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かっぱ堰さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1244
性別 男性
自己紹介 【名前】「くるきまき」(Kurkimäki)を10年近く使いましたが変な名前だったので捨てました。
【文章】感想文を書いています。できる限り作り手の意図をくみ取ろうとしています。また、わざわざ見るからにはなるべく面白がろうとしています。
【点数】基本的に個人的な好き嫌いで付けています。
5点が標準点で、悪くないが特にいいとも思わない、または可も不可もあって相殺しているもの、素人目にも出来がよくないがいいところのある映画の最高点、嫌悪する映画の最高点と、感情問題としては0だが外見的に角が立たないよう標準点にしたものです。6点以上は好意的、4点以下は否定的です。
また0点は、特に事情があって採点放棄したもの、あるいは憎しみや怒りなどで効用が0以下になっているものです。

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681.  神の左手 悪魔の右手 《ネタバレ》 
非常にかったるい映画だった。噂によると原作に近いとのことだが、映画を見る限り白々して単調で面白味がない。かろうじて悪人を絞り上げるという発想と、ラストの強引な展開(場面が変わるごとに怪我が治って衣服がきれいになる)が注目される程度だった。最後はかなり素っ気ない終わり方だが、「正しき人を蘇らせる」と言っていたからにはケーキ屋の娘やその妹分も復活したのだろうし、残された少女は中盤に出た児童養護施設に預けられてひとまず安心(松金よね子さんにおまかせ)ということになったはずで、その辺は適宜に察しておけばいいのだと思っておく。 なお自分としては原作を読んだことはないが、寝ていた少年が突然起き上がって目を見開いて「いけない!」と叫ぶのはいかにも楳図マンガ風だとは思った。主人公が頬を切られてギャー、ギャーと一本調子に叫ぶのもそういうことか。後半、絵を見ただけで家族関係まで見抜く老人が登場したのは不気味だったが、ここは読者に対する原作者の思いを込めた場面ということだったのかも知れない。  出演者としては、渋谷飛鳥(「デビルマン」)と前田愛(「ガメラ3」)の豪華キャスト競演かと思ったら一人が途中で脱落してしまったのは残念だ。また中学生役の紗綾という人はこの後もホラー映画などによく出ているが、この段階(12歳くらい)から結構ひどい扱いをされていたようである。 ほか2階で寝ていた少女は、少女嗜好丸出しの撮り方をされているが非常に可愛らしく映っており、ほとんど真の主役に見える。この子役は他の映画でも少女役で出ているのを見たことがあるが、現在はもう芸能活動をしていないようで、こんないかがわしい業界に関わるのをやめて真っ当な人生を歩んでいるのであれば幸いである(今年で20歳?)。
[DVD(字幕)] 3点(2017-07-15 07:52:09)
682.  恋に唄えば♪ 《ネタバレ》 
最初は優香がかわいいのとおバカな展開で笑いながら見られる。まもなく出た竹中直人のくどい芸には辟易させられるが、引続き優香はかわいいので毒消しになる。何でこんな映画で海外ロケまであるのかとか何でオーストラリアなのかという疑問はあるが、優香がかわいいので問題にはしない。優香がかわいい以外にも、端役ながら中山忍とか(ガメラつながり?)、石野真子さんとか(何のつながり?)が出ていたのも大変よいことである。ストーリー的には出来すぎだが安心のハッピーエンドで、終盤の花屋の場面で篠原ともえに乗せられた形で玉山鉄二の歌が始まったところは少し感動した。 自分としては特にミュージカル映画とは意識していなかったが、見ればなるほどミュージカル映画のパロディのようでコメディの味付けになり、また当然ながらラストの盛り上げにも貢献している。竹中直人の顔を見ないことにすれば文句なしに楽しく幸せな映画だったので、ここは少しいい点をつけておく。かなりの部分が優香のおかげである。
[DVD(字幕)] 6点(2017-07-15 07:52:06)
683.  メリーさんの電話 《ネタバレ》 
「ムラサキカガミ」(2010)に続く紗綾(さあや)の主演ホラー2作目で、今回はAKB48の菊地あやかとのダブル主演という名目だが、実質的には紗綾の行動が主軸である。登場人物が女子だけなのは1作目と同じで、今回は微妙に男子向けサービスと思われる場面もあったのは前回の反省かも知れないが苦笑した。 題名の都市伝説に関しては、本物は冒頭(と最後?)に出るだけで、ほとんどは映画独自の話に変えられている。ホラー要素にオリジナリティが感じられず、設定やストーリーも緩い感じなのは前回同様だが、肩透かしながらも微妙に怖い画面づくりがされており、意図的ミスリード?ともいえる箇所があったりするのは低予算なりの工夫とも思われる。登場人物が暗くて怖いところへ入る際、普通のホラーであれば怖がらせのために暗くしたままにするところ、あえて電気を点けていたのは一般常識に合わせた感じで好印象だった。それからクライマックスで、前回に続いてまた便所に逃げ込むのかと思わせておいてからの展開は意表をついていた(笑)。  ところで劇中では、誰でも知っている有名な交霊術の名前をわざわざ変えて使っていたが、これは撮影中に本当に交霊術をやってしまうのを避けるためだとすれば良心的な対応と考えられる。また凶兆におびえた友人が思わず不吉なことを口にするのを主人公が諌める場面があったが、こういう不用意な連中が人心を不安に陥れ、あるいは自ら墓穴を掘るようなことをやらかすのに対して警告を発しているようなのも理性的に見える。特に今回は、主人公が前回同様に怖がりな性格ながらもしっかりした人物だったことで、“正しく怖がるのを恥じることはない”という若年者への教育的配慮が感じられる映画になっていた。 ただその割に、登場人物が芝居がかった調子で延々と昔語りをする場面があったりするので、そういうことを現場で口に出すのは自ら災難を呼び寄せるようなものだからやめろと言いたくなるが、まあこの語り自体は前回に続いての定例行事と理解した方がいいのかも知れない。何にせよ前回同様の実直な印象で個人的には結構好きだ。前回と共通のエンディングテーマも悪くない。  ちなみに冒頭のタイトルが無粋な感じの明朝体になっているのは、自分としては1968年のTV番組「怪奇大作戦」の第4話「恐怖の電話」を連想させるものがあったが、意識してやっていたのかはわからない。
