961. 共喰山
《ネタバレ》 とある山中のキャンプが舞台ですが、虫、ヒル、そして何らかの感染でグロテスクな人外に為り果てる仲間…意味ありげで不気味な洞窟の存在も含め、かなり気色の悪いモノをテンコ盛りで取り揃えた設えは色々と相当に不快で、ホラーとしてはまずまず上々です。感染という要素からゾンビ系統の映画かと思いきや、感染者に咬まれてもこの状態異常は伝染しません。その代わり、感染者の戦闘力・運動能力は(ゾンビとかいうレベルではなく)飛躍的に向上するというコトもあって、戦闘シーンは非常にスピーディで迫力抜群だったりで、(ある種のミスリードな部分も含めて)ちょっと意外性もあって楽しめるという感じではないでしょーか。 ただ、やや冗長な中盤の展開運び、いくらなんでも事態対処能力の低すぎる無能パーティ、そしてイマイチ話の内容の繋がらないシナリオの出来(ラストの親玉モンスター云々は特に)を踏まえると、完成度という面では決して出来が好いとは言えない典型的なB級、とゆーのが結論的評価でしょーかね。とは言え、前述どおりそこそこ面白く観れなくもないシーンもあり、暇潰しには十分かと。個人的には結構楽しめましたすね。 [DVD(字幕)] 5点(2021-04-27 00:29:45) |
962. ブータン 山の教室
《ネタバレ》 ある意味、劇映画と言うよりは確実にドキュメンタリの方に近い作品なのだと思う。ロケ地も現実の村で、登場人物も多くが実際の村の人々で、そして何より、本作が描こうとする彼らの価値観(信念)というものは確かに彼らの中に実在するものである、のだから。 舞台はブータン僻地のルナナ村。標高4800メートル、住民50余人のこの村には、そこへ行きつく容易な手段を含めて殆ど「何も無い」(電気すらあったりなかったり)。しかし彼らには、そこで今までどおり暮らし続けること(そうすることで幸福に暮らしていけるということ)への揺るぎ無い信頼がある。その信頼、そしてその理由というものを、村にやってきた自分の人生に迷う一人の青年の目を通して描き出してゆく。その意味では比較的シンプルな作品であると思うが、だからこそ、描き出される価値観の「確からしさ」というものがより際立って感じられるのであり、それが尚更、彼らに対する一種の尊敬の念をも観る我々に抱かせるのであろう。 非常に珍しい製作国ブータンというブータン映画ですが、感動はひとしおでした。多くの人に是非観ていただきたい作品です。 [映画館(字幕)] 8点(2021-04-26 20:52:45)(良:1票) |
963. グランド・ジャーニー
《ネタバレ》 稀にみる素晴らしい映画でした。絶滅危惧種の渡り鳥に安全な渡りのルートを教えるという「大いなる旅」は、自然科学・環境保護の観点からの深い意義を孕むと同時に、父の夢、そしてその息子の飛躍的な成長の道程でもありました。特に、日ごとに逞しく、また人と人との繋がりを得て正に子供から青年へと脱皮してゆく息子の姿には、観ているコッチも大いに勇気を貰えたという気がします。そしてそんな中で家族の絆というものも取り戻されてゆきます。人間ドラマとしても満足度は最高でしたし、爽やかなラストもとても好かったと思います。 映画の技術としては、諸々の撮影が非常に見事でした。繰り返される大胆な空撮はヨーロッパの自然の意外なまでの美しさ・雄大さを画面に収めると同時に、実に素晴らしい爽快感・高揚感を映画にもたらしていました。加えて何と言っても鳥たちを使用したシーンの出来の好さ・巧みさが素晴らしい。CGや特撮は未使用とのことなのですが、ちょっと信じられない、という感じですね(動物映画としても十二分に観る価値があるかと)。 邦題『グランド・ジャーニー』も中々悪くないと思いますが、原題の『Donne-moi des ailes』は”翼をください”という意味だそうです。こちらの方も、様々な意味・価値を包含する本作を言い表すものとしては、とても適確な言葉だと思いました。 [DVD(字幕)] 8点(2021-04-23 23:03:18) |
