1041. ひまわり(1970)
戦場から還らなかった夫を待ち続け、遠い異国の地で遂に探し当てた夫の手がかり。しかしそこにいたのは洗濯物を取り込む若く可憐な女。それだけで全てを悟るジョバンナ。戸口からは幼い娘が顔を覗かせ、「ズドラーストヴィチェ」ではなく「ボンジョールノ」と声をかけてくる。生活感に溢れる部屋。枕が二つ並んだベッド。子供を叱りながら忙しなく動く、溌剌とした若い妻。それらは全て、ジョバンナが10年間夢に見続けてきた光景。夫の生存だけを信じて生きてきたジョバンナが、初めて夫であって欲しくないと思った瞬間の再会。居た堪れなくなって列車に飛び乗るソフィア・ローレンに、ただ涙、涙…。ジョバンナを待っていた、寡婦よりも残酷な運命。ひまわりは、あらゆる悲劇の上に大輪の花を咲かせていました、7点献上。 7点(2005-01-11 01:10:35) |
1042. 悲しみは星影と共に
最近の深夜テレビが初見だったんですけど、ユダヤ人迫害物としては非常に珍しい映画だと思った。多くの作品は大抵ポーランドかフランスが舞台ですけど、この映画の舞台は旧ユーゴスラビア(「旧」と付けなければならないことに、また別の歴史の悲劇を感じる…)。この元多民族国家に於いてもナチスのユダヤ人迫害が行われていたことに、今更ながら全ヨーロッパが巻き込まれていたという認識を新たにしました。そしてまた本作は、自国もムッソリーニを抱えていたイタリア製で、言語も当然イタリア語。これも珍しかった。ついでに言えば、主人公のセルビア系ユダヤ人女性(?)を演じるのは、アメリカ人のジェラルディン・チャップリン(台詞は吹替)。ところで、この邦題と中身は全く繋がらないと思うんですけど…、5点献上。 5点(2005-01-11 01:10:09) |
1043. 刑事(1959)
哀愁を帯びたアリダ・ケッリの歌声に乗せて描かれる、とある殺人事件の顛末。主題歌「死ぬほど愛して」や当時のハードボイルド調ポスター等から連想される内容とは違って、事件はありふれた強盗殺人、その捜査は淡々と行われ、登場人物の多くは少しコミカルな雰囲気でさえある。印象としては「はぐれ刑事純情派」系の刑事ドラマといった感じでしょうか。従って映画の見所は事件そのものよりも、捜査で訪れる町々のイタリア庶民の生活描写と、劇中一人だけ飛び切り美しいクラウディア・カルディナーレ。という訳で、“amore, amore, amore, amore mio”と口ずさみつつ6点献上。 6点(2005-01-11 01:09:38) |
1044. 鉄道員(1956)
一般的な鉄道員一家の、それぞれの生活の機微を真摯に描いた名作ホームドラマ。酒好きだけど、仕事熱心で陽気で、でも頑固な父親。貧しさをやりくりし、家族全員に優しい母親。只今自分探し真っ最中のフラフラした長男。昔気質の厳格さに嫌気が差している長女。そして、家族全員のことが心から大好きな幼い弟。多くの方が指摘されてる様に、ここには日本のホームドラマに通じる多くのものがあります。ま、今現在、この日本に一般的な家庭ってものがあるのかさえ怪しいので、今の人が観てどう感じるかは判りませんけど…。それでも観て損は無いと思います、7点献上。 7点(2005-01-11 01:09:19)(良:1票) |
1045. 自転車泥棒
《ネタバレ》 う~ん、どうなんだろ? 評論家や歴史家にとってはネオ・レアリスモの傑作中の傑作なんでしょうし、クリアな映像で切り取られた当時のイタリア社会は見応えがありますけど、「面白いか?」と問われれば、私の口からはとても面白いとは言えません。もう、見るに堪えない位に悲惨。生活の糧である自転車の盗難、絶望的な自転車探し、出来心からの自転車泥棒、そして息子の前で取り押さえられる父。肩を落とした親子の後姿で終わる救いの無いラスト・シーンに、この先この一家にはどんな不幸が待っているのだろうと、暗~い気持ちになったもんです、5点献上。 5点(2005-01-11 01:08:56) |
