41. 世代
《ネタバレ》 アンジェイ・ワイダの初監督作品らしいが、この時点でワイダ監督の映画におけるスタイルは確立されている。 ナチスの占領下にあっても「労働者」という人生を楽しく過ごす青年が、美女ドロタが旗揚げした地下組織運動に参加することで人生観が変わっていく。 運動に参加するきっかけが、ドロタへの一目惚れというところに、この映画の甘い匂いを感じさせる。 作品の随所に描かれる、若者と、違う世代の人々の会話が、とてもいい。 「俺たちは労働者だ。これからは名前で呼び合おう」と若者に言う中年男性。 「辛い老後だな」と老人に同情する若者に、 「お前さんもいつか同じ目に逢うさ。だがワシはお前が好きだ。違っているといいが……」 死と隣り合わせに生きる人々の胸が熱くなる会話だ。 そして、やはりラストは名シーンである。 ドロタの運命と主人公スターショの運命の交錯が、希望を描きながらも涙を誘ってしまう。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2010-06-30 12:57:03) |
42. 熱いトタン屋根の猫
《ネタバレ》 下のレビューで書かれた私なりの答えです。 どうしてポール・ニューマン演じる次男は妻を許す気になったか? 一つは、他のレビュアーの言葉を借りて「最後まで熱いトタン(修羅場)」から飛び降りず、兄夫婦を相手に一人で闘い続け、最後は父親に最高のプレゼントを送ったからだと思います。 もう一つは、本当に妻を許したのかという疑問です。 妻は兄嫁に散々な言葉を浴びせられました。字幕でしたが、あれは酷すぎますね。 次男は妻に助け船を送り、部屋に入ってキスをして、ベッドに枕を投げます。 あの枕は、私には「妻への愛」というより、父へのプレゼントを本物にする気持ちの表れだと思いました。 違うという方もいるかと思いますが、私に言わせれば、沢山出回っている本作の解説本の方が間違っていると思います。 意見には個人差があります。 E・テイラーの魅力満載の作品です。 私はP・ニューマンの大ファンだけど全く魅力を感じませんでした。本人も、この作品の演技が嫌いと言ってた記憶があります。 でも、この作品の主人公はP・ニューマンだと思います。だって、この作品のテーマは「父と息子」なんですから。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2010-06-30 12:48:40) |
43. 泥棒成金
私はどうしてもストーリーが面白くないと評価を上げないタイプなので、退屈極まりないといった感想しか持てません。 なんとなく、「ルパン三世」を書いたモンキーパンチさんが参考にされたような気がしてなりません。ルパンでも似たような話があったと思います。 私はルパンの方を先に観てるので、こういうスリルを感じさせない映画をヒッチコックスリラーと呼びたくはありません。 時間を無駄にしました。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2010-05-21 21:56:21) |
44. めまい(1958)
《ネタバレ》 ジェームズ・スチュワートって既に50歳でしょ? こんなオヤジに、なんで20代の美女が恋をするのか、ヒッチコック作品を観るたびに疑問を抱きます。 冒頭から観客の心を掴むテクニックは他のどの作品よりも素晴らしい。 しかし、犯行が成功した後も、主人公のいる近辺に住んでいるキム・ノヴァクは不自然でならない。 私が東京で事件を犯したら最低でも大阪へ逃亡すると思う。 おまけに、死んだはずのヒロインに似た女性を見つけて、同じスーツ、同じ髪型した上、キスまでしておいて、女性が身につけたブローチ一つでようやく彼女が本人だったと知る主人公。はっきり言ってマヌケです。 でも、これらのシーンは、キム・ノヴァクのファッションショーだと気持ちを切り替えれば、なんとか我慢出来ます。 [地上波(字幕)] 6点(2010-05-19 23:05:08) |
45. わらの男
