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かっぱ堰さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1244
性別 男性
自己紹介 【名前】「くるきまき」(Kurkimäki)を10年近く使いましたが変な名前だったので捨てました。
【文章】感想文を書いています。できる限り作り手の意図をくみ取ろうとしています。また、わざわざ見るからにはなるべく面白がろうとしています。
【点数】基本的に個人的な好き嫌いで付けています。
5点が標準点で、悪くないが特にいいとも思わない、または可も不可もあって相殺しているもの、素人目にも出来がよくないがいいところのある映画の最高点、嫌悪する映画の最高点と、感情問題としては0だが外見的に角が立たないよう標準点にしたものです。6点以上は好意的、4点以下は否定的です。
また0点は、特に事情があって採点放棄したもの、あるいは憎しみや怒りなどで効用が0以下になっているものです。

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1121.  ヘルタースケルター(2012) 《ネタバレ》 
原作の内容をわりと素直に映画化しているように見える。「みんながりりこに夢中」といっても一過性の事象なのはもちろん、そもそも賞賛している一般大衆は女子だけだったようで、しょせん同性内でしか通用しない感覚なのだろうと思われる。男子としてはこんなのに付き合ってられない、と突き放すのが常識的なのだろうが、あるいは逆に男など関係ない、と突き放されているのかも知れない。 それが劇中の男の扱いに反映されているようにも見えて、この映画ではとにかくろくな男が出ない印象がある(キンちゃんは男から除外)。うち検事の扱いが簡略化され、ただの変人のようになっているのは原作とも大きく違っている点かと思うが、主演女優のための映画であるなら主人公と並ぶ存在感のあるカッコイイ男など不要なのかも知れず、これはわからないでもない。 ほか女性キャストでは、マネージャーは彼氏との年齢差があり過ぎて不可解に思えるほどだった。この人物は見ていて不快でしかないが、こういうのに共感する女性はいるのかと疑問に思う。…かといって主人公と同一化できるわけもないだろうし、結局は女性の観客にとっての視点の置き場所は検察の事務官あたりということになるのかも知れない。この人が一番フツーの人で安心する。  ところで映像美(+音響)の面ではさすがの出来と感じられる。特に主人公の錯乱の場面では極彩色で狂気と戦慄の映像が展開される一方、なぜかバックに ”An die Freude” が流れたのはエヴァンゲリオンなみのインパクトで、わけがわからないながら妙に大喜びして一緒に歌ってしまったのは自分でも変だと思う。やはりこういうところが?この映画の真価なのだろう? ビジュアル面だけでも個人的にはまあ満足だった。 なお主演女優は主人公にシンクロしていたとのことだが、本来はこの人こそ「生まれながら」の特権保持者だろうし、モデルの寿命はどうか知らないが役者は一生モノだろうから立場は違うはずだ。また主人公の妹に関しては、映画を見るとこれはスゴイと思うが、この女優は現時点でもうかなり痩せている(元に戻った)とのことである。この人もけっこう自然体で逞しい感じなので、今後とも頑張って役者人生を歩んでほしい。
[DVD(邦画)] 4点(2014-02-23 10:16:28)
1122.  パッチギ! 《ネタバレ》 
沢尻エリカ鑑賞が目的で見た。序盤は単に愛くるしい感じを出しているだけだったが、後になって主人公とのやり取りが出ると登場人物の人柄も加えた魅力が見えて来る(終盤の「あほ!」がいい)。外見的には首から下に行くほど肉付きがいいのは目に余るものがあるが、それはまあご愛嬌というところである。この映画には続編があるようだが、沢尻エリカが出ていないので絶対見ない。 なお主人公がヒロインに電話した場面では、いきなり日本語で「キョンジャですけど」と答えたところで変に気分が高揚してしまったが、これは個人的な事情(気恥かしい記憶)によるものである。  ところで(1)死んだ若者の伯父は、役者の実年齢から推定すると日韓併合の頃の生まれであり、その後に何らかの法的手続(紙きれ)に基づいて徴発されて来たというのが本人の体験として語られている(戦後に帰らなかった理由は不明)。また(2)ヒロインの家族は、下関-徳山-大阪-京都と移動して現在に至ったことをヒロイン本人が記憶していることから、1950年代に南側から日本に渡航したと想像される(朝鮮戦争との関係か)。さらに劇中では(3)釜山から密航して来た若者も出ており、これは単に本人の意志による密入国だろう。これだけでも3パターンが出ており、つまり今いる人々が実は様々な経緯で日本に来ていることをこの映画自体が認めているわけである。 これに加えて“言語は必ずしも客観的事実を伝えるためだけにあるのではない”ということだけ押さえれば、この映画に出る日本側の責任論は、実は観客がそれ自体として真に受ける必然性のないものであり、単に劇中の若者らを隔てる障害として機能しているに過ぎないと理解することも十分可能と考えられる。 その上で自分としてはこの映画を、特殊な条件のもとでの真直ぐな青春物語として素直に受け入れることができる。兄妹それぞれの結末にも安堵して、今後を祝福したい気になった(続編は絶対見ない)。また兄妹の母親の人物像も安心感を与えてくれる。  それで評点としては、映画外の事情によりこの監督の映画を絶賛する気には全くならないので、わりと好意的である旨を示す程度の点数にとどめておく。ただ、こんないい点を付けることになると事前には全く思っていなかったので、やはり実際に見てから判断すべきだというのが実感である。