[DVD(邦画)] 5点(2017-07-10 21:03:18)
684.  ムラサキカガミ 《ネタバレ》 
主演の紗綾(さあや)という人は結構いろんな映画で目にするので(主にホラーだが)、この映画が初主演というのは少し意外だった。本業はグラビアアイドルだったはずだが、終盤でおののく表情など見てもちゃんと役者の顔で熱演しているように見える。 女子しか出ないホラーとのことだが実際かなり地味な感じで、高校のテニス部であるのに季節柄ということなのか露出も少なく、屋内の場面も含めて男子向けサービスがほとんど皆無である。興行的にこういう作りでよかったのか疑問だが、自分としてはかえって真面目な映画に見えて好印象だった。 劇中の出来事は題名の都市伝説の通りでは全くないが、もとのままでは映画にならないので鏡が出る他の都市伝説の要素を取り入れて勝手に作ったものと思われる。既存のホラー要素の組み合わせが基本のようで独自性はほとんど感じられず、また特に前半は単なるこけおどしが多いが、それは低予算なりに全体的な緊張感を持続させるためとも思われる。終盤に出た生ゴミ集積所などは結構生々しい感じだった。  ストーリーとしては、何が起こったのかはよくわからないが一応真面目に考えると、まず鏡の中の人物はそもそも主人公のように感受性(共感力)が強く、従って怖がりな女子だけをターゲットにしていたと思われる。面白半分で来る連中は、そういう人物を強制的に連れて来る役割を果たすだけで、ほかは役に立たないので殺されるということではないか。 ここにあえて教訓的なものを求めるとすれば、①そもそも余計なことはするな ②やるなら他人を巻き込むな、ということだろう。やるならあくまで自己責任でと言いたいところだが、それができないのが女子高生ということか。そのほか序盤で、わざわざこの場で口にする話かというようなことを喜々としてしゃべっていた怪談マニアの教員が、最後に巻き添えを食っていたのも自業自得であり、これはなかなか道徳的な映画のようである。 派手なところは全くないが、低予算ながらも極めて実直な印象のあるホラーだった。
[DVD(邦画)] 5点(2017-07-10 20:59:51)
685.  ウルトラセブン 《ネタバレ》 
1967~1968年に放映された特撮TV番組「ウルトラセブン」(全49話)の第18話で、これだけが1968年夏の「東映まんがパレード」で劇場公開されたために映画扱いになっている。高畑勲氏が監督で宮崎駿氏も動画制作に関わった「太陽の王子 ホルスの大冒険」(1968)と同時上映だったとのことである。 この第18話「空間X脱出」(1968/2/4放映)は第2クールのいわば安定期に入った頃のもので、特別に面白い回ともいえないが、日常を離れた異世界が舞台になるため若干の特別感はなくもない。また宇宙生物が4種類も出るので若干豪華といえなくもないが、着ぐるみは「音波怪人 ベル星人」(スズムシの宇宙人)だけで、あとは操演と上からバラバラ落ちて来るだけのものである。ちなみに樹上から吸血生物が落ちて来るとか底なし沼とかは、戦時中に南方へ出征した人々の体験に基づくものという話を読んだ気がする。 ドラマとしては、人間だれしも長所と短所があるので協力して補い合うことが大切だ、といったような、シリーズ初期らしい年少者向けの生真面目な教育的意図が込められている。またラストではかなり唐突に格言のようなものを出してそれなりの教訓に結びつける形だが、その「神なき知恵は…」というのは玉川大学創立者の言葉を一部アレンジしたものだったらしい。 登場人物はいつもの通りだが、この回ではマナベ参謀が出ており、人事交流か何かでアメリカ(ワシントン基地)に行っていたという経歴を披露している。またこの時期はまだショートヘアだったアンヌ隊員がかわいい。すでにモロボシダンのことを人一倍気にかける様子を見せている。
[DVD(邦画)] 5点(2017-07-05 19:44:56)
686.  太陽の王子 ホルスの大冒険 《ネタバレ》 
古いアニメと思ってほとんど期待していなかったが、冒頭から狼との戦いのスピード感で予想を裏切られた気分になり、序盤で舟を操る主人公の背景を太陽が横切ったところなどは少し驚かされた。かなり力の入った動画のようだが、ただ途中、なぜか静止画ばかりが続く場面があったのはさすがに制作上の都合を勘繰らざるを得なかった。 音楽面でも聞くべきものがあり、ヒロインの独唱のほか、管弦楽を背景にした合唱の場面もあったりして歌劇とかオラトリオのような印象を出している。非常に微妙ながらソビエト連邦の大衆向け音楽の雰囲気が感じられたのは時代の反映かと思うが、劇中でも歌を大衆の心理操作に利用しようとする人物が出ており、そういうことを制作側がどの程度意識していたのかはわからなかった。 お話としては子ども向けには地味かも知れないが、終盤で巨大怪獣同士の戦いのようになっていたのは昭和特撮の影響かと思ったりする。真っ正直な主人公が秘密の多いヒロインに翻弄され、単純バカのように詰られていたのは思春期物らしい印象だが、結局は主人公のまっすぐな意志が事態を打開していたのは人の世の正道を示したようで清々しい。