801. ラスト、コーション
ちょっと・・、ノレなかったんですよ。何人かの方も言ってるけど、私もヒロインの造作が難ありだった。素朴が勝ちすぎて、色恋沙汰を濃い目にこなすのは厳しい顔立ち。劇団仲間の、もう一人の彼女、あっちの方がヒロインに良かったんじゃないですかね。私個人の好みか。 「想い」を描くのに定評のある監督の手腕はいかんなく発揮されているとは思うんですよ。トニー・レオンのラストシーンでの脱兎ぶりも涙目顔も良かったし。ああだから別の女優だったらなあ、この話もっと気持ち入ったのにな。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2018-02-13 01:03:17) |
802. フィフス・エステート/世界から狙われた男
《ネタバレ》 ジュリアン・アサンジと初期スタッフとの、創設から諍い別れまでの一連のドラマがまるでロック・バンドのメンバー入れ替え劇みたいだ。考えが合わなくなってくるんですなあ 人間同士ってのは。 当初はウィキリークスの意義を大いに感じながらの観賞だったけれども、だんだんダニエルの言い分とアサンジとどちらにジャッジを下すべきなのかわからなくなった。そこが本作の狙いだろうけど。 アサンジの虚言癖などは大義の前には目をつぶるくらいのものではあろうけど・・、でもやっぱりあの「苦労」白髪は毛染めだったエピソードはかなりアサンジの深い所を突いているのじゃないかと思った。個人的に信頼する気が失せるな、私も。 情報の加速する流れは止められない。”フィフス・エステート”(=第五の権力)としてアサンジを是とするのか否とするのか、今生きている我々全員に突きつけられた課題でありましょう。 変人顔を生かしたベネさんの怪演も印象的。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2018-02-08 00:38:29) |
803. マラヴィータ
《ネタバレ》 スタッフが楽しんで作っているなあ、と伝わる雰囲気の良い(?)クライム・ファミリー話です。無茶なことを、はっちゃけてやる。いや、面白かったです。デ・ニーロとトミー・リーにこんな役はまあバイトみたいなもんでしょう。余裕のあること、楽しそう。だいたいロバート・デ・ニーロをゲストに呼んで上映するのが“グッド・フェローズ”ですからね。この冗談センスを受け入れられれば楽しめること間違いなし。 おとーさんの過激な倍返し妄想は「わかるわかる」と膝を打ちましたし、凶暴純情長女も知能派謀略家の弟も、若々しいM・ファイファーも、この家族みんな好き。ただ何故犬の名前がタイトルなの? [CS・衛星(字幕)] 7点(2018-02-06 00:09:53)(良:1票) |
804. ロスト・イン・トランスレーション
ソフィア・コッポラ。この人は“何かそれっぽい”雰囲気を出すのがとても巧くて、深遠な(ような)イメージを生み出すのに長けています。血統の良さが出るのでしょうか、技巧は高い。けれど、何かが足りない気がいつもします。「マリー・アントワネット」では私はそれを“胆力が足りない”と評したのですが、本作もいいとこまで行ってるけどあとひと匙欲しい、と思うのですよ。 例えば、この作品テーマは「孤独」です。私的に孤独作の名手はJ・ジャームッシュなのでちょっと比較しますと、物語の中にこれといった事件が起こらず都会をさまよう描写で構築しているあたりは両者よく似ています。けれどジャームッシュの場合、“孤独を肯定”するところが立ち位置になっているのがソフィアと決定的に違うのです。肯定し、受け入れて送る人生のうちに独特のユーモアやおかしみすら滲む、この余韻の有る無しは作品の格を決定付けると思うのです。 B・マーレイとヨハンソンは自らのありように納得いかずに寂しがっているけれど、それは別に異国にいるからでもなくて、帰国してもやっぱり寂しいのでしょう?“日本”は単にエキゾチックな舞台装置として背景になっているだけ。 「ヘンテコな国」で寂しい魂が二つ惹かれあう物語。それは悪くはないけれど、ただそれだけで終わってしまうソフィアならではのふわふわしっ放しで地に足が着いていない感が出ちゃっていると思いました。ただこれは好みの問題で、このさらっと感が快く感じられる人もいるでしょう。 それから、やっぱり私は日本人なので母国の描写には敏感にならざるを得ず、観賞するに当たって日本という舞台が邪魔になったのは否めません。「料理を自分でするレストランなんて」と言うけど、あんたそりゃしゃぶしゃぶはそういうモンやから、ってちょっとむっとしましたしね。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2018-02-04 15:30:26)(良:1票) |
