1001. 風の電話
《ネタバレ》 故郷へ向かう主人公の旅のうえに、幾つかのエピソードを散りばめてはいるものの、物語にせよ演出にせよ作為的・フィクション的なものをあまり感じないというか、殆どドキュメンタリにも見える、という感じ(率直に「映画」を観た、という感覚がなくて)。その意味では、ある面で「志の高い」作品なのだとも思える。かなり間をゆったりと取った作品だが、ひとつひとつのシーンには結構観入ってしまいました。 ※正直、あの震災というのは、映画の題材としては自分の中でまだ消化しきれない、と感じています。 主演のモトーラ世理奈さんという人は、非常に独特な雰囲気のある方で、本作に関しては間違い無くハマリ役だったと思う。こーいう言い方はやや語弊があるかも知れないが、元気とか活力というものを(この映画の中では「適切」に)己の顔から消し去っていた、という感じで。先に『タイトル、拒絶』を観ていたのですがそっちでもなんか暗い役だったので、次はもっとキャピキャピした彼女の演技を観てみたいですね。 [DVD(邦画)] 6点(2021-03-20 11:30:34) |
1002. 性の劇薬
《ネタバレ》 想像どおり、率直に言ってロマンポルノの域をも超えてほぼAV(マニアもの)という様な内容だすね(この監督、存じ上げなかったですが完全にそっちの畑のお方だそうで)。ただ、それでいてお話の内容の方もそれなりに整備されている、という風にも感じます。とは言え、その内容だけにでも深い見応えや観る価値というものを見い出せる、というレベルな訳でもないか、と。つまりは端的に無理繰りorコジツケ感がそこはかとなく感じられる、とでもゆーか。 するとやはり、一番ハッキリとしたポイントというのはシンプルに、そのハードな性愛描写・調教シーンに在る、と言うことになるのかと。そこに関してはこれも率直に、過激さや生々しさ、マニアックな小道具、そして男二人の「振り切った」感も含めて、総合的に相当にレベルの高い仕事だし、観る価値(ユニークさ)のチャンと在る作品だと言ってよいと思います。加えてもう一点、特に前半は責められ役の彼は終始全裸にも関わらず、さほど構図等に不自然さも無くそれでいて男性器を映り込ませない(=ボカシも全く使わない)で済ませている、という面に、監督の専門的な手腕というものをひしひしと感じました。 手腕、という意味では、これも恐らくそれほど予算が潤沢と言える作品でもないと思われるワリに、映画全体としての質感にも安っぽさが無いというか中々ソリッドに仕上げられていて、そっちの面でもなんか腕の有る監督だなあ、と感じてしまいましたね。今後は作品をチェックしてゆこーかと思います。少し甘めのこの点数で。 [DVD(邦画)] 7点(2021-03-19 21:36:13) |
1003. イーダ
《ネタバレ》 BWV639『主よ、われ汝に呼ばわる』という曲は、タルコフスキーの『惑星ソラリス』で使用された曲でもありますが、今作でもラストにこの曲が使われることの意味というものは、かの作品と同一だと感じました。バッハの音楽の本質は「神の光」、即ち神が人にもたらす「救い」そのものであると考えています。取りも直さず、それはまた「原罪」の象徴でもあると考えます。基より罪を背負った人類に救いを与えられるのは、ただ神のみなのだ、という点で、それは同じことを意味しているのだと。 イーダの表情というのは、全編を通して「表向きは」特に変化しません。と言いつつも、その無表情の意味するものは物語と共にドラスティックに変化してゆきます。自分が何者であるかも知らない真に無垢な無の顔付きが、いつしか自らの運命を理解したことの絶望を湛えた冷たい無の表情に変わります。彼女には、自分の親を殺した男に対して怒りを抱くことすら許されていません(何故なら彼女だけが助かった理由もまた、その男の人間性の内にあるからです)。これはあまりに残酷な運命だとは思いませんか。それから、愛を交わした後に先の事を話し出す男に投げかけた表情、そして自らの人生を決した最後の表情、これらもまた、それまでと変わらずに「無」ではあります。