41. 007/ドクター・ノオ
初見。今でも退勤タイムカードに007とあると「!」反応してしまうゼロゼロセブン。ジェームズ・ボンド登場第一作は「アラビアのロレンス」に次ぐ興行成績を上げて後々50年超に及ぶシリーズ化となったのも頷けるものでした。スコットランド労働者階級という出自から断固反対するイアン・フレミングを押し切って起用したショーン・コネリーは、ボンド像を確立させた魅力溢れる姿。帽子を投げる小ネタ、ワールドワイドな舞台、敵に捕まる→脱出する(本作はチョッと安っぽかったですが)→悪の本拠地に乗り込む→ラスボスとの一騎打ち→イチャイチャキスシーンでお開き。スパイアイテムは無いものの、シリーズフォーマットも確立されています。「寒い国から帰ったスパイ」とは違って能天気・・もとい、明朗快活なアクション娯楽作秀作です。 余談ではありますが、「スペクター」の存在を知らしめたドクター・ノオが桂福團治師匠に似ている、あぁ、聴きに行きたい!チケット購入したのは私だけでしょう。 [インターネット(字幕)] 8点(2021-11-12 13:17:46)(良:1票) |
42. ヘブンズ・アバーブ
《ネタバレ》 事務手続き間違いで派遣された牧師(ピーター・セラーズ)が巻き起こす大騒動。今作に於けるセラーズは深い信仰心に基づく人間離れした神のような人物を、持ち味である「いかがわしさ」を封印して演じており、その語り口に魅入ります。チョコッと笑わされはするものの、大部分が皮肉な視線がチクチク刺さる風刺劇。「福祉で生活出来るから働くなんて(アホらしい)」な意地汚いド腐れ外道ホームレス一族を筆頭に全員が見せる、信仰 < お金、過激な姿が・・ 間違ってはいないのでしょうが・・もうね・・ため息が出ます。 一律平等で、働く事が出来る人にも神の名の下に施しをする、ここが間違っていると思わされました。 ここまでズタズタにされても変わらぬ穏やかさを見せる牧師が切ない。意外過ぎる幕切れも味わい深い秀作です。 [DVD(字幕)] 8点(2021-07-12 14:18:57) |
43. 空から赤いバラ
鑑賞後の確認で、監督、脚本、撮影、タイトルデザイン、それぞれが超一流というのも納得の仕事ぶり。地中海を舞台に眩い健康美ラクエル・ウェルチ心憎い粋な台詞での全編に亘っての大活躍。彼女に絡むイケメン、ブサメン(失礼)、悪はどっちか最後まで判断がつかなかった二転三転四転五転・・・見応えたっぷりの展開結末。ルパン三世実写版のような痛快冒険アクションを芯から楽しめた快作であり傑作です。 [DVD(字幕)] 8点(2021-07-01 13:58:05) |
44. 雨の午後の降霊祭
《ネタバレ》 降霊ものとアッテンボローの組み合わせでおどろおどろしさに身構えていましたが。まさかの展開で憤りともどさしさに支配された2時間でグッタリ。精神は病んでいても犯行計画は理詰めで的確なマイラと、幼女とその母親への気遣いを見せながらも犯行実行役のビリー。妻の暴走を食い止めようとしても言い負かされて押し切られる夫にもどかしさで身悶え。引き立て役にもなっていない捜査当局ももどかしい。誘拐幼女殺害シーンは描かれていません。自主規制したのかもしれません。私はビリーが殺害せず発見されやすいあの場所に寝かせたと思います。彼のクレイトン夫人をマイラ同様に悲しませてはならないとの思いと、マイラを絞首刑にさせはしない思いを感じました。マルチな映画人アッテンボローの役者としての絶品振りが記憶に刻まれる傑作です。 [DVD(字幕)] 8点(2021-06-14 16:17:40) |
45. 影なき狙撃者