1046. エイリアンVS. プレデター
現代の地球が舞台ということで、物語的には完全に「プレデター3」。最初のヤツより「プレデター2」の方が好きな私としては、誇り高き狩猟民族プレデターが、「2」の設定で登場してきたのは嬉しかったです。が、映画の面白さで言えば今二歩位の印象。謎の熱源、私設調査団、ただ殺される為だけに登場する専門家達等、どれもが既視感のある設定。簡単に解明してしまう事の顛末、弱く見えるエイリアンとプレデター等、盛り上がりにも欠ける。やっぱメイン・イベントを熱くするには前座だってそれなりに重要。全くもってポール・W・S・アンダーソンらしい軽い仕上がりでした、5点献上。 5点(2005-01-05 13:36:57) |
1047. ヴァン・ヘルシング
「リーグ・オブ・レジェンド/時空を超えた戦い」「アンダーワールド」から遅れること1年、真打でありながら既に三番煎じとなってしまった古典モンスター大集合映画。確かに10点、9点つける様な傑作ではないですけど、観客を退屈させずに入場料分楽しませるアトラクション・ムービーとしては、前記の二作品なんかよりも遥かにその役目を果たせたんじゃないでしょうか。大体スティーブン・ソマーズに、それ以上のことは映画会社も観客も望んでいないでしょうしね。それにしても「アンダー~」から引き続いての、ケイト・ベッキンセールの腰の細さにはメロメロ。ケイト、もう貴女はこの路線で突っ走りなさい。「セレンディピティ」はまだ良かったですけど、間違っても大作メロドラマなんかに出てはいけませんよ。そういう訳で、6点献上。 6点(2005-01-05 13:36:35) |
1048. ベッカムに恋して
“Bend It Like Beckham”という原題に対して「ベッカムに恋して」という邦題は、そんなに悪くないと思います。実際、主人公の女の子はベッカム・ファンだったし、イギリスでベッカムはサッカーと同義語な訳ですから、この邦題も主人公のサッカーへの一途な思いを表現したものと解釈できます。しかし映画としては、想像してたよりもかなり予定調和の展開だったので、インド映画に馴染みの無い人はいいとしても(特に欧米でのヒットは凄く納得できた)、私には少し期待外れでした。本作で一番驚いたのは、「このパキスタン野郎!」(意訳)というのがインド人を侮辱する最悪の言葉だったということ。例えば「この北朝鮮人!」と罵られて傷つく日本人も余りいないと思うので、印パ間の関係が少し垣間見えた気がしました、6点献上。 6点(2005-01-05 13:36:13) |
1049. コンフェッション(2002)
ストーリーも雰囲気も監督も違うのに、何故か「オーシャンズ11」を思い起こさせるジョージ・クルーニー初監督作品(これがクルーニー・コネクションの持つ匂い?)。原作からして無茶苦茶な内容なので、脚本のチャーリー・カウフマンは適任だったし、非常に「らしく」まとめられていたとは思いますが、私にも何処に面白さを見出せばいいのか判らない映画でした(本来なら、これはコメディにするべき素材だと思う)。物語はスパイ部分よりも、プロデューサー部分の方に皮肉が込められていたと思うので、この番組群に馴染みがあれば、もう少し楽しく観られたのかもしれません、5点献上。 5点(2005-01-05 13:35:52) |
1050. ニューヨークの恋人(2001)
爺さん俳優に若手美人女優というハリウッドの流れの向こう張ったのか、ヒュー・ジャックマン(当時33歳)にメグ・ライアン(当時40歳)の相手をさせた王道ロマンティック・コメディ。盛りを過ぎた大女優に今が盛りのハンサム俳優をカップリングするというのは、大昔から試みられた方法ですけど、これまた大昔から成功した試しは無かった気がします。本作も「恋する遺伝子」に引き続いてジャックマンの男前振りが目立っただけで、メグは完全に引き立て役。二人の恋愛にタイム・スリップがほとんど絡まないのに、何の為にこの設定が必要だったのかも全く解らない。結末の決まった他愛ない話に過ぎないロマコメは、その個々のエピソードがいかに楽しいか、または主演カップルがいかに魅力的かで評価が決します、5点献上。 5点(2005-01-05 13:35:32) |
