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ボビーさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1016
性別 男性
ホームページ http://blog.livedoor.jp/gepper26/
年齢 37歳
自己紹介 いつまでもこどもでいたいから映画は感情で観る。その一方で、もうこどもではいられないから観終わったら映画を考える。その二分化された人間らしさがちゃんと伝わってくる映画が好き。

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81.  リアリズムの宿
山下監督の作品の中に短編で『子宮で映画を撮る女』という作品があり、それはドキュメンタリーだと思っていました。自己中心的な女の映画監督とスタッフの間で本気の喧嘩が起きています。しかも、それが妙に笑えました。が、しかし、観終わった後、監督が「これフェイクです」と仰った。ようするに全部が嘘、脚本通りだったそうです。山下監督の中のリアリズムとは、限りなく現実に近く、それでいて現実とは遠い存在の人間たちを描いておられます。なぜこんなにも口調が自然で、その動きの一つ一つにリアリティーがあるのだろう。この作品でも、登場人物にちょいちょいおかしな人間が出てくるものの、その一人一人の何気ない動作や口調などは、身近にいてもまるでおかしくないほどの親近感を持っています。山下監督の作品はどれも一様に同じリズムと同じ演出方法で作られ、僕はその全てに魅力を感じずにはいられません。この独特の世界観とリアリティー。孤高の天才!素晴らしい。
[DVD(邦画)] 8点(2007-02-03 00:09:33)
82.  幸福な食卓 《ネタバレ》 
この作品を観終わってから、じっくりと時間を掛けてこの作品が何を伝えたかったのか考えてみた。自分なりにではあるけれど、うっすらと見えてきたものが一つあった。それは、“家族の再生”、あるいは、“人生の再出発”ではないでしょうか。中原家の少し異質で感情の欠落したようなファーストシーンからそれらは始まっていたように思います。遺書まで残し、家族を捨ててまでこの世を去ろうとした父は「父さん、父さんを辞めようと思うんだ」なんていいだし、それに対してお兄ちゃんは「あらまぁ」で軽く流すような発言をしている。これがふつうな筈がない。正しい家族のあり方や間違いのない人間になる為に、それぞれがそれぞれのやり方で修正しようとするけれど、それは簡単な事ではなかった。過去を忘れようとしても、忘れられるものではない。でも、振り返ってばかりいては前に進めない。さまざまな苦しみを受け入れて進まなければならない。しかし、中原家の中で、彼女以外のみんながそれから逃げていた。ラストシーン、主演の北乃きいさんが、土手の道を歩く長いシーンがある。僕の記憶にはなぜかあのシーンばかりが鮮明に残っている。この作品の中で中原家だけでなく、多くの登場人物が悩み、苦しんでいるその葛藤があのワンシーンに集約されていると感じた。何度も後ろを振り返り、何かにすがるような目をする。そこには彼女の心の内にある忘れらない想いと忘れたくない想いがあるのがわかった。そして、一つのカットを挟んだ後、彼女はもう後ろを振り返ることなく、前だけを見て歩いていた。彼女の中でどういう心境が働き、変化したのか、その全てを理解することは僕にはできなかった。ただ誰かに支えられ、また時には支え、そして彼女は向かったように思います。彼女をいつも見守っていてくれる家族の待つ食卓へ。 すばらしいラストシーンだったと思います。
[映画館(邦画)] 9点(2007-01-29 07:53:38)(良:1票)
83.  かもめ食堂