冒頭の洗脳シーンはイマイチ退屈でしたが、以降は冷戦の最中で共産圏上映禁止措置はさもありなんといえる見応え充分の展開。シナトラは、意味不明だけど迫真の格闘シーン(指は大丈夫かと思ったら折れていたという)を見せるものの、物語上浮いていたジャネット・リーとの絡みも併せて、母と息子の引き立て役の感が。MIPアンジェラ・ランズベリーは、今、私が観ても血圧計が振り切れるどす黒さであり、息子(ローレンス・ハーヴェイ)のこれ以上無い哀れな姿と併せて、当時の観客の憎悪を一身に浴びていたのだと想像します。反共を声高に叫ぶ者の正体を見るのは、映画の絵空事でないものを感じた秀作です。 [DVD(字幕)] 8点(2021-05-19 23:47:02) |
46. 価値ある男
三船敏郎海外初進出メキシコ映画は掘り出し物珍品にして傑作でありました。妻子がありながら真面目に働くという概念が無い飲んだくれで粗野な最低男というキャラを引き受けると共にメキシコ人として何の違和感も無い熱演ぶりが凄い(喝采) 「価値」の中身を際立たせた起承転結も見事でした。 [DVD(字幕)] 8点(2021-02-27 19:50:25) |
47. おかしなおかしなおかしな世界
口八丁手八丁な著名コメディアン軍団(ミッキー・ルーニー、ピーター・フォークしか分からず:泣)のMIPはエセル・マーマンで、目立ってナンボじゃいの心意気を感じるド迫力に釘付けに。身体に隠し持ったキーを男二人がかりで取り上げられるあられもない姿は飲んでいたコーヒーを吹いてしまった大爆笑シーンでありました。スペンサー・トレイシーはそんな喧噪の中にあって立っているだけで絵になる別格な存在感だったので逃走劇は残念な姿でした。華やかな最期を遂げる若しくは美味しいところを全てさらっていく姿を見たかったものです。特筆ものの手に汗握るカースタント&飛行スタントにスタンディングオベーション。興行的に大成功を収めたというドタバタコメディ超大作はあまり長さを感じる事無く大いに楽しませてもらえました。 バスター・キートンは何処に? やっとこさ見つけたワンシーン台詞一言68歳のお姿は哀しいものがありました。 [DVD(字幕)] 8点(2021-02-20 21:29:00)(良:1票) |
48. 黄金の七人
《ネタバレ》 初見。11PMのテーマ(違うか)に乗せてオープニングからの作戦決行模様に目が離せない。ちょいちょい訪れるピンチは手に汗握る程で無く、惚れ惚れする仕事ぶりで7トンの金の延べ棒をゲットしちゃう。そこからの裏切り裏切られ模様は血の雨どころかパンチ1発繰り出される事も無い。たどり着いたアチャー!な結末(あの場に出くわしたとして1本12㎏を持って帰れるかなぁ、気合でいけるかなぁ)。上等な小春日和の如き快作で大いに楽しめました。欲を言えば実働部隊6人のキャラ分けをして欲しかったところです。 [DVD(字幕)] 8点(2020-11-25 01:14:01) |
49. ガス人間第一号
《ネタバレ》 トンデモな題名に興味そそられての鑑賞。オープニングから「これは当たりかも」寄せた期待を裏切られる事無く最後まで一気に見終えました。破滅に向かって突き進む八千草薫と土屋嘉男の恋模様を黙って見守り最期まで付き従う左卜全、3人共々忘れ難い名演です。変身の件は添え物に見えて別にガス人間で無くてもいいような気がしますが、模倣犯が続出する事に対して警察が抹殺決断に至る展開は見事で、やはり必要なキャラクターだったのだと思います。時間が経って湧いてくるツッコミどころも鑑賞中には八千草薫の凛とした女性像の前にはカケラも浮かびませんでした。題名とのギャップが激しい名作です。 [インターネット(邦画)] 8点(2020-07-05 01:57:51)(良:2票) |
50. バルジ大作戦
初見。ヘンリー・フォンダは想定内としても、お目当てダナ・アンドリュース、ロバート・ライアンまでがモッサリして平板な人物像であるのにガッカリもいいところ。この戦闘史実に無知な私でも雪景色の直後のシーンに雪が残っていないのに???。昼と夜が突然入れ替わる某作品を思い出してしまう。ヘスラー大佐が居なかったらリタイア確実。この戦争マニアの軍人魂にもうメロメロ。私のアニメ界のヒーローの一人デスラー総統が重なる絶品ロバート・ショウに点数の全てを。 [DVD(字幕)] 8点(2020-06-05 02:07:49) |
