61. ロゼッタ
《ネタバレ》 これはまた撮影泣かせな映画ですね…。まずファーストショットから度肝を抜かれます。画面から迸る熱気、まるでカメラなんて存在していないかのように振舞う俳優たちの荒々しい演技。常に新鮮さを感じます。特に少女が池に放り込まれるシーンでは、こっちまで池に突き落とされたような衝撃を受けました。互いに反目し合っていても、最後には手と手を取り合って立ち上がる希望的なラスト。情け容赦無くも優しいダルデンヌ兄弟の一面を垣間見たのでした。それにしてもベルギーではやっぱりワッフルって人気なんですね、何だか無性に食べたくなってきたので自分は冷蔵庫にあった冷凍タイ焼きで我慢します(泣)。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2005-12-11 17:56:38) |
62. モンスター(2003)
《ネタバレ》 …壮絶の一言に尽きますね。確かにこれでアカデミー賞を獲ったシャーリーズ・セロンは当然だけど、その反面「これがアカデミー賞なの?」という気もします。シャーリーズ・セロンとクリスティーナ・リッチの絡みと聞いたら普通もっと色っぽいものを期待しそうだけど、まさかあんなになるとは(とか言ってたら俺がブッ殺されそうだが)。物語は後半、まるで『チャップリンの殺人狂時代』のアンリ・ヴェルドゥのようにサクサクと男を殺していくアイリーンの姿が印象的です。幼い頃から大人にレイプされ、散々男に弄ばれてきた彼女。それだけにその鬱憤が一気に爆発したかのように次々と男たちを殺害していく。一度壊れた歯車は止まることなく加速し、やがて最後の命乞いをした客に「神様、お許し下さい」と呟きながら引き金を引く。彼については彼女も殺したくなかっただろうし、事実殺すべきではなかった。それでも殺さなければならなかった、もはや必然。これをアイリーンに殺された被害者の遺族の方達が観たら憤怒するだろうけど、何故こういうことが起きてしまったのかという犯人のバックグラウンドを知ることも含めて、いくら冷酷無比な殺人鬼とは言え夢や希望を打ち砕かれて生きてきた彼女には同情せざるを得ません(但し、この映画で描かれているキャラクターだけについて)。ここ近年の同性の悲劇のラブストーリーを描いた作品としては、デヴィッド・リンチ監督の『マルホランド・ドライブ』と双璧です。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2005-12-06 15:27:43)(良:1票) |
63. ジャイアント・ピーチ
《ネタバレ》 実写以外のパートは面白かったです。ピクサーの『バグズ・ライフ』と同じように(こっちの方が先だけどネ)それぞれ昆虫のキャラクターに個性があり、愛嬌もある。特にあのクモさんの動きの妖しさと言ったらもう、堪りませんでした。それから僕も普段物事を何でもかんでも悪い方向に考えてしまうので、「見方を変えれば良い」という言葉には感銘を受けました。何気に『ナイトメア~』のジャック船長(笑)が特別出演しているのも嬉しいです。 [CS・衛星(吹替)] 7点(2005-12-04 17:12:50) |
64. 炎628
《ネタバレ》 何なんだ、この絶望感は…。ある種異次元の世界の話でも観ているような感覚に囚われます、それぐらい衝撃的。下らないサスペンスの<衝撃のオチ>とか、そんなレベルではなく本当に衝撃的というのはこういうことを言うんだろうなと思います。特に最後のあの少年の表情はもはや演技を越えています。若者から精気を奪い取り老人へと変えてしまう戦争。個人的に二度と観たくない作品ではあるけれど、7点以下を付けることが許されないような気がするので8点。 [ビデオ(字幕)] 8点(2005-12-03 11:12:07) |
65. 男はつらいよ 寅次郎純情詩集
《ネタバレ》 冒頭の夢の世界がついに西洋へ…、寅さんって相変わらず変な夢ばっかり観るなぁ。物語は満男の学校の代理教師の家庭訪問から始まり、そこに寅さんが割り込んできて早くもとらやの面々と大喧嘩。その後いつぞやの旅の一座と再会を果たし無銭飲食によって警察に拘留。それを迎えに来たさくらが警察署を訪れると警官たちが「おい、寅さんはどこ行った?」「寅さんなら風呂に行ってます」とすっかり寅さんと打ち解けてしまっているのが面白い。そして後半はいよいよ京マチ子演じる代理教師の母親の登場。余命幾ばくも無いという設定だけに彼女が笑う度にいつそのまま倒れるのかとヒヤヒヤしたけど、とらやの居間で皆揃って和気藹々と話している光景は本当に微笑ましいです。「人はなぜ死ぬのか?」というテーマも含めて、今回はいつもよりペーソスの量が多めですが、前作「寅次郎夕焼け小焼け」に続き完成度の高い作品を観させて頂きました。感服! [CS・衛星(字幕)] 8点(2005-12-02 15:50:18) |