男子たるものやはりこうあるべきだろうと思わせる。 結果としては大感動作ともいえないが、「まんが映画」という触れ込みの割には素人目にも出来の違うアニメに見えた。  以下はよけいなことかも知れないが、ストーリーの基本は地縁共同体が団結して外敵を撃退した話になっており、敵は単純に人を滅ぼそうとしていたのであって支配と搾取を目的にしていたわけではない。また最終的に村長の地位が揺らいだようでもなく、倉を壊した場面以外は階級闘争の要素もない。東映の労働争議が制作姿勢に影響を及ぼしたとの話があるようだが、劇中で言っているのは「団結」までであって、自分としてはそれ以上の社会的な問題意識を提示しているようには見えなかった。「団結」だけなら労働者の団結も国民の団結も同じである。 ちなみに「ヒルダの子守唄」はまともに聞くとものすごく皮肉な歌詞なので笑った。解釈はそれぞれだろうが個人的には、生態系と同じように人間も複雑につながった社会を作っており、利害の対立がありながらも何とか成り立っているものであるから、単純思考で誰かを悪人にして叩けばよいというものではない、ということかと勝手に思った。
[DVD(邦画)] 7点(2017-07-05 19:44:53)(良:1票)
687.  バイロケーション 《ネタバレ》 
原作も一応読んだが、映画化に当たってはかなり手際よくまとめたようで、映画だけでも全体像はわかる。前宣伝ではラストが衝撃的とされていたようだが、実際は最後だけがひっくり返るような構造ではなく、徐々に観客の思い込みが覆されて自然にラストにつながる展開に見えた。結末が「表」「裏」の2種類あるのも基本的には肯定できる。ただ背景事情の省略のために最後までわからないこともあり、また御手洗という男は映画ではほとんど不要な人物になっている。 題名の現象に関しては、この映画で二重人格の実体化のような意味づけをされているのは原作を超えた趣向である。しかしそれだと本来は本体に統合するよう努めるのが筋ということになり、劇中で共存が理想というようなことを言っていたのは明らかに変である。物語中の状況ではやむを得ない発想だとしても、「裏」の最後の独白など聞くともう外部の常識が通用しない閉鎖世界ができてしまったようで、かなり独りよがりな印象になっていた。こういう変なところに踏み込まないで止めていた原作の方はまともである。 映像的な面では全般的に好印象だが、人や物が霧消する表現は少々安っぽい(演出上の意味のある場面はあったが)。キャストに関しては、まずは滝藤賢一氏が原作でも描写された凄みのある表情を見せている。また主演女優はこれまで可愛気がない人だと思っていたが、今回は女性的なところが前面に出ていたようで、特に結婚後の様子は可愛らしくも見えたのが意外だった。この映画で最もいいと思ったのは実はこの点である。また酒井若菜という人も嫌いでない(けっこう好きだ)。  なお冒頭の外国の場面は、19世紀のリヴォニア(現在のラトヴィア共和国)で起きたとされる事件の再現映像のようなものかも知れないが、仮にこの手の現象が実在するとすればこれ以前のはるか昔からあったはずで、現象自体が19世紀から発生し始めたかのように台詞で説明していたのは変である…オカルトの世界で話題になったのが19世紀のヨーロッパから、というならわかる。 ちなみにここでしゃべっていたのは何語なのか。リヴォニアの寄宿学校の事件とすればフランス語かドイツ語を使っていた可能性があるのでは。
[DVD(邦画)] 5点(2017-06-30 19:48:23)
688.  ゴメンナサイ 《ネタバレ》 
携帯サイト「魔法のiらんど」で公開されたケータイ小説を原作とした映画である。原作の全3章のうち前の2章分を映画化している。 この映画と同時期に、同じく携帯小説を原作として、同じ監督と同じ主演(鈴木愛理)で製作された「携帯彼女」(2011)とはなぜか出来が段違いで、実際それほど革新的でもなく超怖いわけでもないが、映像や音響面で結構いい感じを出している。主要キャストはアイドルながら結構シビアな役柄で、劇中人物の発言によれば「貞子versus鬼」だそうだが、特に黒羽さん役などはこれで本当にアイドルなのか(本当にこういう人なのではないか)と思わせるものがある。主演の人も前記の映画より少し大人っぽい美少女に見えて結構だ(ナレーションは下手)。ちなみに個人的にはアイドルに関心がないが、相楽樹さんが目立っていたのは嬉しい。 全体構成としては、本来のお話の外側にアイドル映画の枠組みをもう一つ被せておいて、その枠組みも最後にはぶち壊して虚構性を最大限に否定してみせる趣向は面白い(「ファンの人とか見るんだよ」という台詞が生々しい)。冒頭の作品紹介の際に主演の人の態度が変だったのも、後になればそういうことだったかと思わせる。  ところで参考までに書いておくと、自分が本来好む実話系怪談の世界でいえば、実話という触れ込みで読者に実害が及びそうな話を予告なしに読ませるのは、少なくとも商業作品では禁じ手と思われる(最近はそうでもないかも知れないが)。 この映画は実話ではなく「フェイクドキュメンタリー」だそうだが(厳密にはラストのみ?)、原作が携帯小説であり、著者の実体験を匂わせる作りになっていることから再現ドラマの趣がある。現実問題としては台詞にあったように呪いなど真に受ける警察もないわけだが、しかし同じく台詞にあったように、呪われていると本人に自覚させることで、いわば高感受性者には精神面で実害が及ぶ恐れもなくはない。そういう合理的観点からしても、何の警告もなしにこういう映画を多数の観客に見せることはしないのが無難なはずである。 そういう配慮もなかった結果、ネット上あるいは日常会話で若年者が垂れ流す無責任な話を大人が平気で映画化(その前段で書籍化)してしまった印象があり、映倫は通っても倫理面で問題があると思わざるを得ない。劇中でも若年者の思慮のなさを嘲るような台詞があり、そこまでわかってやっているのであればイノセントともいえない。原作もかなり毒気のある小説だが(ふりがなが必要な読者にこういうのを読ませるか?)、さらに映画では最後の章を除去してオープンな構造にしたこともあって、作り手の悪意さえ感じられる状態になってしまっている。 そういうことで点数としては抑えておく。本当は少しいい点を付けたかったが残念だ。  追記:主要キャストのうち嗣永桃子(ももち)という人は本日2017/6/30をもって芸能界引退とのことで、惜しまれつつも祝福されながらの引退らしいのは他人事ながら喜ばしい。15年間お疲れさまでした、これから頑張ってください。