[DVD(邦画)] 6点(2014-02-23 10:16:19)
1123.  京都太秦物語 《ネタバレ》 
率直な印象としては、とにかく男二人が気にくわない。幼馴染もかなり痛い奴だが、研究者の方はあまりにもバカ丸出しで笑うこともできない。どちらも駄目な男で、観客としてはヒロインとの関係の発展が期待できない(したくない)ため、途中で今にも席を立ちそうになった。それでも他の客の邪魔になるのを避けて最後まで見たところ、ラストの場面だけは納得した。自分が泣けたわけではないが、思い当たることのある女性なら泣けるかも知れない。 ただ実は、キャッチコピーの印象からして最後にもう一つ波乱というか、もっと微妙な状態に陥る可能性もあるかと思ったのだが、何もなく普通に終わってしまったのは拍子抜けだった。この映画の性質上、これ以外の結末はありえなかったのかも知れないが。  ところで幼馴染の男が終盤、夢破れたときの滑り止め、というようなテキトーな感覚で一生の仕事を決めていたのは少し気になるが、それはまあいいとして(みんなそうだったろうから)、単純に親世代と同じく家族経営で豆腐店という前提だと、司書を目指していたはずのヒロインの夢までが消え去ることにならないか。男の方は実現困難な夢だったから断念するのは仕方ないが、ヒロインの夢は極めて現実的かつ実現途上にあり、観客としてもかなえてほしいという思いがある。地域連携映画という事情はあるにせよ、個人の志望より映画の都合(=商店街の都合)が優先するのでは、第三者の目からは理不尽に見えるので、ここは余計な不満の生じないようにしてほしかったと思う。 まあ特殊な成立事情の映画なので、あまり妙なところに突っ込まず、制作に関わった学生とともに映画の完成を喜んでやるべきなのかも知れない。しかし、そんなことまで斟酌しなくても、実は個人的にヒロイン(演:海老瀬はな)が好きになってしまったので、最終的な印象はそれほど悪くなかったというのが実態である。
[映画館(邦画)] 5点(2014-02-23 10:16:10)(良:1票)
1124.  おくりびと 《ネタバレ》 
大変申し訳ないが率直に書かせていただくと、基本的には登場人物が泣くのに合わせて観客を泣かす作りの映画と感じられる。序盤のコミカルな箇所は気に障るが、まあこういうのがないと娯楽映画として成り立たないのだろう。  ところで劇中では人間の生死に関する複数のエピソードが並列的に出ているが、そのうち映画の構成上は全編の最後、父親の遺体の場面が最重要なのだと考えられる。ここは単純な親子の情愛(和解)の表現にとどまらず、人間の“生の意味”を伝える場面、つまり子(主人公)が生きて、さらにその子(胎児)に生を受け継いでいくことが、父親(峰岸氏)の生きた意味にもつながることを主人公が悟る場面だろうと思われる。 しかし映像を見ていても“これをこうすればこう見えるはずだ”といった説明的な印象しかなく、意味はわかるという以上のものではない。鮭の遡上風景はこのラストにつながる布石ということだろうが、これも貧弱な造形物のため多少の脱力感なしには見られない場面だった。“一度きりの人生だから個人の生を輝かせなければ”という、何か強迫的にも思われる観念が一般化している今日、もう一度根本に立ち返って生の意味を問い直すはずの場面が印象的に見えていないのは、個人的にも残念に思う。  それから主人公の妻の問題発言については多くの人が唐突と感じるだろうが、これはまあ当該個人の意識の問題と取れなくもない。しかし地元在住の旧友その他の一般住民までが蔑視を当然のものとし、かつその感情を当人に向けてまともに表出することをためらわないというのはいつの時代のどこの話なのかと思う。必ずしも詳しい事情がわかって書いているのではないが、単に田舎だからで済ませられる話でもなく、少なくとも個別地域の社会事情と無関係にストーリーの味付け程度の感覚で軽々に取り扱っていい問題のような気はしない。  以上のようなことで、自分としてはあまり高く評価する気にならない。今さら何点付けようが大勢に影響はないという前提で、思い切って低い点を付けておく。
[DVD(邦画)] 2点(2014-02-17 23:38:17)(良:2票)
1125.  たそがれ清兵衛 《ネタバレ》 