66. 赤い風船
《ネタバレ》 嗚呼、何て素敵な映画なんでしょう!終始無言で時間も短いのに、何故にこうも観る者の胸を打つのか。もう最初にあの大きくて色鮮やかな風船を見た時から、完全にやられてしまいました。まるで子犬のように少年の周りをウロウロと浮遊する赤い風船。道行く人々の傘の中に入れてもらったり、絶妙のタイミングで学校の先生に捕まらなかったりと。街の風景がちょっと薄暗いせいか、より一層風船の美しさが鮮烈な印象を残します。そしてラスト、パリの空いっぱいに溢れ出す大量の風船は壮観でありながら感動的。「星になった少年」ならぬ「風船になった少年」として物語は幕を閉じるのでした、メデタシメデタシ。 [ビデオ(字幕)] 8点(2005-12-02 15:37:27) |
67. 七つの大罪(1952)
《ネタバレ》 これはちょっと隠れてしまっているのが残念なくらい良く出来たオムニバス映画です。題材は今やすっかりお馴染みとなったキリスト教七つの大罪。かと言って決して難解なものではなく、一般の人にも分かるような普遍的な物語をそれぞれ七つの大罪のエピソードに例えて描いていきます。その例が第一話目の「強欲」と「憤怒」をテーマにした作品。金の亡者のアパートの大家が家賃未払いの住人に立ち退きを命令、その住人が大家の財布を拾って届けるも逆に大家からは中身を盗んだなと批難を浴びせる。その後妻の憤怒により夫は罰を受け、住人はたまたま拾った真珠の玉を売って難を逃れる。正直者は救われる。しかしそれよりも面白いのがその次の第二話。怠惰の化身によって世界中がやる気を無くしてしまい、それを見兼ねた神様が地上に天空の使者を送り込むという話。遊ぶことも働くこともしなくなった地上の気だるい世界観は勿論のこと、天上世界の造形や映像効果なども楽しめます。第三話目・第四話目は第一話・第二話のインパクトが強すぎたせいか、ちょっと印象が薄いような気もするけど難しいテーマをサラッと描き上げています。「嫉妬」のエピソードはかの巨匠ロベルト・ロッセリーニ。第五話目はどこかで見たことがあると思っていたら、映画術の中でヒッチコック先生が語っていた小話ですね。まさかこんなところで同じ話を観られるとは!そして最終話の第六話目がこれまた捻りの利いた面白い話。パーティ会場で無くなった宝石を貧乏な主人公が盗んでいたのかと思いきや、実は彼女はバッグの中にパーティーに出されたパンを入れていたというオチ。そして全てのエピソードが終わった後に狂言回しのジェラール・フィリップが語り出す、"第八の大罪"の物語…。これがまた痛快で、同じ七つの大罪を扱った作品ではデビッド・フィンチャーの『セブン』よりも気の利いたオチなんじゃないかと思わせられる程でした。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2005-11-30 15:20:30) |
68. ラルジャン
《ネタバレ》 流石リアリズムの巨匠と言われているだけあって、"無駄"なものを極力排除した映像は潔いの一言。全くもって気持ちが良い。善人は捕まり、悪人はまんまと逃げおおせるこの非情な世の中。そんな中で偽札という運命に翻弄される男の姿を、この作品は一点の揺るぎも無く描き出していきます。余りにも淡々としている為それほど物語の陰鬱さも感じませんでした…と思ったけれど、ここの皆様のレビューを読んでいると本当はあそこは恐怖を感じなければならなかったのですね。う~ん、未熟にも程がある。とにかく僕にとっては何もかもが新鮮な映画でした、ビデオを返却する前にもう一度観たいと思います。 [ビデオ(字幕)] 8点(2005-11-27 11:36:23) |
69. 男と女(1966)
う~ん…確かに才気は爆発しているけど、これが面白いかどうかと言うとちょっと…。ハリウッド映画のような大袈裟なラブストーリーではなく、ごく普通の男女の恋物語を描いている点には好感を持てます。リチャード・リンクレイターの「恋人までの距離」等は本作の影響を受けているのでしょうか。それからフランシス・レイのテーマ音楽は余りにも有名、漸く本家本元に辿り着くことが出来ました。流石に今日ではあらゆる所で真似され過ぎて、ちょっと新鮮味が無くなっているように思えます。それにしても当時無名で金も無かった新人監督が、これ一本で世界中の映画祭を席巻し一躍有名になるなんて"アメリカン・ドリーム"ならぬ"フレンチ・ドリーム"ですね。 [DVD(字幕)] 7点(2005-11-26 10:16:18) |