が、そこには彼女の心の移り変わりが実に見事に描き出されていました。この部分の演技・演出というものは、率直に極めて高度なクオリティの仕事だったと思っています。 本質はごくシンプルなテーマを擁する作品で、尺も非常にコンパクトでありますが、これほどまでに意味の深い「旅」というものを描いたロード・ムービーというのは他にあるのでしょうか(フェリーニの『道』も思い起こされますが、あれよりも更にエッセンシャルだ、とでも言いますか)。モノクロで絵画的(静物画的)な映像のエレガントさも含めて、眩いばかりに透きとおった風情を全体に纏いながらも、この上無く濃密である、という映画です。傑作かと。 [DVD(字幕)] 9点(2021-03-18 02:10:30) |
1004. 前田建設ファンタジー営業部
《ネタバレ》 私もいちおう「ものづくり」が生業な人間ですが(私のつくってるモノというのは、彼らとは違って「目に見える」モノだとも言い切れないのですケド)、今作に描かれる「ものづくり」というのは、つくり手側からすればかなり理想的な状況ですよね。とあるモノをつくりたい!というのも結局つくり手側から出てきているのですし、(技術的制約というのはあれども)自分がつくりたいものをつくりたいようにつくっている、とも言えるかと。現実のものづくりでは、これは全くそーいうワケにはいかないものだと思います。色々と「大人(=発注者側)の事情」というのがあるのであって、つくり手はまず彼らとある部分で「戦う」必要がある、その戦いのストレスに耐えるコト自体が、ものづくりという仕事の少なくない部分を占めている、なんてことも結構ザラだと思います。 だからこの映画を観ると、やはりまず率直に「羨ましい!」と思ったのですね。と同時に、こんな今どきこんなド直球に「ものづくり」というのを実に魅力ある仕事として描いてくれたこの映画には、なにか「感謝」というか、とても嬉しい気持ちというのを覚えました。私が言うのもなんですが、若い人とか就活生とかにそーいった観点で観てもらえたら、と思われる作品です。個人的にはとてもオススメ。 [DVD(邦画)] 7点(2021-03-17 22:18:14)(良:1票) |
1005. グッドバイ~嘘からはじまる人生喜劇~
《ネタバレ》 中々に古風、というかコテコテに古臭い感じのコメディで、登場人物は基本的にゲタゲタと笑い飛ばせる様なレトロ喜劇的キャラクターばかりです。中でも際立っていたのが小池栄子で、大泉洋を差し置いてこれは完全に彼女の映画だと言ってよいでしょう(元ネタの舞台版から彼女だけは引っ張ってきた、ということらしく)。よく見ると(よく見なくても)とても美人ですし、それでいて実にコメディ向きの容貌だしで正にこの主役にピッタリ適任です。大きくて特徴的な目が秀逸なのですよね。もちろん美しく色気も湛えていますケド、ギロッと光らせれば何ともずる賢そうで、この目を駆使したコメディ演技は文句無しに出色でした。大泉洋も彼は彼で流石の百戦錬磨で、随所でクスリと笑えるコメディとしての仕上がりはまずまずだと言ってよいと思います。 ただ、如何せんコメディ以外の全体を通しての話の内容が少し弱すぎます。タイトルである『(女たちとの)グッド・バイ』というトコロのメインの筋も途中でどーでもよくなってしまいますし、そこから大泉洋と栄子ちゃんが結局はくっついちゃう、というのもちと陳腐に過ぎるでしょう。要所要所を切り抜いた舞台劇から、自由度の高い映画に話を拡張したことで、見所・勘所が散漫になった、という風に感じました。 もう一つ、話が若干チープだからかも知れませんが、なんか演出・画面の出来も安っぽいのですよね。ラストの大泉洋と栄子ちゃんが再会するクライマックスなシーン、何故にここを手持ちカメラで撮るのでしょうか。一番肝心なシーンなんだから、もっと丁寧にカット割って勝負してほしかった、と思いますね。 [DVD(邦画)] 5点(2021-03-16 21:42:32) |
1006. ディック・ロングはなぜ死んだのか?