この作品には基本的に葛藤が描かれていない。主人公である女性は常にポジティブで、例えお客がどんなに来なくても、文句も愚痴も決して言わない。だから観ているこっちといては感情移入できたとしても、心の揺れ動きが描かれていないためさほど感動はしないし、出来ない。だが、それでもこの作品を好きになってしまうのは、その主人公の女性が本当に魅力的なのだ。優しくて、穏やかで、上品で、まさに日本を見ているような心境になり、感情移入というよりは、応援したくなる。それはやはり作品の中でも同じ事が言える。店に入ることを躊躇していたフィンランド人も、彼女の穏やかな笑顔に釣られて、入ってしまう。入ってしまうと彼女の優しさに触れてしまい、離れられなくなる。彼女の周りには終盤に向かうに連れて、人が次々集まってくる。ぼくは不思議な心境にとらわれた。この作品は主人公に感情移入するのではなく、お客に感情移入してしまうのだ。ぼくらは画面、あるいはスクリーンという名のショーウィンドウの向こうから“かもめ食堂”を覗いているのだ。だから、観終わった後、無償に豚のしょうが焼きやおにぎり、玉子焼きや鮭の塩焼きが食べたくなるのだ。入りたい、あの店に行ってみたい、そう思ってしまうのだ。ぼくはこの作品は凄い作品だとおもう。
[DVD(邦画)] 7点(2007-01-24 00:36:54)
84.  それでもボクはやってない
この作品を観終わった後、電車に揺られて家に帰った。その間ずっと、痴漢に間違えられないように怯えながら帰った。この作品の中にあるもの全てがあまりにも距離が近い。いつ、どんな形で同じ目に合うかわからない。ぼくはこの映画を観終わった後、どうしようもなくイライラした。それはこの作品が悪いわけではない。この日本の現状に腹が立ってしょうがなかった。日本の法律、それを取り巻く警察、検察、裁判官、その全てに腹が立ってしょうがない。裁くべき人間を裁かず、裁かれるはずのない人間が何を償えばいいのかもわからない状態で牢屋に押し込められ、時間を奪われる。そんな事、一分でも、いや一秒であってもあってはならない。この作品を通して監督が訴えたいことが心に染みた。もしかすると、満員電車が怖くて乗れなくなるかも…恐ろしい恐ろしい…
[映画館(邦画)] 7点(2007-01-20 18:35:05)
85.  手紙(2006) 《ネタバレ》 
現在の社会で、殺人事件があまりにも多発しすぎていて、当たり前のように日々報道されている気がします。それは数ヶ月経てば報道もされなくなり、忘れ去られていく出来事が多いとも思います。また、それらはいつだって他人事でしかなく、新聞やニュースなどの報道では伝わってくる物は表面上のものでしかないため、本質は何も訴えられていないように思います。それは確かに事実ではありますが、本質ではないような気がします。この作品は、本来目にする事ができない本質を訴えているような気がしました。人の命を奪うという事が、他に何を奪っていくのか、それらをしっかりと知ることが出来ました。人生を奪われ、人生の選択肢を奪われ、それは加害者も被害者もこの作品の中では同じでした。血の繋がっている家族も、血の繋がっていない赤の他人であっても、その事実がそこにあると言う事は、関わる周りの人々に大きな影響を与えていました。その真実をこの映画を観て、考え、そして学びました。知るという事は辛い事ではあるけれど、それをそれぞれの人々がそれぞれの考え方で乗り越える事に意味があるのだと思いました。この作品は、被害者ではなく、加害者側の家族の視点からそれらを観た事で今まで知らなかった事を知り、また気付かされる事も山ほどありました。ただ、この映画には多少、甘えがあったような気がします。どこまでも痛烈な差別が原作にはあったのに、この映画化では沢尻エリカの存在があまりにも大きいせいで、本当に描かれるべき部分が弱まっていたような気がします。最後に見せればいい筈の優しさが沢尻エリカが終始出続けていたせいで、優しさが当たり前のように作品にあったのは残念でした。
[映画館(邦画)] 7点(2007-01-07 18:34:02)
86.  ゆれる 《ネタバレ》 
主人公の目線で物語が始まり、二人が画面の中に収まった時点から確実に揺れ始めていた。兄との違いに揺れ、それは嫉妬であり、劣等感であり、優越感だった。兄の背中を見て育った弟は、兄の幸せを望み、兄が掴もうとしていた幸せを奪い取り、兄を庇い、そして兄を陥れようとした。全ては兄への嫉妬から生まれた物。自分に無いものを全て持っている兄に対し抱いていた劣等感。優しさなどはそこには存在しない。兄の幸せを願ったのは、自分はすでに幸せであるという遠まわしな嫌味であり、兄を庇おうとしたのは、自分が始めて優位に立てる状況を作ろうとしたからだった。全ての原因は捻じ曲がった弟の心がもたらした。そんな目には見えていない危うい心が、しっかり雰囲気となって、まさにゆれている橋の上にいるような恐怖や緊張感を僕に感じさせてくれた。この映画は素晴らしい。
