941. 大河の一滴
邦画の客離れを一生懸命後押しする、不出来な企画物メジャー映画の典型例。いい歳して自分を持ってない女、優柔不断な幼馴染、自殺する為に登場する友人、唐突に満州の思い出を語る父親、そしてロシアのイケメン青年が、全く噛み合わない話を展開。エッセイ(未読)を原作にしてるということは、ほとんどオリジナル脚本ということになりますが、当時90歳になろうという巨匠には、大分ボケが入ってきてることを疑わせる出来。「完全なる飼育」の時もそうですが、誰も注意できなかったんでしょうか? これは、日本には優秀なプロデューサーがいないってことですね、3点献上。 3点(2005-03-12 00:09:07) |
942. 東京ゴミ女
《ネタバレ》 密かに憧れている同じアパートに住む男のゴミを夜な夜な部屋に持ち帰り、そこから男の生活習慣を知り、ひたすらその男を理解することに喜びを見出すストーカー女を描いた異色ロマンス。中村麻美(どうも私は、この人と三輪明日美の区別がついてなかったみたい)が嬉々としてゴミを分別し、時々入ってるお宝(例えば古着等)に目を輝かせる様が可愛らしくも不気味。しかし最後に女は、その男ではなく、男も含めた誰にも知られず、自分が男を最も理解しているという満足感だけを追求していたことを自覚する。これは完全にマニアの境地です。ビデオ撮りにしては綺麗な映像だったのも奏功し、個人的には面白く観ることが出来ました。そして脇役ながら、最高のハマり役を演じた柴崎コウも必見です、6点献上。 6点(2005-03-12 00:08:42) |
943. メッセンジャー(1999)
既にバブルが弾けていたことにまだ気づいていなかった1991年の、「波の数だけ抱きしめて」以来のホイチョイ映画。バブリーな飯島直子が身ぐるみ剥がされる冒頭の展開に、日本経済への、はたまた自分達への皮肉が込められていたのでしょうか。しかしバブルは弾けても「オシャレ感」は健在で、いくらお気楽ムービーだとしても、例によってリアルな生活感は全く見当たらない。多くのシーンで飯島直子が全く自転車を漕いでいないのがミエミエだったのも白ける。もっともっと平成不況に喘ぐ観客を応援し、且つ楽しませる映画であって良かったと思います。また、東京ロケは比較的頑張ってたとは思いますが(特にオープニングの草彅剛が車の間を疾走するシーン)、これももっと演出に工夫のしようがあった筈です、6点献上。 6点(2005-03-12 00:08:15) |
944. 大怪獣東京に現わる
怪獣映画の主人公と言えば科学者等の政府関係者か自衛隊員、または報道関係者、そして被害に遭う市民等と相場が決まっていましたが、直接的被害の及ばない地域で、メディアを通じて怪獣災害を見守る一般市民を主人公にするということと、一切怪獣の姿を映さないというアイディアは面白い。…しかし、それだけ。これは怪獣映画の「パロディ」なんですから、演出や音楽、怪獣出現の際のシミュレーションに至るまで、怪獣映画を踏襲しなければ面白くなる筈がない。これじゃ単なるお寒いコメディです。原発にも実は安全性に問題があって、職員が逃げ出してるにも関わらず市民が避難してくるとか、ブラックな味付けがあって然るべき。最も特撮から縁遠い松竹の製作ということも、本作失敗の一因に思えます、4点献上。 4点(2005-03-12 00:07:47) |
945. 全身小説家
私は井上光晴という作家を全く知らないし、もちろん著作も読んだことがなく、世評すら聞いたことがありません。この映画で描かれる井上氏は、常に取り巻きに囲まれ、知人には呆れられ、そして自らの経歴を嘘で固めてる器の小さな男。「全身小説家」というタイトルも、全身全霊をかけて小説を執筆するという意味もあるんでしょうが、それ以上に、自らをフィクションで粉飾していることからきている。普通なら癌を宣告された作家の闘病記的な作品になりそうなものを、本作はまるで彼の嘘を暴いていくミステリー映画の様。ドキュメンタリーなのに唐突に挿入される作られた再現映像は、井上氏の嘘をフィクションで表現した原一男の意趣返し。「死者に鞭打つ作品」という評もありますが、だからこそこの映画は面白い、6点献上。 6点(2005-03-12 00:07:26) |