[DVD(邦画)] 1点(2017-06-30 19:48:20)
689.  お兄チャンは戦場に行った!? 《ネタバレ》 
同じ監督の「沈まない三つの家」(2013)と同時に撮影されたもので、これだけが別の小編として編集されたとのことである。当然ながら同じ川が重要な舞台になっている。 導入部に刺激的な要素を持ってきているが(人体損壊・流血)、全体としては心温まる家族(兄妹)の物語である。当初は劇中の兄に同情もできずにこいつはバカかと突き放した気分だったが、そのうち事情があることもわかり、また何より妹が兄と観客の間を取り持ってくれているように感じられて、最終的にはこの兄に対する制作側の温かい視線にも共感できるようになる。結果的には最初の凶行も前向きな決断だったのだと納得した。妹の方は最後に何か変化があったのかどうかよくわからなかったが、次は妹の側が兄に背中を押されるような場面もありうるのかも知れない。 なお自作中に下世話なものを出すのがこの監督の特徴だが、今回は少し毛色の違ったものを出してきている。
[DVD(邦画)] 7点(2017-06-24 09:39:42)
690.  沈まない三つの家 《ネタバレ》 
「チチを撮りに」(2012)、「湯を沸かすほどの熱い愛」(2016)と同じ監督の映画で、やはり家族がテーマだが雰囲気は同じでもない。いかにも人工的な世界を作り込むのかと思ったらそれほどでもなく、また一つひとつの場面に細かい意味を込めているようだがわざとらしさは感じない。意外に普通の感覚で見られる映画になっており、どちらかというと「琥珀色のキラキラ」(2008)に近い印象である。  この映画で川が意味するものはよくわからないが、文字通り水に流すということのほか、自然かつ否応なしに前に進めていくという意味か、また題名との関係からすれば浮かすということもあるかも知れない。三つの家族それぞれに物語ができているが、ある程度の共通項として“必要とされること”が台詞に出ているほか、感覚的には“赦し”も大きな意味を持っていたように思われる。登場人物の中ではコンビニ店長が意外に重要人物で、キーパーソンというほどでもないが結節点にはなっており、顔の印象からしても“赦し”を体現していた感じである。また相模家の叔父がかなりいい男で、自分がこの映画の中にいるならこの人物の役でありたいと思った(痛いのは嫌だが)。自分がどうあれ誰かに必要とされるのは嬉しいことだ。  この監督の特徴と思われる露悪趣味に関しては、今回それほど気に障るところはない。見るからに下世話なものは出ていない(終盤で流下した液体は排泄物ではないと思われる)が、性的な危うさということでは、近親間の性愛感情(娘から父?)が背景に隠れていたようである。また不道徳という面では、神田家の妹役の松原菜野花さんが今回も万引きをさせられていた。ちなみに神田家の姉は非常に賢明で先読みする人物だったようで、おかげでDVの脅威は回避されたのだろうと思っておく。 ほか、やはり極端な誇張表現が若干あってどうも馴染めないが、それも監督の個性ということで納得するしかない。今回は川にマグロはいなかった。
[DVD(邦画)] 7点(2017-06-24 09:39:38)
691.  さとうきび畑の唄〈TVM〉 《ネタバレ》 
森山良子氏の著名な持ち歌を取り入れたドラマで、最初と最後の現代パートは歌詞のシチュエーションを映像化したものである。ここでは歌の主人公のほかに態度の悪い女子高生もついて来ていたが、これは新しい世代にも伝えていきたいとの趣旨だろう。この歌は情景イメージを含めて時代の記憶を伝える力を持った優れた音楽作品であり、後世に残ってもらいたいというのは自分としての願いでもある。これを見たあと自宅にあったCDを引っ張り出して聴いてその思いがさらに深まった。  ドラマ本編に関しては、歌の主人公(新生児)も出て来てはいるが、全体的に騒がしい感じのため歌に喚起されるイメージとの間でかなりのずれがある。しかし歌自体のドラマ化が目的ではなくネタとして使っただけだろうから、合うとか合わないとかを問題にしても仕方ない。また悪玉にわざわざ過激なことを言わせておいて、そこに善玉が「同じ人間じゃないですか!」などと当たり前のことを突っ込んでみせるような安手のドラマだが、それもまあテレビだから仕方ない。 劇中の主張の中では、学徒動員の青年の考えは普通に理解できる。また親は戦争で死ぬために子を産んだのではないというのもその通りだが、しかし「戦争のない国を作って下さい」というのは具体的に何をどうすればいいと思うのか。戦争がない方がいいというのは平和な市民社会の誰もが願う当然のことだが、相手があることなので自分の国だけでは決められない。むしろ戦争を起こさないために、現実的な対処として何が必要なのかをシビアに考えることが大事であり、そこに沖縄戦の記憶を伝える意味もあるだろうと思われる。 ちなみにこのドラマでは主人公夫妻が関西出身という設定もあり、結果的に“沖縄の利害は国内他地域と相反する”といった分離主義的な印象が強くなかったのは幸いだった。もっとも制作当時は東アジアの国際情勢が現在と異なっており、この時点でそんなことはほとんど誰も考えていなかっただろうが。