《ネタバレ》 とは言え、なんかこの話聞いたことあるな、と思ったら、ウィキにも記事がありますね(ワリと最近だった)。その意味では「事実は小説より奇なり」を地でゆく話でもあるのかと。 質感は『ファーゴ』にやや近いですかね。ただ、内容的にはアレよりも遥かにコメディに寄っています。一方で、そのコミカルさの大部分を形成している主人公の破滅的な愚かしさというものは、ちょっとコレが「突き抜けて」いて、もはやある種の哀愁をも醸し出しています。それは前述どおり根本的な部分が実話だ、とは到底思えないくらいにとでも言いますか(まあ、この事後の顛末というのは別に実話じゃないのでしょうし)。 しかしながら、彼にはそれでも大いに同情も出来るのですよね。とにかく発端の部分が論理的・理知的には「納得いく説明」というものからはかけ離れすぎている、なので、その後の諸々を小賢しく取り繕ったトコロで殆ど意味が見い出せない、ということだとも思うのですよ率直に。落ち着いて対処しよう、という状況からはあまりに遠く遠くに追い遣られてしまっている、のだと。 映画全体としては(その驚愕の)真相が明らかになった中盤以降、少しトーンダウンしてしまった、という様にも感じます。ただ、主人公が嫁さんに真相を打ち明けるそのシーンの嫁さんの顔(変顔)が個人的には忘れられないですね。「こんな時、どんな顔したらいいか分からないの」という意味では、この顔にすることを思いついた人(監督なのか女優さんなのかは知りませんが)というのは中々グッド・ジョブだと思いましたですね。ユニークな作品ですし、観ておく価値は十分かと思います。 [DVD(字幕)] 6点(2021-03-13 19:33:41)(良:2票) |
1007. 私がモテてどうすんだ
《ネタバレ》 太ってる→痩せてモテる→また太っちゃう→頑張ってまた痩せる→どーなっちゃうの?? 一番メインの筋書きはこんなよーな感じの青春ラブコメ(コメディ寄り)だが、見た目重視の恋愛の浅はかさを乗り越えて主人公の本質的な魅力に気づいてゆく、といった部分は青春恋愛ものとしては割と中身のある話だとも思うし、それ自体とても爽やかでもある。ただ、結局恋愛ものとしては(なんと)決着をつけないぜ!という結末も含めて、最後まで観るとやっぱしあんまり中身の無い(=あくまで原作の要素の一部だけを掬い取った)映画なのだと感じるし、そーなると今作の一番の見どころというものは結局、綺羅星の如く揃えたイケメン男子のめくるめくBL場面、ということなのかと思う。その意味では、私は恐らくこの映画の客ではなかったのであろう。 主演の女子は本業ダンサーなのですね。初っ端のダンスシーンのパフォーマンスがかなり高水準だったので、後半もミュージカル展開がバリバリ入ってくるかと期待したのですが、実際はそーいうワケでもありませんでした。というか、全体的に比較的リーズナブルな質感の映画で、演技・演出含めて総じてややB級寄り、といった感じかもしれません。特に、90分というそこそこコンパクトな映画なのに展開運び・各シーンの間合いが(急ごうともせずに)かなりゆったりで、むしろ少し間延びしているよーな気も…というのはあまり感心しません(主人公がそのオタク属性を炸裂させるハイテンションなシーンなんかが、全体のローテンションぶりと比べてちょっと浮いちゃってるよーな気がしちゃって、とでも言うか)。 [DVD(邦画)] 5点(2021-03-13 13:33:06) |
1008. レイニーデイ・イン・ニューヨーク
《ネタバレ》 アレン作品としては比較的クセの少ないシンプルめのロマンチック・コメディに仕上がってますが、そのジャンルとしては素直にかなり楽しく観れる作品だと思いますし、それでいて監督の個性とゆーのも大いに発揮されている非常に手堅い良品だと思います。個人的には、特にこの気怠い雨に包まれたまろやかな雰囲気というものが(監督の他作品と比較しても)とても心地好かったですね。そこは流石だなと。 ティモシー・シャラメにせよエル・ファニングにせよ、実際にまだ非常に若い俳優さんですし、若々しい、というよりは少し幼い、というか、しかしそこから生まれる微笑ましさとゆーのが本作の好ましい雰囲気の醸成に一役買っていたと思います。特にエル・ファニングの邪気(と頭の中身)の感じられない「純真」な感じは個人的に絶品でしたね(それでいて随所でかなり気合の入った「練った」演技を見せてくれたとも思いますし)。この作品が彼らのキャリアで無かったことになってしまうのは、やはり少し勿体無い。 [DVD(字幕)] 7点(2021-03-11 22:19:53)(良:2票) |
