1061. リベンジ・マッチ
《ネタバレ》 ロッキー・バルボアとジェイク・ラモッタが古希を迎えようかというジジイになってからリターンマッチ!これはもうファンにとっては夢(悪夢?)の対決でございます。この妄想ストーリーはおそらく以前からハリウッド業界人の中で画策されていたんじゃないかと思いますが、このタイミングで実現したのはいろいろ大人の事情があったのかもしれません。でも撮影時でスタローン67歳デ・ニーロ70歳ですから、これは年齢的にもギリギリのタイミングだったのかと思います。 ストーリーはもう予想通りの両俳優というかロッキー&ラモッタのセルフパロディが全開ですけど、散りばめられた小ネタが判っていても観て愉しいんです。また大げさな芝居を見せまくる両名優の間で、ちょこまかと二人を完全に喰ってしまうアラン・アーキンはさすがの快演でした。クライマックスの試合はもう“後期高齢者級”と呼ぶしかない壮絶な殴り合いでしたが、デ・ニーロがそれなりに体を作っているところはさすがです。でも冒頭でスタローンとデ・ニーロの過去戦を見せる映像があるんですけど、顔だけ超不自然なCGをくっつけていたのには爆笑でした。 そして忘れちゃいけないのがキム・ベイジンガー、この人撮影時でもう60歳なんですよ!とってもそんな歳には見えない若々しさですけど、まさかこの人現代のラクエル・ウェルチなのかな(笑)。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2016-03-28 22:26:35) |
1062. シベリア超特急2
《ネタバレ》 正直かなり迷ったんですけど、やめときゃいいのに2も観てしまいました。映画自体は気のせいか前作よりなめらかというかふつうに進行し始めて、演技はともかくマイク水野さんも監督としての腕前は上がったのかなと感じたりしたのですが、それは大誤解だということがすぐ判りました(笑)。女優陣は妙に年増ばかり集めていますが、まあベテランばかりですからそつのない演技でしょう。しかしどんな名女優でもあんな無茶苦茶な台本で謎明かしさせられたら、おバカとしか見えなくなってしまうのがシベ超の持つ恐るべき魔力です。ちなみに寺島しのぶはこれが映画初出演で、さすがに堂々とした演技ですけど彼女にとっては恥ずかしい過去なんでしょうね。びっくりしたのは外交官役の中村福助の演技で、とっても奇妙な調子っぱずれのセリフ回しはいったいなんだったんでしょうか?監督、ちゃんと演技指導して下さい(無理か)。 前作よりはほんのちょっとふつうの映画に近づいたかと思いきや、やはりマイク水野の「やめた!」で逆戻り、いやこれが無かったらもっと殺伐(?)とした駄作になっていたんじゃないかと思います。そう考えると、水野先生はああ見えても盛り上げるツボだけはわきまえているエンターテイナーなのかもしれません(な訳ないか)。 [CS・衛星(邦画)] 2点(2016-03-25 23:35:52) |
1063. 黒の試走車(テストカー)
《ネタバレ》 モダニスト増村保造の面目躍如といった感じのキレキレのサスペンスです。映像も当時としてはかなりモダンで、増村らしい才気が感じられます。たとえば前半にあるバーのシークエンス、近景というかカメラのまん前でホステスが客を接待しているところを半身で捉えている、そして遠景では奥の席でヤマト自動車の馬渡が密談をしています、これが両者にきっちりピントが合っていて実にシャープです。タイガー自動車の企画課は倉庫みたいなところの二階にあって、そのロケーションを活かして上から下から観せるショットも多用されていて、こういうところもいかにも増村らしい。ストーリーも梶山季之の原作がしっかりしているから、タイガーVSヤマトのスパイ合戦のあの手この手を飽きさずに見せてくれます。まあ確かに、この映画の主役は田宮二郎ではなく高松英郎なんだと納得するしかないわけで、いくら高度成長期のモーレツ社員だと言ってもここまでくれば立派な犯罪者ですよ。当時はこういう生き方が肯定されていたわけなので、脱落してゆく田宮二郎の姿やラストの虚無的なセリフは世相に対する強烈なアンチテーゼだったろうと思いました。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2016-03-23 23:21:48) |
