161. ブラッド・イン ブラッド・アウト
《ネタバレ》 若い頃のギャングが、その後どうなるかを描いた映画。 「ワンスアポン~」の現代版ヒスパニック版である。 メキシコギャングと言えば、過激な「シティオブゴッド」を思い出す。 その血をひくヒスパニックたちも凄味がある。 興味深いのは、若い頃はひ弱な感じのハーフが、刑務所で頭角を現し、とうとう 世話になったボスまで殺して、トップに上り詰めるのだ。 そして、若い頃のリーダーが、警察側になり、彼と対峙するようになることだ。 ここが、いわゆる古典のギャングものと違う。 ドラッグ戦争ものである。ドラッグ戦争の映画といえば「トラフィック」「ボーダーライン」等々・・ 刑務所ものとしては「ショーシャンク」「父の祈りを」「デッドロック」等々・・ ハックフォードの作家的でない映像が、よりリアルに劇を引き立たせる。 [DVD(字幕)] 8点(2024-05-12 19:38:15) |
162. ビクター/ビクトリア
《ネタバレ》 ゲイのミュージカルに、女装した謎の美声の美少年。 それが「サウンドオブ~」のジュリーアンドリュースなんですね! つまり、ボーイッシュな女性が、女性のフリをする美青年のフリをするという 倒錯した世界らしい、こんがらがった役どころを演じています。 面白いのは、そんな美少年をほっとけない、ギャングとも渡り合う実業家が出てきてから。 ホントに男なのか、風呂まで覗いてしまうんですね。 二人は結ばれてからが大変。 ゲイとは取引できないとかギャングにすごまれたり、笑ってしまう展開がミソです。 最後は相方のゲイ、ビクトリアがビクター役に扮し、笑いで包まれて、終わり! センス良い美少年ぶりに、品のいい80年代のアメリカ映画を感じます。 [DVD(字幕)] 7点(2024-05-11 22:20:51) |
163. 曽根崎心中(1978)
《ネタバレ》 江戸時代。 お侍は男の意地で腹を切る、そんな時代。 忠臣蔵の元になった、赤穂藩の事件があったのもこの頃。 そんな中、女は、女の意地で恋のために心中して、何が悪い・・ そんなお初の心の叫びは、 今、徳兵衛とお初は時代を超えて結ばれた。 どうか、あの世で幸せになってほしい・・ [インターネット(邦画)] 7点(2024-05-08 01:18:37) |
164. 愛にイナズマ
《ネタバレ》 本作「愛にイナズマ」や「蜜蜂と遠雷」など、「雷」天才女性を演じさせると松岡茉優は、いいね~ 家族を描いた秀作が近年、目立つ。 本作しかり、「台風家族」「ひとよ」など 上っ面の家族の本性が暴かれて、より家族の絆が強まるというのは、好まれるテーマらしい。 ここでは、佐藤浩市のお父さんが、実にいい人だったという秘密だから救われる。 完成した映画がどうなったのかまで描いてほしかったが、 それは本作の真のテーマではないからいいのだろう。 「春に散る」の窪田正孝の幅広いキャラの演じ分けに驚き! エレカシがピッタシの映画だった。 [DVD(邦画)] 8点(2024-05-05 21:19:55) |
165. カード・カウンター
《ネタバレ》 スコセッシとポールシュレッダーのコンビである。 二人のコンビと言えば、「タクシードライバー」である。 あの映画も、ベトナム帰還兵のトラウマが描かれていたが、 本作も、軍での尋問に耐える姿が、映画に出てくる。 非常にカジノの蘊蓄や軍の尋問のことなど、 台詞に出てくる興味深い内容が面白い。 前半はそれで話を引っ張り、 後半、カジノで儲けた金で青年の未来を買おうとするが、 青年は復讐に人生をかけ、殺されてしまう。 それをギャンブラーが、代わりに上官を殺してまた刑務所もどり。 そんな話なのだが、 話の進行が、新しい。 出てくる建物、セットすべてが洗練されていて、 今までの生活臭のある映像ではない。 [DVD(字幕)] 7点(2024-05-04 01:12:15) |
166. アンダーカレント
《ネタバレ》 嘘つきの映画といえば、日本映画では根岸監督の「永遠の1/2」。 今泉監督の本作のラストで、それを思い出しました。 嘘つきには、遠く離れてついていくとこ。 今泉監督の会話術の巧みさで、サスペンスタッチになっていくとこは、新境地でした。 でも真木よう子が嘘つきだったから、瑛太も嘘つきになったとも言えなくもない。 だから、お兄さんの一言で、真木よう子の魔法が解けたら、瑛太とも上手く付き合えるのではないか? だから三角関係の始まりのようなラストでした。 いいね♪ [DVD(邦画)] 7点(2024-05-04 00:38:40) |
167. あのこは貴族