70. 柔らかい肌
《ネタバレ》 いや、正直フランソワーズ・ドルレアックが相手なら浮気したくなる気持ちも分かるよ。…という冗談はさて置き、これは全く恐ろしい映画でした。奥さん!ライフル片手にコートに隠し持って行っちゃいけません(苦笑)。自分は浮気はされる方にも責任があると思っている人間だけど、やっぱり妻を裏切るのは良くないな~と思いました(こんな感想しか書けない自分の貧相な鑑賞力にトホホ…)。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2005-11-26 10:05:04) |
71. 王様の耳はロバの耳
《ネタバレ》 カレル・ゼマンの傑作人形アニメ。ほとんど、と言うか完全にサイレント。ロバの耳を持つ一国の王様が自分の散髪をさせた床屋にその秘密を知られてしまい、何とか秘密を守る約束をしたものの、床屋は誰かに言いたくて堪らず遂に秘密は人々に知れ渡ってしまう…という話。サイレント映画の原則通り、映像で全てを語らなければならないので劇映画並の演出力が必要になります。王様の家来から手渡されたハサミに手斧を連想させ、その斧から処刑シーンを喚起させるまでの流れのスムーズなこと!また季節の移り変わりや犠牲になった床屋の数で年月の経過を表したりと、ゼマンさんはその辺のこともしっかりと心得ていたようではっきり言ってそこらの劇映画よりも良く出来ています。人形の造形は極めてシンプルで良く動く。同監督の人形アニメ「鳥の島の財宝」と同様、ちょっぴりシニカルで風刺の効いた良質な作品です。ただ直接的な描写は無いまでも、処刑シーンがちょっと生々しいので子供に見せるには覚悟が必要。 [ビデオ(字幕)] 8点(2005-11-25 19:53:10) |
72. サンタクロース・リターンズ! クリスマス危機一髪
《ネタバレ》 う~ん…確かに前作は観た記憶があるんだけど、ほとんど忘れてしまいました。普通のお父さんがある日突然サンタになっちゃう話だっけ?これも子供騙しと言ってしまえばそれまでですが、夢があって良いんじゃないですかね。このまるでおもちゃ箱をひっくり返したような世界観が好きです。確かに独裁的なサンタはどうかと思うけど…、個人的には"歯の妖精"のキャラクターがツボ。毎年のことですが冬になるとクリスマス映画に対して採点が甘くなるのは仕方の無いことです(言い訳)。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2005-11-25 19:42:37) |
73. 惑星「犬」。
《ネタバレ》 初めから子供騙しだということは分かっていたのですが、犬好きの自分にとってこの作品をスルーするというのは何とも耐え難いことでした。そして思い切って観てみたところ案の定予想的中!と、こういう訳です(誰に言っとんじゃい)。確かによくある動物スピーキング物の一つですが、「グレート・デーン陛下」やキャッチボールのシーンなど間が抜けていてなかなか面白かったです。それから鑑賞中は気付かなかったけど、声優陣がブリタニー・マーフィーやマシュー・ブロデリックと何気に豪華。最初はわざわざ宇宙から地球を支配しにやって来て結局人間に手懐けられちゃうのかよ、と思ったけどやっぱり犬と人間の友情は良いですね。いつか自分も絶対に犬を飼いたいです。ところで世界から犬がいなくなったら地球は猫の天下!? [CS・衛星(字幕)] 6点(2005-11-25 19:32:41) |
74. 記憶の扉
《ネタバレ》 こうして観るとつくづく「羅生門」って凄い映画だったんだなぁ、と思います。どれだけ他の作品に影響を与えているか気が知れない。う~む…それにしてもここまで凄いミステリー・サスペンスは久しぶりに観ました。ラストについては賛否両論ありそうですが僕の場合は断然"賛"です。普通に考えたら途中で気付きそうな気もするけど、どういう訳か最後の最後まで全く気付きませんでした。恐らく物語にのめり込んでいたのでしょう、余念の入り込む隙がありませんでした。ジェラール・ドパルデューの狂気に満ちた演技、それに呼応するかのようなロマン・ポランスキーの挑発的な態度。精神不安を掻き立てる水滴の音や、見せ過ぎず見せ無さ過ぎずというフラッシュバックの映像も効果的です。しかも後味は不思議と爽やか。同監督の「ニュー・シネマ・パラダイス」が余りにも有名過ぎて、影に隠れてしまっているのがちょっと残念です。 [ビデオ(字幕)] 9点(2005-11-23 14:37:13) |
