1141. 暗黒街の弾痕(1937)
《ネタバレ》 なるほどね!確かに運命は惨酷だ!何の罪も犯しちゃいないのに、犯罪者扱いされるわ、愛する女も最後はあんなことになってしまうとは、何だかこれ、どこかで観てる?こっちのが先だろうけど「俺たちに明日はない」に似ている。最後、森の中に逃げ込んだ二人、ヘンリー・フォンダに抱かれている妻が言う一言「あなたともう一度生きたい」この台詞、男なら誰もが言われてみたいと思うに違いない。 [DVD(字幕)] 7点(2008-01-06 17:56:03) |
1142. 社長漫遊記
《ネタバレ》 娘に子供が生まれておじいちゃんになった森繁久彌の社長さんがおじいちゃんと言われるのは嫌でという始まりで、その後は会社の中で英語で話す。日本語は禁止だの、そしたら今度は「社長」という呼び方も駄目だのとあれこれ文句を付けたりと、そんな状況においても相変わらずマイペースを崩さない三木のり平、やっぱりこの人、日本映画史上、最高に笑える人間かもしれないと思う。それはそうと前半は面白いものの、後半はあんまり面白くないというのは、このシリーズの特徴なのかもしれない。今作も途中からは会社の経営について、ライバル会社との戦いが繰り広げられる。どうもその人間模様にしても、もっとハチャメチャにやって欲しい。また、フランキー堺の変てこな外国人役にしても、この俳優は絶対に主役を張る人間である。脇役では輝かない。持ち味が発揮されないのだ。ストーリーよりも出ている喜劇俳優の演技で見せる作品ではあるが、フランキー堺を生かしきれてないのがどうも気になる。あと、今回の作品では司葉子も見られないのが残念でもある。 [DVD(邦画)] 6点(2008-01-05 16:52:53) |
1143. レディ・イヴ
《ネタバレ》 やったあ!前から観たくて観たくてたまらなかった映画の一つで、近所のレンタル屋さんにはないからDVDで買うしかないと思っていたら何と500円で売ってるのを見つけて買ってきた。期待通りの面白さでした。まず何と言っても前半の船上でのやりとりが可笑しくて可笑しくて、何だか思い出すだけでまた笑えてくる。そのぐらい面白い。ヘンリー・フォンダのズッコケぶり、そんなヘンリー・フォンダを誘惑し、自分の部屋へと誘っておいて、靴を履かせるシーンにおけるバーバラ・スタンウィックの色っぽいこと!その時のヘンリー・フォンダの頭をなでまわすシーン、本当に笑える。そして、後半は後半でイヴへと成り済ましてのバーバラ・スタンウィックの凄さ、結婚式を終えた二人の列車内での粋な会話、更にドダバタ喜劇的な要素をたっぷりと混ぜてのテンポの良さ、最後の落ちも決まってる。粋な会話と見事なまでのドタバタ喜劇的な展開にあっという間に終わってしまった気がする。こういうコメディ、今は撮れないのかなあ?それにしても、ヘンリー・フォンダがここまでのズッコケ演技を見せてくれているとは、物凄く新鮮でもあり、本当に楽しかった。 [DVD(字幕)] 9点(2008-01-04 18:29:40) |
1144. 猫と鰹節
森繁久彌を筆頭に三木のり平、森川信に伴淳三郎と日本を代表する喜劇俳優が揃いも揃っての犯罪喜劇とくれば、面白いに決まってると思うのだろうが、あれ?何か思ったほど面白くないぞ!いや、けして、つまらないわけではないし、それなりに楽しむことは出来た。でも、やはり物足りない。一人、一人の存在感は相変わらず凄いし、演技も観ているだけで楽しめる。しかし、肝心なストーリーがいまひとつ!犯罪映画にしては間が抜けていて、緊張感はないし、何だか中途半端にあばれ放題の最後もぱっとせず!これだけの凄い喜劇俳優を揃えていながら勿体無い。 [ビデオ(邦画)] 6点(2008-01-02 22:26:37) |
1145. カビリアの夜
