックに壮大な音楽を流してシーンを盛り上げる演出が多いと思うが、そうせずに淡々と描く小林正樹監督の演出と梶を演じる仲代達矢ら俳優陣の迫真の演技のおかげで逆にリアルで緊迫感のある戦闘シーンとなっていて見ごたえじゅうぶんだった。この戦闘シーンを含めて上等兵になった梶の苦悩や、少尉として梶と再会した影山の運命など今回も重い展開。とくに発狂した小野寺兵長を梶が殺すというラストは偶然そうなったとはいえ、かなり衝撃的だった。このことで第二部のラストで楊春蘭が言っていたように本当に「鬼」になってしまった梶。(劇中、自分自身で言ってる。)あとの2本がこの先、どうなっていくのか見るのがちょっと怖い気もする。
[DVD(邦画)] 8点(2008-06-18 23:18:53)(良:1票)
35.  人間の條件 第三部 望郷篇 《ネタバレ》 
老虎嶺から軍隊内へと舞台が変わった第三部。第二部までと比べてかなり重く、軍隊内でのリンチなど前作までの捕虜虐待以上に壮絶だった。今回は劣等兵である小原二等兵が自殺に到るまでの経緯がとても悲痛に描かれ、見ていて痛々しいのだが、そんな小原に思わず感情移入してしまい、この小原のエピソードはとても印象に残った。小原を演じる若い田中邦衛も後の「若大将シリーズ」で見せるコミカルな青大将・石山とは全く違う内向的なキャラクターを見事に演じていて素晴らしかった。そして、梶に会うためにはるばる訪ねてきた美千子が梶との一夜を過ごす場面も切なくて悲しい。
[DVD(邦画)] 8点(2008-06-12 14:48:31)
36.  人間の條件 第二部 激怒篇
第1部では重い内容の中でも梶が妻といるシーンだけは雰囲気が和んでいたが、この第2部ではその二人のシーンすらも重くなり、梶が人間として苦悩する姿など第1部に比べて見ていてかなり辛い。高をはじめとした脱走を企てたとされる捕虜たちが処刑されるシーンは直接的な残酷な描写がないにも関わらずショッキングに感じた。それでもほとんどが重々しいシーンばかりの辛い内容なのについ引き込まれてしまうのは第1部に続いて完成度の高い作品という証拠だろう。この第2部では梶の妻・美千子の悲しみがよく描かれており、また演じる新珠三千代もその悲しみをうまく表現する名演を見せており、素晴らしい。以前、小林正樹監督が男性的な作風の監督であると何かで読んだことがあるが、この作品の美千子を見ていると、やっぱり脚本担当の松山善三共々木下組出身ゆえか女性の描き方もうまいと感じる。
[DVD(邦画)] 8点(2008-06-04 20:34:47)
37.  人間の條件 第一部 純愛篇
小林正樹監督が五味川純平の戦争文学を映画化した6部作、上映時間の合計が9時間半という超大作の第1部。本当にこれは日本映画なのかと思うくらいに日本人による中国人捕虜に対する迫害がリアルに描かれていてビックリ。捕虜たちに対し非道な扱いをする現場監督 岡崎役の小沢栄太郎や所長役の三島雅夫の演技も憎々しく、「シンドラーのリスト」ほどではないが、それに近いものを感じてとても重苦しく辛かった。でも、普通、日本の戦争映画ではまず取り上げないような日本人の負の歴史を目を背けずに真正面から堂々と描いているところは感心させられる。下にも書いておられる方がいらっしゃるが、この第1部だけでもじゅうぶんに見ごたえがあるし、傑作だと思う。あと5作、たぶん回が進むにつれて重苦しさが増して来るんだと思うけどぜひ最後の第6部まで見てみよう。
[DVD(邦画)] 8点(2008-05-27 14:29:23)(良:1票)
38.  風船
三橋達也のダメ男ぶりが「洲崎パラダイス 赤信号」よりパワーアップしていて見ていて本当に腹が立つし、二本柳寛の役柄や森雅之演じる主人公の妻もなんか嫌なキャラクターであるので見ててちょっと鬱な気分になるし、ストーリーも川島雄三監督の映画としては暗いと思うものの、そのような状況下にいても明るく健気に笑顔を振りまいている純真無垢な娘・珠子を演じている芦川いづみの存在があることによって、かなりその暗さが和らいでいる。はっきりいって彼女がいるといないとではこの映画の印象は全く違うものになっていただろう。川島監督の映画としては個人的には「洲崎パラダイス 赤信号」や「愛のお荷物」のほうが好みではあるが、芦川いづみに2点ほどプラスして8点。そうそう、劇中出てきた映画館でかかっていた「ビルマの竪琴」の予告編が楽屋オチ的で川島監督らしい。
[DVD(邦画)] 8点(2008-01-23 00:25:37)(良:2票)
39.  愛のお荷物
冒頭のハイテンションなナレーション(「幕末太陽伝」と同じ加藤武)から一気に引き込まれた。その後すぐの国会での菅井きん演じる女性議員(「ゴジラ」)と山村聡演じる大臣との質疑のシーンから川島雄三監督らしいテンポのいい演出で見ていて楽しいし、それでいながら答弁に対して周りの議員から野次が飛んだりするのもリアルに演出されていて感心した。ほかにも川島監督ならではの笑いが随所に盛り込まれた喜劇映画で、電話越しに婚約者にドラムを演奏して聴かせるフランキー堺(本物のドラマーだけあって上手い。)とか、仮病を使う東野英治郎が最高に笑える。一人三役を演じている三橋達也とかこの後、「暖簾」で再び川島監督と組むことになる山田五十鈴も出ていてなかなか豪華で贅沢なキャスティング。後に裕次郎夫人となる北原三枝は「狂った果実」を見て以降悪女というイメージが個人的には強いのだけれどもこの作品では全く違う魅力を出していてとても良かった。全体的な内容としては少子化の現代に見るとちょっと時代を感じてしまうのも事実であるが、非常に楽しい映画だった。
[DVD(邦画)] 8点(2007-12-18 14:06:03)
40.  洲崎パラダイス 赤信号 《ネタバレ》 
最初は「赤線地帯」のような娼婦たちの生き様を描いた作品かと思っていたが、男女の腐れ縁を描いたラブストーリーだった。川島雄三監督らしいユーモラスなシーンもあり、同じく男女の腐れ縁を描いている「雪国」や「秋津温泉」ほど見ていて暗い気持ちにはなることはなかった。また、それでいて人間ドラマが非常に深く描かれた傑作に仕上がっており、川島監督がやっぱり並の監督ではなかったと実感できる。出演者の中では新珠三千代が今まで見た役柄のイメージとは少し違う印象の役(とはいえはじめはちょっと気づかなかった。)を好演していて新鮮で良かった。ダメ男を演じる三橋達也も素晴らしい。でもやっぱ出演者の中でいちばん印象に残るのは芦川いづみ。この間見た「愛と死の記録」では印象が違いすぎて違和感しかなかったのだが、本作ではこれでもかと言わんばかりに可愛さを振りまいていてとてもキュートだった。ほかにもチャンバラごっこに興じる子供たちなど、製作当時の時代風景も印象的だ。ラストシーンも余韻を残す終わり方でよい。
[DVD(邦画)] 8点(2007-12-04 18:12:49)(良:2票)
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