946. ロング・エンゲージメント
「アメリ」の余勢を買って米国資本(及びハリウッド女優)が入り、日本でも大々的なロードショー公開となるようですけど、一般ウケは難しい作品だと思う。第一次大戦当時という舞台はジャン=ピエール・ジュネのレトロな映像にマッチし、キャラクターや出演者、ナレーション等の映画の構成は「アメリ」チック。それに加えて「プライベート・ライアン」ばりの戦場シーン。そして、一途な恋物語も題材としてはウケが良さそうですし、最後まで観ればそれなりに筋の通った納得の物語なんですけど、とにかくっ、かなり映画が進んでも何が何やら、誰が誰やらさっぱりと把握できない。序盤で登場人物や謎を把握すればこそ、終盤のカタルシスや感動もある訳で、これはミステリーとしては致命的な欠点と言わざるをえないでしょう、5点献上。 5点(2005-03-08 00:19:56) |
947. Ray/レイ
(長文です) 音楽映画としては、名曲が即興で作り上げられていく場面等、背中がゾクゾクするような印象的シーンが多く、確かに2時間半以上が長くは感じませんでした。しかし伝記映画としては、もちろん駄作だとは思いませんが、近年比較的量産されてるハリウッド製偉人伝の例に漏れず無難なだけの仕上がり。特にラスト5分の無理矢理なまとめ方は気に食わない。トラウマの克服と麻薬中毒の克服をリンクさせ、そこに母親を登場させて解り易い台詞を喋らせるという陳腐な展開。更に、物語の流れと関係なく唐突に現れる、お決まりの満場拍手シーン。実話と言われればそれまでですが、もっと他にやり様があったと思います。そしてジェイミー・フォックスには演技賞じゃなくて、「ものまね大賞」を贈りたい。ところで話は変わりますが、差別的な意味合いを込めた台詞(“cripple”等)には、字幕でもそのまま差別用語を使用すべきだと思う。あと、今回のアカデミー賞でフォックスが黒人であることに全く注目が集まらなかったのは、非常に喜ばしいことだと思いました。ということで、天国のレイ・チャールズに6点献上。 6点(2005-03-08 00:19:37) |
948. アバウト・シュミット
アメリカ映画としては非常に珍しく、リアルな小市民の生活がそのまま描かれてる。いくら偉そうなことを言ったって、大多数のサラリーマン同様、所詮副部長どまりの男ですから、会社にとっては居ても居なくても一緒。気に食わないことがあっても、長年の生活で染み込んだ小市民的気遣いで、場を滅茶苦茶にする勇気も持てない。家庭にかまけてこなかった所為で、子供には疎んじられるだけ。これで頼みの女房に先立たれたり、三行半を突きつけられたりしたら生きることもままならない。出来ることと言えば、月々2千数百円程度の寄付くらい。おまけに、それで逆に慰められてる始末…。これは見るも無残な老後の物語。“About Schmidt”とは即ち“About Us”であり、“About Nothing”なのです。そういうことで、7点献上。 7点(2005-03-08 00:19:18)(笑:1票) (良:1票) |
949. ミリオンダラー・ホテル
考えてみたら、私にとって初のヴィム・ヴェンダース作品。「ベルリン・天使の詩」は一度トライしたことがあるけど、未だ通しで観てない。この映画も大挙して有名どころが出てなかったら観てなかったと思う。で、変わり者の集団の中に敵意むき出しの異端者が入り込み、そこに笑えるドラマを紡ぎ出すってのは良くある手ですが、本作のメル・ギブソンは彼ら以上の変わり者。一体、彼の設定の意味は何だったんでしょう? 同様に、この物語で描きたかったことも良く解らない。人生は一夜の夢ってことかな。ま、美しい映像やハリウッド・スターを眺めて飽きはしなかったので、5点献上。 5点(2005-03-08 00:18:57) |
950. マン・オン・ザ・ムーン