1064. シベリア超特急
《ネタバレ》 いやーあ、これは聞きしに勝る酷い映画ですねえ。これほど苦痛に満ちた90分というのも滅多に体験できることではありませんよ。マイク水野さん、あんなに延々とセリフの棒読みを続けて、ご自分でなんか変だぞと思わなかったんでしょうか?ど素人を起用した佐伯大尉と車掌の二人が巧者に見えるぐらいですから、相当なもんです。本編の方はいわば大人が会社の余興会かなにかでコメディ芝居をやっていると割り切れば何とか耐えられますが、あの2回のどんでん返しはもう意味が判らないしマイク水野さんの狂気すら感じて戦慄しました。ほんとエド・ウッドが巨匠みたいに感じるほどです。聞くところによると、シベ超シリーズは第5作まであるそうですけど、たぶん通して鑑賞したら発狂してしまうでしょうね(笑) [CS・衛星(邦画)] 1点(2016-03-20 23:31:29) |
1065. 第四の核
《ネタバレ》 原作はフレデリック・フォーサイスのポリティカル・ノヴェルです。原題は直訳すると『第四の議定書』という感じですね。冒頭で「米ソ間では核軍縮条約を締結したときに四つの議定書を交わしたが、四番目の議定書は未だに内容は秘密になっている」なんて意味深なテロップが流れます。実はこの議定書のことはその後のストーリーではまったく出てこないので結局なんのことやら判らずじまいなんですが、これは膨大な原作小説を端折ったせいなんでしょう。まあそのことは忘れてしまっても、この映画を観るのにはなんの支障も有りませんけどね。 かいつまんで言うと、英国の米軍基地で事故に見せかけて小型核爆弾を爆発させて英国をNATOから離脱させるという陰謀を強硬派のKGB議長が計画し、その任務のために潜入してきた凄腕エージェントと英国情報部MI5の闘いを描いています。いわば『ジャッカルの日』のリサイクル・ヴァージョンみたいなプロットなんですけど、サスペンスとしてはけっこう面白く撮れています。そのジャッカルとルベル警視に相当する役を演じるのがピアース・ブロスナンとマイケル・ケインというわけです。ブロスナンはまだジェームズ・ボンドに抜擢されるはるか前ですが、とにかくこのKGBエージェントが渋いというか不気味なんです。登場シーンでは1シーンを除いてまったく無表情で押し通し、自分の行動の目撃者はもちろんのこと、核爆弾製造の支援のためにソ連から派遣されてきた女スパイですら役目が終わると表情ひとつ変えずに殺してしまいます。対するマイケル・ケインは、かつての当たり役ハリー・パーマーを彷彿させるカッコよさです。こういう上司には反抗的だけど有能なキャラを演じたら彼はピカイチです。 ケインがブロスナンを追いつめてゆく過程や、土壇場で二人が邂逅し秒殺で勝負がつくところなんかは、『ジャッカルの日』とそっくりなんですが、原作の政治的な要素をばっさり捨ててエンタテイメントに仕立てたのでまあしょうがないというしかないですね。そこそこ面白かったというのが感想ですが、これが日本では未公開だったというのはちょっと不思議ですね。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2016-03-17 22:37:23)(良:1票) |
1066. セッション
《ネタバレ》 ジャズってなんかプレイヤーたちが感性に導かれるままにフリーダムに演奏するものだと思っていましたら、ビッグバンドになるとまるで交響楽団みたいにガチガチの指揮になるんですね、ほんと知らなかった。このフレッチャーという男は鬼教師なんて次元を超越してエゴの塊みたいな悪漢というレベルです。指揮者や映画監督などの巨匠たちは、黒澤明や溝口健二の例を出すまでもなく自分が芸術と信じるものに対しては絶対妥協しないものですが、この映画でのフレッチャーにはストイックさと同時に人間としての嫌らしさが前面に出ていて実にリアルなキャラです。ニーマンを三時間も早く呼びだすなんてもう単なるイジワルとしか思えないし、教え子の死を伝えるにしても自分に都合が悪いとなると自殺を交通事故だと偽るし、実際こういう人よくいるんですよ。