《ネタバレ》 ジュリエッタ・マシーナ演じる主人公、どこまでも悲惨なことの連続!冒頭で行き成り、金を奪われた挙句に河に落とされ、それでも落とした相手を憎もうともせず、愛し合った男にはお金を持ち逃げされるわ、とにかく不幸の連続!ここまでされて、流石に涙するそんな彼女だが、これから先の人生を見つめて生きようとする。進んでいく姿、前向きに捉えて、笑っているラストの表情に人生に対する希望というものを感じる終わりに、単なる不幸なだけのドラマではないと、この映画を見て思いました。 [DVD(字幕)] 7点(2008-01-02 18:26:49) |
1146. ラヴソング
《ネタバレ》 ラヴソングって、何だかタイトルだけを見ると何や、甘たるい恋愛ものかと思っていたらとんでもなかった。何と言う心憎い演出でストレートに泣かせてくれる。やるな!香港映画!こんなにも素晴らしい映画が香港映画の中にあったとは知らなかった。この映画、冒頭のあのモノクロの駅のシーン、この最初のシーンを最後になって、もう一度繰り返されるのだが、それが物凄く効いてきます。同じ頃、香港へと出稼ぎにやって来た若い男女二人の十年越しの愛、遠回りであったものの、二人の恋が実ったことを表すシーンが映像と共に迫ってくる。作品のスタイトルとしては完全なメロドラマである。この映画の中でも何度となく流れてくるテレサ・テンの歌声と映像、そして、そんなテレサ・テンの死を知らせるニュースを街頭テレビで見ている二人が見せる表情が素晴らしい。二人の思いがここに象徴されている素晴らしいショットだ!このシーンについて語らせてもらうと、もう、二人が抱き合ったりしなくても愛し合っていること、二人の恋が実ったことが伝わるのだ。下手な映画、例えば今の日本映画だったら、ここでぐたぐたと言葉を交わしたり、抱き合ったりするものだが、この映画はそういうことをしていない。そんなことなどしなくても十分、二人が十年越しの愛を実らせたことが解る素晴らしいシーンだ!ここで終わりと思わせておいて、ラストにあの冒頭の駅のシーンを持ってくるというこの何とも気の効いた心憎い演出!マギー・チャンのラストの微笑みは、いつまでも頭から離れなくなりそうです。 [DVD(字幕)] 9点(2008-01-02 10:40:09)(良:3票) |
1147. 猫と庄造と二人のをんな
うわぁ~噂には聞いてはいたけど、こりゃ、何という豪華な顔ぶれ!森繁久彌に三木のり平、山茶花究と日本を代表する名喜劇役者が勢揃い!更に演技力抜群の山田五十鈴に浪花千栄子、そして、そして、そんな豪華な顔ぶれの中にあって、香川京子!こんなアクメ顔の香川京子、全編のほとんど水着姿で思い切り笑ってるあの顔、なんなんだ!あたしゃ、もう、見ていてクラクラしっぱなし!そんな香川京子の身体を撫で回す森繁久彌めっ!くそう~羨ましいぞ!にじばぶさんが書かれてるけど、これは人間の本質を捉えていて、人間と猫との大きな違いを喜劇役者達の名演技で見せてくれる。人間なんて、いかに愚かな生きものなのだろう!この映画を見ると理性というものを抑えきれない人間のだらしなさ、まるで川島雄三監督の喜劇でも見ているような感覚に陥る。それにしても香川京子ですよ。あの顔、たまらんわ!あの大きな口に噛み付きたくなる。森繁久彌が何とも羨ましいたらない。 [ビデオ(邦画)] 8点(2008-01-01 12:12:03) |
1148. 王将(1948)
《ネタバレ》 阪東妻三郎、この俳優を見ていると役者とは何か?それを超えて一人の人間とは何か?って考えさせられる。同じような役者に今は亡き名優、渥美清という人がいる。この二人の共通点、それは言葉のトーンで泣かせることの出来る俳優であって、言葉の奥に秘められた感情表現の仕方、演技、身体全体から伝わってくるユーモアと優しさの全てを持った正に名優中の名優!それが阪東妻三郎という俳優であると言いたい。この映画の主人公、坂田三吉などその典型的人間味溢れる男の中の男!「無法松の一生」の富島松五郎と同じで、阪東妻三郎の男粋、優しさが画面全体を通して伝わってきて、もう、そこにいるだけで泣けて泣けて仕方がないぐらいだ!