[映画館(邦画)] 9点(2007-01-06 21:36:52)(良:1票)
87.  鉄コン筋クリート
原作マンガは一度も目を通していませんが、非常に楽しむことが出来ました。独特な世界観を先端技術を駆使したアニメーションで見せてくれたこの作品は、映像がとても綺麗だった。疾走感や躍動感といったものを非常に感じ、子どもたちの姿もとても輝いて観えました。心に闇を持つクロと、純粋な心を持つシロ。名前からしてその存在の意味を感じますが、そのキャラクターも本当に両極端で上手かった。純粋な心を持つシロを守ろうとするクロの力は、実はシロの純粋な心が守っていた。汚れ無きシロは、全てを包み、全てを許す。それは子どもは神だという言葉を証明するような存在でした。そんなシロに守られていたからクロは闇に包まれる事はなく、生きることができていた。しかし、シロを守れないとわかった時から、クロは闇にその身を落としてしまった。シロも純粋すぎるが故に、人の苦しみを理解でき、耐えることが出来てなかった。二人は共に支えあい、共に補い合って生きていた。それは金パチ先生が言っていたように「人と人とが支えあって人になる」と。確かにその通りだと思った。金パチ先生すげぇ。
[映画館(邦画)] 8点(2006-12-25 11:20:41)
88.  カーズ
あまりピクサーを悪い風に言いたくはないのですが、この作品に限っては書かせていただきたいと思います。まず何より気になったのは、全てが車であること。車を修理する存在も車で、しかも虫でさえも車。何が言いたいかと言うと、全てを車にしてしまうとそこには人間を通した目線がない為、他のピクサー作品にあった人を通した温度がなかったと言うこと。現代の時代背景で、レーシングカーを主人公をするのはさほど問題はないのですが、そこに人間がいないのは問題だとおもう。今までにのピクサー作品は、身近に存在する玩具や魚、あるいは人間が作り出した架空のモンスターだとかヒーローだとか、そういった人間がいて始めて成立する存在が主人公になっていた。人間がいるということは、そこに共感があり、架空の主人公には憧れや夢の要素があった。それは昔のジブリにも言える事であって、それを見ることで、その二つの要素を楽しむことができ、また作品に奥行きが出ていた。それは当然子どもが観ても面白く、大人でも非常に楽しむ事が出来たと思う。がしかし、この作品は人間がいない事、また全てを車にしてしまった事で、両方の要素の力をかなり落としていると思う。またその二つが合わさる事で感じる感動がこの作品にはまったくと言っていいほどなかった。好奇心のアンテナにまるで引っかからず、ただの子ども向け作品で留まってしまっている。決してつまらないストーリーではないが、あまりにも単調なストーリーで始まった時点で結末が一つしかない。心の曲がった人間が改まっていい人になる。それは子どもに見せるにはいいが、映画をたくさん観ている大人にはわかりきっているストーリーで退屈ではないだろうか。僕は正直、好きになれない。ストーリーがではなく、こういう姿勢で作品を作ったピクサーの考えが、好きになれないのだ。もし、ピクサーを買収したあの会社がこの作品を作らせたのなら、僕はあの会社を心から憎む。
[映画館(字幕)] 6点(2006-12-25 10:33:16)(良:4票)
89.  武士の一分 《ネタバレ》 
この映画を作った山田洋次監督が、木村拓哉さんと檀れいさんを通して何を伝えたかったのか…それはまず間違いなく“愛”でした。目で見て確かめる事のできない形のないものを、様々な方法でこの映画を見ている者に伝えようとする、その山田洋次監督の熱い想いに深く感動しました。
[DVD(邦画)] 9点(2006-12-22 00:45:47)
90.  明日の記憶 《ネタバレ》 