この二人は、良く考えると物語の中盤からはもはや師弟ですら無くなってるんです。フレッチャーは復讐のためにニーマンをフェスに呼ぶし、ニーマンの方はもはやスカウトされるという目的などどっかに吹っ飛ばしてフレッチャーにひと泡吹かせるためだけにドラムリズムを機関銃みたいに浴びせかける。これほどムダを削ぎ落して男同士の対決というかケンカを見せてくれる映画というのも珍しいです。ニーマンという男の描き方も、自意識過剰だし酷い仕打ちをした元カノに自分が苦境に落ちるとすり寄ったり、この平凡な弱さがとてもリアルです。 そして何よりも気に入ったのが、観客の総立ち喝采なんてクサイものをいっさい見せずあのタイミングで暗転させる閉め方です。なにも語ってはいないけど、きっと元カノは観に来なかったろうし二人は決して和解はしなかったんだろうと確信しています。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2016-03-15 23:18:04)(良:4票) |
1067. 火山のもとで
《ネタバレ》 メキシコ駐在の元英国領事とスペイン内戦帰りの弟、そして弟と不倫関係にあって一時失踪していた妻、物語はこの三人の会話劇みたいな構成です。妻が夫のもとに戻って来てその夜に夫婦が悲劇的な結末を迎えるまでのほぼ一日の出来事となりますが、お話しの内容自体は夫婦と弟の三人で死者の日のお祭りに出かけるぐらいが動の部分で、全篇通してまったりというか盛り上がりには欠ける展開です。アルバート・フィニーがアル中の夫なのですが、見てもちっとも愉しく無いですけど全裸になるシーンまである熱演です。まあこれはこれでオスカーにノミネートされたのは納得の演技ですが、妻役のジャクリーン・ビセットの演技がそれについていけてないのでイマイチの出来の映画となってしまいました。彼女は10代の頃の私のミューズでしたが、いかんせんその演技力の大根ぶりで大女優となることはかないませんでした。監督は巨匠ジョン・ヒューストンですけど、彼のフィルモグラフィで自身が脚本を書いていないのはたいてい映画としての出来が悪いですねえ。 [ビデオ(字幕)] 5点(2016-03-13 20:54:09) |
1068. 血を吸うカメラ
《ネタバレ》 この映画が『サイコ』と同時期に製作されたってことは興味深いですね。かたやヒッチコックは大ヒットを飛ばし名声をさらに高めたのに、可哀想にマイケル・パウエルは酷評&不入りでこれで完全に監督生命を断たれてしまったわけです。まあ確かに、犯罪スリラーとしても当時の基準からしてもオーソドックスというか古臭い撮り方であるのは否めません。ヘイズ・コードの制限が厳しかったハリウッドでは不可能な売春婦が被害者という設定があっても、女性被害者がひとりだった『サイコ』の方がはるかに扇情的なのは、ちょっと情けない。でも窃視症を病む主人公というプロット自体は、かなり時代を先取りしたアイデアだったと思います。まあ簡単に言えば“覗き趣味”というわけですが、この性癖はマイケル・パウエル自身を含めて映画人は大なり小なり持っている悪癖じゃないでしょうか。そう言えばヒッチコック御大もかなりの覗き魔だったそうです。この映画では実際の殺人場面はまったくないんですが、被害者の最後の表情にだけ執着する主人公というのが変態性を感じます。でもこの青年役の俳優には清潔感があり過ぎるのでミス・キャストだと思ったら、この人ロミー・シュナイダーの『プリンセス・シシー』シリーズでなんと相手役のフランツ・ヨーゼフ皇帝を演じていたオーストリアのアイドル俳優なんですよ。そんなアイドルをどう説得(騙す?)したのか英国まで呼んでこんなキャラを演じさせたとは、逆に皮肉たっぷりのキャスティングとも言えるでしょう。でも彼にはアンソニー・パーキンスみたいな陰が無いのはどうしようもないですね。 [ビデオ(字幕)] 5点(2016-03-10 23:05:41) |
1069. ジプシーのとき