51. ミネソタ無頼
《ネタバレ》 冒頭、無実の罪で18年収監されているミネソタ・クレイの脱獄シーンの適当感に「駄目だハズレだこりゃ」と思ったのですが。意外や意外!!!掘り出し物で忘れじのマカロニ・ウエスタンでありました。視力が失われてゆく中で身の潔白を証明する為の闘いに挑むミネソタ、頭悪そうな小悪党オルティス(フェルナンド・サンチョ はまり過ぎ)、狡猾な大悪党フォックス、三人の男の間を立ち回る蓮っ葉エステラ、父は死んだと聞かされている娘ナンシー、それぞれキャラが立っていて展開が実に見応えあるものでした。エステラを始末するシーンで監督らしからぬ見せない演出が印象的。そして私的にウエスタン屈指の名場面であったクライマックスの暗闇での決闘模様は息を詰めて見入るもので、妻の敵でもあった汚いにも程があるフォックスのやり口を粉砕したナンシーのブレスレットに痺れました。 私が観たのはハッピーエンド版で味わい深いものの面食らったところもありました。 ナンシーに父であることを告げて力尽きる版もあると言うことです。これはありきたりなので観たいとは思えません。 [DVD(字幕)] 8点(2020-04-27 02:29:59) |
52. 偽の売国奴
《ネタバレ》 実話ベース。よく練られた脚本で華のある見応え充分の作品。1942年、ドイツ国内の製油所情報をイギリス情報部に流す任務を無理やり引き受けさせられるスウェーデン国籍の実業家エリック・エリクソンの奮闘記。大局観は違えどもやり口はナチスと大差ないコリンズにやはり腸が煮える。作戦遂行の為の疑似カップルに芽生える恋愛模様と二人の正体が何時ばれるのか目が離せず、遂に別れの時を迎えるシーン(リプレイタイム)でのウィリアム・ホールデン&リリー・パルマーにナチスのえげつなさを思い知る。そこから結末までのエリックの冒険譚が長くて悲恋の余韻が消えてしまったのは残念。お待ちかねクラウス・キンスキーは台詞一言ながら、ウィリアム・ホールデンの腕の中で息絶えるという美味しい役どころで存在感がありました。 [DVD(字幕)] 8点(2019-12-14 02:13:50)(良:1票) |
53. 寒い国から帰ったスパイ
《ネタバレ》 原作未読。念願叶っての鑑賞。オープニング、モノクロ画面に流れるピアノに、ジョン・ル・カレ作品テイストが滲み出る。想定以上に映画としての飾り気皆無の作品で観る私もCONTROLに騙されてしまった。リーマスはどの時点で真相を知ったのだろうか。人並みに恋をした事が命取りとなった諜報員は応報だとしても、一市民である彼女を使い捨てカイロのように扱うCONTROLのはかりごとに腸が煮える。壁の上でのリーマスの胸中がやるせない。 無骨な中に一瞬見せる微笑み、淡々とした仕事ぶり、目が据わった(怖かった)迫真のアル中模様、寒い国へと戻って行く最期。リチャード・バートン絶品演技を堪能。 『発掘良品』に感謝。 [DVD(字幕)] 8点(2019-12-12 16:32:05) |
54. 飛べ!フェニックス
《ネタバレ》 「肉弾鬼中隊」(1934) に大きな影響を受けていると思われる本作は、生き残りを懸けた男達の人間模様に於いてアルドリッチ節全開にして見応え十二分。一押しはリチャード・アッテンボロー。ジェームズ・スチュワートとハーディ・クリューガーの間に立っての物事の本質を見極めた調整役で、プロペラが回った際の感無量な姿にこちらも感無量「本当にお疲れ様でした。良かったですね」 着陸シーンが無かったので-1点だけど贅沢言ったらダメですかね。 [DVD(字幕)] 8点(2019-08-03 18:38:54) |
55. 泥棒貴族