まず劇中では同じ藩内の上流部だけで餓死者が出ていたようだが、これは飢饉にあっても当局は手をこまねいていたという意味のようで、民衆が苦難にあえいでも権力者は知らぬ顔、という前世紀の歴史観そのままらしいのは鼻白む。悲惨な状況でも殿様は人のよさそうな顔をして徳を語るのを皮肉に思えということなのか。一般大衆向けの映画だから権力は悪で庶民が善というステレオタイプはそのままで、ただ貧乏な下級武士を権力側でなく庶民扱いにしたというのがこの映画の新しいところらしい。世の中それほど簡単ではないだろうと思うが。   また主人公に関しては、まずは風呂くらいまともに入れと思う。不潔なのは貧しいからではなく無精なだけだろう。映画では終業直後に帰宅する理由も含め、何から何まで小理屈つけて貧乏のせいにしていたようで見苦しいが、前妻が言っていたように出世して家族の生活が楽になるならそうすればいいはずで、能力があるのにそうしないのは無気力な人間だからとしか思われず、立身出世に関心がないというのも言い訳にしか感じられない。 また主人公が再婚話を断る理由にも説得力がないのだが、それは前妻が悪妻だったのに懲りた、とはっきり言わないせいだろう。このために映画では、主人公がわざわざ不利な道を選ぶ愚かな人物と印象づけられてしまい、それならいつまでもこのまま浮かばれないだろうと突き放したくなる。そんな人間が唐突に告白などするものだから単なる馬鹿かと思うわけだが、それでいて最後は相手がちゃんと待っていてくれるというのは著しく都合のいい話である。 ほか上意討ちの場面も、全体のストーリーと無関係ともいえないが話が濃すぎて不調和に思われる。結局、登場人物の違う3つの短編から適当に切り貼りしたため辻褄が合わなくなり、統一的な理解が困難になっていると感じられる。   一方で最後はめでたくハッピーエンドになっており、その後は全てがうまく行きました、父のことは誇りに思っています、というのだから文句のつけようがない。しかし途中までは世間の厳しさを出そうとしたようにも見えていたのに、最後は結局生ぬるいばかりの世界になってしまったようで締りがなく、自分としてはどうも受入れがたいものがある。 そういうわけでいい点は付けられないが、ただし同名の原作は読めばほのぼのと涙する短編であり、できれば多くの人に読んでもらいたいものだと思う。
[DVD(邦画)] 2点(2014-02-17 23:38:13)(良:1票)
1126.  湯殿山麓呪い村 《ネタバレ》 
終始殺伐とした雰囲気で観客が共感を寄せる人物が誰もおらず、盛り上がりにも欠ける地味な映画であり、不気味な予告編も実は完全なこけ脅しである。江戸時代の呪いが現代に生きているというような内容で、戦中期に起こった事件が現代との間を中継ぎしている点では八つ墓村のような構造になっているが、出来事の間の連関が不明で運命性のようなものは感じられず、劣化八つ墓村といった印象がある。  ところで劇中の「新学説」については、劇中人物が言っていたテレビの視聴率よりも観光資源の整備に例えた方がわかりやすい。江戸時代の寺社参拝は現代でいうツアー旅行のようなもの、という話は90年代には聞いていたように思うので、この基本的な考え方自体は否定できるものではないと思われる。ただしこの映画の「協力」として、地元の村の名前が挙がっているのには正直呆れる。また実物の即身仏も映っているので寺院も撮影に協力したということかも知れないが、実在の信仰の山に対して侮辱的な内容であるにも関わらず誘客につながるならどんな映画にも協力するというのでは、この新学説の信憑性を自ら高めるようなものである。まあ当時は現実問題として拒否することなどできなかったかも知れないが、少なくとも今なら観光誘客にせよ映画誘致にせよ、もう少しまともな意識のもとで行われているものと信じたい。   なお、変に真面目な映画のため笑えるところがないのは残念だが、終盤で主人公が元恋人を殴った場面では、冒頭にあったように死んだと見せてウッソピョーンと復活するかと思ったらそのまま死んでいたのが意外だった。
[DVD(邦画)] 3点(2014-02-17 23:37:59)
1127.  人生、いろどり 《ネタバレ》 
マーケティングの観念もなくいきなり市場に持ち込むなどということをしていた時代から、農家の老婦人が端末を操作する現代までの数十年間を2時間に収めた形になっており、駆け足に見えるのは仕方ない。よく知られた「葉っぱビジネス」の話であるから新規事業の立ち上げに関わることも一応入っているが、それより現代農山村や高齢化をめぐる問題点を手際よくまとめた映画という感がある。  まず基幹農作物の低迷により、これまで家計を背負ってきた男衆が勢いを失う一方で、農村女性が力を発揮できる機会が増えたことが明瞭に示されている。特に劇中で印象的だったのは、主人公が働く理由は自分の人生を具体的に豊かにし、またその成果を愛する者と共有することだが、それが夫には理解できていないことだった。 また高齢者の生き方に関することが大きなテーマになっており、主人公の友人が途中で死去したのも悲しいというよりは、最後まで夢をもって前を向いて生きたのが幸せだったと取るべきなのだろう。最近は定年帰農という言葉もあり、自分などは農家出身の人々は死ぬまでやることがあって羨ましいと思っていたわけだが、むしろ農家かどうかを問わず人間は死ぬまで働き楽しむ機会が与えられていると解すれば、これは高齢化社会全般に通じるメッセージともなる。逆にその点で、農山村の生活にこそ人間本来の生き方があるといえるのかも知れない。 ところで劇中では仲卸のお嬢様がとにかく不快で、こんなのが嫁入りする話にするくらいなら、主人公のところの働き者の嫁さんに早く子どもを作らせろと思っていたのだが、最後はちゃんと腹が大きくなっていたようで喜ばしい。ただ主人公が樹を植える話に関しては、申し訳ないが一般論としては悲観的にならざるを得ない。次世代の者の進路を縛るわけにもいかず、また劇中の新ビジネスのようなものがよほどの所得を生まない限り、食っていけない場所に人は住まないということだが、まあそれを何とかするためにもこの映画が作られているわけである。   なおこの映画を見ていると、出演女優が何歳になっても年齢相応の役を務めているのに感服する。特に佐々木すみ江氏は相当の年齢だろうが、それでもできうる限り役者人生を続けていこうとされている姿は、この映画のテーマに照らしても鑑になるものと感じられる。