将棋のことしか頭になく、自分の大事な妻と娘のことをほったらかし状態にしてしまうほどの大の将棋バカであるそんな三吉が将棋など辞めると将棋の駒を投げ捨てる場面で落ちた王将と書かれた駒を拾う妻、水戸光子の演技も素晴らしい。夫の為にと尽くす姿、そこには夫と妻という夫婦の絆が見事に描かれている。そして、再び将棋の世界へと足を踏み入れた三吉がどさくさ紛れに放った手で勝利し、それを見ていた娘(三条美紀)に勝ちさえすればそれで良いの?と涙ながらに訴えかけられるあの場面、どこかのプロ野球チームの関係者全員に聞かせてやりたい!そんな娘の涙する姿に自分が間違っていたと涙する三吉!そんな三吉が関根名人の祝いの会で関根名人への思いを打ち明ける場面と、大阪に残してきた妻がもう、命は短いと解りながらも電話の受話器を持って一生懸命と妻に語りかける場面なんて、見ていて眼の前が涙で雲ってしまうぐらい本当に泣けてやばかった。これは単なる男と男の闘いのドラマではなく、それ以上に人間ドラマとして、素晴らしい大傑作の名に相応しい映画である。文句なしの満点です。 [CS・衛星(邦画)] 10点(2007-12-31 12:18:06)(良:3票) |
1149. アルカトラズからの脱出
《ネタバレ》 監督、ドン・シーゲル、主演にクリント・イーストウッドの「ダーティ・ハリー」コンビによる脱出劇!しかも、作り物ではなくて、実話を元に描かれている。その画き方が何とも丁寧にじっくりと描かれているから凄い。絶対に脱走不可能と言われている刑務所の中でのドラマにじわりじわりと張り詰めた緊迫感、緊張感漂う作品になってます。クリント・イーストウッド演じる主人公と親しくなった絵を書くことの好きな囚人が冷酷な所長の手によって、書いた絵を取られておかしくなる姿が何とも痛ましい。刑務所の中でたった一つの楽しみであるはずの絵を書くことへの自由を奪われた彼のあの変貌振りは人間の狂気、やるせなさを描いているし、また人の自由を奪う冷酷な人間の姿がじっくりと描かれていて感心させられる。物凄いアクションや凄いCGなどを駆使して、驚かせようとする近年のハリウッド映画のようなものなど一切、無い。しかし、だからと言ってつまらなくはないし、むしろ、そういう凄い映像だらけの大作よりもずっとずっと見ていて楽しめるし、緊張感も持続しつづけている。冷酷極まりない所長への警告のようなあの囚人達の脱走への計画、それを夜中に張り詰めた空気の中で実行に移す彼ら、その模様がじっくりと描かれていて面白い。クリント・イーストウッド演じる主人公が脱走しようとしている所をバレタのかと思わせておいて、一旦は何もなかったかのように見せる演出、上手い演出だ!そして、再び行なわれる真夜中の脱走劇、脱走に成功し、海の中、島から去っていく男達、脱走後、ここであの例の人形を見回りに来た所長に見せて、あっと言わせる。上手い。上手すぎる。クリント・イーストウッドが悪人にしては、やはり正義の男ぽく見えてしまうのはマイナスだが、それでも十分、面白い。下手なアクションものなんか観るよりは絶対にこの映画の方が良い。 [DVD(字幕)] 8点(2007-12-30 18:08:58)(良:1票) |
1150. 社長外遊記
《ネタバレ》 久しぶりに見る「社長」シリーズ、森繁久彌の女好きでありながらも、けして下品にはならない紳士ぶり、その下で働くいつものお馴染みのメンバー達を見ているだけで、嫌なことを忘れさせてくれるのは良い。しかし、ちょっとだれ気味かなあ!マダムとの浮気現場を娘に見られ、ママには内緒にするかわりに土地を買ってよと迫られたり、部下の相変わらずな大馬鹿ぶり、特に三木のり平はいつ観ても相変わらず可笑しい。そんな笑える場面も多いものの不満も多い。森繁久彌の奥さんとのやりとり、浮気がばれてしまい、あたふたする場面が今回はないのが残念です。ラストも何だかしっくりとこない。ところで毎回のことながら小林桂樹は可哀想だなあ! [DVD(邦画)] 6点(2007-12-30 14:09:32) |