964. 事故物件 恐い間取り
《ネタバレ》 CG全開で思いっ切り出てくるオバケ、なんてのからして私の好みからは完全に外れるが、特に前半は全く何にも怖くない、というワケでもない。そして、お話の進め方も面白みが皆無、というホド酷くはない。題材も、物珍しいと言えば物珍しいので、丸っきり内容に興味が持てない、というコトでもない。諸々、最低限のクオリティとゆーのは有ると言ってよいのではないだろうか。 ただ、あくまで最低限、というコトなのですよね。まずはやはり、あまり、とゆーか殆ど怖くない、とゆーのが痛恨なのですよ。個人的な見解として、やっぱお笑い芸人が出てくるホラーとゆーのは一定以上に怖くはならない、つーことかとも思いますし(お話自体にもなんかチョイチョイ笑かしにかかってる場面があったりで、怖がらせようとするには一貫性を欠くとゆーか)、そして、主役の亀梨クン自体がこの事故物件の心霊現象を全く怖がってない(そーいう素振りが微塵も無い)とゆーのも一因かとも(怖くて恐ろしくてしょーがないケド売れるために仕方なく…的な葛藤とゆーのもほぼ無かったりで)。あとは、根本的にオムニバスホラーであるが故にエピソードごとに状況がリセットされて、全体を通しての「怖さの盛り上がり」とゆーものもやや欠いていた、のではないかと思ったりも(それでもラストはだいぶん派手にオバケ出しまくったりしてましたが、あのね、こーいうのはまず「数」でナントカなるもんじゃねーのですよ、というコトだけは、私は例えソレを理由に死刑になったとしても最後まで主張し続けますですよ)。 もう一点、多少は物珍しいと言ってはみたものの、発生する事象にせよ事故物件の内容(間取り)にせよ驚くほどに在り来りですよね。「畳に血痕が残ってる」「風呂場の鏡が不自然に外されてる」なんて誰でも想像する内容じゃねーかと思いますし、あとは基本オバケの所為で体調が悪くなったりかんたり…程度でしょ。原作がそれなりに売れた本だとすると、もうちょっと奇抜なエピソードや風変わりな事故物件とゆーのは無いもんなのでしょーか?ホラーとしては大して怖くねえ、とゆーのなら、コッチの方面の面白さとゆーのがも少し有れば…という感じでもありますね。 ヒロインの奈緒ちゃんは可愛かったすね(若かりし日の池脇千鶴に少し似てる)。ただ、恐怖の表情が最初(だけ)は結構真に迫ってるなあ、と思ったのですが、それ以降はちょいオーバーリアクション気味でこれもイマイチに思いました。残念。 [ブルーレイ(邦画)] 4点(2021-04-23 01:17:57) |
965. やり切れない
《ネタバレ》 結構シンプルな話だと思いますが、ソコも含めてかなり良質な短編ですね。その意味では、キャストが3人ともまずまずな演技のクオリティだったのも大きいかと。しじみさんは(私この娘の「ファン」だったのですが)少し可愛らしい様な演技も好かったですが、随所でしっかりと狂気を迸らせて、というか、中々イヤ~な怖さのある女性を巧みに演じてましたね。個人的に好きなのは、実は序盤の本妻と対峙するシーンです。一見従順な様に見せかけて、実は心に憎悪を燃え上がらせている、というのがよく伝わって来ました。 モツ煮込みの演出はどーなのですかね~前述どおりの憎悪の結果、というコトなのかも知れませんが、ソレを男に喰わせるのは若干よく分からない様な分かる様な。まあ、その辺の「ワケの分からなさ」も含めてのしじみさんの怖さ、ということだとも思うのですけどね。 [インターネット(邦画)] 6点(2021-04-21 22:18:27) |
966. 狂武蔵(2020)