[映画館(邦画)] 6点(2014-02-17 23:32:36)
1128.  劇場版 フランダースの犬 《ネタバレ》 
そもそもこの話が本国で知られていなかった理由として、要は外国人作家がアントウェルペンの街を悪く書いていることに反発があり、地元で翻訳が出なかったからだとする論考を読んだことがある。それはわかるが、だからといってそれだけで無情なベルギー社会のイメージが好転するわけでもない。こんな情けない奴は死んで当然、というのが向こうの常識だそうだが、その割に観光客が多ければ客寄せの銅像だの記念碑だの建てるというのではますます現地の印象が悪化する。金を持っていれば異教徒でも絵を見せるのだろうし。 そのように嫌味を書きたくなるのも、このお話を見た後のやり切れなさを何かへの攻撃に転化しなければ気が済まないからだが、そういう者がいると知ってか知らずか、この映画ではエンディングで地元の政府・行政機関の名前が目立つようにクレジットされているので渋い顔にならざるを得ない。  ところで内容の方は皆さんご存知のとおりであり、自分としては初めから先が見えているので、前半部分で今は春と言っているのを聞けばクリスマスの悲劇を思って心に痛みを感じるし、また中盤で隣家の婦人が転居する場面では寒々とした風景も相まって、主人公の周囲から暖かさが失われていく予感がひしひしと寄せて来る。結局はマリア様も全ての人を救えるわけではなく、せめて死ぬ時になって祝福が得られただけでも幸せに思えということなのだろう。どうせ世の中そんなものだということだ(泣)。 それからこのお話では、少年に対する少女の思いの中に絵の才能への敬意も含まれているように感じられる。原作を読むと、コンクールへの応募は貧富の差をなくするために鉛筆画か木炭画が条件になっていて、この映画のように資産家の子弟が有利に決まっているというわけでもなかったらしい。今の目であらためて見れば少女の父親がどういう立場なのかもある程度わかり、芸術家としての才能が認められさえすれば越えられない身分差があったわけでもないと思われるのが悔しい。  なお最初と最後の修道女に関して、DVDのチャプター12の名前が「そして20年後」と書いてあったのは驚いた。もうそんな歳(9+20)になってしまって、一生そのままでいるつもりなのか。いつもそばにいる、とか思い込んでいたようだが、ネロもパトラッシュもおじいさんも、彼女の世間並みのしあわせを望んでいるのではないのか。本当にそれでいいのか。
[DVD(邦画)] 6点(2014-02-17 23:32:32)(良:1票)
1129.  手紙(2006) 《ネタバレ》 
たまたま原作を先に読んでしまったので、映画だけ見た場合にどう感じるかがわからなくなってしまった。そもそも原作の内容がすっきり頭に入っていないので何ともいえないところがあるが、原作の骨格はきちんと残す一方で、兄弟や家族の情愛に重点を置いたように見えるのは映画的には正しいのかも知れない。 ただ物語の前提になる加害者家族への悪影響について、住居への落書きやネットの書込みといった即物的で単純な悪意として表現していたのは安易に感じられる。また勤め先の会長の発言も、全部を台詞にはできないにしても説明不足になっており、理不尽なことをただ甘んじて受入れろと言っているかのようで素直に受け取れない。劇中では、世間の人々が犯罪者から距離を置こうとする原因として、「自己防衛本能」という言葉とともに親の心情(元彼女の父親と主人公本人)の例が挙げられていたが、それ以外にも悪意によらない排除の作用が働くことを観客がちゃんと納得できたらよかったがと思う。  ところで主人公の妻になった人物について、当初は主人公がこれほどの超絶美形女子に全く見向きもせず、別人に気を取られていたのは非常に不自然に思われる。他の映画でも似たようなことがあったので、やはりこの女優が出ると否応なしにそうなってしまうのかも知れないが、まあそれでも男連中が地味に見える分、この人がこの映画の華になっていたのは間違いない。個人的にはそもそも沢尻エリカ目当てだったこともあり、原作既読の立場としても、この人がいなければあえて映画を見る必要はなかったという気までする。 ほかに原作との関連で非常に落胆したのはバンドのはずが漫才になっていたことだった。映画化に当たって各種事情もあったのだろうが、いくら何でも漫才ではちょっと格好がつかないではないか...とは思ったが、しかし終盤でこの設定が最大限に活かされていたことは認めなければならない。これは完全にやられた。ラストで見事に泣き笑いさせられてしまった点についてだけは間違いなく原作を超えていたといえるかも知れない。