《ネタバレ》 エミール・クストリッツァにとっては『パパは、出張中!』と『アンダーグラウンド』の間で撮られた作品ですけど、本作以降に濃厚になってくるいわゆる“クストリッツァ印”が確立された映画です。まず動物、これについては七面鳥ということでまだ小粒です。クストリッツァ映画には欠かせない“宙づり”はなんと家が宙づりにされちゃいます。元祖宙づりは、対象が人間じゃなくてこんな大物だったんですね。そして忘れちゃいけないのがジプシーブラスと幻想シーンです。序盤にある川の中で繰り広げられるジプシーたちの祭りは凄く荘厳で心に響いてきます。ストーリーはひとりのジプシー青年の転落の軌跡という感じの物語となります。この俳優は『パパは出張中!』と『アンダーグラウンド』にも出演している当時のクストリッツァ映画の常連俳優ですけど、本作の10年後に29歳で亡くなってしまったそうです。 結婚式のシーンで始まり葬式で終わるというのはいかにもクストリッツァらしいストーリーテリングでしたが、長年観たかった作品でしたのでDVD化には感謝でございます。 [DVD(字幕)] 7点(2016-03-08 20:57:50) |
1070. 北京原人の逆襲
《ネタバレ》 ストーリーラインは『キングコング』とほぼ同じ。特撮氷河期の真っただ中にあった東宝特撮スタッフから有川貞昌たちを呼んだ特撮パートは、まるでその欲求不満をぶつけた様な気合いの入った都市破壊を見せてくれます。でもクレジットにまったく出てこないというのは、いくらなんでも可哀そうです。問題は特撮じゃなくて本編でして、いくら香港映画でもこれは酷過ぎるというレベルです。ヒマラヤの奥地に原人捜しに行くシークエンスは、像やトラや豹が探検隊を襲ってきてまるで往年の川口探検隊みたいで賑やかです。でも、断崖絶壁を苦労して登るシーンはどう観たって海辺の断崖です!なんでヒマラヤのふもとに海があるんだよ! そしてお待ちかね金髪女ターザンが登場!どう観ても片乳は乳首を出してるとしか見えない毛皮ビキニ姿、これでほとんどの登場シーンを通してしまいます。この金髪ネエチャンは野獣と仲良しという設定なのでトラや豹と戯れるシーンも有りますけど、どう観ても生身のトラさんと絡んでいるとしか見えません。「この女優すげぇ」と驚くところですが、たぶん動物園の飼育係みたいな女性をそのまま引っ張って来て映画に出したというのが正解なのかも(笑)彼女がエッチしているのを外から覗いてすねる原人くん、この中坊あたりが妄想しそうなことをそのまま映像化しちゃう感性、これこそが香港映画の醍醐味なんでしょうね。この女ターザンも歓びを教えてくれた探検家の言いなりで原人くんをお供にして香港まで行っちゃうオツムの軽いこと、お前が軽はずみなことしなければこんな騒ぎにならなかったのにねえ。 まあこの映画に出てくるのは男も女もバカばっかりですから、女ターザンばかり責めてもしょうがないんですけどね(笑) [CS・衛星(字幕)] 3点(2016-03-05 22:18:48) |
1071. ペーパー・ムーン
《ネタバレ》 ご存知テイタム・オニール奇跡の名演、この時彼女が作った最年少オスカー受賞記録は、40年以上たっても未だに破られていない偉業です。いま観直してみると、子役としては類を見ない様な感情を抑えた演技ですが、正直そんなに上手いという印象は薄い。まあそれはあまりに自然な演技なのと、彼女の個性を100%引き出したアルヴィン・サージェントの絶妙な脚本の功績が大だと思います。実の父親ライアン・オニールとの呼吸もさすがにピッタリですからねえ。実はライアンはテイタムや弟を虐待していたと後に問題になりましたが、劇中の二人の関係はそういうライアン親娘のセルフ・パロディみたいな感じでもあります。また劇中彼女が喫煙するシーンが何度もでてきますが、どう観てもほんとに吸ってる様にしか見えません。たぶんフェイクシガレットを使ってると思いますけど、今じゃあたとえCGを使ったとしても子供が煙草をふかす映画なんて撮ったら良識派から袋叩きにされるのは必定ですよね、嫌なご時世です。 そう言えばテイタムちゃんは今はどうしているんでしょうか。彼女ぐらい綺麗に「子役は大成せず」の格言を実証してくれた俳優は珍しいぐらいです。ひょっとしたら、年齢も近くやはり子役から大女優にまで登りつめたジョディ・フォスターみたいになっていたかもしれなかったんですよ。人生とは本当に先が判らないものです。 [映画館(字幕)] 9点(2016-03-02 23:39:49)(良:1票) |