アンディ・カウフマンというコメディアンには全く馴染みが無く、この映画を通じて初めて知りました。活躍(?)したのは70年代中頃から80年代前半とのこと。これは日本で言うと、「8時だヨ!全員集合」すら俗悪番組とされた時代に、たった一人で、本気とも冗談ともつかない「めちゃ×2イケてるッ!」か、悪意を持って素人をコケにする「ロンドンハーツ」的なお笑いを実践してた感じでしょうか。そう考えれば、いくら先進的なアメリカン・ショー・ビジネスでの話としても早すぎる。没後20年近くを経て、ようやく彼の目指したお笑いにコンセンサスが醸成され始めた感じでしょうか。彼が自分の人生そのものをヤラセの冗談にしてしまったのは解りましたが、映画はそこから何を導き出したかったのかが今一つ解りませんでした、5点献上。 5点(2005-03-08 00:18:35) |
951. フィオナが恋していた頃
エイダン・クインと彼の兄弟が、彼らの母親が故郷で聞いた話を基にして作ったというプライベート・ムービー。やけに評価が高いのが気になりますが、個人的には凡庸でノスタルジックで、かなり印象の薄い一本。“This is My Father”という原題からして、人に観て貰うのを既に諦めてる感じ。一番の敗因は、主人公の行動の動機付けが全然伝わってこないことだと思う。彼は、なぜアイルランドへ旅立ったのか? 母の為? 自分の為? 息子の為? で、父親の話を知って彼はどう変わったのか? 生徒達に何を伝えたいのか? そして私に何を伝えたかったのか? 4点献上。 4点(2005-03-08 00:18:12) |
952. ラブ・アンド・ウォー
第一次大戦のイタリア戦線で出会った、若きアーネスト・ヘミングウェイと年上の看護婦との逢瀬を描いた実話の映画化。「武器よさらば」の元になった話ということですけど、映画としては「武器よ~」(もち映画の方)同様の、退屈な戦場メロドラマ以上のものじゃない。しかもこの恋愛、もの凄くつまらない。別の言葉で言えば、もの凄くありきたり。多分、その辺の人に尋ねれば誰でも経験してる様な出会いと別れ。こういうことを繰り返して人は成長する訳で、とても一生ものの経験とは思えません。これが後のヘミングウェイを形作ったってのは、いくら何でも言い過ぎでしょう、3点献上。 3点(2005-03-08 00:17:52) |
953. シャイン
非常に特殊な人物の非常に特殊な半生なので興味深く鑑賞することは出来ますが、個人的には感動したり楽しんだりすることは出来なかった。まず、父親の人物像が良く解らない。最初はプロのレッスンを断り、でも自分の指導に限界を感じて息子を預ける。最初は息子の成功を喜びながら、やっぱり息子を手放そうとしない。多分誰よりも息子を愛してながら、留学後は徹底して拒絶する。父親もかなり精神異常の気がある。あと、現在でもデヴィッド・ヘルフゴットには賛否両論あるようですが、私も彼は猿回しの猿に感じられる。彼の本心はどこにあるんでしょうか…、6点献上。 6点(2005-03-08 00:17:30)(良:1票) |
954. バスケットボール・ダイアリーズ
「レクイエム・フォー・ドリーム」の様な極端な陰惨さも、「トレインスポッティング」の様な楽しげな軽快感もなく、普通の馬鹿な少年が普通にジャンキーに堕ちていく様を描く、実話故のリアルなドラッグ・ムービー。ここでのキーワードは「仲間」。彼らも一人では、こうはならなかった筈。それは、一人の悪友が他に影響を及ぼすのではなく、我が国の少年犯罪同様、変な仲間意識みたいなものが一人歩きし始め、彼らを支配するようになってしまう。そして遂に、ドラッグそのものが彼らを完全支配するようになる。当たり前のことですが、ドラッグには遊びも本気もないのです、6点献上。 6点(2005-03-08 00:17:04) |
955. ポンヌフの恋人
フランス映画史上屈指の製作費を注ぎ込んだ当時の大作映画ということでしたけど(結果的にそうなってしまっただけの様ですが…)、映画を観る限りでは超低予算映画にしか見えないのが凄い! 「タイタニック」も結果的にあそこまでの予算に膨らんでしまった訳ですが、膨らんだだけの仕上がりにはちゃんと見えます。そう考えると、こりゃ壮大なる無駄遣い。レオン・カラックスって人の頭の中を覗いてみたいもんです。(↓)「良く解らないけど感動した」という意見が多い所を見ると、かなり感覚的な映画なんだと思われますが、ご想像の通り私の感性には全く合いませんでした。ところで、「九番橋の恋人達」に、意味不明な「ポンヌフ」というロマンチックな響きを持つカタカナを残した方のセンスは褒めてあげたいです、4点献上。 4点(2005-03-08 00:16:44) |