1009. レディ・マクベス
《ネタバレ》 フローレンス・ピューの初主演作になるのでしょうか。若いのに実に可愛げの無いふてぶてしい様相がかなりのハマリ役だと言ってよいでしょう。思ったよりも生々しいセックスシーンを含めた彼女の演技は力強さや冷たさ・キレを兼ね備え、それが本作に唯一と言ってよい「観る価値」というものをつくり込んでいる、というのは間違いの無いトコロかと思います。 しかし、話の内容はもはや陳腐、と言ってよいレベルのシンプルさ、加えて、フローレンス演じる主人公の「悪」としての存在にも、何というか「凄み」というものが感じられないのですよね。要は、彼女は自分の劣情の赴くままに場当たり的に悪行を犯してゆくだけであって、そこには知性というか手管というか、手に負えない厄介さというものが感じられないのですよ。なのに結局、最終的に彼女の勝利に終わるこのお話というのは、サスペンスとしてはもはや不可解と言う他の無いチープさ、だと言って過言ではない様に感じています。 善にせよ悪にせよ、それをそれと在らしめるものは「力」なのだと思っています。その裏付けのない悪というものは、ただ空虚ですね。 [DVD(字幕)] 5点(2021-03-08 00:29:41) |
1010. ナイト・アンド・ザ・シティ
《ネタバレ》 コ・レ・は………名作リメイクというジャンルとしては、私が嘗て観てきた作品の中でも実にワーストかも知れません。何がしたかったといって、傑作フィルム・ノワールであった元ネタの「良かった点」というモノをひとつ残さず全て念入りに擦り潰してやったぜ!とでも言いますか(ワザとやってるとしか思えないレベル)。何ですかね、今作のスタッフはジュールズ・ダッシンになんぞ恨みでも有ったのですかね? 元ネタとの比較、という観点を含め、突っ込みドコロは余りにも多すぎてとても拾い切れません。3つだけ言わせて下さい。 ①要するに、戦後直後のハナシを90年代に持ってきたというのがそもそも無理筋すぎる、というのが最大の敗因だといって過言でないのでしょーが、ボクシング興行で一花咲かせよう、という大元の部分にとにかく今どき無理がありすぎます。どだい、カネが足りない!つーて数千ドルの調達に悪戦苦闘してるようでは、儲けだって高が知れています。何をそんな小銭稼ぎのお遊びに必死になってるのだろう、というコトに加え、そのささやかな企てすらデニーロの手際が悪すぎて最初から上手くいく気が全然しないのですよ。あの手この手で何とか一攫千金が目の前に…という状況なくして一体何のスリルが生み出せると思っているのでしょうか? ②フィルとヘレンというのは、元ネタでは「如何にもな脂ぎった金持ち」と「そんな夫が死ぬホド嫌いだけど夫と別れたら生きていけない女」でした。これも今どき(90年代)そんな夫婦はそこら辺にゃ居ないだろ、とは言え、そこの設定を崩してしまったらヘレン側のお話は全く成立しないというのは誰にでも分かるコトです。今作はそれをやっちゃってる、というか、これならヘレンはハリーと仲良く裏工作など企まずに、とりあえずただフィルと離婚すれば好かっただけなのではないのでしょーか?ヘレンについてはもう一点、彼女のキャラクターを元ネタのジーン・ティアニーの役とミックスしてしまったことにより、キャラとしてのキレ・凄みがまるで失われてしまってるのも非常に残念に思います。 ③何より私が一番致命的だと思うのは主役のデニーロです。全体の出来が悪すぎて、彼の出来自体が良かったのか悪かったのかを論ずる必要があるとも思ってないのは確かですが、ハリー・ファビアンというのは要するに「詐欺師」の属性なのですから、軽薄で、口(だけ)が上手くて、無駄に愛嬌を振りまく三枚目の風情を纏っていなくてはならない人物です。前述どおりデニーロ自体の出来が悪かったとか成立してなかったとか言うつもりも無いのですが、これは流石にちょっとミスキャストが過ぎるでしょ、とも思います。