《ネタバレ》 地方流入者と地元。東京と地方。 この二つの軸が、一人のエリート男性一族の中で展開する。 エリートを高良健吾が好演。 嫌な奴なのだが、ラスト、門脇麦の表情に、さわやかな好青年なのかな?と思わせる。 門脇麦のただそこにいるだけのお嬢さんが、いかにも居そうな感じをさせる。 こんな人種、いるの~? いたら格差社会のモンスターだよ。 でも確かに地元民には、地方漂流民の姿は見えにくい。 地元民は繁華街とか近寄らないからだ。 大都会の男の不倫の対象にされた、二人の女性起業家の一言。 「私たちって東京の養分だよ」 大都会東京は、地方の若者の養分でこれからもドンドン肥え太るのか? [DVD(邦画)] 7点(2024-04-29 23:05:20) |
168. せかいのおきく
《ネタバレ》 どんな職業にも、それを見ている女性がいる。 そんな阪本監督の祈りが感じられた。 江戸は上下水道の整備された街だった。 これは欧米と違うとこだったようだ。 上水は、川から水を引いて、井戸を作る。 下水は、糞尿を集めて、田畑の肥料にする人たちがいた。 そんな糞尿を集める人たちの物語だ。 もともと阪本監督は地味な素材を傑作にする名手である。 このような素材も、一本の映画に仕立ててる。 安政の大獄で弾圧を受けた父と、その娘。 そんな、世界に日本が拓かれようとしている時代の女性を黒木華が好演している。 [DVD(邦画)] 7点(2024-04-28 22:35:52) |
169. スイート・チャリティ
《ネタバレ》 シャーリーマクレーンの傷ついても傷ついても、愛を求める女が よかった。 ハスキーボイスがカワイイ。 何よりボブフォッシーの振り付けが、カッコイイ。 ダンスと言えば、今の若者にはオリンピック競技のブレイキンだろうけど、 昭和生まれの自分には、こんな振り付けがセンスの出発点。 非常に今観ても、映像的に刺さる。 ダンスの一瞬一瞬が、絵にしたくてしょうがないくらい、痺れるのだ。 [DVD(字幕)] 7点(2024-04-27 21:24:34) |
170. 戦火のナージャ
《ネタバレ》 まず初めにロシアが今回のようなことを起こしたことを残念に思います。こんな素晴らしい映画を創る国なのに・・ このレビューは、本作だけのレビューではありません。 「太陽に灼かれて」から本作、そしてこのサイトには登録されてませんが、 「遥かなる勝利」へと続く3部作、まとめての評価です。 この3本全部観ないと、本当の良さが分からないと思います。 是非、大型連休にでも、全作観ることをおススメします。 世に3部作なる映画多かれど、自分のベストは、ミハルコフのこのシリーズが一番です。 戦争とは?夫婦とは?父娘とは?それを描いた見応えある3部作です。、 1作目だけでも名作と名の高い作品ですが、本当の良さは、全作観終わった後に来る余韻です。 ミハルコフは、手練れの演出も良いのですが、全作に連なる骨太なテーマに、思わず酒が進みます。 広い大地の国らしい、壮大な話でした。感無量!!!!! [DVD(字幕)] 10点(2024-04-21 23:15:16) |
171. ラスト・アメリカン・ヒーロー
《ネタバレ》 ニューシネマの佳作。 コロシアム風のカーアクションは、アメリカならでは・・ そして、そこで名を鳴らして、カーレースへと乗り出す主人公。 苦い女性との思い出は、いかにもバッドエンドなニューシネマ。 実話と知って、驚き。 ジェフブリッジスの若い頃が堪能できる。 [DVD(字幕)] 7点(2024-04-18 00:02:30) |
172. ブロンコ・ビリー
《ネタバレ》 才色兼備のソンドラロックとの共演が多かった頃の映画。 女性にモテモテだったイーストウッドだが、ロックを見捨てておけなかったんだろうね・・ その辺の男女のギクシャクからラブラブになる様子がこの映画で描かれている。 (ネットで調べると、イーストウッドの実人生の女性観が「え!?」ってことが分かる) 彼らにとって青春の一本。 いよ~、お二人熱いねって感じです。 カウボーイハットが似合うイーストウッド。 カウボーイハットアメリカンの今を描いた「運び屋」や「クライマッチョ」も好きな作品です。 [DVD(字幕)] 7点(2024-04-14 00:25:56) |
173. ロブスター
《ネタバレ》 今、話題の鬼才、ヨルゴス・ランティモス。 とにかく寓話とかのレベルを超えて、ぶっ飛んでる。 何とか意味を見出そうとすれば、結婚して真人間になる難しさを描いた映画か・・ カップルにならないと動物にされるホテル。 そこから脱走した、独身を愛するグループ。 しかし、そこには、恋愛とか絶対禁止という厳しいルールがある。 最後、二人は真人間のカップルになれるか、という場面で終わる。 その為には、男も失明しなければならない。 これは、周りが見えないと、愛は成就できないという意味か? エンディングで、波の音が聞こえる。 ああ、彼のなりたかった動物は、ロブスターだったか・・ [DVD(字幕)] 6点(2024-04-13 19:56:55) |
174. 黒い罠