[DVD(邦画)] 5点(2014-02-17 22:53:15)(良:2票)
1130.  天使の卵(2006) 《ネタバレ》 
まずは女優二人の姿に心を奪われる映画である。序盤では沢尻エリカが圧倒的に可愛いので、何で主人公が小西真奈美の方に惚れるのかがわからず、その行動が完全に意味不明になっている。しかし、だからといって小西真奈美が劣るかというとそうでもなく、主人公に告白されて目を丸くする表情などは切なくなるほど愛らしい。また終盤で毛糸を選んでいる姿も優しく美しいのだが、ただしこのあたりになると見ている側がストーリーに乗り切れず、冷ややかな気分になってしまっているのが残念である。 一方で、普通に考えれば困難なはずの選択を迷いなくやっている主人公は馬鹿で常軌を逸したように見えており、何でそこまで一途になれるのか気が知れず、それも芸術家気質のせいだと言い訳されているとすれば腹立たしい。また突然大声になるのがやかましく、うるせー怒鳴るなこの馬鹿と何回口に出したことかと思うが、そのうちこの男の発声自体が問題なのではないかと苛立たしく思われて来る。  ところでストーリーは原作(及び続編)と必ずしも同じでないわけだが、ラストが結局どうなったのかは見ていてよくわからない。残った二人がしあわせの道を歩み始める予感を残したようにも見えるものの、妹の方は単に姉の存在を絵の中に押し込めて安心したかっただけのようであり、また主人公としては絵を描くこと自体が最終目的であって、死人の方は既にどうでもよくなっていたのではないかとも見える。最後はどうせもう他人事だから勝手にしてくれという気分だった(絵も美しくない)。 そういうことでとても共感できるお話ではないのだが、それでも映画としての印象がそれほど極端に悪くならないのは結局、小西真奈美と沢尻エリカが極めて魅力的に見えていたこと自体によるものと思われる。主人公の男がいなければさらによかったが。  なおラスト近くで、妹がお下がりを着ると姉を思い出す、というような台詞があったが、この姉妹ではサイズが合わないのではないかと思われる。この映画を見ていても、小西真奈美は細身の上に小顔で、実際より高身長かつ可憐に見えるのが印象的だった。
[DVD(邦画)] 4点(2014-02-17 22:53:10)
1131.  がんばっていきまっしょい 《ネタバレ》 
この映画がいいと思う理由が自分でもよくわからないのだが、要は懐かしいということだろう。美少女系の人物でも垢抜けないように見えるのは、いかにも当時の(地方の)高校生らしい。 何ということもない高校時代の一年半でも当人にとっては結構長いわけで、春の柔らかい日差し、夏の海と島、晩秋の寒々とした艇庫、冬の街と、季節に応じて見える風景が変わっていたが、その間に登場人物の心持ちもずいぶん違ってきていたはずである。それを成長と呼ぶには大げさだが、それでも月日とともに何かが確実に変わり、その後の人生を変えていくのも間違いないことである。 映画のラストは原作の本編そのままで、何かあっけない幕切れのようでもあるが、しかし現実の人生に途中の終幕はないわけで、この後も主人公のストーリーは続いて行く。その一部を切り取っただけのものであっても、それが多くの人の思いの受け皿になりうるのであれば、それだけで価値ある映画といえるのではと思う。 ただし個人的に残念なのは、自分は劇中人物のようにバカになって一生懸命何かに取り組んだ経験がなく、何か他人の青春を眺めている気がすることである。こんな時代にもう戻れないのはもちろん、自分にとっては人生で実現できなかったこと、人生の欠落箇所を今になって指摘されたようで切ない。この映画を見て自分のことのように感じられる人々が羨ましい、というのが率直な感想だった。 以上、純粋に映画だけでなく原作の印象が混じっている気もするが、映画独自で評価できる要素としては、映像面とともに音楽の存在が大きいように感じる。  なお昔話になるが、学生時代に誰かが学内のボート競技大会(自由参加)に応募したため自分も駆り出され、全員素人ながらそこそこ練習して本番に臨んだが、一回戦で誰か(おれではない)がシートを外してしまって、そこで終わりになったのが思い出される。実際にボートを漕いだ体験は自分とこの映画をつなぐ貴重な接点になっているが、その場所は先の震災で被害に遭い、漕艇部の艇庫などはもう別の場所に移転してしまったらしい。
[DVD(邦画)] 8点(2014-02-03 20:31:26)(良:1票)
1132.  江ノ島プリズム 《ネタバレ》 
主要人物の3人はそれぞれいい雰囲気を出している。前半はずっとコミカルな展開が続き、とぼけた感じの主人公に友人2人が突っ込むのがユーモラスで、ギャグのセンスもいいので気持ちよく笑える。それから何といっても地縛霊の今日子ちゃんが清楚で可憐で真面目で超かわいいのが感動的で、他の3人には申し訳ないがこの映画のベストキャラに思われる。花火の場面でこの人が喜んでいたのは観客としても嬉しかった。ほかオカルト研顧問の教員(吉田羊)も、端正な顔立ちながらけっこう笑わせる。 また物語の内容としては、劇中では「デロリアン」という言葉も出ていたが、時かけファンの自分としては「時をかける少女」との類似性が強く感じられる。女1人男2人の組み合わせは基本的な共通点だが、特に無邪気な三角関係がやがて崩れる展開は2006年アニメ版を思わせるものがある。