結局今作はややコメディタッチに終わらせるという方針を採用していますが、であれば尚更、もっとフツーにコメディアン系統の役者を使うべきだったと私は信じて止みません。 もし、こんな本作を観たいという人が居るならば、一点だけ忠告させて下さい。必ず元ネタから先に観てください。一番やってはいけないのは、本作がつまらなかったからといって元ネタを観ない、ということです(それは貴方の人生の価値の喪失に他なりません)。更に、元ネタと本作を見比べることによってリメイクという映画ジャンルについてのある種の知見というものが深められる、その部分に、本作が製作されたことの価値というものが生じてくる、のではないかと思っています。 [DVD(字幕)] 2点(2021-03-07 02:58:23) |
1011. ジェイコブス・ラダー(1990)
《ネタバレ》 個人的に、いわゆる「実は幻覚でした」系というのがとにかく苦手(『シックス・センス』とかも本質的にはかなり苦手)なのだけど、今作は「場面の中の一部分が幻覚」という訳ではなくて、最初と最後だけが現実であとは全部幻覚(というか夢)という点では中々に大胆な作品だと思う。全部夢なので(なんかサスペンス的な話?な感じも多分に醸しつつも)真ん中の部分では整合性を気にすることなく奇怪・不可解な描写をやりたい放題に入れることが出来ており、何がどーなってるのか分からないという心地の悪さと同時にホラー・スリラーとしての描写自体の見応えもそこそこ十分で、そのジャンルの作品としては単純に出来が相当に好い方だと思う。一点だけ指摘するとすれば、結局サスペンス的な話は「ブラフ」でしかない、その割にその部分の尺自体がちょっと長くて、全体としても部分的に少しだけタルいのが玉に瑕かとも思う(もっとハイテンポに訳の分からなさが突っ走ってゆくという構成の方が、単なるホラー・スリラーに徹するのであれば好かったカモ?とも思う)。 まあでも、これも今回再見して思いましたが、今作は単なるスリラーとしてつくられた映画ではない、と感じるのですよね。オチもそのものとしては単純で明快だけど、テーマ自体はもう少し深いというか、もっとヒトの人生・生と死に関わる何か含蓄のあるモノを描こうとしてる様に見える、というか。個人的に、この(ホラー的な話の流れからすればやや唐突な)ラストはそれでも非常に美しいと思いましたし、ティム・ロビンスの演技自体も(ホラー的な部分以外が特に)素晴らしかった、という側面に、そういった製作側の意図が表れている、という様にも思われます。 [DVD(字幕)] 7点(2021-03-03 22:40:54) |
1012. エンゼル・ハート
《ネタバレ》 この作品、最後まで観るとコアなオカルトものなのですが、つくり自体はハードなサスペンスの雰囲気を強く醸し出しています。かつて初見時はサスペンスとして引っ張って結局オチはそっちかよ!となってしまったのが正直なトコロで、ちょっと肩透かされたというか少しモヤっと観終わった記憶があったのです。 しかし今回再見すると、オドロオドロしくもギリギリのラインでサスペンスに踏みとどまっている全体の空気感の恐怖・怪奇とリアリティの両立の具合が中々に高度な仕事なのだなあと感じたのですよね。オカルトとしても、悪魔に魂を売り渡すも更に恐るべき儀式でその悪魔から逃れようとする、というオチの部分は非常にユニークで面白いアイデアだと感じますし、巻き起こる陰惨な事件の数々も内容・描写ともに凄みと迫力が十二分です。やや展開運びにメリハリを欠く様にも思いますが、終盤は盛り上がりますし、観て損するということもない作品かと。そこそこオススメ。 [DVD(字幕)] 6点(2021-03-03 19:00:20) |
1013. リベンジgirl