《ネタバレ》 私も「鉄道員」よりも好きな作品と言いたい。 DVDの解説によると「わら(の男)」とは、わらでつまった頭を抱えているという、判断能力のないことを意味するらしい。 幸福な家庭を持つ男と、将来に夢を持たず、トト(宝くじ)を買い続ける美女。 全く別世界に住む、お互いの心が近づいていく過程がとても自然で、彼女がどの時点で主人公アンドレアを死ぬほど愛するようになったのか、もう一度観てみないとわからないくらいだ。 浮気に気付いた優しい奥さんの黙認が、アンドレアにとっては、とても痛々しいだろう。 因みに、この映画はハッピーエンドでは終わっていない。 それは、少年を間に挟んで泣きながら抱き合う夫婦。そのシーンに被さる妻の残酷なモノローグがこれからの未来を暗示しているからだ。 [DVD(字幕)] 10点(2010-04-17 13:54:19) |
46. 野いちご
いかにも、このサイトでしか高評価されない映画だと思います。アマゾンのカスタマーレビューも読んでみましたが、たぶん同じ人が書いているのでしょう。文脈がほとんど同じです。名誉博士の授与を受け取りに行く老人が美女達と一緒に、過去の幻想に追われながら一泊二日の旅をする、こじんまりとした映画です。 私が、このサイトで探し求めている映画と言いたいところですが、何せ主人公が、片足を棺桶に漬かった老人なので、この映画の素晴らしさを実感できるのは、当分先のことだと思います。 90分で終わるので疲れませんが、若い人には向いてません。年寄り向きです。 数十年後にもう一度観たいけど、ディスクが存在してるか心配です。 野いちごを出すシーンなど、シャレードが多すぎて、ちょっと疲れる映画です。 [地上波(字幕)] 5点(2010-03-10 03:30:58)(良:1票) |
47. 夜行列車
このサイトでいう「いろんな意味で警告したい映画」という表現が一番ピッタリきている。何せ、最後まで観賞するのが辛かった。よくこんな映画をテレビで放送したと思う。 恐らく監督の独りよがりなのだろう。 撮影前にどういう話なのか、スタッフは納得したのだろうか。 まず、主人公が誰かわからないし、ストーリーの主軸がない。 一時間くらいして、いきなり殺人犯人が表れ、停車した汽車から逃げた犯人を乗客全員で追いかける。なんなんだ? これ。 別のサイトでは「グランドホテル」に似た群像劇。秀作と書かれていたが、ミケランジェロ・アントニオーニや、ゴダールの後期の作品が好きな人は、絶賛するかもしれない。 全編流れるスキャットや主演のルチーナ・ウィンニッカの美しさは、1959年の日本人には特別なものを感じたかもしれない。 でも、ただそれだけの作品。 [CS・衛星(字幕)] 2点(2009-12-17 00:51:15) |
48. 灰とダイヤモンド
当時のポーランドの社会情勢と共産主義とは何か理解しておかないと納得ができないと思う。 先日、この監督作品の特集番組が放送されたようだが、恐らくそれを観た人の評価は高くなると思う。 私は観ていないので、細かい演出まで理解できなかった。 暗殺に成功した主人公と殺された人間が抱き合う事で「我々は同じポーランド人なんだ」なんて、何も予備知識なく観賞した人間がどうして理解できるというのだ? 点数が高い人は恐らく高齢者で「良」の評価が沢山ついているのも、これまたこの時代を知る高齢者だと思う。 最初のレビューの方で「理解出来ないからと言って点数を下げるな」なんてコメントを書いてあったが、とんでもない話しである。 映画とは、社会を理解出来ない人に送るメタファーを交えたメッセージなのだ! 理解出来ない隠喩に価値は見出せない。 とは言っても、私にとっては10年後には価値が変わりそうな映画にもなりかねない不思議な作品である。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2009-12-12 20:38:57)(良:1票) |
49. 誓いの休暇(1959)
《ネタバレ》 このサイトで、ちょっと期待しすぎたせいか、いいのか悪いのか判断に苦しむ作品でした。 主人公にイラっときてしまいました。でも純粋で不器用な男なんです。母親と暮らせる二日間を、パンを千切る様に他の人たちに分け与えているのですから。幸せは、こういう人に訪れてもらいたいものです。 「反戦」のメッセージは私には伝わってきませんでした。残虐シーンがないまま、主人公を「英雄」と呼んでしまうと、「西部戦線異状なし」のような意図は伝わらないと思います。 [ビデオ(字幕)] 8点(2009-10-07 20:31:31) |
50. 狂った果実(1956)