1051. 翼をください
私が真っ先に連想したのは「乙女の祈り」。しかし、二人の少女に同化する様に作られていた「乙女~」とは違って、本作は二人の少女の間に狂言回しの少女を配置してしまい、その所為で私も、その少女と同じ傍観者に成らざるを得なかった。また、時代をきっちりと描いていた「乙女~」に対し、本作はいつの時代の話なのかもピンと来ない。実際は約30年前の事件だったらしいですけど、この状況にはゲイが市民権を得る以前という明確な時代背景が欲しかった。ということで、私には「ヴァージン・スーサイズ」同様、上辺だけのリセエンヌ趣味にしか見えませんでした、5点献上。 5点(2005-01-05 13:35:11) |
1052. アンジェラの灰
そうそう、最大の謎はこのタイトル。一体どーゆー意味なんでしょうね? アイルランドの諺か何かにあるのかな? そして次の謎は作品のテーマ。この今更な物語から一体何を汲み取ればいいんでしょうか? 1930年代、アル中で甲斐性の無い父親は、アイルランド以外にも何処にでもいたし、神経症的な子沢山の母親も、幼い兄弟の面倒を見る兄や姉も同様。もう貧困そのもの、しかも「過去の」貧困を描くことは無意味。今この時、貧困に喘ぐ人達は、津波の被害地域以外にも無数に存在するのです。この物語は裕福になった人の懐古趣味というだけのことだと思う、4点献上。 4点(2005-01-05 13:34:50)(良:1票) |
1053. キャラバン(1999)
伝統と継承、そして革新の中から初めて受け継がれる伝統を、ヒマラヤの大自然に抱かれて生きる山岳民族を通して描く。もちろん地味なテーマではありますが、地味な映画だと思ったらこれが大間違い。この映画の本当の主役はヒマラヤの大自然そのもの。観る者を飲み込んでくる様なヒマラヤの雄大で荘厳美麗な景観は、どんなハリウッド大作の特撮も作り出せない問答無用のスペクタキュラー。「アラビアのロレンス」に匹敵すると言ってもいい映像を体験する為だけでも、本作を観る価値は充分ある。世代交代の軋轢の物語も、共感を持って観ることが出来ました、7点献上。 7点(2005-01-05 13:34:31) |
1054. ザ・カップ 夢のアンテナ
インドに亡命しているチベット僧達の現状を、世界中の少年達と同じサッカー狂である少年修行僧の成長を通して描いていく、実話を基にしたハートフル・コメディ(それにしても、この「夢のアンテナ」って副題は、だいぶ映画の趣旨を歪めてる様な気がする)。例え故国で迫害にあった政治難民だとしても、例え御仏に仕える修行僧であったとしても、その前に彼らは極普通の(そして文字通りの)腕白小僧。心の宇宙が広がる前に、彼らの眼前には無限の宇宙が広がっている。やがてその中から、本当に大切な何かを自らが発見していく。生きること、これ即ち修行なのです、6点献上。 6点(2005-01-05 13:34:09) |
1055. セブン・イヤーズ・イン・チベット
7年間に亘る西洋人登山家とダライ・ラマの交流がメインなのかと思ってたら、前半はハインリヒ・ハラーの逃亡劇(原作の自伝でもダライ・ラマの登場は終盤になってかららしい)。チベット問題自体の描き方は、ハラーという人物の半生記という映画の性格から妥当だとは思いますが、ブラッド・ピット、第二次大戦、捕虜収容所、チベット文化、そしてヒマラヤの景観という最高の素材が揃っていながら、映画はジャン=ジャック・アノーの実力相応に平板な仕上がり(そして例によって中途半端な英語劇)。どうしてこの人が未だに名匠に数えられているのかさっぱり解りません、5点献上。 5点(2005-01-05 13:33:46) |