75. リトル・プリンセス
これがキュアロン監督がハリーポッターに抜擢されるきっかけになった作品でしょうか?ハリウッドのファミリー映画宜しく、御伽噺ムード満々な話ですが僕は結構好きです。何よりも主役の女の子たちが可愛いし、僕も彼女らの夢に元気を貰いました。健気で優しい主人公の少女に意地悪な悪役の学院長と、人物設定もこの上ないくらい分かり易く、また所々垣間見せる幻想的で美しいシーンも思いがけない収穫でした。ただある程度時代が経った今では、CGの映像がちょっとミスマッチに思えてしまいます。 [地上波(字幕)] 8点(2005-11-23 14:16:43) |
76. 沈黙の世界
《ネタバレ》 正直言って序盤は退屈でした。特に海洋学について興味の無い自分にとっては、延々と機材の説明をされても大して面白味は無かったのですが、一度海の底へ潜ればそこは別世界"沈黙の世界"。イルカの大群とのダイナミックな遊泳から、船の周りに群がってくるサメ地獄絵図と。「食べられた子イルカの敵だ!」って、元はと言えばアンタ達のせいでしょう!それからわざわざハタを誘き寄せておいて邪魔になったら蹴飛ばしたりと、クストーさん、あんた本当にそれで良いの?と思いながらも、何だかんだ言って神秘的な海の世界を楽しみました。それにしてもあのクルーたち、何か亀に恨みでもあるの?(笑) [ビデオ(字幕)] 7点(2005-11-20 10:45:12) |
77. 民族の祭典
第二部「美の祭典」に比べると競技のバリエーションが少なく、やや面白味に欠けるような気がしますが、相変わらずフィルムに映るアスリートたちの躍動感溢れる映像は素晴らしいの一言です。今日のオリンピック記録映像と比べると色彩こそ無いものの、一つ一つの画の迫力、臨場感などは全く遜色ありません。それどころか寧ろモノクロの映像が光と影のコントラストを生み出していて、より劇的なものになっています。やっぱり見所は超激戦棒高跳びと大会の最後を締め括るマラソンでしょうか、あれには白熱しました。ただヒトラーが生出演していたり、ドイツの国旗がナチスのハーケンクロイツに変わっていたりと時代性を感じさせながらもちょっと生々しいです。そういう意味でもやはり個人的には素直に楽しめる第二部の方が好みかな、と思います。 [DVD(字幕)] 8点(2005-11-20 10:39:47) |
78. 美の祭典
なるほど、単なる記録映画じゃないのね。冒頭から木々や小川の自然映像をコラージュする等、早くもレニ・リーフェンシュタールの天才振りを見せ付けています。まるで30年代のソビエト映画を彷彿とさせるような荒々しさに、スローモーションの美しい映像は観ていてこちらは何もしていないのに「スポーツするって気持ち良いな~」と思えてしまいます。特にフィナーレを飾る高飛び込みの迫力は圧巻!そのまま感動のクライマックスへと一気に突き進む。我らが日本人もけっこう活躍していて嬉しい、これは第一部『民族の祭典』も絶対に観たいと思います。 [ビデオ(字幕)] 8点(2005-11-20 10:33:22) |
79. ドリーマーズ
《ネタバレ》 同性愛や近親相姦っぽいテーマを除けば、後は普通に映画として楽しめました。ジャン=リュック・ゴダールにアンリ・ラングロワ、果ては「はなればなれに」ごっこと、まるで本当にヌーベルヴァーグの世界に入り込んだような錯覚を覚えます。それから映画のシーン当て遊び、あれは良いですね。この作品の魅力の一つだと思います。オープニングのエッフェル塔を降下していく映像とは対照的に、最後のエンドロールを遡っていくエンディングが印象的でした。映画はいつの時代も戦争!? [CS・衛星(字幕)] 7点(2005-11-18 15:01:01) |
80. プリンセス・ブライド・ストーリー
この「モンティ・パイソン」のような馬鹿馬鹿しさが好きです。超ご都合主義なストーリー展開に、個性豊かな登場人物たち。物語の途中で入る子供の茶々とピーター・フォークとのやり取りがこれまた絶妙で、テレビゲームと中世というミスマッチさが頗る良いです。アンドレ・ザ・ジャイアント等の脇役もハマっていました。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2005-11-13 18:18:51) |