805. プロムナイト(1980)
完全に時代の波に洗われて色褪せしてしまった感満載。当時に観ないとなあ、こういうのは。大体、高校のプロムを扱ったものはその当時の流行がもろに反映していますから賞味期間も短い。それに後発の類似ホラーがごまんと作られちゃってて腕を上げてるので、新しいものに比べると妙に牧歌的に感じます。(”キャリー”ほどの金字塔であれば後作品も追いつけないですが) さてそれにしても、この当時J・L・カーティスは高校生の役を演っていたんですね!あまりにティーンぽくないので、途中まで私は彼女のことを教師役だと思ってました。あなんだ高3なのかい!とわかった驚きの方がラストの犯人バラシより大きかった次第です。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2018-02-04 00:24:54) |
806. 偉大なるマルグリット
《ネタバレ》 仕掛けはコメディのようだけど、実のところこれは哀しい女性の人生の物語。良家の育ちで、やんごとなくオバサンになったマルグリットである。おっとりと品があって、”意地悪成分”が無い。お金に不自由しないと、たまにこういう人が出来上がるものです。 欠点はといえば自覚の無い音痴だけれど、”人に聞かせたがる”性癖が無ければ社会的に何ら問題はなかったのだ。 私はマルグリットが終始可哀想だった。彼女の周りは愛が無さすぎる。夫は彼女に辟易して浮気、取り巻きは陰で嘲笑、詐欺師は金目当て。残酷なのは、マルグリットが信頼を寄せていた執事が実際は彼女の狂気を肥大化させてきた、ということ。執事の手によって切って落とされる最終幕。妻の破滅をせめても防ごうとした夫の思いは間に合わず、真実に触れて昏倒したマルグリット。私の読みでは彼女はもう戻ってこないと思う。咽喉科の医者の考えるほど、彼女の妄想病疾患は浅く軽いものではないのだ。真実を認めることができぬまま、妄想の世界でコンサート旅行の予定をたてながら余生を送る彼女の姿が見える。 当人は幸せかもしれないが、私はとても悲しい。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2018-01-28 23:43:10) |
807. スポットライト 世紀のスクープ
《ネタバレ》 アカデミー会員が好きそうなごりごりに硬派な社会派映画でした。「映画」の文法に期待されるカタルシスとか、情感盛り上がり場面とかが無い、クソ真面目な作品です。 ”神父による子供への性的虐待”、この文言のおぞましさはカソリックを信仰して生きるアメリカ人には我々の何倍も衝撃を伴うものなのでしょう。それこそ社会全体を根底から揺るがすほどに、信仰心とは根が深い。故に記者達への妨害も、教会はもとより、波風を立てたくない地元の名士らによる横やりの方がたちが悪いのです。 いろんな障害を乗り越えて世間に巨悪を暴いたBoston Globe紙の勇気に対しての、アカデミー賞授与というふうに感じました。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2018-01-25 00:24:28)(良:2票) |
808. ブルックリン
《ネタバレ》 これから社会に巣立ってゆく女の子たちにぜひ観て欲しい一本。ヒロインと笑い涙し、勇気を共に振り絞る経験ができるでしょう。 美少女だったS・ローナンはすっかり大人になりました。アイルランド出の野暮ったさをすっぴん顔で上手く表現できている前半と、垢抜けてゆく中盤以降の変身ぶりも印象的です。 都会に出たての心細さや、虚勢張りやホームシック、それをサポートする周囲との関わりといった彼女の生活が丁寧に描かれ、エピソードの一つ一つが胸に溜まります。船で出会った赤い服のアドバイザーや寮の先輩達、職場の主任、皆気の良い性質なのだった。初めはコワイけれど。 そして、場が急転換する第二部帰郷編。これがもう、胸がざわつく大変なことになるんだ。ええー、どうする?とワタシが苦悩しちゃったよ。なにしろ旅立つ前と状況が違いすぎる。一会社の事務を任せてもらえるし、以前は相手にもされなかった上層ランクの男子と親密になるにつれ、周囲まで期待を寄せてくる。なんと運命はズルイのか。故郷ってこんな風に絡め取ってくるものなのか。 彼女は決断します。エイリシュ、ああ、もちろんそれしかないよね。だってNYのそこは貴女が自ら切り開いた居場所なのだから。姉の後釜となって故郷に残るより、ずっとローズも喜んでくれると思う。 [DVD(字幕)] 8点(2018-01-22 00:11:20)(良:1票) |