《ネタバレ》 良い部分が無くはないのだが、悪い部分の目立ち方がいくぶん勝っちゃってる、という作品に思う。以下列挙する。 〇シンプルなタイトル通りのシンプルな「人間の成長」物語。(最後まで観ると)結果的にはそんなに感情移入が難しいという訳でもない手堅さ。 〇最終的に「嘘をつかない誠実な政治家」を目指す(よーに主人公が変化する)というのにも、共感はしてゆき易いかと。 〇桐谷美玲のクールな見た目は役柄に合っているし非常にフレッシュで十分に魅力的。後半の演技もまずまず悪くもない。 〇相手役の鈴木伸之も爽やかイケメンで、女性側の評判も負けじと取れそうな感じ。 ×残念人間が成長していく物語とは言え、序盤の痛さ加減が酷すぎて正直観ていられない。ここで脱落する人も少なからずいるだろう。 ×異常に陳腐かつテキトーな展開運びでリアリティつーのが欠片も無い。到底映画レベルとは言えないチープさ(凡作ドラマか少女漫画レベル)。 ×特にオーラス。せっかく美玲ちゃん頑張って演説は何とか乗り切ったのに、何故しょーもない恋愛ばなしの方にオトしてしまうのか。愕然。 ×展開がチープすぎて、斉藤由貴なんかの力の入った演技は少し浮いている(シリアスな雰囲気にまとめられていない)。役者泣かせ。 [インターネット(邦画)] 4点(2021-02-22 22:29:39) |
1014. 惹かれあいの法則/恋の法律
《ネタバレ》 ジュリアン・ムーア、ピアース・ブロスナンとそこそこ大物が出てるワリに、かなりパッパラパーなポンコツラブコメです。中盤、酔っ払ってノリで結婚しちゃいました!以降は、正直なぜそれがそーなってゆくのかが何から何までサッパリ分からなかったすよ(殊にジュリアン姉さまの感情の流れとか)。このジャンルで観終わって頭の中が?で埋め尽くされる、というのも、率直に中々オツなもんですね(嘘)。 まあでもワタシ、ジュリアン姉さんも結構好きなんですよね。知的美人な姉さんがビシッと決めた弁護士姿は中々素晴らしかったですし、それはブロスナンも同様です(極上にシブい)。この2人が好き!死ぬホド!という人なら、観てもギリギリ損はしないかも知れませんね。 [インターネット(字幕)] 4点(2021-02-17 22:18:34)(良:1票) |
1015. デビルズ・メイド/死霊家政婦
《ネタバレ》 再生ボタンを押して3秒後には「あ、これB級のレベルに達してないヤツだ」と気づいたワケですが(今回は狙ったのではなく、ホントに知らなかったんですって)オープニングロールを観てゆくと(パペマで有名なあの)製作総指揮チャールズ・バンドと来た…というワケで今作、全体的な質感はかつてのパペマ、或いは『チャイルド・プレイ』的なチョイ低年齢層向け(=少し子供騙し)な雰囲気をいくぶん醸してるのを、これでもかと滅茶苦茶チープにした、という感じですかね(実は私、パペマの旧シリーズって観たことないんですけど、大体そんな感じじゃねーかと思ってます)。 しかし、内容は極めていい加減ですね。そもそも邦題が超絶いい加減で、主役のババアはデビルですがメイドでは更々ありません(じゃあ何なんだ、と言われてもサッパリ分からないのもまた事実ですが)。要は、このババアは人間の皮を被った悪魔で、だから背中に皮を閉じ合わせる時に出来た「紐の結び目」が在るのですよ。原題の『STITCHES』というのはそれを指しています。 とにかく、何の目的だかは分からないけどみんなが集まってる家に、このババアが特に説明も無く紛れ込む所から話はスタートします。が、あとはほぼこのババアがやりたい放題やってるだけで、家人は抵抗も疑いも為す術も無く毒牙にかかってゆく…というだけです(マジで)。諸々の描写のチープさは極め付きで、普通のホラーなら絶対あるハズのババアが正体を顕すシーン(=皮を脱ぐ)も無いという肩透かしぶり。ほぼ観る価値の無い正真正銘のC級作品に間違いはありません。 [DVD(字幕)] 2点(2021-02-17 10:58:51) |
1016. ポルトガル、ここに誕生す ギマランイス歴史地区
《ネタバレ》 ポルトガルと、そこに生きる人々の歴史、といったトコロが共通テーマになってる短編4作のオムニバス。ただ、かなり高度にシャレオツで気取った感じの作品揃いで、勘所自体はかなり難易度の高いヤツだと言ってよいだろう。個人的にはさほど面白く観れなかった。。 『バーテンダー』:カウリスマキ作品だが、確かにどっからどーみてもカウリスマキ風な初老のバーテンダーが主人公。台詞も特に無し。オバサン相手にブキッチョに踊るシーンなんてザ・カウリスマキ。監督のファンなら確実に気にいる作品だと思われる。 『スウィート・エクソシスト』:『コロッサル・ユース』『ホース・マネー』に引き続きヴェントゥーラ主演作品。というかコレ『ホース・マネー』撮影時に同時に撮った or 余った素材ででっち上げた、という作品ですね。