1941. 隠し砦の三悪人
《ネタバレ》 本作は黒澤映画の中でも登場人物たちのキャラの切れ具合は随一、脚本執筆の語り継がれているエピソードも有名ですが、あえて注目したいのは黒澤初のシネスコ映画であることです。シネスコでスクリーンに映し出される情報量が増えましたが、それに対応した得意のパン・フォーカスが冴え渡ってダイナミックな映像を見せてくれます。観るたびに感嘆するのは真壁六郎太が登場するシーンで、太平と又七が河原で金を探している前景の遥か彼方の崖の隙間から三船敏郎が豆粒の如き小ささながらも鮮明に姿を現してくるのです。隠し砦がある山中の設定も、良くもこんなに石がごろごろしたロケ地を見つけてきたなと感心するぐらいの荒々しい風景で、そんな難所を登ったり降りたりさせられた千秋実と藤原釜足のご両名の苦労が偲ばれます。「裏切り御免!」の藤田進と上原美佐、演技力に難がある両名が劇中もっとも記憶に残ったというのも微笑ましいところです。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2010-11-15 23:46:50)(良:1票) |
1942. ゴシック
《ネタバレ》 ケン・ラッセル初めて観る人には「なんじゃ、こりゃ!」って感じでしょうけど、私が今まで観た中ではもっとも完成度というかケンちゃんの妄想と映像のバランスがとれている作品です。とは言え、股間にでっかい張型を生やした甲冑などは「あー、ケンちゃん相変わらずだよな」と思わず微笑んでしまいました。劇中登場人物がみんなアヘンチンキで完全にラリっているので、“ゴシックホラー”じゃなくて“ドラッグホラー”と名付けたくなるほどです。ガブリエル・バーンの悪魔的なバイロン卿ははまり役だったと思いますし、本作の演技が強烈な印象だったのでその後“ルシファー役者”としてのオファーが彼に来たのだと思いますよ。 [ビデオ(字幕)] 8点(2010-11-14 22:43:29) |
1943. 針の眼
《ネタバレ》 ここまで無造作に人を殺すスパイは観たことないと舌を巻くほど、前半はドナルド・サザーランドの冷酷ぶりは際立ってました。ところが島へ漂着してからのだらしなさも、数あるスパイ映画の中でも類を見ない豹変ぶりです。それ以上に凄いのはあの人妻で、あれじゃあ単に性欲の迸るままに行動しているとしか思えないでしょ。普通、亭主の水死体を海に浮かべたままにするか! ラスト、本土から警察がヘリコプターで救援に飛んでくるのにはがっくりさせられました(ヘリコプターは第二次大戦中はまだ実用化されていませんでした)。傑作として名高いケン・フォレットの『針の眼』の映画化としては失敗作ではないでしょうか。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2010-11-14 13:53:09) |
1944. ショーン・コネリー/盗聴作戦
《ネタバレ》 ショーン・コネリーがマンション強盗を企むお話ですが、コネリーの情婦を始め仕事仲間がそれぞれ別の政府機関に盗聴されているという不思議なプロットです(情婦は旦那が盗聴してましたっけ)。コネリーだけが盗聴されていないのですが、盗聴する側には各自に脱税や反体制活動など監視する容疑があるのだけど、コネリーの犯行計画には興味を示さないというお役所体質が強烈に皮肉られています。ウォーターゲート事件が起きる前にこういう視点を持っていたとはさすがシドニー・ルメットですが、ボーっと観てたらこの皮肉が伝わらないぐらい淡々とし過ぎているのがこの映画の欠点でしょう。やっぱ目立つのは本作がデビュー作のクリストファー・ウォーケンの存在感で、実に若々しくてナイスです。後半マンション強盗が失敗し警察がコネリーたちを追い詰めてゆくところは『狼たちの午後』を彷彿させてくれますが、ルメットの監督した映画って必ず犯罪が失敗する特徴がありますね。というわけで、『ショーン・コネリーの盗聴された作戦』が正しい邦題でした。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2010-11-13 19:56:26) |