《ネタバレ》 宮本武蔵と吉岡一門の決闘を描いた70分一本勝負のワンカット殺陣シーンがウリ!という作品とのこと。しかし、その70分のシーンは九年前に撮られたケドも、何やらほったらかしになっていた…とは如何なる意味かってコトですね。結論から言うと、到底映画レベルとは言えない代物だった…というポンコツでしかありませんでした。。 ①ボクシングは1ラウンド3分ですが、それホド俊敏に動き回るワケではないとは言え、しっかり刀を構えて鋭く斬ったり受けたりを繰り出してゆくのを3分続けたら相当に消耗するものです(普通なら、精々5分程度が限界でしょう)。今作、激しく疲弊の色を見せつつもそれでも最初のシーンで15分強は頑張りましたかね(終盤は演技ではなく疲労困憊してましたが)。それ以降は、大体5分戦って一息入れるというのが続いていくのです。要は、70分ワンカットと言っても70分間戦い続けるワケでも何でもないですし(それは流石に無茶ですケドも)休憩のたびに水すら飲んでますし(運好く近くに水筒が隠してあるという武蔵の用意周到さ)。そもそも、ずっと武蔵を映し続けるワケですらなくて、モブキャラの小芝居のあいだ武蔵はどっかに消えてるということすらあります。正直、何のためのワンカットなのか意味が分かりません。 ②一対多の場合の多勢の戦術は「前後からの挟み撃ち」が基本でしょう。案の定、武蔵が常に壁を背にするとかそーいう工夫も施されないのに、前後から同時に攻撃(というか背後から攻撃)するシーンというのは皆無ですし、何なら武蔵・とその背後1Mから武蔵を撮るカメラとの「間」を敵が横切るシーンすら散見されます。彼らは一体何がしたいのでしょうか(⇒一足一刀の間合の概念というのは無いのでしょうか)。そもそも、吉岡一門は何故に数十人ずつに部隊を分けてそこら辺をうろついているのでしょうか(決闘なんだから一ヶ所にまとまってれば好いじゃないですか)。こーもずーっと同じコトを繰り返されると(コレも正直)段々ウンザリしてきます。 ③もう一つ、肝心の殺陣の出来が非常に微妙です。「斬る」というよりは刀でパシッと「殴る」に近いものが非常に多いですし、他に多いのが敵の体を刀に乗せて一拍置いて「引く」という動作で、キレイに「斬ってる」シーンというのは数えるホドしかありませんです。あと、今作の殺陣は細かい段取りをチャンと決めてやってるというものではなく即興なので、明らかに「間違えた」シーンというのも散見されます(どー考えても受けられないタイミングで複数同時に攻撃してしまったとか、んで受け切れずに武蔵が斬られたのが明白なシーンとか)。ワンカットと言ってもそーいうのを最初からやり直すホドのやる気は無かった…て程度の気合の入れ方・覚悟なのかな、と。 最初に書いたとおり、通常の映画レベルの殺陣アクションが70分続く…という作品では毛頭ありません。個人的にはこれは最早、坂口拓主演による「山の石松百人斬り」という感じかと思います。明らかに「斬られ」に走り込んでくる敵を続けざまに斬り倒してご満悦なシーンなんて、正にそんな感じでしたですね。。 ※冒頭、実家の近所の二岡神社がロケ地だったので1点足しておきます。別にあそこがロケ地の映画は他に幾らもありますケド。 [DVD(邦画)] 3点(2021-04-21 00:43:05)(良:1票) |
967. 海底47m 古代マヤの死の迷宮
《ネタバレ》 ダイビング中で酸素が無い+サメ、という前作から引き継いだ優れた状況設定に、今作では海底洞窟の暗さ・狭さという不快要素も加わり、更にスリリングなシチュエーションになっている…ハズなのですが、なんでしょう、どーも緊迫感が維持されないというか、あまり盛り上がらないのですよね。登場人物が多いので(主人公のパーティだけで4人もいます)ショック描写の量は前作より増えていると思うのですが、総じてちょっとワンパターンで単調、ということかとも思われます(サメの襲撃シーンもそうですし、グロ描写もやや手控え気味かとも)。それでも終盤にかけては色々と工夫もあり、そこまで我慢できればそこからラストまではそこそこ面白く観れるのではないでしょーか。個人的には前作の方が好きです。 [ブルーレイ(字幕)] 5点(2021-04-19 18:36:51)(良:1票) |
968. 血ぬられた墓標