1072. シリアル・ラヴァー
《ネタバレ》 似た様なプロットの映画を観たことがある様な気がしたけど、これはこれでおフランスらしいぶっ飛びぶりが新鮮なブラックコメディです。とくに中盤、ヒロインの妹が仲間を引き連れて家に押し掛けてくるところからの超ハイテンションなバカ騒ぎは、かなり来てます。でもとにかく爆笑必至なのはあの“人間ジュークボックス”でして、冷静に考えると志村けんのコントみたいなんですが、そのバカバカしさは突き抜けています。なんせバックコーラスつきなんですから(笑) おバカ映画好きはツボが刺激されること必定な、愛すべき一品です。 [ビデオ(字幕)] 7点(2016-02-28 23:16:05) |
1073. 百円の恋
《ネタバレ》 予備知識なくこの映画を観たら、最初はこのヒロインらしき女がボクサーになるなんておそらく想像だにできなかったでしょう。この映画ではとても感情移入できないどうしようもない登場人物ばかり出てきて、見続けるのがイヤになりそうなぐらい。そしてあの100円ショップの店、とても商売が成り立つとは到底思えないけど、店内に引っ切り無しに流れているお店のテーマソングだけは妙に頭に残ります。前半は安藤サクラのぶよぶよの肉体に合わせた様なグダグダな人間模様を、音楽も使わないでダラダラと見せられている様な感じが強烈。ところが男に逃げられボクシングに打ち込みだしてどんどん身体がスリムになってくると、それに合わせるように撮り方も引き締まって来て効果的に音楽も使われてきます。これはなかなかの手腕を持っている監督だと思います。もちろん安藤サクラあってのこの映画なわけですけど、それにしてもデ・ニーロばりの肉体改造と機敏なボクサーぶりは凄いの一言しかありません。会場に向かって通路を進むときの彼女のあの表情、こんな演技が出来るのは邦画界では彼女しかいません。「安藤サクラの顔つきは、ほんとに人を殺しかねない表情だ」という本作の映画評を見た記憶がありますが、まさにその通りです。 唯一残念だったのは、新井浩文は良いとしても両親や妹まで試合を観に来させたところで、これで一気にこの映画が持っているクールさが減じられてしまった気がします。そこは1点マイナスとさせていただきます。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2016-02-26 23:41:37) |
1074. イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密
《ネタバレ》 自分にはその趣味は無いんですけど、それにしてもホモが主人公の映画ってなんでこんなに心を打たれる名作が多いんでしょうかね。製作したマシーンに早世した初恋の少年の名前“クリストファー”と名づけるなんて泣かされてしまいます。もっともこれは史実ではなく脚本家の創作だそうです、でもGJ! オスカー脚色賞をゲットした脚本もいいけど、やはりここはベディクト・カンバーバッチの好演が素晴らしいと褒めるべきで、もう彼には名優の風格さえ感じます。エニグマ解読の話は本で読んだことはありますが数学的なことはさっぱり理解不能だったんですが、そういう数学的な要素は無視してひたすらチューリングのマシーンが解読してゆくところに絞った見せかたは視覚的に判り易くなっていて良かったですね。解読に成功するところをラストに持ってくるんじゃなく、その後の秘密保持の苦悩にも重点が置かれているところもなかなか誠実な観せかただと思います。史実でもこの“ウルトラ”情報で目標都市を事前に知っていたにも関わらず、チャーチルはコヴェントリー空襲(大戦中一夜で最大の死者が出た爆撃)の際には何の情報も軍や自治体に伝えなかったそうです。だから「誰が死んで誰が生き残るか」を神のように決めてしまったと苦悩するべきなのは、本当はチューリング達じゃなくて政治家じゃなきゃおかしいんですけどね。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2016-02-24 23:05:59) |
1075. ジャッジ!