《ネタバレ》 掘り出し物の傑作。脚本、キャスティング、音楽、舞台セット、全てが絶妙の小粋なクライムコメディ。最後の最後まで騙されてしまったのが心地良く余韻に浸ります。本作のMVPと言えるハーバート・ロムが絶品でありました。余談ながら、本作のリメイクがモネゲームと知り心底仰天。傑作を超絶愚作に貶めた罪深さにあの時の煮えくり返る思いが甦ります。 [DVD(字幕)] 8点(2019-06-24 00:16:18)(良:1票) |
56. イカリエ‐XB1
「スタートレック」「2001年宇宙の旅」に影響を与えたと言われる1963年チェコスロバキア産SF。古臭さを感じさせないシャープな造形美は特筆ものの美しさ。核兵器の醜悪さが語られているものの、未知への探求心に満ちたストーリーで未来への希望を表す結末が印象深いプロパガンダ臭皆無の傑作。 [DVD(字幕)] 8点(2019-06-16 23:34:17) |
57. ウィル・ペニー
《ネタバレ》 藤沢小説のようなたそがれカウボーイを見事に演じきっているチャールトン・ヘストン。こんな演技が出来るのに心底仰天。 いしだあゆみが思い浮かんだジョーン・ハケットを愛していながらの 「too late」 「遅すぎるという事は無い」考えの私に突き刺さった堪らないシーンでありました。 ドナルド・プレザンスが西部劇に出演でしかも長髪(初見!)彼の息子役がブルース・ダーン 物凄いキャスティングで存在感はありまくりですが、エキセントリックぶりの空回り感が惜しい。 主役二人の名場面に乱入してきた時には怒り心頭「何で今やねん、引っ込んでろ!」 味わい深い西部劇。名作です。 [DVD(字幕)] 8点(2019-04-21 21:05:45) |
58. 五瓣の椿
《ネタバレ》 原作未読。牢屋で針仕事をしている時の憑き物が落ちたような顔つきと丸梅の妻の自害に、復讐の虚しさを味わう事に。青木の人物像は山本周五郎作品ならではのものであり、「上意討ち拝領妻始末」に続いての加藤剛の若かりし姿に見惚れました。長さを感じさせない力作。 [DVD(邦画)] 8点(2018-11-28 02:31:40) |
59. 上意討ち 拝領妻始末
《ネタバレ》 掘られた穴に並ぶ息子夫婦の亡骸にすすり泣きが止まらなかった。二人の愛情に感動して信念を貫き通せと叱咤激励した父親だが、この結末を解っていただろうに、これでよかったのだろうか、生き長らえるほうがよかったのではなかろうか。そこから結末までの展開は、引導を渡すと思われた浅野が倒されて誰が勝てるのかと思った途端の鉄砲。場内から「何と!」と声が上がる。御家第一の名の下に於いて身勝手さ卑劣さで覆われた展開にため息しか出ない。三船敏郎は何時も通りの重厚感で見惚れるが最期の演出がくどかった。最も印象深かったのが御側用人演じる神山繁で酷薄さで三船敏郎も圧倒しており、その最期に本作で唯一溜飲が下がった。小林正樹・橋本忍、最強コンビ極上の作品。 [映画館(邦画)] 8点(2018-11-28 01:33:06)(良:1票) |
60. 黒い画集 第二話 寒流
《ネタバレ》 原作未読。遊び慣れていない生真面目支店長が融資先の女に溺れ、「惨めな人は嫌い(=常務より見劣りする)」と捨てられ、常務への私憤(大部分)公憤(ちょっぴり)入り混じった反撃も悪あがきに過ぎなかった。清張作品ならではのやるせなさを嫌と言うほど味わう事に。風間重吉のイメージがこびりついている池部良の奥歯噛み締めている惨めっぷりは見応え充分。銀行の恥部に触れた場面での丹波哲郎、志村喬は流石の存在感。特筆すべきは平田昭彦演ずる常務の厭らしさで、ジェームズ・メイソン顔負けの腹黒さ全開の送別会に於けるスピーチが圧巻。新珠三千代が奈美役が荷が重かった事を差し引いてもテルミンの不穏な音色に包まれるサスペンスの一級品。 [DVD(邦画)] 8点(2018-11-18 12:16:12)(良:1票) |