《ネタバレ》 お話は率直にさほど面白くはないかと。ただ、見所が無いというワケではありません。冒頭のトゲトゲマスクのシーンなんか結構に陰惨な迫力がありますし、途中のグロシーンやラストの「皺」の特撮等は、中々頑張って工夫してるな、という感じで観ることが出来ます。 なにより、主演のバーバラ・スティールの美貌ですよね。ヒロイン兼ラスボスという美味しい役のひとり占めですが、どちらの演技も(やや大仰ですが)そこそこ上々で、今作は彼女の映画だと言ってもよいでしょう。ホラーの歴史に残る作品でもあり、観る価値はあるかと。 [インターネット(字幕)] 5点(2021-04-19 16:10:40) |
969. アルプススタンドのはしの方
《ネタバレ》 甲子園に辿り着いた野球部とゆーのが青春高校生活の頂点ならば、アルプススタンドの端っこというのは確かにその最下層であろう。まだ若いのに、ちょっとの挫折でヒネくれたガキ共のルサンチマンが其処には渦巻いている。 しかし、彼らはまだ若いのだ。恋と友情のスッタモンダが、彼らに「それ」を取り戻してくれる。暑っ苦しい茶道部の先生が、個人的にはかなり好きですね。ああいう人って、実はとっても貴重ですよね。 人生は「熱」。冷めた人生などに何の価値が在るだろう。極めてシンプルなシナリオ・テーマですが、共感もひとしおでした。 [DVD(邦画)] 8点(2021-04-18 13:01:09) |
970. ウルフウォーカー
《ネタバレ》 お話の内容は『もののけ姫』にかなり似通っている(細かい設定も結構似てる)のだけど、よりシンプルで子供にも分かり易くある部分で「改善」した、というコトにも見える。結果的に(前述の分かり易さに加え)テンポや話のまとまりも非常に高水準に仕上がって、単純に(青少年向けの)娯楽作品としてはこっちの方が上、と言ってもよいかも知れない。個人的にはこのラスト、実は問題があんまり片付いてないのではないかとも思えてソコは完全には腹落ちしなかったが、あくまでシンプルで分かり易く、ということを重視したのであれば、それは今作の「絵本的」な絵柄とのマッチングという観点からも適切な方法論だ、とも思う。 数少ない2Dの外国産A級アニメでありますが、最近は2Dアニメでも技術の向上が著しいのですね。こんなにヌルヌル動くの?と少しビックリしました。多分にCGのアシストもあるのでしょうが、この手のが世界中でバンバンつくれるということになってくると、日本の業界もうかうかしては居られないですね。 [映画館(吹替)] 7点(2021-04-17 15:52:41) |
971. ソング・オブ・ザ・シー 海のうた
《ネタバレ》 元ネタはアイルランドの民話ということで、異類婚姻譚というヤツですかね。映画でのお話も大体そんな感じのオーソドックスですが、やっぱりどーもお話が面白くないのですね(根本的にやや暗めの話だ、ということもあって)。前作『ブレンダンとケルズの秘密』より尺も延びてますし、中盤は(なんか魔女が出てきてどーたらというアクセントが入るものの)ハッキリ言って退屈でしたね。 好い点としては、キャラがカワイイこと。絵柄は日本で言えば『ちびまる子ちゃん』とかあるいは『アンパンマン』くらいなごく低年齢向けアニメの感じですが、表情のつくり方から何からとにかく可愛くて、そこには観る価値があります。終盤のファンタジック展開での煌びやかな演出もとても綺麗でした。 [映画館(吹替)] 5点(2021-04-17 15:26:39) |
972. ブレンダンとケルズの秘密
《ネタバレ》 画の出来は文句無しに凄い。同じアニメでも、これは相当にカネの掛かってる方のヤツだし、誰にでも出来る仕事ではない。そこには大いに観る価値があるだろう。 ただ、お話の内容は前半から決して面白いとは言えないレベルで推移し、終盤はかなりテキトーでもはや不可解、という有様。典型的なある種の片手落ち映画で、万人向けとは言い難い。ポイントを絞って観にいく必要がある。 [インターネット(字幕)] 5点(2021-04-17 08:59:15) |
973. ネイビーシールズ ナチスの金塊を奪還せよ!