一方で劇中の「タイム・プリズナー」という言葉は、1983年版風にいえば「時の囚われ人」とかいう表現になっただろうが、あるいは同作に出る「時の亡者」そのままの意味かも知れない。   ところでこの映画で非常に残念だったのは、修太の行動が引き起こした現象が納得できなかったことである。これは1983年版の最後にある“記憶のない再会”を再現するための設定だろうが、旧作では理解可能な理由で人為的に記憶を消去していたのに対し、この映画では自然の摂理で起こることにしたのは若干の無理が感じられ、またその自然現象が駅の場面でタイミングよく、かつ時間差をつけて起こっていたのは都合良すぎである。 それからその“記憶のない再会”の場面も実はよくわからない。ここで修太が拾ったプリズムの三面は幼なじみの3人の本来の姿を象徴していたわけで、そのことを他の2人も修太自身も知らないというのが哀しいのだと思われる。それならそれでいいのだが、青春映画に求められるのはやはり恋愛感情に基づく切なさだろうし、少なくとも個人的には泣けない場面になっていたのが大変遺憾である。これは女子の立場でミチルに感情移入すると泣けるのだろうか。 ただそれとは別に、せっかく心の通じた今日子ちゃんが修太に忘れられてしまったことの方は確かに切なく感じられ、男子にとってはこっちが本筋かとも思われる。とにかく自分としてはこの今日子ちゃんがかわいそうで仕方ないのだった。
[DVD(邦画)] 7点(2014-02-03 19:57:27)(良:2票)
1133.  口裂け女2 《ネタバレ》 
映画のもとになった都市伝説はリアルタイムで知っているが、すでにそれなりの年齢だったため怖いと思ったこともなく、最初から笑いを含んで語られる話のように思っていた。しかしこの壮絶な映画を見てしまうともう笑えない。自分にとってはこの映画で、口裂け女というキャラクターのイメージそのものが一変してしまった気がする。 劇中では不可思議な現象も起こるものの、あからさまに超自然的な要素を導入することはなく、基本的には現実世界の出来事のまま最後まで引っ張っていたように見える。冒頭と末尾のキャプションを見れば、この映画で描かれたのは空想世界の口裂け女の誕生とも、あるいは現実世界の都市伝説の起源とも解することができるが、特に劇中さかんに出ていた噂話は、このように陰惨な事件まで無責任な都市伝説に仕立て上げてしまう人間社会の無情さを訴えているように感じられた。  ところで、主人公は見ていて可愛い。最初の方の気恥かしい展開は狙ってやっているわけだが素直に乗せられてしまい、その後の場面が痛々しくて見ていられなくなる。主要人物のほとんどは実質的な被害者であり、最初の凶行に及んだ馬鹿を除いて本質的な悪人はいないように思うが、特に姉の夫はどうやら本当の善人だったらしい。この男が同居しようと言ってくれたところが最後の救いだったのかと思ったが、よく見るとわずかの差で間に合っていなかったようだ。主人公が題名の姿になるのはラストの一瞬だけだが、この場面の表情を見てもなお可愛いというか、自分としては彼女が哀れで愛おしく感じられた。多分、父親の立ち位置から見ているからだろう。  なお、メイキング映像で主演女優が普通に笑っているのを見るとほっとする。本人が歌う主題歌も結構きつい内容で、久しぶりに心が痛い映画を見た気がした。
[DVD(邦画)] 9点(2014-02-03 19:57:19)(良:3票)
1134.  洋菓子店コアンドル 《ネタバレ》 
色彩豊かなスイーツの映像だけでも心なごむ映画と予想するわけだが、実際見ると主人公があまりに破壊的な人物のため事前のイメージが砕かれてしまう。 とにかく感情制御に問題があって、自分の心の安定を保つためには客観性も常識も思いやりもなくなるらしいのが大変なところである。特に怒りの抑制が困難らしく、些細なことでも心に収められずにその場でバランスを取ろうとするので大ごとになってしまう。元彼が本気でものを言っているのに笑い飛ばそうとした態度には、さすがに自分としても(実在の人物を思い出してしまって)腹が立った。これまでずっとこんなのを相手にしていた海くんが哀れでならない。 これでその他の条件(主に見た目)がどうかによっては見るのも考えるのも嫌な奴ということになるだろうが、幸い主演女優のおかげでまだしも愛嬌があるのが救われる。劇中ではこの人と元彼・店のシェフ・嫌味な先輩・伝説の男とのやり取りがそれぞれ見所になっていて、専らこのキャラクターの存在が映画全体の価値を決していたように思われた。初回はともかく2回目に見ると彼女の言動には笑いっぱなしで、次第にこの主演女優も好きになって来た気がする。  一方でストーリーとしては緩い感じになっており、娘にケーキの作り方を教えたいと思ったことが何で復帰の動機になるのかとか、要は復帰すればいいのであって元妻とよりを戻すことまで考える必要がどこにあったのかとか細かいことはいろいろあるが、まあ大体のところでいいお話だったのではないかと思われる。 なお常連さん宅にケーキを届ける場面では、常連役の女優の普段のイメージとの関係もあって“この人がこんなことを言ってくれた”と少し感激する思いだった。ただこのケーキを作ったのは主人公ではなかったはずなので、ここは彼女に奮起を促したエピソードだったということだろう。