津川雅彦さんと長門博之さんはそっくりだなぁと思ったら兄弟なんですね。 本作はドストエフスキーの「白痴」をモチーフにしているとのことですが、北原三枝さんが、あまりにも純粋で綺麗すぎて上品だから、ナスターシャのような裏側に存在する影が全く見えてこないんです。ストーリーがギクシャクしている点がそこにあると思うんです。 でも、まあいいか。 北原三枝さんは顔も小さくて脚も綺麗で最高の美人女優だと思います。 これだけ美人で演技力のある女優さんが今存在するでしょうか? 残念ですが、石原裕次郎さんはデビュー作とはいえ、ダイコン演技です。「ハハハ。チェ。チクショーめ」……(ガックリ) [DVD(邦画)] 5点(2009-09-24 09:08:12) |
51. 渚にて
《ネタバレ》 この時代に、人間ドラマだけで世紀末を描く映画も珍しいのではないでしょうか? 近年CGを屈指させながら、偽善的な人間ドラマを描く邦画の評判の悪さを、日本の製作者たちは、本作を観て勉強してもらいたいです。 ですが、本作もタイトルだけでは観賞意欲は全く湧いてこないし、それぞれの人間ドラマの絡みがほとんどないので倦怠感を感じます。 冒頭で登場するアンソニー・パーキンス夫妻は途中からほとんど描かれないので、どうなったんだ?と思いました。 今の情報化社会で知られている現状と比べて、放射能について、どの程度の知識を踏まえて原作が作られたのかも疑問です。 2時間を超える上映時間はとても長く感じました。 画期的ですが、私も歴史に残る映画とは思えません。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2009-09-07 18:14:46) |
52. 鉄道員(1956)
冒頭でお父さんが同僚をからかった時、横で爆笑している少年の顔が最高ですね。 私は他のレビュアーと違って、この時代に作られたイタリアのホームドラマは限りなく昭和のホームドラマに似ていると思います。 ただ一つ違うことは、日本のドラマは母親主体の所謂「母性愛」をテーマにしたものが多いのですが、イタリアは父を尊敬する息子という設定が主になっているものが多く感じます。もちろん例外も多々ありますが……。 父の尊厳は父親自身が固辞するものではなく、その家族全員が認めるもの。この時代のイタリア映画の多くにそれを感じます。 こんなお父さんだったら、ちょっとくらい酒飲みだろうと私は簡単に尊敬しちゃいます。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2009-09-04 21:35:58)(良:1票) |
53. イヴの総て
《ネタバレ》 今ならワンコインで買えてしまう名作中の名作。愛情と嫉妬と野望が後半になって突然グジャグジャに絡み合って、誰が善人で悪人なのかわからなくなってしまうのが凄く怖い。 ガス欠で止まった車の中でマーゴ(ベティ・デイビス)は本音を話したからこそ、イヴの人間性が後半浮き彫りになってきていると思う。 1950年の芸能界って、こんな感じ? 今だって、清純派アイドルがシャブ打って、性器にタトゥーやピアスを指して、SMに酔いしれるプライベートライフに我々は全く気付かずにいる現状。 いつの時代も人間は欲望に取りつかれてしまう生き物なのかなぁ… この映画が名作と呼ばれ、普遍的と呼ばれてしまうのが、なんとも皮肉に感じます。 死ぬまでに一度でいいから観賞されることをお勧めします。 [DVD(字幕)] 9点(2009-08-29 12:39:53) |
54. 東海道四谷怪談
以前、どっかの映画評論家が「数ある『四谷怪談』の映画の中で最高傑作がこれ!」と言ってたのを覚えています。 主人公は、お岩ではなく、伊右衛門だということを忘れてはいけません。 伊右衛門に降りかかってくる数々の煩悩の誘い。私たちにも伊右衛門のような後ろめたい気持ちがあるからこそ感情移入できるのです。 低予算映画という感想がありましたが、脚本、セット、カメラワークなど、大量生産時代に作られた中では、かなり「力」入れて作ってあると思いますよ。 [DVD(邦画)] 8点(2009-08-23 14:24:59) |
55. 野ばら
PTAのお母さん方は絶対に文句言わないでしょう、この作品。子供の時、児童会館で無理矢理観させられて、なんだか取っつきにくいオープニングに早く終わらないかなぁなんて思ったりしましたが、どんどん惹き込まれていって、心から少年を心配した記憶があります。 家に衛星放送を入れなければ、この歳になって観ることはなかったでしょう。 現代の価値観では万人に受け入れられることはないでしょうけど、当時感動した私たち大人が、この作品を子供たちに受け継いでいくのは、もはや義務かもしれません。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2009-08-12 03:50:26) |