エグゼクティブプロデューサーを渡辺謙さんがしておられる事から、この作品にかける渡辺謙さんの想いはかなり強かったと思われます。テーマとして感じられるのは、やはり“愛”でしょう。しかもそれはそんじょそこらの“愛”ではなく、もう言葉では言い表せないくらい強い愛情です。深く広く、そして硬い愛です。アルツハイマーになる夫を支える妻。それはもう大変などという言葉では表しきれません。この作品はそのことから考えると妻を演じる樋口可南子さんが真の主人公だったと思います。夫の記憶が失われていく苦しみも確かに悲しく辛い物だと思います。でもそれ以上にその夫を見捨てず、何年も傍らに寄り添い続けられるその強い愛情に感動しました。時には嫌になり、時には逃げ出そうとも考えるその苦難、そこで大概の人間ならそうしてしまうでしょう。でも、それから目をそらさず、むしろさらに強く暖かい視線で夫を見つめるその妻の心の強さに涙しました。全てを忘れようとしているのに、手から離さないそのコップには妻の名前が刻まれている、そこにもまた互いの深い信頼と強い愛情を感じました。たった一つのアイテムで全てを集約してしまうその演出も素晴らしかったです。
[DVD(邦画)] 9点(2006-12-09 18:33:37)(良:1票)
91.  暗いところで待ち合わせ 《ネタバレ》 
僕はこの原作も脚本も読ませていただきました。さらに少し前学校で、天願監督に怒られてしまいました。まぁ、そんな事もあって、この映画、かなり気合入れて観にいきました。まず、初めの印象は演出がものすごく上手いという事です。奇妙な同棲の中で、すれ違い、ぶつかりそうになるそのギリギリが素晴らしいとしか言えないほどの緊張感となってそこに漂っていました。原作も脚本も読んでいましたから、オチは当然知っていましたが、それでも次どのような展開になるのか原作と脚本を読んだ事を忘れて夢中になって画面を見つめていました。冒頭では、二人を漠然と写し、次にミチル、その次にアキヒロ、そして最後はミチルとアキヒロを描く。その一貫した流れが本当に観るものを楽しませてくれました。無駄のない脚本は二人が徐々に近付いていく様子を巧妙に描いていました。本当に少しずつ少しずつ。どうやったらここまで繊細に描けるのか驚くばかりです。そして最後のミチルとアキヒロの向かい合っているショットは、キスしそうなくらい近い。それは二人の心の距離を演出しているような気がして、思わず興奮してしまいました。また、この作品は非常に台詞が少ないだけに、役者の演技が試されたような気がします。その点、田中麗奈さんの演技は完璧だったと思います。盲目の方がどのような動きをするのかはわかりませんが、やはり家の中であれば自由自在にまるで目が見えているように動けるのでしょう。そのリアルさに感動しました。さらに窓の外のホームに立つ母親に向かって「おかあさん」と叫ぶシーンは本当に素晴らしかった。彼女のイメージシーンも間に含めることで母親への思いをさらに強い物として描かれていました。アキヒロの役のチェン・ボーリンさんの動きも素晴らしかったです。黙っている時のちょっとした動きや作業の動き、あと目線の力強さなど本当に素晴らしいところが多かったです。僕は主人公の二人に原作と脚本を読んでいましたから、初めからしっかり感情移入して観る事ができ、ミチルの一人では生きて行けないという思いと、アキヒロの誰かに信じてもらえる事の喜びをヒシヒシと感じながら見ることができ、終始非常に楽しく観る事ができました。素晴らしい作品だったと思います。
[映画館(邦画)] 9点(2006-12-09 18:14:50)(良:1票)
92.  空中庭園 《ネタバレ》 
淡々と正常なプラグが外れて行き、壊れていく母親。そこには何があるのだろう。強迫観念のように良き母になろうとした母親は、正しいことばかりを貫き、それでも自分の思い通りに転がってくれない他の人間(家族)に溜まっていたものを爆発させていく。隠し事を作らない家庭の中は、実際隠し事だらけ。言わなくてもいい事を話し、言わなければならないような事を隠す。嘘はない、嘘は許さない、そんな強すぎる思いやルールが家族を家族にとどめていることを難しくさせた。家族とは何でも言い合える仲である方が良いに決まっているけれど、それは「言わなければならない」状況では言いたくもなくなる。むしろ「いやなら言わなくてもいい」という状況であったほうが人は話しやすい。どこかでその境界線を見失い、思い込む。正しいことだと。そして本当に隠し事が一切なくなったとき、心にあったものをすべてさらけ出した時、家族は以前のように押さえつけるものがなくなり、自由になり、本当の家族になった。凄い映画だった。