1945. ブーリン家の姉妹
《ネタバレ》 エリック・バナのヘンリー八世、雰囲気は良く出ていたんではないでしょうか。でも物語の始めから終りまで、全然老けないし太らないというのはちょっとどうなんでしょうか(それはナタリー・ポートマン、スカレーット・ヨハンソンにも当てはまりますが)。メアリー・ブーリンが妹だという説は初めてで、ちょっと違和感が… ヘンリー八世の宗教改革が秘めていた歴史的な意義をばっさりそぎ落として、ひたすらチューダー朝版『大奥』物語に徹しているので、たしかに観てて疲れます。アン・ブーリンの狡猾さや嫌らしさの描き方が中途半端なので、前半と後半では同一人物とは思えないところがちょっと不満かな。まあとにかく考えさせられるのは親父や伯父のブーリン一族のやり口で、『仁義なき戦い 広島死闘篇』での大友勝則が放つ名セリフ、「あれら、×××の汁でメシ食うとるんでぇ!」を捧げたいと思います。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2010-11-12 00:21:10)(良:1票) |
1946. 幻影師アイゼンハイム
《ネタバレ》 もちろんこのストーリーはフィクションですが、皇太子レオポルドは「マイヤーリング事件」で謎の情死を遂げたルドルフ皇太子をモデルとしているのではないでしょうか。それにしても既に亡国したとはいえ、オーストリア帝国の皇太子を殺人犯みたいに描くとはいやはや大したものです。それを悪役をやらせたらこの人と誰もが認めるルーカス・シーウェルが演じるのですから、余計にあのオチにはすっかり騙されました。 やっぱ本作はポール・ジアマッティの映画でしょ、彼の存在感で引き締まったストーリーになったのでは。けっきょくアイゼンハイムのイリュージョンは、時代背景からして草創期のシネマトグラフがタネだったと私は解釈しましたけど、いかがでしょうか。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2010-11-10 22:03:33) |
1947. CIAの男
《ネタバレ》 監督・脚本・主演のダグラス・マクグラスという人、『ブロードウェイと銃弾』の脚本書いたアレン組の一員何ですね(それにしてもこの人若いころのジーン・ケリーにそっくりだなあ)。それでウディ・アレンがこの映画に出演しているのでしょうが、あんだけ出番が多いのにノン・クレジットとはどういうわけ? ネタとなっているカストロ暗殺計画やピッグス湾侵攻作戦は実際にCIAが失敗した史実なのがミソなんですが、けっこう笑わせていただきました。出演俳優陣も豪華で、シガニー・ウィーバーも『エイリアン3』に続いてスキンヘッドになっての熱演です。その割には観終わってあまり印象が残らないのが不思議ですが、まあこういう軽いノリのコメディもいいもんですよ。 9.11以降、こういうCIAをおちょくった作品が観られなくなったのはちょっと残念です。 [ビデオ(字幕)] 6点(2010-11-10 00:15:13) |
1948. 36時間(1965)
《ネタバレ》 数ある「ノルマンディー上陸作戦もの」映画の中でもひときわ異彩を放つ一本です。Dデイ3日前、米軍の情報参謀がリスボンで一服盛られて意識を失う。眼が覚めるとそこは山中の病院で、新聞を見るとなんと6年後の1950年になっているではないか! ね、どうです、面白そうなプロットでしょ。別にこれはタイムスリップしたわけでは無くて、連合軍が上陸するのはどこなのかを知るためにドイツ軍が仕組んだ謀略なのです。その病院は占領中のドイツにある米軍病院と言う設定で、軍医や看護婦そして入院患者も皆アメリカ人で英語を話し、ラジオをつければ偽アナウンサーが別室から架空のニュースを流すという徹底振りです。戦争はヒトラーが暗殺されて終わり、ゲーリングやヒムラーは処刑されたことになっていて、親衛隊員も全員処刑されたとロッド・テイラーがSSのスパイがいる前でガーナーに話すところは傑作です。情報参謀ジェームズ・ガーナーは6年間眠りっぱなしだったわけではなく、発作のように記憶喪失になる障害を負って、リスボンまでの記憶は回復したが再度発作を起こして戦後の記憶が無くなってしまったという、けっこう芸が細かい設定には感心しました。