一番キモなシーンなんか完全に流用だし、どーいうつもりでこーいうコトしてんですかねペドロ・コスタ?正直、意味不明(可読性は限り無くゼロに近い)。 『割れたガラス』:いちおうヴィクトル・エリセ作品、という時点で超レアもの。ただ今作は完全なドキュメンタリで、150年以上操業したとある紡績工場に縁の有る人々へのインタビューを通じて、工場を取り巻く人生・感情・記憶の重なりを描き出そう、という内容かと。それ自体は中々面白く観れるし、観て損した感は全く無い。この4作の中では確実に一番「無難」。 『征服者、征服さる』:ここで言う「征服者」とはポルトガル王国の建国者、アフォンソ・エンリケスのこと。彼が征服されるとは…これは観てのお楽しみ。短いが趣旨はハッキリしており、オムニバスとしてのコンセプトにもマッチしていると思う。極短編としては十分に良作。 [DVD(字幕)] 5点(2021-02-17 00:11:42) |
1017. フェリーニのローマ
《ネタバレ》 これも全体としては率直にかなり訳ワカメな部分も多いが(特に「現代」のローマのターン)、個人的には「過去」のローマの種々のシーンからは愛だとか郷愁だとかいったポジティブな感情を大いに汲み取れて、その部分に関してはかなり面白く観れたと感じる。序盤のレストランのシーンやボードヴィル劇場、娼館の場面など、非常に粗野でそれはもはや「野蛮」とも言える様な無秩序ぶりには、それでも人々の活力というものが溢れて、どこかとても魅力的に目に映った。例えばそれは少しだけ『寅さん』を今私が観たときの様なノスタルジイ、とでも言いますか、古い時代の人々の力強さやそのコミュニティの緊密さ・親密さが滲み出ている様な、とゆーか。 それらの描写の端的な物珍しさ・ユニークさという部分には確実に観る価値があると思う。個人的には、観て損した感は全く無いですね。 [DVD(字幕)] 7点(2021-02-16 21:33:49) |
1018. ダンウィッチの怪
《ネタバレ》 コーマン御大のコテコテのB級映画とは言え、いくら何でもこの題材を描くにしては様々なものが足りていない様に感じられます。特に序盤・中盤はイマイチセンスの無い奇怪な幻影を除けば、ストーリーがダラダラと進行していくだけなので極めて退屈です。終盤もチープさは大して改善せず、むしろ流石にラスト付近は抽象的な表現では誤魔化せない(けど派手な特撮を使うには予算が無い)ということからの理想と現実の乖離はより酷くなっており、何がしたいのか分からない、というレベルになってしまっている様にも思われます。こんなコトならこのチープな演出に耐えるだけの普通のホラーの脚本を使った方が好かったのは確実でしょう。残念作。 [DVD(字幕)] 3点(2021-02-13 05:06:41) |
1019. ゼイリブ
《ネタバレ》 エラく古典的なSFばなし(若干ホラー風味)だが、サングラスをかけると世の真実が見える…という描写は中々の衝撃度で、そこは観てるコッチもギョギョッと盛り上がったのが正直なトコロ。ただ、基本的にはメインシナリオは非常に平凡、かつボリュームも不足しており、そこをチープなアクションを胃もたれするほど添加して何とか誤魔化しているという感じ。結果、全体的な質感としてはかなり脳筋な映画になってしまってる印象(主人公を演じたのが実はプロレスラーだとかは置いといて)。退屈だ、とまでは言わんが、個人的にはやや微妙。 [インターネット(字幕)] 5点(2021-02-11 21:42:07) |
1020. 断絶(1971)
《ネタバレ》 観終わってのこの虚無感・徒労感と、それでいてどこかで確実に爽快感を感じている自分が居る……確かに、アメリカン・ニューシネマと言われる作品群の中でもある部分で際立った一品かも知れません。登場人物の誰もが(それは主要4キャラ以外のモブも含めて、ですが)とにかく何がしたいのか、何が目的なのかが皆目分からないままダラダラと物語は進みますが、終盤はその儚い関係性すらが雪崩を打って破綻してゆく、その様には何か「滅びの美学」とでも言うべきモノを感じ取りました。それこそが正にアメリカン・ニューシネマのテーマたる「善なるものへのアンチテーゼ」というべき価値観なのだろうと思います。中々の掘り出し物でした。 [DVD(字幕)] 8点(2021-02-11 18:49:33) |