《ネタバレ》 オープニングアクションは随分と派手にドンパチやらかしてますが(007級)、今作のネイビーシールズのメインのミッションは正規任務でもない宝探しで、じゃったら別にネイビーシールズやのうてもええんちゃうん?(インディ爺さんとか)なんて思ったりもしましたですね。が、お宝の金の延べ棒というのが湖の底に沈んでる金庫の中にあるっちゅうコトで(だから"ネイビー"シールズが主役なのね)、取り出すのに面倒でややこしい準備&手順が必要なのだす。てなワケで、その準備~作戦実行場面が結構長いのですがそこも単純に観ていてまあまあ面白いですし、水中というだけでやっぱ緊迫感も高く維持されるしで、アクションとしては今作、全体的にも決して悪くはなかったかと思います。 ただ、ラストにもっかいデーハーなドンパチがあればなお好かった、という感じですかねぇ~お宝探しのクライマックスとて、上に敵が居るけどとりあえず浮上してみっか、からの絶体絶命!というのは、百戦錬磨の彼らにしては随分とヌカってますし、その大ピンチ!という状況の盛り上がりも、そこへ横からブン殴ってくる救援ヘリのカタルシスも、どちらもちょっと弱くて物足りないというか(率直に、コレで終わり?てな感じで)。オーラスが洒落の効いたコミカルなのはまた好いのですが、その前にもう一押し欲しい、というトコロでしょうか。 [インターネット(字幕)] 6点(2021-04-16 00:19:12) |
974. デイアンドナイト
《ネタバレ》 「なにが正義なのか」というのは確かに難しい問題で、世の中の凡そ大半のコトというのは、白黒を付けるのが想像よりも遥かに容易くないとも常々考えている。この映画の中でも、養護施設の維持の為とは言え犯罪を犯してもよいのか、とか、愛する人の命を奪った人間を殺すことが許されるのか、とかはそーいう類いの話だろう。そういった「灰色」の業を背負う主人公側の人々が幸せになり切れずに物語が終わってゆくコトには、ままならない世界の一種の儚さを感じるというか、ある程度の得心はゆく、と言い切っても間違いではないと感じている。 しかし、自動車会社の件は別だ。彼らには罰が下されるのが間違いなく正義だ。これでは、罪を犯しつつも反省する心を持つ善人だけが罰せられ、ハナから罪の意識など無い悪だけが世にのさばるという話ではないか。こーいう人間の世界に「絶望」した風を装う映画というのは、個人的にはハッキリ嫌いですね。映画自体の質・個々の演技等はかなり高水準だったので、この評価は全てテーマに対する個人の好みの問題です。 [インターネット(邦画)] 5点(2021-04-15 12:03:13) |
975. JUNK HEAD
《ネタバレ》 正直、コレは凄いですよ。アンビリーバボーですよ。「大したもんだなあ」というか(暢気)、しかし人間の可能性は無限だ、とも思いましたね。もちろん、その果てしない努力がこうして実を結ぶというコトを如何にして最初に「信じる」コトが出来るか、というコトだとも思うのですけど。やはり、人生を賭けるに値するのはひとつ、夢だけなのかも知れない、と思いました。 内容については敢えて触れませんが、諸々のクオリティは保証できるものです。一点だけ注意するとしたら、今作は三部作の一作目としてつくられているので単体の映画として完結しているものではない、ということだけ、鑑賞前に頭に入れておいた方が好いかと思います。 [映画館(邦画)] 8点(2021-04-13 23:28:44) |
976. 地下水道