[DVD(邦画)] 7点(2014-02-03 19:50:39)(良:2票)
1135.  陽気なギャングが地球を回す 《ネタバレ》 
見栄えがいいのはわかるが面白くはない。外見が派手なばかりで中身はダイジェスト感が強く、登場人物に肩入れしたくなる前に映画が終わってしまう。その割に何度も出る偽?警官とか上司のコントとかTVレポーターのコメントとかどうでもいいのがうるさく感じられ、またラストの種明かしなどはバカ丸出しのように見えている。唐突な海外ロケは必要性が不明だが、もしかするとこれで地球が回っているのを表現したかったということか。エンドロールを見て、"U.S.Unit"を含めこれだけ多くの人間が動いているのだと思うと映画制作というものが空しく感じられる。  なお原作を読んでみると面白かったので、映画の方をさらに△1点とする。原作にないエピソードまでがダイジェストのように見えているのはどういうことか。
[DVD(邦画)] 1点(2014-02-03 19:50:27)
1136.  ザ・フライ2/二世誕生 《ネタバレ》 
前作までは移動のための機械を開発していたのに対し、今回は生物工学的に使うことになっていたのは新しいアイデアである。前作の ”FUSION” からの発展だろうが、あるいは以前からずっと化物製造機でしかなかったのをやっと開き直って認めたかのようにも見える。  問題のハエ男に関しては、前作もそうだがそれ以上にハエには見えない。制作側が好き勝手なイメージを膨らませて作ったとしか思われず、これなら旧作のハエそのままの頭の方がまだましである。また人間の時に多少の人情味があったとしても、ハエ男になったとたんに主人公自身が残虐行為をするのでは全く共感できず、イヌ(黒い方)の頭をなでて見せるくらいでは説得力が皆無である。特に今回は、主人公がめでたくただの人間に戻って恋人と結ばれるはずなのだろうが、女にとってはPTSDになりそうな場面が連続し、それでも元の関係に戻れるほど人間の愛情など強くないだろう。  ただこの映画で唯一ほめられるのは、第1作の ”The Fly” (1958)からこの映画に至るハエ男シリーズ5作の中で、ヒロイン(妻を含む)の外見が個人的に最も好みだったことである。
[DVD(字幕)] 4点(2014-01-27 21:37:31)
1137.  ザ・フライ 《ネタバレ》 
初見はTV放送で、20年以上前だろうが強烈な印象を残しており、”BRUNDLE, SETH”という電話帳のような言い方や”BRUNDLEFLY”という単語など、些細なことをはっきり憶えていた。その割に残酷描写の具体的内容は忘れていたが、これはあまりにグロいので記憶を封印していたのだろうと思われる。  今回あらためて見てみると、初見時とほとんど同じ感想である。まず序盤で悪役と思わせた男が最後に献身的な働きをするのが不自然に思われるほか、特にヒロインがなんで自ら好んでハエ男に関わろうとするのかがわからない。たとえ記憶が残っていても容貌と性格が違えば別人にしか思えないだろうし、それでも強い思い入れが残るほど長年連れ添ったというわけでもない。最近出来たばかりの男女関係でこの話を作るのは少々無理があるのではないか。遅くとも悪夢を見た時点で決別すれば何の問題もなかったものを、わざわざ妊娠したと告げに行き、その帰りにハエ男に話を聞かれてしまうという展開が極めて作為的である。残念ながらこの二人のラブストーリーに関しては全く納得できない。 ただ一方で、主人公の男がもともと愛すべき人物であり、その境遇が哀れに感じられたこと自体は間違いなく、これも初見時と同じ印象だった。全体としては好きになれない映画だが、この点だけは評価したい。  なお終盤の蛮行では被害者の顔を狙わないで済ませたことからすると、これでまだしも穏健な映画だったとも思われる。
[DVD(字幕)] 5点(2014-01-27 20:49:04)
1138.  蝿男の呪い 《ネタバレ》 
ハエ男シリーズの3作目である。1965年にもなってまだ白黒かと思うが、同年の「大怪獣ガメラ」も白黒だったので他人のことは言えない。 場所がケベック州モントリオール(の周辺)というのはこれまでと同じであり、Delambreというフランス風の名字も引き継がれている。今回は基本設定との関係もあって第1、2作の経過が忠実に踏襲されているわけではなく、家族の個人名も違っているが、しかし基本的には第1作を祖父の世代として今回は孫世代までが出ており、1作ごとに世代交代しているのが律儀である。その間次第に研究が進展している印象はあるが、さすがに3世代にわたってもまだ完成せず、依然として化物製造機にとどまっているとなると家系そのものが呪われた雰囲気も出て来る。加えて遺伝的性質が世代を超えて受け継がれていくという設定は、リメイク版の ”FUSION” を先取りしたもののように感じられる。 一方で転送機に関して特に新しいアイデアはないが、機械そのものが不備なこと(それでも人間で実験しないと気が済まない)、及び当初からのネタである物体の融合とか統合の失敗とかが材料として豊富に使われており、映像面はともかく内容の禍々しさはリメイク版にも匹敵している。またドラマ部分についても、新婚の夫婦それぞれに秘密があり、最初は妻の方が変かと見せておいて実はどっちが変だかわかったものでない、という展開は少し工夫が感じられる。 劇中ではハエ男はもちろん(第2作の写真のみ)ハエさえも出ず、新旧各2作の間に挟まって番外編的な印象もあるが、これはこれでハエ男シリーズのまともな一作として数えていい気がする(個人的利害に関係ないのでどうでもいいが)。  なおラストでは続編を匂わせるキャプションが出るが、呪いの家系は断たれてしまったので、これがどうすれば次回に続くのか想像もできず、さすがにこれはもう終わりだろうとしか思えない。