956. シャーク・テイル
全く新味の無い能天気な往年のハリウッド映画を、ヒップ・ホップ主体の音楽と最新CGで今風にしただけの古風なアニメーション映画。ピクサーと違ってドリームワークスのアニメは出来不出来にバラつきがある様に見受けられますが、本作は明らかに後者だと思う。とにかくテーマやモチーフが古過ぎる。貧民街から見上げる高層マンションのペントハウスなんて、一体いつの時代のイメージなんだ? 本国でもこーゆー単純なアメリカン・ドリームに今更憧れてる人も少ないでしょう。また、「アンツ」に引き続いてキャラクターも、声優に似せることに熱心でちっとも可愛くない。ロバート・デ・ニーロそっくりなドン・リノの「演技」が私には面白くても、それを理解できる子供がいるとも思えない。従って子供も楽しめないでしょう、5点献上。 5点(2005-03-04 00:08:21)(良:1票) |
957. メトロポリス(2001)
映像的には3D表現や自由なカメラワーク以上に、デジタル処理のもう一つの利点であり、ディズニーの得意とする「比較的ロングの緻密な動画構成」が多かったことには好感を持ちました。しかし、映画としては手塚治虫でもりんたろうでもなく、完全に大友克洋の作品という印象で、まずジグラットの崩壊ありきの物語は彼の最新作「スチームボーイ」と全く同じ。ケンイチもレイに同じく物語を引っ張る主人公ではなく、単なる狂言回しのまま終わってしまってる。それならそれでも構わないのですが、ならばテーマをティマの悲しい運命にするのか、レッド公爵の歪んだ愛情にするのか、ロックのコンプレックスにするのかハッキリして欲しい。崩壊映像そのものがテーマでは面白い映画になる筈などありません。という訳で、4点献上。 4点(2005-03-04 00:07:57) |
958. バンパイアハンターD
《ネタバレ》 たぶん壮大な世界観を持ちながらそこはサラッと流し、特異な技を持つキャラクター同士の一騎打ちという「ドラゴンボール」的なお馴染みの展開で話を進めつつ、吸血鬼と人間の許されざる純愛、そして二人の心中の道行きを描いたハードボイルド・アニメーション映画。個人的にはもっとDを主役扱いするか、逆に狂言回しに徹底した方が面白い話にはなったとは思いますが、高度な作画レベルもあって、最後まで充分観せては貰えました。また、所謂「アニメ絵」のキャラクターよりも、個人的にはこういう絵柄の方がよっぽど観易いと思います。ということで、6点献上。 6点(2005-03-04 00:07:36) |
959. チキンラン
アードマン・アニメーションズの作品は初鑑賞でしたけど、私の想像してたチープなクレイ・アニメのイメージとは全然違って、もの凄く滑らかな動きだったので驚きました。仕上がりはほとんどCGアニメと変わらないんじゃないですか、これ。間抜けな感じの独特なキャラクター・デザインも楽しく、養鶏場を捕虜収容所に見立て、戦争映画のパロディとして語られる「死にながら生きるのか、生きて死ぬのか」という普遍的で全世代共通のテーマも中々感動的です。(↓)ファンの方達には不評みたいですけど、私の様に一見の客にとっては十二分に面白い映画だと思いますヨ、6点献上。 6点(2005-03-04 00:07:08) |
960. ムーラン(1998)
「三国志」にだって様々な解釈がある訳で、この伝説がこういう映画になったからって、取り立てて目くじらを立てる様なこともない。西欧から見たオリエンタル・ムードも、また一つの独特の雰囲気として、当のアジア人である私も充分楽しめます。流石にディズニー映画だけあって、フェミニズム的匂いが極力消してあったのも好印象。確かに予定調和のストーリーですけど、基本的に親子向けの作品なので、及第以上の仕上がりだと思います。それにしても、中国の話というだけのアメリカ製英語作品なのに、声優にまでアジア系俳優を取り揃える徹底振りが凄いですね、6点献上。 6点(2005-03-04 00:06:35) |