809. 記憶探偵と鍵のかかった少女
《ネタバレ》 M・ストロングが美少女に振り回されっぱなしのナサケないおじさんになっちまってる・・。あーあ。なんでこう男の人は”魔性の”美少女に弱いかね。記憶を辿らずとも、彼女が嘘ついてんの一発でわかるじゃないですか。私は女だからこの娘の言うことより、周囲の証言の方を信用したよ。しかも、記憶を自分で改ざんできるのなら、そこへ潜る意味無いじゃないですか。物語の大前提を自己否定しちゃってる。 映像はダークで思わせぶりに妖しいのですが、話の骨格に突っ込みどころが多くてノレないです。あの娘16才で家を出たはいいけど、どうやって自活すんのかな。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2018-01-18 17:34:20) |
810. マイ・インターン
《ネタバレ》 これは、ファンタジーですな。森や湖でなく21世紀の会社が舞台の。クライマックス(ハサウェイが夫の浮気に悩み、他所からCEOを呼ぶか否か決断するあたり)までは、まあ心地よい幻想に酔う勤労女子もいるでしょう。女社長としてのハサウェイのしゃかりきぶりや、専業ママらからの冷ややかな圧力などはリアルだし、デ・ニーロはいぶし銀の包容力を大放出していますから、この初老の紳士に癒されたいと思うのも、女子の抱くファンタジーのひとつではあります。 ところがラスト、ワタシは叫びました。うわー出た、ナンシー・マイヤーズ節。突然の、あり得ない大甘の展開はほんとこの人らしい。ハサウェイが「仕事を取る」ことを決意した矢先、浮気夫はなんと心を入れ替え(!)、キミを支えたい云々と彼女のオフィスに押しかけてぬかすのです。感激して涙ながらに夫を受け入れるハサウェイ。よくこんな無理な芝居ができるもんだ。 それにこの結末だと、夫は仕事に戻れないじゃん。かつてはやりがいのある仕事を持ち「バリバリ働いてた」のに。子育てするなら夫婦どっちかは仕事を諦めなさいよ、ってか。ワンオペ育児を強いられている世の女性の立場を夫に入れ替えただけです。この監督は女性の味方をしているようでいて、その実すんごく鈍感なのではないかと思っています。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2018-01-16 23:33:33)(良:1票) |
811. キングスマン: ゴールデン・サークル
《ネタバレ》 キングスマン、大好きです。楽しみにしながら映画館に出向いて、楽しかったー、と帰ることができました。今作もキレキレの音楽と、趣向を凝らしたブリティッシュな武器の数々にはうっとりしました。 ただ、やっぱり続編は風呂敷を広げがち。舞台は広範囲、人も格段に増えました。私は”英国風”センスが好みなので、アメリカ側にやたらと人物が出てくるのはちょっとうるさかった。チャニング・テイタムなんて、わりとすぐ冷凍になっちゃうしと思ったら、ウイスキーなんて代わりの駒が出てくる。んん?テイタム一人で押しても良かったんじゃないかい? 再会できると思ってなかったハリー、まあその無茶蘇生ぶりは置いとくとして、やっぱり嬉しいし、ジュリアン・ムーアも超絶怪演。死に際もコワイ。エルトン・ジョンの仕事っぷりには脱帽だ。どこまでが素なのやら、すごいおっさんだ。笑わしてもらったー。 主人公とその彼女のキャスティングが、個人的にぴったりこないのが前作からの難点なのですが、なんたって脇が磐石ですから。コリン・ファースにマーク・ストロング、お二方の英国紳士なスーツ姿が美麗なことに変わりなく、脚本の疾走感(と悪趣味センス)も衰えてはおりません。 [映画館(字幕)] 8点(2018-01-12 00:39:08)(良:1票) |
812. ジェサベル
《ネタバレ》 ホラー百出の昨今、ちょっとのことでは”どれかにそっくり”となりがち。その点、今作はエポックメイキングとはならずとも、一生懸命「新しいこと」を考えた跡が伺えます。 まず、ヒロインは怪我をしていて避難能力を低く設定する。”ビデオ”というクラシックな装置もなんとなく怖がらせに一役買う。なんでいつも暗い中でそんなコワイ物を見るのか、とは思うが。 ビデオに洗脳されてヒロインは自死してしまうのか?と思わせておいて、魂が乗っ取られました、というオチ。なかなかオソロシイではありませんか。 ヒロインがいつも胸元の大きく開いたサマードレスを着ているのも、”これはいたいけな若い女性です”と常に客に意識させる狙いがあるのかな。単なるサービスですかね。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2018-01-08 23:56:07)(良:1票) |