その6年間の人生も巧みにでっち上げられていて、いわば『トルゥーマンショー』の第二次世界大戦版というところです。普通これなら絶対騙されるよな、と観てて思わず唸ってしまいました。当然策略は上手くゆきドイツ側はいとも簡単に上陸地点がノルマンディーだとつかむのですが、皮肉なことに上層部は信じようとしません。ガーナーが策略を見破るきっかけも、上手に伏線が張ってあって納得です。この映画ドイツ側の視点で進行するのですが、ネタ明かしをしないで目覚めたガーナーがだんだん状況に疑惑を感じてゆくというヒッチコック風サスペンスの脚本にするこのも一興かも、でもそれにはジェームズ・ガーナーとロッド・テイラーでは緊張感ある芝居を展開するには力不足だったでしょうね。 どうせ埋もれてしまったのだから、こういう佳作をリメイクしてくれると楽しめるのですが。 [ビデオ(字幕)] 7点(2010-11-08 20:52:15) |
1949. 続・激突!/カージャック
《ネタバレ》 本作が実際のところスピルバーグの劇場映画第一作目なのですが、瑞々しい感性が感じられる良作です。とても実話とは思えないアホみたいな脱獄手段には笑ってしまいますし、映像も美しくて名手ヴィルモス・ジグモントのカメラは夕方から夜にかけての風景が印象に残りました。前半はロードムービーとしても楽しめるのですが、中盤からだんだん笑えない展開になってきます。銃社会アメリカに対するスピルバーグの厳しい眼が感じられ、民間人が勝手に犯人たちを射殺しようとするシークエンスなど、マジ怖いですね。ゴールディ・ホーンたちも所詮頭カラッポな若造なのは判りますが、彼らをどんどん英雄視してゆく民衆もバカとしか言いようがない。そこら辺が良く伝わってくるのは映画の出来が良いからですが、それにしてもアメリカ人ってやっぱ変な人たちだなと改めて感じさせられました。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2010-11-07 01:46:44) |
1950. 透明人間現わる
《ネタバレ》 本作が日本で初めての「透明人間もの」映画みたいですが、出来はひどいものです。公職追放に引っかかって東宝を離れていた円谷英二が特撮を担当したことでも知られていますが、大映は本作を最後に円谷との契約を切ったので、円谷英二最後の大映特撮映画となりました。監督・スタッフや出演俳優陣は時代劇の人たちが多く、どうも脚本からして現代劇らしくないところがあります。主演は時代劇の大スター月形龍之介で、私は現代劇に彼が出演しているのを始めてみた様な気がします。もっとも龍之介以下出てくる俳優がみなセリフが時代劇調で芝居をするので、なんかいい歳した大人の学芸会を見せられてる様な気分になりました。そして意外な(?)活躍を見せるのが水の江滝子(つうか、彼女のことを知ってる人いまどれだけいるでしょうか、ましてNHKの『ジェスチャー』なんて)で、人気スターである自分のセルフパロディの様な役がらです。案外本作は水の江滝子の人気を当てにしたアイドル映画として企画されてたかもしれません(演技ははっきり言って素人並みですが)。原案には推理作家の高木彬光が関わっているのでストーリーはミステリー風にはなっていますが、「誰が透明人間になったのか」と言うトリックが映画としてのルール違反を平気で犯しちゃってるのには呆れてしまいました。 まあ考えてみれば、もし大映が円谷英二をそのまま専属にしていれば、日本の、いや世界の映画の歴史が変わってしまっただろうな。 [CS・衛星(邦画)] 2点(2010-11-05 01:00:18)(良:1票) |
1951. ウワサの真相/ワグ・ザ・ドッグ