1151. チャップリンの駆け落ち
いや~なんつうインパクトのある髭なんだ!あの男爵の髭のインパクトが強すぎる気がして、肝心な中身、ドラマとしてもチャップリン映画にしては平凡な感じだが、とにかく髭!髭!髭ですよ。チャップリンの短編の特徴にあるドタバタ喜劇的な要素だけはしっかりと描かれているのは流石ですし、いかにもチャップリンらしい。 [ビデオ(字幕)] 6点(2007-12-24 21:08:03) |
1152. 有りがたうさん
《ネタバレ》 「有りがたうさん」良い響きだ!観終わって一言、心から「有りがとう」てこの映画の人達みたいに大きな声で叫びたくなった。そのぐらい本当に観ていて気持ちの良い映画だ!話そのものは、物凄いアクションがあったり、何か特別に凄いことが起きるわけではないのに、それが返って物凄く新鮮で本当に観ていて心地が良い。伊豆から東京へと向うバスの運転手とそこにそれぞれ色んな悩みを抱えている人達が乗り込んできて、その道中、様々な人間模様が繰り広げられるのたが、それがまた面白い。全員がこれまた善人かと言うと、そうでないところもこの映画の面白さの一つである。バスの動きにまるで合わせるかのようなのんびりとした台詞、これがまた何とも観ていて不思議なぐらいの心地の良さを感じる。車の中での桑野道子と髭をはやかした老人との会話、やりとりがこれまた凄く面白い。甘いのは苦手だからとウイスキーを勧めておきながら、やっぱり車の中でのアルコールは駄目だとか、髭をいじくっているとそれを見て、あんまり伸ばすと取れてしまうだのと皮肉いっぱいのこの面白さ、上原謙のバスの運転手と他のお客さん達、そして、地元の人達との「有りがとう」「有りがとう」の連呼!これもちっとも嫌味というものを感じない。それどころかむしろ、本当に「有りがとう」ていう気持ちに見ていてなるぐらいの心地の良さ、全編オールロケてのもこれも素晴らしい。のどかな大自然を生かした素晴らしい風景の中に輝く人間の優しさと人生に対する厳しさみたいなものが1時間半にも満たない僅かな時間の間で、しっかりと描かれているのも素晴らしく、何だかまるで小津監督の映画を見終わった後のような本当に心地の良いそんな映画を見た気がして、この監督さん、一気に好きになってしまった。この清水宏という監督の他の作品も見たいなあ! [DVD(邦画)] 9点(2007-12-24 11:02:19)(良:1票) |
1153. ある殺し屋の鍵
《ネタバレ》 前作同様、またしても市川雷蔵の殺し屋ぶりは殺し屋ぽさを感じさせずに仕事を取り組む。前作との比較で言うならば、私には前作の方が楽しめました。そんな中で、にじばぶさんが書かれていらっしゃる。佐藤友美って女優さんがとても良い。私もあの細い足、好みです。どこかで見覚えのある女優さんだと思ったら「喜劇・逆転旅行」に出ていたあの女優さんかあ!ところでそんな佐藤友美を捕まえておいて「金で動く女には用はねえ」なんて事を言っておきながら、そういう自分は金で動くのは、何か違うんやろ?て突っ込みを入れたくなります。 [ビデオ(邦画)] 6点(2007-12-23 16:28:25) |
1154. 座頭市血煙り街道
《ネタバレ》 勝新「座頭市」の産みの親である三隅研次監督によるシリーズ第17作!やはりこの監督のものは面白い。そして、何よりも殺陣のシーンの凄さ、殺気が漲っている。前半のなべおさみとの賭けごとのちょっとしたお遊び、勝新「座頭市」のユーモアも良い感じである。そんなユーモアを描きつつ、それでいて作品全体に漂う緊張感、美しい構図、映像的にもシリーズの中で上位に入るぐらいの美しさの中での緊張感漂うあの雪の中での二人の対決シーン!近衛十四郎演じる侍(赤塚多十郎)との一騎打ち!「侍なんてものは自分さえ良ければ、他人なんてどうなってもいいのかい?」と言う市の人間としてのあるべき姿、子供に対しての優しさ、子を持つ親への愛情が伺えるあのシーンのやりとり、赤塚多十郎との死闘に勝利し、去っていく市を追う旅先で出会った一人の男、そんな男庄吉の子供の涙、それを橋の下から見上げて涙する市、そう、これは時代劇ではあるけど、そこに流れる空気は、間違いなく家族の物語り!人間ドラマとしても見応え十分の作品です。 [DVD(邦画)] 8点(2007-12-19 21:27:18) |