《ネタバレ》 あのキツネうどんのCMの破壊力、もう半端じゃないです(笑)コンコン、コシコシ♪っていうあのメロディが、まだ強烈に頭の中で共鳴してます。冒頭からの脱力系の展開は、なんか私にとってどストライクの剛速球でした。クライアント訪問するときまで膝小僧出した半ズボン姿のトヨエツが大傑作で、「無茶と書いてチャンスと読む」は私も使わせて頂きたい名セリフです。そう言えばかつて代理店のサラリーマンだった筒井康隆の小説に出てくる「士農工商・代理店」というフレーズを思い出してしまいました。それにしてもトヨタ・エースコック・丸井と実在企業の名を出してのパロディとは日本映画らしからぬ大胆さ、エースコックの宣伝室長なんて完全にコケにしている様な気がしますけど、怒られなかったんでしょうかね。でも鈴木京香が創ったトヨタのCMに関してはディスってる様な気がして、これがグランプリを獲るのは一種の皮肉なんでしょうかね。 監督も脚本家もCM業界の人たちなので、業界の内情はきっとリアルなんでしょう。パロっているけど広告祭の審査の内情も、実際あんなもんなんでしょうね。後半からラストに至るベタな展開はクサいんですが、コメディとしてはなかなか愉しめると思いますよ。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2016-02-23 00:20:46) |
1076. スズメバチ
《ネタバレ》 上映時間の三分の一を過ぎてようやく本題が始まるというのはなんですけど、そこに至るまでの三勢力の動きの見せかたはなかなか凝っていたと思います。冒頭で強盗一味が口笛で吹く『荒野の七人』のメインテーマは、これから現代版西部劇を見せるぞ、という監督の意気込みだったのでしょう。でもこれはプロットからいって『要塞警察』のフランス版リメイクだったと結論づけるのが相応しいです。そう考えるとカーペンターの『要塞警察』よりもテンポは良いし、けっこう愉しめるんじゃないですかね。どうせ『要塞警察』なんだから襲ってくる敵は凶悪で雲霞のごとき大量の方が景気が良いわけですけど、それにしてもあのマフィア軍団の損害は凄まじいもので、これじゃ『ブラックホーク・ダウン』の民兵ですよ。 サミー・ナセリの不活躍ぶりには驚きましたが、その分元消防士のおっさんの剛腕ぶりはこの映画で唯一のカタルシスです。ラストシーンでこの人登場しなかったけど、やっぱ焼け死んじゃったんでしょうか? [CS・衛星(字幕)] 7点(2016-02-20 23:46:05) |
1077. グランド・ブダペスト・ホテル
造りこまれた画面と箱庭のようなセット、そしてまるで人形劇の様なストーリーテリングはいつも通りのウエス・アンダーソン節ですが、たぶん本作が彼の映画スタイルの完成形なんでしょうね。けっこう単純なストーリー展開と思いきやセリフや引用される詩は凝りまくっていて、もうテイストはヨーロッパ映画です。アンダーソン映画と言えば主演はビル・マーレイというのが今までの相場でしたが、こうやって観るとレイフ・ファインズも彼の独特の作風にはピッタリな役者ですねえ。 まあこの映画は細かいことは言わずに豪華出演俳優たちのアンサンブルを愉しむのが正解でしょう。ジェフ・ゴールドブラムやハーヴェイ・カイテルなんて観ている間は彼らとは全然気がつきませんでした。そして女優陣、間違いなくアンダーソンはハリウッドいちの鳥ガラ女優マニアだと確信いたしました(笑) [CS・衛星(字幕)] 7点(2016-02-17 23:39:30) |
1078. 新幹線大爆破(1975)