《ネタバレ》 オーソンウェルズは、スゴイ! ヒッチコックのやりたがらない、女性に手を出す展開も、やってのけてしまう。 多分、当時は、かなりショッキングなものだと思う。 やり手の悪徳警官に対する正義側が押され気味なところが怖い・・ 悪のキャラは今観ても斬新。 臆病なモーテルの管理人をはやしたてるチンピラの様子は、タランティーノが影響受けてるんじゃない? そもそもオーソンウェルズみたいな俳優、その後いないっしょ!? 白黒の構図が見事で、アメコミの漫画を見ているよう。 多分、アメリカの漫画家も、この映画を観て手本にしたのでは? 大友克洋の「アキラ」のジュークボックスは、ここからかな? [DVD(字幕)] 7点(2024-04-12 22:58:10) |
175. ギャンブラー
《ネタバレ》 アルトマンの映画鑑賞にはコツがある。 群像劇の名手なので、サイドエピソードも主役級のドラマ性があるのだ。 だから、メインストーリーが曇りがちである。 だが、本作、群像劇ではなかった。 ギャンブラーなどと言うタイトルなので、マックィーンの「華麗なる賭け」のような内容と思いがちだが、 経営の話だった。 明治頃のアメリカの経営話は、怖いねぇ・・汗 暴力でケリをつけるお国柄だったんだね。 日本のヤクザ映画みたいなことを企業がやってたら、そりゃ、ビビりますって。 ラストは、ニューシネマらしい締めだった。 [DVD(字幕)] 7点(2024-04-10 01:19:53) |
176. 八甲田山
《ネタバレ》 橋本忍脚本にアクションを加えたらどうなるか? もうそれだけで、一見の価値がある。 見事なリーダー論になってる。 二つの隊が、雪の中の行進をする。 それぞれの隊のリーダーの在り方で命運が変わる、と言ってもいいくらいの違いがある。 吹雪の中、あと2キロの目的地に行くか行かないか、土地に詳しい案内を頼むか頼まないか・・等々 中盤、北大路欣也の部隊が全滅したあと、高倉健の部隊が進むかどうか、 軍本部は中止させたいが、連絡方法がない、というとこは、もっと見せ場にできたと思う。 ラスト、生き残った部隊が、日露戦争で全滅したという説明書きが出て、鑑賞後、凹んだ。 (実話ですよね。簡単にコメント言えない) 木村大作の撮影が見事!さすが日本を代表するカメラスタッフ! [DVD(邦画)] 7点(2024-04-07 21:10:13)(良:1票) |
177. コールガール(1971)
《ネタバレ》 名作として有名な作品。 当時、コールガールの心情を的確に捉えた映画が少なかったからだろうか・・ ジェーンフォンダのアップが多い。 アメリカ人女性の顔のつくりが分かる。 漫画家大友克洋の女性は、この映画のジェーンではなかったか・・ 彼の漫画を思い出した。 [ビデオ(字幕)] 7点(2024-04-05 21:47:32) |
178. 天国の日々
《ネタバレ》 テレンスマリックは、静かな口調で、きれいな映像で語る。 野心のために、(素直になれないために?)、自分の彼女を金持ちの嫁にやる。 そこから、「天国」の日々が始まる。 もう汗を流して働かなくていい、そんな「天国」。 日本では、明治から大正に代わる頃のお話。 西部劇の世界が終り、アメリカンドリームを実現せんとする若者たち。 だが、人間も甘くないし、自然も甘くない・・(イナゴの大発生を描いたアメリカ映画って、他にある?) [ビデオ(字幕)] 7点(2024-04-01 15:41:20) |
179. 座頭市 THE LAST
《ネタバレ》 阪本順治の「ザ・座頭市」ですね。 とても映画的ではあるけど、座頭市の映画ではないですね。 座頭市の魅力と言うのは、好敵手や敵とも言えない相手(時には愛する相手)と やむにやまれぬ決闘をするのが魅力です。 仲代達也と闘わせたりするアイデアも面白いですし、すべりやすい雪でのアクションのアイデアも 秀逸ですが、やはり阪本映画としてしか面白がれなかったですね。 このタイトルにめげずに、どんどん色んな監督が座頭市を創れればいいんじゃないでしょうか? 「座頭市~お終い~」「完結編」「さらば座頭市」とか。 なんちゃって最終回にして、また新しい座頭市が観たいです。 日本映画、得意じゃないですか、そういうの(笑) [DVD(邦画)] 7点(2024-03-31 02:52:14) |
180. 冬のライオン
《ネタバレ》 見応えある歴史劇! 王の新しい妻が結婚が決まりそうになると、 今まで可憐な一輪の花みたいだった女性が 「それでは、前妻の子供を殺してください」と言う場面なんか、鳥肌ものです。 その時、今までの妻は?子どもたちは?王は? どんな罵り合いがあり、どんな展開になるのか? こういう映画を観ると、創造力とは、想像力だなと思う。 昔の人たちはどんなケンカや罵り合いをしていたのか? そういうのを想像するのは、AIにはできない。 この先、AIがどんなに映画まで創り始めても、 しょせんは「組み合わせ」にすぎない。 もうクリエイティブの名前の気持ちよさにすがらないで、 人間とは?とかつきつめて、物語を創ってほしいなぁ、と思う。 [DVD(字幕)] 9点(2024-03-30 20:32:45) |