1155. 山の音
《ネタバレ》 冒頭、山村聡と原節子の二人を映すシーン、鎌倉の駅のあの描写を見て、真っ先に小津監督の「晩春」を思い出してしまった。まるで小津映画でも見ているような錯覚に陥る。成瀬巳喜男監督作品に付きまとう重苦しい雰囲気が漂う。ある意味、それこそ成瀬巳喜男監督の映画の持ち味なのかもしれないと思う。しかし、ちょっと期待をしすきだか?私の好きな成瀬巳喜男監督作品とはどこか違う。相変わらず一つのシーンにおける何とも味わい深い描写、風景の画き方などは素晴らしい。主演の二人、山村聡と原節子が歩きながら会話している場面が何度も登場するのだが、あのラストの並木道を歩く二人の姿なんて、どことなく「第三の男」を思わせるシーンだし、そして、やっぱり全体的な雰囲気は小津監督の「晩春」を思わせるものの「晩春」のような感動を味わうことは出来なかった。けして、駄目な作品だとは思わないが個人的な好みとしてそれほど高い点数は付けられません。 [DVD(邦画)] 6点(2007-12-18 20:32:20) |
1156. 炎上
三島由紀夫の有名な原作を市川崑監督が演出したことで有名なこの映画、かなりの評価も解ることは解る。しかし、個人的には市川崑監督というと、私は喜劇の方が好きですし、文芸作品なら「ビルマの竪琴」勿論、最初のです。が一番だと思ってます。市川雷蔵の演技も素晴らしいし、宮川一夫のカメラ、撮影は相変わらず素晴らしい。特に金閣寺が炎上していく場面におけるあの映像は宮川一夫カメラマンにしか撮れない美しさと力強さを感じる。それでも話としての暗さがどうも気になって仕方ない。好みの問題という意味でこの点数ですが、一人の人間の心の中に潜んでいる闇、悪、心の葛藤など様々なものをきちんと映画化している所は流石は市川崑監督です。 [DVD(邦画)] 6点(2007-12-16 09:28:38) |
1157. ああ爆弾
オープニングの歌舞伎の世界を思わせる何とも言い様のない、得体の知らない始まり方、相変わらず伊藤雄之助の演技の可笑しさ、そして、あまりの馬鹿ばかしさ、国家権力に立ち向かう男の姿を岡本喜八監督独自の世界観によって描かれるこの変な世界はどこを取っても岡本喜八監督ならでは!伊藤雄之助の演技がとにかく凄い。銀行でのあの変な踊り、ミュージカルシーンにおける馬鹿ばかしさ、人間なんてものはいかに馬鹿な生きものか?てこれを見るとそう思わずにはいられない。布団に寝ている妻とのやりとり、お経の場面のはちきれんほどのパワー、何ともふざけているものの、そのふざけている場面においてもどこか人間の可笑しさ、哀しさみたいなものが滲み出ているのは岡本喜八監督の他の作品にも多く見られる共通点でもある。いつの時代においても岡本喜八監督が描く人間はやっぱり変人だ!そんな変な人間の変な部分を正々堂々と描こうとしている。この映画は完全にミュジカル映画に対して喧嘩を売っていると思えてならないのだが、こんなミュージカルがあっても別に良いのでは?いずれにしてもこの変てこな世界はやはり岡本喜八ワールド!他の監督にはない。岡本喜八監督の岡本喜八監督による岡本喜八作品です。 [DVD(邦画)] 8点(2007-12-15 21:18:36)(良:1票) |
1158. 座頭市鉄火旅