813. ナチュラル
《ネタバレ》 いやいや・・野球モノとしても、一人の男の人生復活ドラマとしても浅い出来です。未来洋々たるはずのスタートからつまづいた、そこの部分とその後数年はすぱーっとトバして、天才中年ルーキーとして活躍するあたりから丹念に描き出すんだけど、これがご都合主義でねえ。気の毒なのはマドセンだよ。ワタシなんかはサスペンス好きなので、あの謎の銃撃事件の全容がいつ明らかになるのかと、ずーっと待ち続けるハメになりました。誰の陰謀なのか、黒幕はこいつか、など見事に私の予想は全部外れました。何もないんかい。なんじゃそりゃ。 それにせっかくの野球の試合の、見せ方が下手です。照明が壊れるとかじゃなくて、展開で盛り上げてほしい。タメる部分が違うし。例えばラストのレッドフォードのファウル、あれはいらんと思う。 ただですね、こんな二流の脚本で客を最後まで引っ張ったロバート・レッドフォードのスター力は思い知りました。知的で端整で説得力がある。他の役者だったら、すっかり埋もれた野球映画のひとつ、に今頃なっていたと思います。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2018-01-06 00:42:01) |
814. 2 days トゥー・デイズ
ああ、シャーリーズ・セロンもこの業界にデビューしたての頃はこういう役割を期待されていたのだね。モデル上がりのスタイルに金髪ですから、まあ順当というかベタというか。ところが”可愛い子ちゃん”キャラで収まろうなどとは彼女全然考えてなかったわけで。後に眉なし小太りの殺人犯になったり、丸刈り頭のギャング団の隊長として砂漠をタンカートレーラーで突っ走ろうとはこの頃誰が想像したでありましょうか。つくづく感無量の思いでワタシはこの映画を、というかセロンを観賞したのでした。 で、セロンと薄気味悪さ満点の殺し屋スペイダーの二人に引っ張られて最後まで観ましたが、話はどうもとっ散らかりっぱなしでうまいこと収束できていない感じです。各々のドラマをもっと丁寧に描いてくれたら、それぞれのストーリーが活きて来て、収斂してゆく様もぎゅっと締まったのでは、と思うのですが。つまらんギャグを入れる暇があったら他に描くべきことがあったはず。巧い収束劇はもっと脚本が良いですよ。人物が何人出ようと、個性が炸裂しているものです。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2017-12-31 16:38:10) |
815. 最高の人生の見つけ方(2007)
《ネタバレ》 爺さん名優の二人がさすがです。どっからどう見てもニコルソンとM・フリーマンなんだけど、すぽんとその役に入れる技術は玄人の熟練技を見ているようで、全く安心して見ていられる。ただ、物語はわりと深みに乏しく、重鎮二人のネーム負けしています。 人生の辛酸を経て、終盤に差し掛かった二人が最後にやりたいことが世界各地の名所巡り、とはちょっとがっくりしますよ。インドやらピラミッドやらに行きたいって若者の自分探しか。 観光名所をつなげるのは尺稼ぎにはなるでしょうが、”やりたいことリスト”は話の肝なのですからここは脚本家にもっと考えて欲しいところ。 でも主演の二人とニコルソンの秘書がとても良いのです。”猫のフン”コーヒーで爆笑してるシーンと、山頂に遺灰を持ってきたのが秘書氏だった、という意表を突くラスト。この二場面は、他のアラを補って余りあるものでありました。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2017-12-31 00:49:16) |
816. 動物と子供たちの詩
《ネタバレ》 いつの時代にもいる”生きづらさ”を抱える子供たち。うん、みんなクラスカーストの下の方にいそうだもんなあ。私もそうだったよ。ほんと、キミらには共感する。だって正しい感性ではないか。撃たれるがままのバッファローに心を痛めるのはまっとうな人間性の証。キミらを否定する大人がいても気にするな。向こうが間違っている。 救いの無いラストはいかにも70年代の作品ぽい。ドライな描き方はニューシネマの定番だ。 今ならばおそらく死者は出さないだろうな。その代わり、逃がしたバッファローが大人によってまたあっさりと柵の中に収められて、自分らの非力を痛感するといったオチが用意されそう。だって生き抜いてほしい。彼らには。いつかその非力を克服できるように。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2017-12-26 00:46:51) |