《ネタバレ》 とにかく、件の地下水道のシーンに尽きる映画ですね。このパートの果てしない絶望感・狂っていく登場人物の悲惨さというモノは、中々他に類を見ないというレベルに思います。終盤の畳みかける様なネガティブ展開の嵐も実に見事でした。この部分だけにでも十二分にユニークな鑑賞価値というものが確実に存在する映画だと思います。 この後半に比して、前半は正直あまり出来が好くはないですかね。戦闘シーンは地味にそこそこ頑張っていますが、肝心の登場人物の描写はちょっと浅くて、あまり悲壮感や状況の切羽詰まった感じが汲み取れません。むしろもう少しだけ戦闘シーンの質・量を向上させられるだけの予算的なモノがあれば、ダラっとした人間ドラマで場繋ぎすることなく後半までスピーディかつ劇的に話を運んでゆけた、というコトかもと感じました。 もう一点少しだけ気になるのが、いくら実話ベースとは言えレジスタンスをここまで徹底的に悲惨に描く必要があったのか、というコトですかね。個人的にはそこに少しだけ、この事件におけるレジスタンスの行動自体に対する批判的な感情も感じられたのですね(コレは私の穿ち過ぎでしょうか)。まあ、赤軍を信用するなどという愚かな判断の末に彼らが退くに退けなくなった挙句、文字通りワルシャワは灰燼に帰したワケですから、この顛末というのはお世辞にも褒められたモノではなさそう、というのも理解できます。戦場においてはあくまで生き残る為に頭を冷たく研ぎ澄ますべきなのであって、命を賭してでも国の為に戦うという熱いモチベーションに捉われたレジスタンスというのは、ちょっと「熱すぎた」というコトなのかも知れない、と思います(どこぞの島国の嘗てのナンという軍隊にも、少し通じるトコロがある様な気もします)。 [インターネット(字幕)] 7点(2021-04-13 22:37:15) |
977. 街の上で
《ネタバレ》 主人公は冴えない若葉竜也ではあるが、彼同様に彼の物語というのも(少なくともラスト付近までは)結構どーでもよくて(=どーでもよい様に見えて)、描きたいのはむしろ彼の物語上に登場する幾人かの女性のキャラクター、という様に思われた。 誰が一番好みか、と言われれば、個人的には古川琴音だろうか。というか素直に「善人」と言えるのは彼女だけな気もする。穂志もえかなんか普通にかなり自分勝手だと思うし、萩原みのりは確実にそれ以上だし(みのりちゃんは最近こんな役ばっかだね)。一見屈託の無さそうな中田青渚も、彼女も彼女で打算というものが見え隠れする。諸々ひっくるめてコレは男が愛すべき「女の女たる所以」というヤツなのかとも思うけれど。 どーでもいいと言いつつも、若葉竜也(と女子達)の話は(それでも若干のコミカル分を含みつつも)思いがけないほどにマジメに淡々と進められてゆく、ソコをごく温かく半笑いで(長尺ながら心地好く)観てゆけるというのは、若葉くんの素晴らしきキャラあってのことか、とも感じた。別に今作でも友情出演の成田凌が主役でも何の問題もない様にも思うが、どちらかというと若葉くんの方がこの頼りない主人公としては(成田凌よりは)感情移入は確実にし易いかと思う。その意味ではラスト、監督が堪え切れなかったかの様に放り込まれる一大コメディの大立ち回りを経て暢気なまでのグッド・エンドが若葉くんに訪れるのも、観客としては間違いなく至上に喜ばしい終い方だった、とも思う。 [映画館(字幕)] 8点(2021-04-12 22:27:08)(良:1票) |
978. アルマジロ
《ネタバレ》 アフガン最前線で任務にあたるデンマーク軍の若い兵士を追ったドキュメンタリ。『アルマジロ』とはISAF(国連治安支援部隊)の前線基地の名称である。彼らの任務は治安維持、具体的にはタリバン部隊に対する偵察であり、実際の戦闘に遭遇することは稀なのかも…と思いきや然にあらず。結構しょっちゅう攻撃されたり銃撃戦に巻き込まれたり、非常に危険な任務なのがビシバシと伝わってくる。 本作が凄いのは、その危険任務(=実際の戦闘)に監督がカメラ持って付いてって、這いつくばりながらもそれを撮って映画にしちゃってる、というトコロである(諸々よくこんなのを許可したな)。実際に味方には銃撃による負傷者も出るし、相手方には死人も出る(死体も映される)。至近距離で爆発も起こる(というか手榴弾投げたりする)。あまりドキュメンタリって追いかけてるワケではないのですけど、最近はマサカこのレベルのがゴロゴロしてる、ということでもないと思うのですが、どーなのでしょうか?私は本作、率直にかなり衝撃でしたね。 もちろん、そんなビックリ映像ばっかで構成されてるという訳ではなく、兵士たちがグダグダと駄弁ったり(ポルノ観たりゲームやったり)というシーンも多く、ソコはそんなに面白いという訳でもない。が重ねて、肝心な部分における衝撃度はかなり高い。観て損は無いと思う。 [DVD(字幕)] 6点(2021-04-12 11:54:33) |