《ネタバレ》 このサイトでは意外にも点数辛いですが、私にはツボにど真ん中直球ストレート、と言う感じでした。まずホフマン、明らかに伝説のプロデューサーであるロバート・エヴァンスがモデルで、彼の親友でもあるホフマンが嬉々として演じているのが観てて楽しい。何かと胡散臭くみられがちなプロデューサー業のペーソスが漂っていました。そしてデ・ニーロ、この髭ずらの謎の男は『エンゼルハート』の悪魔ルシファーのセルフコメディではないでしょうか。本作では一応人間なので魔力はみせませんが、CIAの追及をかわすシーンでは「悪魔の様な弁舌」を披露してくれます。 ブラックユーモアと痛烈な皮肉が利きすぎているところもありますが、9.11やイラク戦争のはるか以前に製作されていることは驚きです。 [ビデオ(字幕)] 9点(2010-11-03 21:56:27)(良:2票) |
1952. エリザベス:ゴールデン・エイジ
これでは『エリザベス:ゴールデンエイジ』ならぬ『エリザベス:ザ・メロドラマ』ではないでしょうか。やたら大げさな音楽をかぶせて思わせぶりなショットを連発し、ケイト・ブランシェットも力んだ大芝居だし、この映画のスタッフは監督マイケル・ベイ、製作ジェリー・ブラッカイマーじゃないかとマジで思いました。海戦シーンなんかモロ『パールハーバー』のパクリですしね。エリザベスが甲冑を着て前線に現れるところなぞ、おまえはジャンヌ・ダルクかと画面に思わず突っ込みを入れてしまいました。これじゃあ、オスカー衣装デザイン賞を獲るために作った映画としか思えません。 [CS・衛星(字幕)] 2点(2010-11-01 20:29:13) |
1953. 七人の侍
《ネタバレ》 私の様な凡人が、シネマの神が降臨した大傑作を論じるのは実におこがましい次第です。何度も観ているのですが、それにしても最近のデジタルリマスター版はセリフが実に鮮明に聞き取れるようになっているので嬉しい。この映画は名セリフ・名言の宝庫なので、じっくり味わいたいところです。母国語で本作を鑑賞できるのは、日本人の特権ですよ。 侍の中では私は名参謀役の五郎兵衛が好きで、勘兵衛にスカウトされるシーンは屈指の名場面だと思います。「おぬしの人柄に惚れたからじゃ」、微笑みを返す勘兵衛、こんなカッコ良い出会いは他にあるでしょうか! 最近黒澤映画のリメイクと言う愚行がブームですが、頼むから『七人の侍』だけは手を出さないでください、森田芳光さん、角川春樹さん。 [CS・衛星(邦画)] 10点(2010-10-31 20:07:39) |
1954. アポロ13
懐かしいですね、この事件はリアル・タイムでニュースで観た記憶が残っています。当時の日本のニュースではさほど深刻な事態と騒いでなかったので、本作を観てけっこうヤバかったんだなと驚きました。何度観てもサターン・ロケットの発射シーンは素晴らしく、ロケット本体から氷の薄片がとび散る描写が個人的には好みです。ドラマ自体はロン・ハワードらしいかっちりと正統的な撮り方をしているので、引き込まれますがもうちょっと肩の力を抜いたところがあったらもっと良い作品になったのではと思います。まあ確かに、アポロ計画が終わってから誰も月に行ってないというのも変な話ですね。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2010-10-31 11:01:21) |
1955. ビッグトレイル(1965)
《ネタバレ》 西部劇の巨匠ジョン・スタージェスが監督したウェスタン・コメディ。冬が近づいた開拓期のデンバーでは酒が底をつき、雪で交通が途絶える前に大量のウィスキーを町に輸送することになる。その幌馬車隊を護衛することになった騎兵隊の隊長がバート・ランカスターで、彼としては珍しいコメディロールでの出演です。その輸送隊をめぐって女性禁酒運動家リー・レミックやインディアンが絡んで大騒動が巻き起こりますが、いかにもスプラスティック風味の題材なのにスタージェスらしくオーソドックスな撮り方をしているのであまり笑えないのが難点。この作品の特長はキャスティングの妙にあって、リー・レミックの役なぞ『酒とバラの日々』のパロディになっているし、ドナルド・プレザンスが怪しげな占い師を怪演しているところも見ものです。ランカスターも、歯ぐきをむき出しにして笑うあの「ヴェラクルス笑い」を見せてセルフパロディしてくれるのもうれしいところです。しかしなんといっても怪しげなインディアン酋長“前かがみ”が傑作なキャラで、観ているときは全然気が付かなかったけど、これがなんとマーティン・ランドーなんですね。さすが百面相俳優の異名をとるだけの人です。 まあ言ってみれば実に大らかな映画ですが、ラストの幌馬車大暴走のシーンはさすがスタージェスだけあって迫力ある画でした。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2010-10-30 23:55:56) |