[DVD(邦画)] 2点(2017-06-21 23:19:21)
692.  独立少女紅蓮隊 《ネタバレ》 
DVD特典の対談を聞くと、発想の原点になったという渋谷のエピソードには共感できるが、わかるのはそこまでである。 まず、この映画の属するシリーズの名称からすると笑える映画として作られたもののはずだが、実際には申し訳程度の悪ふざけを入れてあるだけで、具体的に笑わせる場面は皆無である。国家体制に対する皮肉な笑いという理屈付けをしているのかも知れないが、現実問題として笑えなければ少なくともコメディではない。 コメディでないとすればシリアスに取るしかないわけで、劇中の「王国」が監督の出身地であることからしても、どうしても真面目に取らなければ済まない雰囲気はある。見る側の世代や主義主張によっては無条件で賞賛されそうな体裁なのは厄介だが、実在しない政府機関のありそうもない所業や人物像を創作してまでわかりやすい悪者を用意するのは幼稚で卑劣である。 しかし同時に、なぜか日の丸を背景にした宣伝写真とか非人道的なテロリスト養成とか思想統制を思わせる「プロパガンダ」といった言葉などマイナスイメージのあるものを平気で使っており、こういうものをこの映画として肯定しているということなのか、あるいは冗談めかした逃げの姿勢ということか。若年者が仲間内で面白がるようなものに真面目に突っ込むと冗談だから許せと言われそうで腹立たしい。 それでも最大限好意的に見るとすれば、いい加減な部分は全て娯楽映画としての飾りに過ぎず、要は「王国」の民の心情を伝えることが中心テーマだったと取れなくはない。住民の切実な思いというのは確かにあるだろうが、しかし未成年者の思い付きのようなストーリーに乗せて伝えるのでは無責任な自己表現以上のものにはならず、映画全体に通底する茶番感とあいまって反感だけが残る。そもそも母親がナショナリズム(民族主義)のためにわが子が戦いに赴くのを支持するなど常人の感覚では信じがたい。 最終的には「王国」自体のことよりも、「王国」をネタにして自分の反抗心か何かを表現したい、またはそういう人々に評価されたい映画にしか見えなかった。実際の意図はどうあれ最低限、反感を煽って「王国」とそれ以外の離間を図るようなことはやめてもらいたい。平和ボケの時代の無責任な映画に今さら苦情を言っても仕方ないだろうが。 なお点数は中身と無関係に付けたので参考にはならない。上記以外の面での評価は別のところで誰かがしただろうと思っておく。
[DVD(邦画)] 5点(2017-06-21 19:32:13)
693.  トワイライトシンドローム デッドゴーランド 《ネタバレ》 
ゲームの映画化とのことで、同じ年に公開された「デッドクルーズ」のいわば姉妹編である。低予算らしく安手の雰囲気で、その辺はあらかじめわかった上で見る必要がある。  この映画は遊園地を使った殺人ゲームという趣向で、ゲームキャラだとどれだけ殺しても良心は痛まないのか、というような問いかけも一応入ってはいるが、どちらかというと罪もない一般人が生命を賭けたゲームを強要される(+主人公が人間的に成長する)という、よくあるパターンに単純に乗った形になっている。 全体構成としても特に目新しさはないが、少なくとも序盤の展開にはけっこう意外性がある。また全身が黒いので目に入らないとか声が喉につっかえるとか、劇中人物が嘲笑されると笑い声が入るとか普通の風景と思ったら罠だったというような細かい面白味もなくはない(感電死した人はご苦労様)。ほか客観的にみれば自律進化型ピエロの挙動といったものも見どころなのかと思われる。 最後の場面では、主人公の「同じこの空の下で」という台詞自体はいいと思ったが、「空」という言葉がそれ以前のストーリーと関係ないため唐突で、かつその直後の不吉な状況には直結するのでせっかくのしあわせ感が失われてしまうのは残念だった。結果的に満足感の高い映画ともいえなかったが、まあ初めから全く期待しないで見ればそれほどの落胆もないと思われる。  なおキャストの中で、主人公のメイ役(荒井萌)がひときわ可愛らしいのはこの時まだ13歳だったからで、チカコ役の星井七瀬という人に可愛がられていた(実妹と同年齢とのこと)という話は和むものがある。また完全にどうでもいいことだが、メイキングを見るとデブオタ役の俳優のオールアップ時に、花束を持った監督がはるか彼方から疾走してきてそのまま俳優に抱きしめられていたのは、どういう事情でそうなったのかわからないがとりあえず可笑しい。和気藹々とした現場だったようで結構でした。
[DVD(邦画)] 3点(2017-06-17 08:31:30)
694.  トワイライトシンドローム デッドクルーズ 《ネタバレ》 
ゲームの映画化とのことで、同年公開の「デッドゴーランド」のいわば姉妹編である。低予算らしく安手の雰囲気で、同じ監督の「オトシモノ」(2006)が超豪華大作のように思われる。  この映画は客船に乗った若者が殺人ゲームに巻き込まれるという設定で、舞台は船内限定(撮影場所は陸上もある)だが、船外が見える場面も多いので閉塞感はない。ちなみに船は八丈島と東京の間を運航する東海汽船の「さるびあ丸」だそうである。 基本的にはホラーゲームを本物の人間でやったらどうなるかという前提で一貫しているが、この映画では特に「リセット」に着目して、殺される者の身になってみろ、ということを表現していたらしい。序盤はまだコミカルにも見える(失笑するところもある)が、やがて暴走してとりかえしがつかなくなるという展開で、最後には型どおりの悲劇的結末を迎えるが、全員生き残ることもできたはずだという思いを残す作りになっていた。細かい点としては、多層のプロムナードデッキを使ってゲームらしい移動を見せていたのはなかなかいい。また「お母さん」なるものの登場が唐突なのは笑った。 最後の場面は、登場人物とカメラの動きに加えて船自体の速さも感じられ、並航する船も見えていたりしてダイナミックな映像になっている。ここは状況に翻弄される登場人物の姿が強調されていたようでもあり、若干くどい(かなりしつこい)が印象的な場面になっていた。最初から全く期待しないで見たわけだが結果としては意外に悪くなく、安手にしても見どころがなくはない映画に思われる。  なお主要キャストの女優4人はそれぞれ好印象で(男は見ていない)、特に主演女優はきっちり存在感を出している。登場人物はそれぞれキャラ立ちしていたが、相互の関係性が「聲の形」(2016)と似たような感じで、こういうのは人類共通の基本パターンのようなものかとも思った。