《ネタバレ》 相変わらず勝新の座頭市はトボケた味わいと殺気が漲っていて面白い。これなんかその中でもトボけているという意味では最高かもしれない。眼啖であるにも関わらず、その巧みなまでの剣の使い方、按摩としての市も面白く、悪人に対してのあの態度、眼が見えないことを良いことに態と力を入れて悪人の肩を力いっぱいに揉む姿なんぞ、本当に可笑しい。で、今回はそんな市が飲み屋で出逢った一人の老人との話、その娘との話がこれがこの映画のキーワードとなって、色々と話に関わるのだが、何と言っても東野英治郎が抜群の存在感を示しています。殺陣のシーンの凄みは勿論、今回はそれ以上にストーリー重視の作品になっている。あと、一度しか斬ることの出来ないと言われた刀について語る場面がこの映画の中で最も印象に残る。そして、そんな刀を使って雪の降る中、悪人を叩き切る市!絶対絶命の大ピンチに、さあ、ここから先は見てのお楽しみってことで、しかし、あの市の刀の使い方、悪人のやっつけ方のあっという間の速さといい、悪いが北野武には真似出来ない。それほどの早業です。 [DVD(邦画)] 8点(2007-12-12 22:18:57) |
1159. 江分利満氏の優雅な生活
普通のことを普通らしくただ生きている男、それがこの映画の主人公、江分利満!この映画を見て、またこの映画の主人公の生き様こそ本当に人間らしい生き方ではないかと思う。やたら偉そうな顔をしている政治家、大金を使って他の球団からFA宣言した選手ばかりをやたらと欲しがるどこかの球団の○○恒雄!お前らのように何でも金の力を利用して這い上がろうとする奴らよりもこの映画の主人公の方がずっとずっとかっこ良い。人間らしくて良い。また、この映画の主人公にはまるで偽善的なものを感じない。だからこそそんな人間味溢れる主人公に憧れる。そういう人間をきちんと描いて見せることの出来る岡本喜八監督に憧れる。これは一人の人間の眼を通して、一人の人間の生活から人間の生き様とは何んなのか?て問いに応えている。岡本喜八監督の描く人間はいつも少し変わってはいるけど、その変わっているものこそ人間の本来の姿なんじゃないでしょうか!いずれにせよ、岡本喜八監督らしいユニークさを散りばめた人情的コメディに相応しい映画です。 [DVD(邦画)] 8点(2007-12-09 17:18:45)(良:1票) |
1160. 石中先生行状記(1950)
《ネタバレ》 石坂洋次郎原作、成瀬巳喜男監督による三つのお話からなるオムニバス映画!でもって、舞台は東北は青森の田舎町、もう、これだけでこの映画の興味が沸いてしまう。日本で一番好きな川島雄三監督の故郷である青森ってだけで、何だかそれだけで良いのだ!一つ一つの話がどれも面白く見られる。第1話の木匠久美子って女優さん、初めて見る気がするけど、とても元気はつらつ、リボビダンDて感じで良い。どんな感じや?第2話の池部良と杉葉子が互いの父親のことで喧嘩してしまい、仲直りするシーンも良い。石中先生に秀一(池部良)のことを君はどのくらい愛しているのかね?て聞かれてこのぐらいと両手いっぱいに広げて見せる杉葉子の演技も微笑ましくて良い。二人の父を演じている藤原釜足と中村是好も良い味を出してます。そして、最後のお話、これは何と言っても若山セツ子の初々しさに尽きる。本当に笑顔が素敵です。勿論、三船敏郎も黒澤映画では見れない。別の意味で良い雰囲気を醸し出している。それでもやはり一番は若山セツ子!最後の方で三船敏郎と並んで歩きながら二人一緒に「青い山脈」を歌うところなんて、こんな演出をする成瀬巳喜男監督、原作者であって、タイトルにある石中先生でもある石坂洋次郎へのオマージュと感じることの出来るシーンを描く辺りは人間としての優しさを感じる良い場面だ!いずれにせよ、これまたほのぼのとして、良い気持ちにさせられるそんな作品を見せてもらった思いでいっぱいになりました。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2007-12-09 10:13:07) |