《ネタバレ》 昭和の社会派犯罪映画としては屈指の作品なんでしょうね。時代が時代だけにやけに全共闘の価値観みたいなものが鼻につくところは、今の感覚で行くと暑苦しくて堪らんものがあります。とくに高倉健一味の人間関係はちょっとクサくてヤリ過ぎ感は否めないところです。主犯の沖田という男はもう健さんそのものというキャラ設定で、事業に失敗して妻子に逃げられたからと言って健さんがこんな犯罪に走るかよ、と思ってしまいます。対する警察サイドも重厚な布陣ですけど、冷静に考えると捜査の進め方はなんか杜撰で無能さが目立ちます。空港で張るにしても、ふつう沖田の顔写真ぐらい持ってくるでしょう、元嫁と子供の面通しに頼るなんて、さすがにあり得ない話です。ふつうに考えても、爆弾が解除されてないのに身代金の受け渡し現場で逮捕しようとしまうかね?ここら辺も警察権力は横暴で無能だという団塊世代的な価値観なんでしょうね。この脚本では、警察は威信のためには新幹線の乗客の安全よりも、犯人確保を優先させる組織だと言いたかったみたいです。 そして最大のドラマが爆弾が無力化される前に二次災害を防ぐために新幹線を停車させようとするところで、これは9.11のときみたいなハイジャックされた旅客機を撃墜する命令を下す決断みたいなものです。ここでも国鉄の局長を非情の鬼官僚みたいに描いていますが、いくら国有鉄道だったとはいえこれはおかしい。その指令を下すのは政府じゃなきゃおかしいし、責任を負わねばならないのは当然総理大臣のはずです。劇中では官房長官が国鉄に決断させるような展開でしたが、いくらなんでもそれは酷というものですよ。事前に脚本を全部読んだのかは知りませんが、これじゃあ国鉄全面非協力という対応だったのは当然でしょう。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2016-02-16 00:57:48) |
1079. シン・シティ 復讐の女神
《ネタバレ》 ハーディガンは幽霊となって登場するのにマーヴはピンピンしているなんて、前作を観ているともう頭が混乱してしまいます。良く考えると、ブルース・ウィリスは有名な例の映画のパロディみたいでした。でもいちばん頭を抱えさせられたのはドワイトで、ジョシュ・ブローリンはどう観てもミス・キャストです。ドワイトは警察に追われて整形したという前作のキャラと繋がっていますが、整形前と後は髪の毛があるかないかだけのような気がするんですけど(笑)あとマヌート、彼に至っては二作とも出場しているのにどっちも殺されちゃって、もう実に不思議なフランク・ミラー・ワールドです。 まあスケール・ダウン感は否めませんが、ニヒルな世界観は前作以上にエッジが効いているかなと思いました。でもなんかイマイチ愉しめなかったんですよね、やっぱブルース・ウィリスが活躍しなかったからかな。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2016-02-14 00:12:41) |
1080. スペーストラベラーズ
《ネタバレ》 まあ監督が監督だけに期待する方がムリというわけだったんですね。いかにもTV屋が撮った映画という感じでした。それにしてもジャケットやポスターではあんなに大きく映ってるのに浜ちゃんがあんな端役だったとは、もうほとんど詐欺です。そして中国語映画では目立たないんですが、金城武のド下手な演技はもう目を覆いたくなるぐらいです。ギャグネタにしても『ダイハード』やら過去のハリウッド映画のパロディみたいなものがこれでもかと続くので、もう辟易です。でも渡辺謙が人質にまぎれて脱出するところは『インサイド・マン』より6年も早いアイデアで、ここだけはちょっと感心しました。でもなんで謙さんが逃げちゃうのかはさっぱり理解不能で、どう観たってそんなキャラじゃないと思うんですけど。 観る人によって評価が分かれているラストに向けての展開ですが、二人が飛び出してゆくストップモーションなんかはまるっきり『明日に向かって撃て』のパクリですし、この監督の感性にはオリジナリティというものがあるのかと首を捻ってしまいました。スローモーションやストップモーションはヘタな監督が使うと観られないと良く言われていますが、この映画は良い(悪い?)見本です。 [CS・衛星(邦画)] 3点(2016-02-11 23:05:14) |