[DVD(邦画)] 4点(2017-06-17 08:31:28)
695.  トワイライトシンドローム-卒業- 《ネタバレ》 
ゲームの映画化とのことで、元がどういう話だったかは知らないが、この映画に関しては高校最後の夏休みに起きた思いがけない出来事という体裁になっている。 最初は感傷的な雰囲気で始まるが、直後になんちゃって式に開き直ってコメディ展開に移行する。まずは女子高生のじゃれ合いとかガールズトークに付き合わされて、そのあとみんなでプールに行って水着になって水中撮影というサービスもある。そのうち通りすがりのバイト男が本格的にからんで来るとラブコメ風味も出て、気恥ずかしくて笑ってしまうとか少しキュンとさせられるとか何気に泣かせるところもあってとりあえず楽しい。全体としてはミステリー風の構造ができていて段取りよく進んでいくが、終盤に至ってもまだ嬉し恥ずかしの場面など入れてあるので和まされる。最後は題名の「卒業」を受けた形で切ない余韻を残しながらもすっきり終わり、結果的には登場人物みんなの笑顔が嬉しい爽やかな(少し古風な?)青春映画になっていた。ちなみに少し怖いところが1か所あったが、ここでかすかな音が先触れになるという趣向は非常によかった。 なお主演の酒井若菜という人のことは当時よく知らなかったが、この映画を見る限り美少女ともいえない代わりに何ともいえない愛嬌のある顔をしていて和む。年少時の子役とも連続性が感じられて微笑ましい。
[DVD(邦画)] 6点(2017-06-17 08:31:22)
696.  いしゃ先生 《ネタバレ》 
戦前から戦後にかけて山村の医療に尽力した実在の医師の物語で、現在の山形県西村山郡西川町大井沢という場所が舞台である。景観面では一般的な山間風景が地味な色調で多少美的に見える程度のようだが、季節や天候によって はっとするような風景に出会うこともあり、劇中ではそのような現地感覚が映像化されていたようで好印象だった。別の場所での撮影も多いとのことだが、月山・姥ヶ岳・湯殿山が並んだ映像は現地付近からの眺望と思われる。また現地で見られるという「春もみじ」も映っていたようである。  医師の物語であるから人の生死も当然関わって来るわけで、撮影地の近辺でいえば「おくりびと」(2008)など、人を死なせて観客を泣かすタイプの映画は多いだろうが、この映画では劇中の様々な出来事が少しずつ見る者の心に染みて、次第にその効果が累積していく感覚があった。少なくとも初見時に大泣きする場面はなかったが、終わってしばらくの間、何となく涙腺が緩んだような状態が後を引く映画になっていた。また撮影時に、実際に診療を受けたことがある地元の老婦人が主演女優を見て、本物の先生のようだと落涙していたというエピソードは感動的だった。 劇中では住民の言動が理不尽に見えるところもあったが、昔は出生率も死亡率も高く、病気になれば仕方ないといういわば社会通念と、それでも家族を失いたくない思いの対立が医師への反発に形を変えていたと解される。医師の存在によって“金がないから見殺し”という構図がかえって明瞭になってしまうということもあっただろう。そういう時代にこの映画の医師は、近代的な倫理そのままに“失われても仕方ない命など一つもない”との理念をまともに実践しようと奮闘していたように見えた。劇中では住民に知識が必要という言葉も出ていたが、それだけでなく人の命に関する意識の変化を、時代に先駆けてこの山村に持ち込んだこともこの人物の功績だったのではと想像する。  ところで脱線になるが、幸子役で出ていた上野優華という人は歌手兼女優とのことで、ほんわかして和む顔で他の映画でも見て知っている。自分がこの映画を見たのも、単にこの人が出ているから、という軽い動機だが、劇中では本当の田舎娘にしか見えずに少し呆れた(方言が下手すぎ)。舞台挨拶に来てくれなかったのは残念だが、この人が歌う主題歌のCDも入手したほか原作本も買って読んだので、動機が不純とはいえけっこう上客のはずである。また舞台挨拶では監督の人柄も見えた気がして大変よかった。 自分にとって郷土の映画というものでは全くないが、そういう狭い郷土意識に頼らずとも地味に応援したくなる映画になっていた。   [2017-06-10再視聴による追記(BD購入済)] 主演の平山あやという人はよく知らなかったが、この映画に関していえば目が強い印象を残す。20代半ばの場面ではまだ可愛らしさを残していたが、30代後半になると充足感が顔に出ていたようで、自分としては川原の場面の表情が好きだ。最後の授賞式での晴れやかな姿は見違えるようで、ここはさすが女優さんといったところである。
[映画館(邦画)] 8点(2017-06-10 09:52:25)
697.  花戦さ 《ネタバレ》 