[DVD(字幕)] 4点(2014-01-27 20:49:00)
1139.  蝿男の逆襲 《ネタバレ》 
むかし怪獣図鑑などで慣れ親しんだハエ男の写真(ヴィンセント・プライスと一緒に映っている)は、前作ではなくこの続編の方だということがわかった。より本物に近いようだが頭がでかすぎて、中の人が大変そうな感じに見えている。  内容に関しては、古い映画のためか浮ついたところがなく真面目に見える。当初は陰謀含みのサスペンス調かと思ったが、結果的にはそれほど大した話に発展するわけでもなく、要はモンスターに殺される悪人を準備するための設定だったと思われる。 また物質転送機については前回と同じ構造だろうが、今回は転送の過程を分解と再生の二段階に分けて説明しており、これは原作に出ていたような、時間差をつけての融合をやってみせるためのことだと思われる。しかし基本的には“前回やり残したことをやってみました”というだけの内容であり、それも何の工夫もなしに同じ過程を再度行うのではさすがに考えが足りない。さらに本来は人類史に残るはずの偉大な発明の成果が、今回はただの化物製造機にしかなっていないのは情けない。  ところでハエ男が生成してしまった後の、人間としての意識の所在が前回と異なっているのは新しい趣向である。今回はハエ男が明らかにモンスター扱いになっており、相手が悪人とはいえ劇中で二人も惨殺しているが、頭が完全にハエだったのなら主人公が道義的な負い目を感じなくて済むことになり、これはハッピーエンドのためには都合がいい。この点はリメイク版より配慮が行き届いていると感じられる。 一方で、ハエにならなかった右手だけが人間としての情を示していたりするのは微妙な表現である。今回はヒロイン役が若い独身女性のため美女と野獣的な人員配置になり、美女の寝室にハエ男が忍んでいくなどという場面もあったりするが、これほど衝撃的な事件をものともせずに最後は若い男女がめでたく結ばれるという能天気な結末は、後のリメイク版の先駆けかとも思われる。  なお劇中の悪人(悪徳業者)の本業が葬儀屋だったのを見ると、北米にも「おくりびと」的な偏見があったのではないかと疑われる。
[DVD(字幕)] 4点(2014-01-27 20:48:57)
1140.  白夜行 《ネタバレ》 
まず主人公の出身地に関して、劇中に出た首都圏の某県某市にそういう感じの場所が存在するとは思われない(あったら謝ります)。本物の地名を出してしまってはちょっと洒落にならないのかも知れないが、2人の境遇が現実にありうるものとして納得するには日本国中どこでもいいとはいえない。 また主に前半で登場人物が変にマンガ的なのは苛立たしい。男子高校生の引き起こす騒ぎはバカバカしく、また川島江利子の顔をわざとらしく汚したりするのでは真面目に見るのがつらくなる。これが映画的表現というものだろうか。 それに加えて被害者になる人物がことごとく不快で、あえて観客の同情を妨げているようなのはどういう意味か。川島江利子や篠塚一成もそうだが、特に栗原典子(原作の西口奈美江に相当)の独白は吐き気を催す。もしかするとこれには主人公2人の心境を観客に体験させる意図があって、“こういうバカは破滅して当然”という感覚を共有しろというなら確かにそのような効果はある。しかし原作では特別扱いだったと思われる篠塚美佳が映画ではただの被害者のように見えたこともあり(この人だけはかわいそう)、結果として主人公2人の非情さばかりが強調されたように感じられる。 ほかストーリーとしては、終盤で元刑事と亮司が唐突に泣かせる場面を演じる一方で、雪穂の方はますます調子づいていく方向性が示されていたようである。これから一人で真っ暗な中をご苦労様ということだろうが、どうせこの女なら何とでもするだろう、という突き放したような感情を催すので、どこに悲哀を感じればいいのかわからない。あるいは悲哀など感じなくてもいいのか。 なお個々の場面を盛り上げる背景音楽は、観客がここでどういう感情を持つべきか丁寧にリードしてくれているのだろうが、少なくとも個人的には全く共感できずやかましいばかりである。特に終盤は「砂の器」並みの感動の押し売りが気に障る。   違和感を覚える点としては以上である。原作と違うのが悪いともいえないが、だからといって映画ならではの効果を挙げているとも感じられないのは困る。ただし全体としては長大な原作をうまくまとめたようでもあり、また映画を見た後に原作を読んでも、雪穂は堀北真希が演じたイメージで全く問題ないと思えたので、キャスティングとしてはよかったかも知れない。
[DVD(邦画)] 4点(2014-01-13 18:27:54)
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