[DVD(邦画)] 8点(2006-12-09 17:47:06)(良:1票)
93.  亀は意外と速く泳ぐ
見終わっても彼らが本当にスパイだったのか疑わしくなるほど彼らの存在がふつうでした。ふつうにバーベキューしながら銃を扱ったり、ふつうに夫婦が会話をしながら、あっさりと箪笥の中から500万円が出てきたり、非現実的な出来事があまりにもシュールに、そしてあっさりと出てくるもんだから、それがふつうのような気になってしまいました。まぁ、それは間違いなく勘違いなんですが、それほどこの映画のなかの“ふつう”は尋常じゃない“ふつう”感が溢れていました。ストーリーの中でクジャクが地引網をしながらボソッと、あっさり「ふつうそうなスズメが幸せそう」的なことを言っていましたが、この映画はコメディでありながら“ふつう”あるいは“平凡”の素晴らしさを訴えているのかもしれません。いかに何気ない平凡な日常を楽しめるか、そして、平凡な毎日をどれだけ大切に過ごせるか、という物を感じました。ふつうにしろ、ふつうに歩けと言われると「ふつうって何だっけ?」って思うのと同じくらい、ふつうという行為は無意識にしている行為で、考えるとなかなか難しいことなのかもしれません。だからそこそこラーメンのおじさんも凄いことをしているんだという説得力が沸いてきました。「自分には出来るのだ。出来るのに作らないだけだ。作れば作れる」そのなんとも言えない切なさ。コメディなのに、危うく泣き掛けてしまいました。ここまで書いて気付いたのが、ふつうなスズメと、ふつうじゃないクジャクを比べる事でスズメの良さ、つまりふつうの素晴らしさと難しさが引き立っているのかも知れません。この作品の脚本はそういった点も深く考えられていますね。ただ単にコメディを作るだけでなく、そういったしっかりとしたテーマとメッセージ性を持っている事は素晴らしいと思いました。どうしようもないほどくだらないことばかりやっている映画ですが、僕はこういう現場で汗を流してみたいと強く思いました。作品の中から楽しさや情熱たるものがヒシヒシと伝わってくる、素晴らしい映画でした。
[DVD(邦画)] 9点(2006-11-30 01:26:22)
94.  虹の女神 Rainbow Song 《ネタバレ》 
岩井俊二監督がプロデューサーという立場からどの程度製作に手を加えたのか、詳しいことは何一つ知りませんが、それでもあの構図の撮り方や色彩の鮮やかさ、そして照明の美しさから考えると、かなり深いところまで監督が手を加えているような気がしました。映像的な部分で言うと、ひとカットひとカットの画がとても丁寧に作られているのに感動しました。手持ちの移動ショットや長回しのショットが、淡々と語られる平凡な台詞の掛け合いに臨場感をプラスさせていたように思いました。終始、そんななんともない物語が流れていきますが、この作品はそのなんともない感じに深い共感を僕は覚えました。片思いの切なさや、夢に対する不安と期待など、青春真っ只中な主人公たちの心が想像しなくとも勝手に感情へと深くしみこんできます。鈍感な主人公を愛す、純粋な心を持った女性。彼女の優しさや弱さが素晴らしすぎます。観ているこっちとしては何で気付かないんだとイライラしっぱなしです。しかもそれが延々と、リアルに描かれ続け、それでも主人公は気付かず、彼女が最後に直球とも言える賭けをするものの、やっぱり主人公は気付きません。この時点で観ているこっちはその後何が起きるかわかっているから主人公の愚かさを呪います。また、悔しくもあります。だからなのか、ラスト、彼女の想いが思いがけず主人公に伝わります。純粋で鈍感すぎたがゆえに気付けなかった主人公。そんな彼の鈍感な部分も、不器用な部分も、みんなみんな好きだと綴った手紙。もっと早くこの手紙が渡っていればと悔しくなる反面、想いが主人公に届いてよかったと嬉しくも思います。主人公の青年にも、女の子にも僕は無意識のうちに激しく感情移入していました。こんなことは滅多にないような気がします。この映画は僕は今出会えたのがベストだったような気がします。こんなにも共感した作品はあまり他に覚えがないです。主演の市原君と、草野樹里さん、あと蒼井優さんの三人の演技は素晴らしいの一言に尽きます。脚本、役者、映像。多くの要素が本当に素晴らしい作品でした。