1056. 天上の剣 The Legend of ZU
映画ではしばしば「全編クライマックス!」等と宣伝されることがありますが、私は全編クライマックスの映画に出会ったことはありません、この映画を観るまでは…。本作は戦闘シーンだけを繋いだDVD特典映像の様に、掛け値無しに全編クライマックス、最初っから最後までCGとワイヤーを駆使した天上人と魔王の戦いで埋め尽くされてます。では、全編クライマックスの映画が面白いかと言えば、これが否。だってストーリーが全然解らないんだもん。目には楽しくても、一体誰が誰で、何処で何が起きているのかがさっぱり解らない。アジアン・ビューティ・チャン・ツィイーも薄汚れたメイクを施され、アジアの聖女セシリア・チャンの引き立て役だし…。ということで、時間だけはあっと言う間に過ぎていくサービス精神に、5点献上。 5点(2004-12-28 01:37:36) |
1057. マーシャル・エンジェル
ロシアン・マフィアに誘拐された元カレを救う為、猫と呼ばれるスー・チー(個人的にはチャン・ツィイーより好みなんです)が、蛸、猿、鳩、蜘蛛、孔雀、金魚等と呼び合う女賊仲間らと共に、新開発のコンピュータ・プログラムを盗む話。これは「チャーリーズ・エンジェル」と言うより、主人公の名前からも判る通り「キャッツ・アイ」でしょう。香港映画らしい無茶苦茶な脚本は、それはそれで許せますけど、それにしたって、とても2001年作品には見えない古臭い仕上がりなのはどーゆー訳? それに「マーシャル」とは名ばかりで、格闘もお色気もほとんど無いのは納得できんよ、3点献上。 3点(2004-12-28 01:37:13) |
1058. 国姓爺合戦
おっと、まだ懲りずに日中合作映画なんて作ってたのか、日活…。歴史や歌舞伎に疎い私は【広瀬真由美】さんのレヴューを読んで、ようやく鄭成功なる人物と本作のストーリー骨子が理解できました。これは忠義の物語だったんですね。ということは、映画を観てもそれが全く理解できなかったということ。ストーリーの流れや人物の心中が解らなかったので、中盤では国姓爺が反逆者なのか愛国者なのかも判然としない。だからクライマックスの、台湾遠征の高揚感や台湾奪還のカタルシスも伝わってこない。お目当ての合戦シーンの迫力にも欠けてた様な気がします、4点献上。 4点(2004-12-28 01:36:55) |
1059. 純愛譜
《ネタバレ》 これまた全く面白くない日韓合作映画。悶々とした毎日を過ごす韓国のだらしない地方公務員(しかし、ここは韓国映画らしく金は持ってるらしい設定)と、だらけた毎日を送る日本のプー太郎女子の日常を、ダラダラと描いていく一種の青春映画(決して恋愛映画ではない)。この二人に感情移入できる人間等まずいないでしょう。そーゆー意味で二人はお似合いだし、出会うべくして出会ったのかもしれない。ラストで「これから私たちの物語が始まる」みたいなナレーションで締め括られますけど、始まった途端にお互いを軽蔑して終わってしまう様な気もします、3点献上。 3点(2004-12-28 01:36:34)(良:1票) |
1060. 南京の基督
すっかりと菅野美穂にその座を奪われた感のある、富田靖子十八番のエキセントリックな役柄の集大成。愛らしさ、狂気、憔悴、そしてヌードと、彼女はここぞとばかりに頑張ってましたけど、はっきり言って映画は全然面白くない。大体、この物語で金花がクリスチャンである必要性が全く感じられなかった。音楽もセンス悪すぎ(何と梅林先生じゃあーりませんか)。それに、日本と香港の初の本格的合作映画ということですけど、何でわざわざ中国人が日本人、日本人が中国人を演じなきゃならないの? それがさっぱり解らない。これは企画の方向性自体に問題ありです、3点献上。 3点(2004-12-28 01:36:04) |