56. 陽のあたる場所
《ネタバレ》 どっかで聞いたことある話だなぁと思ってたら……そうだ! 富良野から、かぼちゃ持って上京してきた五郎さんだった。もし機会があれば、本作を観た後、「北の国から92 巣立ち」を鑑賞してみてください。「北の国から」を知らない人でも単独で面白い作品ですから。 まぁ、それは置いといて、主人公の青年、ジョージはとても純粋な奴なんです。後半の裁判で彼は全てを正直に告白している。それは映像でちゃんと描かれてあり、観客にも彼の誠実さは伝わっているはず。 問題は映像で描かれていない部分。この時彼が何を思っていたのか、何を考えていたのか、ジョージ本人でさえ分からない彼の本当の心理を、私たち観客が見抜けるか否かで本作の評価は大きく変わるだろうと思います。 因みに、吹き替えは途中でオリジナル音声に変わることがないので、とても見やすいです。 [DVD(吹替)] 9点(2009-07-22 01:10:44) |
57. 白痴(1951)
う~ん……何となく期待し過ぎたのか、鑑賞後の印象は、可もなく不可もなくといったところです。 森雅之演じる青年は「白痴」というわりには、立派な事を沢山言っているし、「白痴」という病気(?)がこの程度のものなら、私の周りには「白痴」以下の人間が沢山います…というと、そ~か! ラストの久我美子のセリフはそれが言いたかったのか。 レビューなんか書いている時点で、私自身も反省しなきゃいけない。 しかし、全編、今の価値観というか、常識が違い過ぎるせいか、感情移入しづらいです。 本作は、50年代に作られたソビエト映画の匂いがプンプンします。原作(本)以上に影響を受けているように感じました。 原節子さんと三船敏郎さんは、役にはハマってますが、観る者の期待を裏切っています。観客は、こういう二人を観たいとは思わないはずです。 長い映画なので、時間に余裕がある人はどうぞ。 [DVD(邦画)] 5点(2009-06-20 00:03:12) |
58. 鶴は翔んでゆく
期待しなかったせいかわかりませんが、大当たりの映画です。主役の女優さん(タチヤナ・サモイロワ)、メッチャ綺麗です!ジャケットとまるっきり顔が違います。スタイル、表情、歯並びの良さまでカメラはしっかり捉えています。DVDはデジタル処理が徹底的になされているせいか、「アンナ・カレーニナ」より綺麗に撮れてます。 外見だけではなく役者としても最高に輝いています。疾走する戦車の行列に、まるでお豆腐でも買いに行くかのように平気で横切って行ったり、燃え盛る炎の中に飛び込んだりと、全てスタントなしでやってます。世界中探してもこんな女優さん見たことありません。聞いたことありません。もうビックリです。っていうか普通やらせないでしょう。 内容は反戦映画に思われがちですが、普遍的な「愛」を、たった91分で表現しているだけの物語です。愛し合い、愛され、そして愛を与え…もう本当に胸がつかえ涙が出ます。 この時代のソビエト映画は、小道具、伏線、シャレードと、世界の映画界の先陣を切っています。観客を充実させるテクニックが満載です。 [DVD(字幕)] 10点(2009-02-22 23:27:10)(良:2票) |
59. 雨月物語
溝口健二監督の入門書と考えてもいいだろう。面白い作品の3大要素、「愛」「欲望」「裏切り」が子供でも理解できる範囲で描かれている。 このサイトでの8点は「出来としてはよい」という意味になるらしいが、上から目線で評価しているようで、もう1点つけようかなと考えてしまったりもする(苦笑)。 [DVD(邦画)] 8点(2009-01-02 01:51:53) |
60. 近松物語
つまらない映画ばかり続いたときは、古典映画に切り替えるに限る! いつの時代も悪人ばかりがはびこる世の中。自分の衝動を抑えることができなくなった主人公に観客としてストレスを感じるが、結局はその結末に共感せざるおえない。そんな作品を数多く作り続けた近松門左衛門は改めて凄い劇作家だと思う。この人、世界的にはどれだけ知られた存在なんだろう? [映画館(邦画)] 8点(2008-12-26 08:03:46) |