華道家元池坊に伝わるエピソードを題材にした原作の映画化である。自分は無粋なので花を愛でる習慣はないが、美というものが確かにそこにある、ということは映像から納得させられる。また千利休との関係を強調した物語のため、いわゆる三千家も製作に協力している。主人公が初めて利休を訪ねたときに突然泣き言を言い出したのは、映像では見えない作用を利休の茶が及ぼしたという表現のようで興味深かった。  原作はわりと淡白な感じの小説で、最後の勝負など本当にこれだけでよかったのか、という思いが残るものだったが、映画では序盤の岐阜城と終盤の前田邸の対応関係が明瞭で、庶民にできる最高度に強烈な反撃という印象も強まっていておおむね納得させられる。この場面では観客としても息を詰めるようにして見入ってしまい、その余韻は鑑賞後もしばらく後を引いた。また全体としてのメッセージも明快で、美と芸術家を賞揚するにとどまらず、秀吉含め全ての人それぞれの個を咲かそうとする物語になっている。素直にそう思えるだけの愛おしさが劇中人物には感じられた。 ほか秀吉との対比ということだろうが、美的なものへの関心の高さや批評精神など、京の町衆の文化水準の高さが表現されている。それは原作も同じだが、映画を見るとジョークのレベルも高かったようで感心した(少し古風で漫才風?)。  登場人物に関しては、序盤では主人公が変人すぎて呆れたが、終盤はそれらしい人物像に収まっていたようで悪くない。人を覚えられなくて苦労するのは個人的に共感できるので、茶室の場面では見ている方も泣き笑いになった。この主人公に寄り添う弟の人物像もいい。 また「れん」というのは原作にない人物だが、映画の飾りとしてのヒロインというだけでなく、掛け軸のサルなど見ても、父親を含めた形での存在意義がちゃんと付与されていたようで安心した。外見的には可愛らしいが(森川さん本当に可愛い)それだけでなく、最後には芸術家としての側面を含めた人物像も見えて来る。主人公がこの人の名を呼んで手に取った蓮の花が、本当にこの人らしく見えたのは感動的だった。 そのほか人懐こく笑う町娘はどこかで見たと思ったら、「湯を沸かすほどの熱い愛」の妹役(鮎子ここにあり)の伊東蒼(あおい)という人だった。子役も含めて役者揃いのように思われる。  結果としては小説を何となく映画化しただけのものでなく、単なる華道家元のPR映画でもなく、花がきれいだった、で終わりの映画でもなく、それ自体の存在意義をちゃんと主張する映画になっている。人に勧めるかは別として自分にとってはいい映画だった。
[映画館(邦画)] 8点(2017-06-10 09:52:22)(良:1票)
698.  オルド 黄金の国の魔術師 《ネタバレ》 
わりと新しいロシア映画である。冒頭表示される文字は縦書きだがロシア語だろうから字幕が出ないのは変だ。 題名の「オルド」は「帳幕」と訳していいかどうかよくわからないが、とりあえず劇中に出る「黄金のオルド」という言葉は、チンギス・ハーンの長子ジョチを祖とするキプチャク・ハン国(金帳汗国、ジョチ・ウルス)を指している。映画はこのキプチャク・ハン国とモスクワの府主教アレクシイとの関係を描いており、年代的には序盤の暗殺が1343年、終盤の暗殺が1357年で、日本では南北朝時代に当たる。 考証的なことはよくわからないが見た目でいえば、ハンの都(恐らく「サライ」)はみすぼらしいようで結構な壮大感がある。皇太后が宮殿ではなく郊外に住んでいたのは遊牧民の伝統を固守する人物像の表現だろう。劇中のモンゴル人がやたらに野卑で粗暴なのはロシア側の蔑視感情の表れかも知れないが、その性質を受け継いだといわれるロシア人自身も、他国の文明人から同じように見られていたのは言うまでもないことである。 一方、モンゴル人がキリスト教会のある粗末な村に来て、知り合いだったらしい住民と立ち話を始めたのは何かと思っていたら、これがモスクワ大公イヴァン2世に対し、キプチャク・ハン国が要求を突き付けた場面だったというのはかなり度肝を抜かれた。そのあと鶏のいる裏庭で大公が見せた必死さがまるきりその辺の一般人のようなのも笑った。ちなみに字幕の「王子」は明らかに誤訳で(英語からの重訳?)、これは「公」と訳すのが適切である(歴史的には「大公」とされている)。  物語の面では、説明を排して専ら状況を見せる形になっている。 最初の1/3くらいはヨーロッパ人がほとんど出ず、文化的素地の全く違う意味不明な風習を見せられるのが面白い(泣き女のようなのがいい)。ロシア人が出て来てからもすれ違ってばかりのようだったが、人命尊重の観念がないだけで実は気のいい連中だというところも見えていた。皇太后は最初から親和的、臣下の男も同情的で、ハンも言葉は乱暴ながら“少し待ってやろう”という意思を最初から示していたと解される。 ストーリー上のメインになるのは「奇跡」だろうが、本当に奇跡が起きたのかは不明瞭である。府主教の受難によって神の慈悲が下されたと思うのもいいだろうが、あるいは本人が何もしていないと語ったように本当にたまたまだったとも取れる。以前にウラジーミル(モスクワ近隣の都市)の疫病を終息させたというのも同じとすれば偶然の連続だが、毎度の身を捨てた行動があったからこそ後に聖人に列せられたということかも知れない。なお劇中アビニョンからの使者が登場して助け助けられしていたのは、正教会もローマ教会もない唯一の神の意思が働いたことの表現か。 またこの映画の立場として、信仰心のない「黄金のオルド」はやがて衰退し、ロシアは生き残ったと言いたいのかも知れないが、これもそれほどはっきり示されているわけではない。この映画を見たロシア人は、モスクワ・ロシアと正教会の正統性を主張する立場から都合よく解釈することが認められているが、それ以外の人間なら、たまたま起こった出来事を並べて描写しただけと取るのも勝手だろうと思われる。これは、単なる事象の連なりにどう意味付けをするかという、いわば歴史解釈に関する一種の問題提起になっているようでもあるが、ただし単なる羅列と捉えてしまうと、映画としてのストーリーがないも同然になってしまうのが問題である。やはり歴史には物語が必要だということか。  結果として様々な面で興味深い映画であり、また映像が美的なのも印象深かったが、しかし娯楽映画としては難があるので他人には勧められない。ちなみにこれを見てから、昔のドイツの音楽グループ「ジンギスカン」の曲を聞くと気分が出る(「めざせモスクワ」Moskauなど)。