[映画館(邦画)] 9点(2006-11-16 23:31:20)(良:1票)
95.  ただ、君を愛してる 《ネタバレ》 
写真展のシーンは本当に素晴らしいシーンでした。平凡で、ありふれた、当たり前の日常から切り取られた白と黒の写真。それは、静流と誠人の平凡な日々のほんの一瞬の出来事で、誠人はその平凡な日々がいつまでも続くと思っていた。いつまでも変わらずそこにあり続けるものだと、そう思い込んでいた。でも、当たり前は、いつだって不意に終わりを告げるもの。何の前触れもなく訪れた別れに、人は、その当たりまえの日々がいかに幸せで、いかに喜びに満ちていたかをようやく気付く。いつまでもそばにあり続けると思っていた温もりや香りが突然消えてなくなる、それは愛情とはまったく別離の感情ではあるけれど、喪失は必ず誰にでもやってくる。それなのに僕らはそれを忘れ、当たり前の喜びを見失いがち。それがどれだけ儚く、尊いものか忘れてしまう。どんな大きな出来事よりも、日々繰り返される平凡な営みこそが幸せだということに気付けないのだ。いつまでもそばにいると信じ切っていたせいで、言わなかった事や行かなかった場所。もっと笑っていればよかった。もっと彼女に触れていればよかった。もっと早く気付けばよかった。そんな誠人のどうしようもない悔しさや切ない感情が画面から痛いほど伝わってくる。それでも静流が悲しんでいないのは、きっと誠人に出会い、愛することの幸せと喜びを知ったからだと思う。誠人に振り向いてもらえるよう大人の女性になろうとするその純粋な片思いの心も、とても素敵だった。そして最後の静流の写真。それは、美しくなった彼女の姿だった。初めに誠人が出会ったときとはまるで別人のようだった。さらに、池の畔でのキスの写真は本当に素敵だ。「生涯ただ一度のキス、ただ一度の恋」というタイトルのその写真は、彼女の想いが溢れるほど込められていたように思う。人生の全てをその瞬間に注ぎ込んだような写真だった。だからとても幸せそうで、美しく見えるのだろう。そして誠人もその瞬間、静流を愛していた。想いが重なった唯一の写真。その写真の中での二人の想いは強く結ばれていた。だから僕の涙は止まらなかった。人を愛することの素晴らしさを教えてくれる素晴らしい作品。
[映画館(邦画)] 9点(2006-10-28 22:05:36)(良:1票)
96.  ラブ★コン
この映画を観た後、原作マンガも何冊か読んだのですが、かなり巧い脚本だったことがそこで気付きました。根本的に同じような内容が繰り返されるようなマンガではありますが、要点をしっかりつかみ、何を描き、何をテーマに描こうとしているかがはっきりしていて、とても内容がわかりやすく楽しんで見ることができました。映像的にも、とてもマンガチックではありましたが、それもまた巧く、この映画のらしさを引き立てる要素になっていました。主演の二人の演技もこれと言って突っ込むような点もないですし、多分、原作好きなら問題なく見れる筈です。ただ、一つ言うならば、最後のバスケシーンは最低でした。バスケ経験者としては、あのシーンは悲劇的です。よって7点ですね。あのシーンさえもっと別な何かで描いて頂けたらよかったのですが…残念です。
[映画館(邦画)] 7点(2006-10-27 00:12:32)(良:1票)
97.  シムソンズ
劇中で登場人物の一人が「長くやっていると忘れてしまう」と言っていたが、確かにその通りだと思う。いつからか、なんのために上手くなりたいのか忘れ、ただただ毎日辛い練習を繰り返すばかりで、苦痛ばかりが増えていく。でも、彼女たちはそうはならず、常に初心というか自分たちが楽しむ為にやっているのを忘れる事無く、笑顔でやっていた。それは、やはりスポーツをやり続ける意味なんだと思う。楽しいから、明日もがんばれるのだ。それを忘れていなければ、辛い練習を毎日続けていると、出来なかった事ができるようになって、より楽しくなって「もっともっと」って上を目指せるようになる。楽しさは、向上心と情熱と喜びを与えてくれる。この映画にはその多くが詰め込まれていた。仲間と力をあわせてやることは、たった一つの良いプレーでさえ、物凄く大きな喜びに変わり、それを彼女たちは、常に噛み締めていたように見えた。ミスをカバーし合い、仲間を信頼し、全力を尽くす。これぞスポコン。ひた向きに努力している様子と、その努力が実を結ぶ様子が、見ているだけで嬉しくなる。スポーツの素晴らしさを実感すると共に、仲間の大切さを痛感させられた。
