641. ゴーン・ベイビー・ゴーン
静謐さに満ちた空気と、一つ一つのシーンの重量感、そして作品自体が有しているテーマ性。正しいこととは、ときには人の自然な感情に反することであるし、もっといえば、それが正しいのかどうか、自分ですら確信を持てないことも多い。その謙虚さを明確に刻んだという点において、この作品は輝きを放っている。ミシェル・モナハンには抑えた演技で逆に存在感を発させ、モーガン・フリーマンやエド・ハリスといったベテラン勢まで的確に使いこなしている監督の腕も見事。 [DVD(字幕)] 7点(2010-11-15 02:26:53) |
642. パッション(2004)
ひたすら残酷映像続きだけの内容だったらどうしようと思っていたのですが、確かにリンチ描写は恐ろしく凄惨であったものの、それだけに終わっていないところが、作品としてのインパクトを高めていました。特に、身柄拘束後のイエスが、毅然として粛々と磔に至るのではなく、むしろ弱々しく追い詰められた表情を終始示しているのが印象的でした。技術的には、エキストラの使い方の上手さを評価したい。 [DVD(字幕)] 7点(2010-11-13 01:50:36) |
643. インサイド・マン
《ネタバレ》 デコレーションの部分でいろいろ頑張ろうとはしているのだが、肝心の骨のところに特筆すべき点がないので、拍子抜け感だけが残ってしまう。豪華キャストが目眩ましに見えてしまいます。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2010-11-01 01:39:01) |
644. 瞳の奥の秘密
サスペンスの部分とロマンスの部分が高濃度でブレンドされて相互に上手く作用し合っている、なかなか稀有な作品。南米版「刑事ジョン・ブック」と言ったら褒めすぎか。内容を的確に象徴した原題および邦題も優れていると思う。 [映画館(字幕)] 7点(2010-09-26 22:15:19) |
645. パニック・フライト
《ネタバレ》 前半にしても後半にしても、割とチマチマした空間で攻防が展開されるのであるが、手を拡げすぎず、単純なやりとりに徹しているのに好感を持った。心理戦の要素をもう少し入れてくれれば、まだ良くなったとは思うが・・・。レイチェル・マクアダムスは、久々に、「怯え顔が上手い女優」だと思う。 [DVD(字幕)] 5点(2010-09-25 03:07:47) |
646. ボーン・スプレマシー
ジョアン・アレンが出てしまうとですね、すべての作品中のポイントが彼女に行ってしまうのです。どんなカーチェイスよりも銃撃戦よりも、彼女1人の存在感の方が上です。 [DVD(字幕)] 5点(2010-09-19 23:50:14) |
647. バンテージ・ポイント
《ネタバレ》 多角視点モノは好きなので、点数は甘め。全体としては、視点の違いが視点の違いにしかなっておらず、心理的な裏返しの部分にまでは至っていないのだが、それでも90分をノンストップで見せ切る突進力はなかなかのもの。締めの強引さとか、場所的なつじつまの合わなさもご愛敬ですね。 [ブルーレイ(字幕)] 7点(2010-09-13 01:43:44) |
648. ラースと、その彼女
《ネタバレ》 主人公と人形との恋愛沙汰という表層的な部分にとどまらずに、その背景の部分から必然性をもって物語を組み立てているところに好感が持てる。一見して突飛に見える主人公の行動の数々についても、答えそのものは出さずに、しかしヒントや手がかりはきちんと埋め込んでいる脚本の精緻性と真摯性が素晴らしい。そして、役者陣では、キー・ポイントとなる3人の女優の、立ち位置を踏まえた堅実な演技の貢献が大きい。 [DVD(字幕)] 8点(2010-09-11 23:37:08)(良:1票) |
649. カンフー少女
内容的には破綻しまくっていて映画の体をなしていないのだが、セシリア・チャンの最近の状態が見られたのでとりあえず満足。と言いたいが、見た目はともかく、酒焼けしてるかのような声の荒れが気になる。 [DVD(字幕)] 2点(2010-09-09 03:12:13) |
650. 理想の女
もっとどろどろしまくりの内容を期待していたのに、大半のシーンが半説明的な会話が繰り広げられるにとどまっており、心理の動きが観念的にしか描かれていない。スカーレット・ヨハンソンも、あまり表情が生きていないような・・・。 [DVD(字幕)] 4点(2010-09-04 23:50:37) |
651. DISCO ディスコ