817. かくも長き不在
《ネタバレ》 静かな映画である。1960年、パリ。スマホはおろかFAXだって無い、今よりずっと社会全体がゆっくりだった時代。さらに季節はバカンスを迎えて通りに人がいなくなり、静まり返った日常にふいと現われた行方不明の夫。 妻は一人必死に記憶を呼び覚まそうと奮闘する。性急にならぬよう、自制しながら。レコード音楽がゆるゆると流れ、妻の激しい一念とは裏腹に、何もかもがスローにおっとりと描写される。1カット固定でじっとしているシーンも多いし、オペラを一曲聴かされるのも退屈で苦痛に感じる人もいるだろう。 だけど、それまでのどっちつかずのもやっとした空気がラストシーンで一変するのだ。妻の努力が、周囲の気遣いが無に帰すあの瞬間。どんなに必死に思いをかけても、彼の脳裏に甦るのは収容所での苛酷な記憶なのだ。 かくもかくも、その不在の長きことに胸を衝かれる、非情のラストなのでありました。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2017-12-18 23:45:52) |
818. 運命の逆転
《ネタバレ》 いやあー、やっぱりJ・アイアンズはヨーロッパ貴族系なスノッブを演らせたら天下一品。すごいすごい。この作品がこうも強烈な気色悪さを纏っているのはこの人演じるクラウスの一貫した”得体の知れなさ”のおかげである。ハリウッドアクション映画でTシャツ姿のテロリスト役なんか似合ってなかったもんなあ。グレン・クローズも負けじと富豪の鬱屈おばさんを見事に仕上げてますけど、アイアンズに持っていかれ気味ですね。 真相は藪の中だし、本格的な法廷ドラマを期待するとがっかり必至。圧倒的に不利なクラウスの一発逆転を狙う、大学教授チームの論理も分かりづらい。 豪奢な邸宅のその内側のささくれた人間関係に、お金ありすぎるからだよーとやっかみのこもった感想を抱きながらの観賞でありました。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2017-12-17 23:49:46) |
819. ブリッジ・オブ・スパイ
《ネタバレ》 さすが大物監督だけあって、いつものことながら画が重厚で時代考証も怠り無い。旧東ベルリンの光景などはセットとは思えないリアリティで、これもまた「スピルバーグ謹製」の信頼感は揺るがない。ああ、映画を観た!という充足感を常に提供し続けるのだから、やっぱりスゴイ人であろう。 ただお話はちょっと舞台セット負けの感がある。 常連のトム・ハンクスは安定の演技力で、こちらを不安にさせることはないのだけど、脚本が実在の弁護士その人の考えに迫り足りない感じです。 旧ソ連と東ドイツを相手に一人で、しかも米国政府の後ろ盾の無い「民間人」としての立場で交渉に臨むのである。こりゃ不安ですよ、普通。よっぽどの戦略家であるか、交渉の切り札を持っているか。いつその手管が炸裂するかと期待したけど、なんかトム・ハンクスは一貫して頑なに「二人対一人」の交換を言い続けるだけなのだった。これでは巧みな交渉術というより、頑固者である。 「もっと何かあるはず」と観続けて、結局何も無かったという、ちょっと肩透かしの展開でありました。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2017-12-16 13:39:10)(良:1票) |
820. ワタシが私を見つけるまで
《ネタバレ》 ”シングル”であることがアメリカではそんなに肩身の狭いことなのかどうか知らんが、あっちの人たちは全力で「寂しくないぞ」とアピールするんですね。もっと普通でいいのに。・・でもこの人たち、「孤独」ですかね?皆積極的に他者と関わりを持ち、コトに及ぶまでの時間もすごく短い。もちろんコメディとしての脚色もあろうけど、なんだかなあ。空疎だなあ。 ヒロインの周囲に姉・友人・元彼・男友達、と色々置いて群像劇にも見えなくもないけど、浅い。黒人の同級生とその娘のエピソードは不要にも思う。 そもそも、ヒロインの「彼氏はいるけどちょっとの間別れて、好きに遊んだあとヨリを戻したい」というしょっぱなの行動からして意味不明なことこの上ないぞ。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2017-12-16 00:38:03)(良:1票) |