[DVD(字幕)] 8点(2017-06-10 09:37:24)
699.  略奪の大地 《ネタバレ》 
1988年のブルガリア映画で、DVD化されているが画質は悪い。原作は結構な大作歴史小説らしく、この映画も164分もの長さがある(勝手に前後編に分けて見た)。劇中年代の1668年は、日本では江戸時代前期(4代将軍家綱)に当たる。 舞台になっているロドピ山地はカルスト地形の多い場所とのことで、映画の中では山口県の秋吉台のような風景や岩をくりぬいたような洞窟が映っており、物語中の処刑穴?や“神の目”の場面でも生かされていた。文化面でも婚礼など地元の風習や建物などが興味深く、いわゆる「ブルガリアン・ヴォイス」のようなものも聞かれる。一方で有名な?オスマン軍の常備歩兵イェニチェリは、応援で来た400人の歩兵隊として映像化されており、台詞で実際に「イェニチェリ」と言っていたようだが字幕では「近衛歩兵」と訳していた。  劇中ではオスマン軍の暴虐ぶりがさんざん描写され(串刺しの串を作るところからの映像化は初めて見た)、実際こういうこともあっただろうとは思うが、しかし映画として作られた内容をまるごと史実として捉えるわけにもいかない。隣国を貶めてナショナリズムを煽っているようでもあり、部外者としてはほどほどに見ておく必要がある。特に異民族/異教徒に孕まされたからといって、母親が自ら産んだ子を殺すなどという感覚は信じられない。またオスマン帝国は異教徒に寛容だったというのが一般的な見方だろうが、この映画で特定地域が突然「改宗か死か」を迫られた理由が納得いくよう説明されていたとは思えない(少なくとも字幕では)。 そもそもオスマン帝国の支配が及ぶ以前、太古の昔からこの場所でキリスト教徒のブルガリア人が平和に暮らしていたわけでは全くなく、6世紀頃?に初めてスラヴ人が大挙して侵入し、続いて7世紀にブルガール人が来襲してスラヴ人を支配、ブルガリア帝国の成立と滅亡と再成立といった抗争が繰り返され、その間9世紀にキリスト教を受容するといった経過があったわけで、その過程で劇中に見られたような惨劇が(トルコ人と無関係に)なかったともいえない。この映画での印象がどうあれ、歴史上の悪役がトルコだけということはないはずなので、その辺は部外者として押さえておく必要がある。映画のためにオッパイまる出しにした皆さんはご苦労様だった。 ちなみに自分がこの映画を見て本気で怒ったのは、登場人物が食物をわざと踏みつけにして歩いて行った場面である。劇中の悪業は作り物だが、これだけは映画制作時に間違いなく現実にあった不道徳な行為である。  物語の面では、まず人間ドラマはよくわからないので放棄する。人間関係が変に複雑で原作を消化し切れていないようでもあり、また心情面で、登場人物のこだわりが部外者には理解できないところがある。 一方で社会的なテーマとしては、①生き延びること、②民族性を守ること、③キリスト教信仰を守ることが、この順番で重要だということらしい。映画では③をいったん諦めたようだったが、ラストではまたどっちつかずの(希望とも取れる)どんでん返し的な出来事が起こるので困惑する。しかし実際に現代でもブルガリア人でありながらイスラム教徒という人々が存在しているらしいので、そういう割切れない現実を前提にしながら、要は②が本当に大事だと言いたかったのかも知れない(①は当然として)。当時の現地の世相は知らないが、やはりナショナリズム高揚のための映画として捉えるのが妥当ということか。 結果としてかなりの力作のようでもあるが、やはり他国民として受け取れる限度というものがある。ちなみに好きになれる人物は誰もいなかった。
[DVD(字幕)] 5点(2017-06-10 09:31:19)
700.  好きっていいなよ。 《ネタバレ》 
原作がどうなっているのか知らないが、とりあえずこの映画に関してはエピソードを5個つないだ総集編のように見える。もともと孤立的だった主人公が、最初のエピソードで男と出会ったのをきっかけにして人間関係を広げていき、最後に最大の危機を乗り越えて題名の言葉に至る、という構成自体はまとまって見える。 しかし各エピソードが掘り下げ不足のように見え、形式論だけ述べて簡単に終わってしまう印象がある。また延々と自分語りをするとか登場人物同士で説教し合っているようなのがかなり変な感じで、恐らくは原作からの縛りがあったであろう不自然な台詞をそれなりにこなさなければならない役者の皆さんはご苦労様だった。  登場人物に関しては、主人公(ヒロイン)は特に好きになれなかったが、最後まで地味な顔に見えたのは方針として徹底している。主要人物で一番感じがよかったのがおっとりした友人で、胸がスイカかどうか関係なしに和むキャラクターだった。ほか男は基本的にどうでもいいわけだが、金髪の男はなかなかいい奴なのに最後まで独りだったのは不運を背負わされた感じで残念だ。 この映画で若年女子の皆さんがキュンキュンしたとすれば成功なのだろうが、ちなみに自分が少しキュンとしたのは「…考えどこなの」と言っていた役名なしの女子(ちゃんと高校生に見える)で、自分がこの高校にいたらこの人が好きになるだろうと思ったが、恐らく実際は高望みである(どうせおれなんか相手にしてもらえない)。ほかバイト先のお姉さんは感じのいい人で好きだ。なんでこんな映画を見ようとしたか自分でもわからなくなったが、見てしまったからには自分なりに見どころを探すということが重要だ。
[DVD(邦画)] 3点(2017-05-30 20:02:25)
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