979. ザ・スイッチ
《ネタバレ》 中々に鼻につく感じでイチャつくカップル(2ペア)を電光石火で血祭りに上げるオープニング・シークエンスは実に古典的なスラッシャー・ホラーの様相を呈してますが、そこから主人公のイケてない女子と殺人鬼が邂逅し、件の「入替り」が発生する、それ以降はワリと最後までこのテーマとしては正に王道なドタバタ・コメディ風ホラーが続いてゆきます。この部分はコメディ描写も随所でまずまずクオリティ高いですし、話の運び方&ポイントとなるアイデアの出来もまあまあで、その意味では今作、ショック描写の出来映えメインで勝負してるジャンル・ホラーと言うよりは間違い無く、監督の前作『ハッピー・デス・デイ』に類する上質な脚本を擁するA級ホラーだと言ってよいでしょう。 ただし、この映画はコメディ&ドタバタパートがスッキリ終わって目出度くジ・エンド…とはなりませぬ。その部分、最初と最後であくまでホラーらしくしっかりスラッシャーしてくれてるのも、個人的にはとても好印象ですね。入替り×2人の俳優さんはその部分の演技も結構頑張ってくれてるし、総じて標準以上なA級クオリティであることも含め、十分に良作かと。評点は少しだけ甘めかとも思いますが、オススメなのはホントです。 [映画館(字幕)] 7点(2021-04-09 23:51:25) |
980. コードネーム U.N.C.L.E.
《ネタバレ》 刑事もののバディものとゆーのはしょっちゅう見聞きしますが、スパイもののバディものとゆーのはちょっと物珍しく感じますね(流石にワタシ、元ネタのドラマの方は全く知らんもんで)。そしてこれも元ネタ由来というコトのよーですが、ワリと全編に渡ってコミカルさを強く押し出したという感じの作風で、ソッチの面は終始結構面白く観てゆけるのですが、その分、アクション展開の方を大いに盛り上げて派手にクライマックスいっちゃうよー!という感じでは全くないのですよね。個々のアクションには相当に面白いものも散見されるのですが(オーラスちょい前のカー&バイクチェイスは、撮影からナニからかなり斬新で率直にスゲェなコレ!と思いましたよ)、特にその後の終盤は正直あんまり盛り上がらずにアッサリと終わってしまった感があり、スパイもの、というアクションスリラージャンルのその部分に対する一般的な期待値から鑑みれば、スリルもカタルシスもやや物足りない、といっても過言でないよーに思います。 ただ、キャストが総じて非常に見映え美しい方々で構成されており、ソコは敵も味方も実に素晴らしく魅力が引き出されていましたね。ただただ美人とイケメンというだけでなく、ヘンリー・カヴィルは伊達男、アーミー・ハマーはクールでニヒル、アリシア・ヴィキャンデルはキュートな小悪魔、エリザベス・デビッキは凍れる美貌の大悪魔、とキャラクター・個性も彩り好く、各々の見せ場もバランス好く、かつルックス的には揃って全盛期とも言えるグッド・コンディションだったかと思います(加えて、衣装やメイクという面の見映えの方も十分以上なクオリティだったかと)。この豪華キャストのベストなルックスを残すべく(見映え重視で)製作された、という意味では、さほど退屈もせずにそこそこ面白く観てゆける程度の出来はある、というコトも含めて、地味に小さくない価値を持つ作品なのかも知れません。 [インターネット(字幕)] 6点(2021-04-09 23:39:44) |