《ネタバレ》 2008年にもなってこれだけディスコ・ミュージック礼賛の作品を作ってくれるというだけでポイントが高いはずなのであるが、ダンスのシーンは意外に少なく、むしろ恋愛沙汰とか周辺人物とのやりとりなどがほとんどを占めている。したがって、3人組が再び衣装をまとってダンスに向かうのも、コンテストで勝ち進むのも、凄く予定調和的に見えてしまう。主人公達の再挑戦の葛藤や、そこから発展する訓練の様子などをもっと見たかった。ヒロインをバレエの先生という設定にしていながら、それが進行の上でさして機能していないのもマイナス。エマニュエル・ベアールの年を経ても変わらない可愛さがもったいない。 [DVD(字幕)] 5点(2010-07-30 03:34:17) |
652. エバン・オールマイティ
設定が強引すぎて、どこが笑い所なのか分かりません。スティーヴ・カレルも、合わない役を押しつけられて可哀想です。街中を動物たちが集まってくる絵面の面白さに3点。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2010-07-20 02:36:50) |
653. シンデレラマン
あまりにもストレートすぎて、中身が印象に残りません。同じような演技の同じようなシーンが繰り返されている感じ。尺もここまで長くいらなかったのでは? [CS・衛星(字幕)] 5点(2010-07-16 00:31:55) |
654. ミス・ポター
結局、主人公の何を描きたかったのかが分からないし、なぜこの人が選択されたのかも分からない。ポターという名前先にありきで作ってしまったのではないか? [CS・衛星(字幕)] 4点(2010-06-27 20:35:07) |
655. マザー・テレサ(2003)
同じようなトーンで最後まで続く起伏に乏しい内容なのだが、オリビア・ハッセーの気合の入り方によって、画面が常に一定の力を保っている。ここまで存在の力がある人だとは思わなかった。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2010-06-23 02:17:21) |
656. クレイジー・ハート
《ネタバレ》 「レスラー」におけるミッキー・ロークの「落ちぶれ表現ぶり」に涙できた人は、こちらのジェフ・ブリッジズの演技にも感涙できるだろう。酒と煙草が片時も手放せず、やっていることは場末のどさ回り。音楽的にも、ステージに出ないと金が入らないから出ているというだけであって、クリエイティブなことは何も考えていない。その主人公がどこでどう変わっていくのか、が作品の焦点であって、特に大事件や突飛な展開を設けることもなく、日常生活の中での素朴な感情を地道に切り取っている。ただし、マギー・ギレンホールとの恋愛沙汰はいかにも底が浅く、もっと感情のドラマを封じ込めることは可能だったと思う。 [映画館(字幕)] 6点(2010-06-13 22:52:27)(良:1票) |
657. さらば、ベルリン
雰囲気だけで全体が流れてしまっており、何かのパロディにしか見えません。ケイト・ブランシェットを投入しておいてあれだけ平凡なシーンしか与えていないのも、彼女の実力に大して失礼です。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2010-06-13 02:11:23) |
658. 硫黄島からの手紙
イーストウッドとも思えない、ステレオタイプな軍人の描写と平坦な進行が大きなマイナス。あえて硫黄島の戦いを(しかも日本側から)描くのであれば、少ない戦力の日本軍がどうやって日本軍以上の損害を米軍に与えたのか、その背景にはどのような思考や発想があったのか、また地下壕でどれほど苛酷な環境を耐え抜いたのか、といった点の描写をきっちりとやってほしかった。 [CS・衛星(字幕なし「原語」)] 4点(2010-05-26 04:30:24)(良:2票) |
659. 父親たちの星条旗
イーストウッドはやはり、特定の人間(それもどこにでもいそうな人)の内面をじっくりしっとりねっとりと描き上げる作風の方が本領を発揮できる。音響効果や大道具やエキストラを派手に使う作品は似合わない。自分の演出力を自分で持て余しているようにも見える。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2010-05-24 23:58:15) |
660. ヒトラーの贋札
《ネタバレ》 収容所内の贋札作成作業は、意外にスリリングさがなく平坦な印象を受けるが、この作品が際立っているのは、解放後のモンテカルロのシークエンスを入れていること。何かに取り憑かれたように贋札を注ぎ込み続ける主人公の姿は、別の方向から収容所生活の後遺症を浮き彫りにしている。 [DVD(字幕)] 6点(2010-05-19 23:53:01) |