[DVD(邦画)] 9点(2006-10-04 02:26:06)
98.  フラガール
泣きました。とにかく泣きました。これでもかってほど泣きました。感覚で言えば、半分くらいの時間泣いていたような気がします。映像の美しさに涙し、役者の演技に涙し、ストーリーの素晴らしさに涙しました。そして、観客の多くが一体になって映画を楽しみ、また涙しているその空気にも感動しました。左隣に座る老夫婦のすすり泣く声や、右隣の強面のおじさんが涙を拭う姿が視界に入り、また涙しました。観客の思いを一つにしてくれる映画です。ひさしぶりに、映画館の巨大なスクリーンで映画を観る事の醍醐味というか素晴らしさを痛感させられました。できればまた映画館へ足を運び、あの感動をもう一度味わいたいです。
[映画館(邦画)] 7点(2006-10-02 03:27:49)
99.  リンダ リンダ リンダ 《ネタバレ》 
たまに大げさに騒いだり、その後にぽっかりとその騒いだ分だけ元気がなくなる。高校生の頃って大体そうで、後先なんていちいち考えてない。今が楽しければ、それ以外に理由もいらなかった。仲間と一緒に何かに向かって努力して、結果はどうあれ自分たちが満足するためにひたすらやる。この映画はもしかするとどんな青春映画よりも地味で、でもどんな青春映画よりも自分が感じてきた青春の温度と限りなく近い気がする。意外といつも喋んない奴が突然まじめな事話したり、行き当たりばったりで良い風に転がったり、目が覚めたら時間が過ぎててその事実を認めるまでに意外と時間が掛かったり、結局告れなかったり(で、後で後悔する)。不思議と、地味なことが記憶の中で一番鮮明だったりする。今まで観てきた青春映画の多くは、常に楽しさや興奮するような物を積み重ねてる事が多い。それは観ていて楽しいけど、リアリティはないし、共感もほとんどない。薄暗い見慣れた廊下や遠くから聞こえる練習の音、全然人の来ない展示のクラスや焼きそばの美味しさなんかは、地味だからこそ胸に響いた。意味の無いような台詞や地味すぎて気付かないような台詞が、本当にリアルで、あるある、なんて思いながら笑っていた。この映画は、僕の中でこれ以上のリアルはないような青春が、全てのシーンに欲張りなほど盛り込まれていて、胸が一杯になった。あと、最後、ステージの上に靴下を脱いで、裸足で登場するのは、僕の中での青春の最もエロいと思っていたスタイル。
[DVD(邦画)] 9点(2006-09-14 01:52:57)(良:2票)
100.  X-MEN:ファイナル ディシジョン
どちらかを選べば、必ずどちらかを失う。どこにでも存在するテーマと内容でした。その力もあってか、とても面白いと感じました。キャラクターや時代設定などに共感がない分、そのリアルなテーマが深く心に残りました。キャラクターの個性豊かな点は、作品を重ねるごとにどんどん魅力的になっていくのを感じました。例えば、一作目から少しずつ登場していた壁をすり抜けることの出来る少女が今回の作品では、節々で良い活躍をしていましたし、触れることの出来ない少女の決断や、氷を操れる少年VS炎を操れる少年の、善悪対決も一作目からの積み重ねで成長を描き、また面白味に深みを出していたように思います。何を選ぶかは人それぞれではあるが、間違った事や犯してはならないことなどは目に見えている。でも、しなければならないという辛い決断も時にはある。そういった繰り返しの中で人は成長し、生きていく。一見、ミュータントの能力ばかりに目がとらわれがちではあるけれど、根本的なテーマにある人間本来のリアルな決断に共感しつつ、考えるきっかけを与えてくれたことに感謝したいです。エンターテイメント性、訴えるメッセージ、両方が共に高い完成度を誇っていたように思います。
[映画館(字幕)] 9点(2006-09-12 20:03:38)(良:3票)
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