1956. 恐怖省
戦時中に製作された反ナチプロパンダ映画にしてはサスペンスの盛り上げ方が秀逸で、さすがラングと唸らされました。冒頭レイ・ミランドが迷い込むいかにも怪しげな雰囲気が漂うバザー会場の描写は、ラングのドイツ時代を思わせる映像です。ただグレアム・グリーンが原作者ですがちょっと脚色が雑なところが目だち、私立探偵や交霊術士の女性などいつのまにかストーリーから消えてしまうキャラがいるのは不満です。それにしても『恐怖省(Mnistry of Fear)』とは凄い題名ですな。 [DVD(字幕)] 6点(2010-10-29 21:36:46)(良:1票) |
1957. 飾窓の女
《ネタバレ》 フィルム・ノワールと言うジャンルの定義のひとつに、「ノワールにハッピー・エンドはない」と言うのがありますが、本作のオチの様な凄まじいハッピーエンドではもはやノワールとは呼べないですね。脚本のナナリー・ジョンソンはあのオチには大反対だったのに、ラングが強硬に押し切ったというのが真相だそうです。でもラングは『スカーレット・ストリート』と言う同じ様なシチュエーションの作品をロビンソン・ベネット・デュリエのキャストで翌年撮っていて、そちらは正統的なバッドエンドで終わっているそうで、彼なりに本作のラストには後悔があったのではないでしょうか。 本作を語るにはどうしてもオチについてぶつくさ言いたくなるのですが、ストーリーテリング自体はヒッチコックに負けない技巧を見せてくれます。とくにジョーン・ベネットがダン・デュリエを殺害しようと部屋に誘い込み二人が丁々発止のせめぎ合いを繰り広げるシーンの緊迫感は、『イングロリアル・バスターズ』を思い出すというかタランティーノが引用しているくらいです。ラングはヒッチコックの最大のライバルだったんだなと再認識しました。 ちなみに私が鑑賞したのはカラーライズ版でどういう経緯で色つきになったか知りませんが、これははっきり言って愚挙ですね。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2010-10-28 21:44:37)(良:1票) |
1958. イヤー・オブ・ザ・ドラゴン
ベトナム従軍経験がありその体験を引きずっている暴力刑事、「またこのパターンかよ」と辟易しつつも、悪役ジョン・ローンのカッコよさと力技でぐいぐいひっぱてゆくアクションには負けました。マイケル・チミノとオリバー・ストーンと言うハリウッドを代表する黄禍論者が脚本書いているのですから、批判する声が上がるのも当然でしょう。まあ自分には騒ぐほどのことはないと感じましたけど。チミノ映画は主人公を自分のルーツである東欧系移民やその子孫に据えることが多くて、「自分たちは被害者で正義は我らに有り」と言う主張が鼻につくのですが、そうなると製作する映画のテーマがどうしても狭められちゃうでしょう。80年代以降彼が失速しちゃったのは、ユナイトを潰したからだけではない様な気がします。 まあそういう余談はさておき、本作はチミノ最後の煌めきだったことは確かです。日本も最近物騒になってきましたので、誰か日本版『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』を撮ってくれませんかね。中国系TVレポーター役は、ぜひ蓮坊大臣にお願いしたいな(笑)。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2010-10-26 22:19:04) |
1959. 月に囚われた男
《ネタバレ》 この監督、デヴィッド・ボウイの息子なんですね、とても長編第一作目とは思えない、今後が楽しみな才能です。低予算だろうなあと思われますが、SF的な発想は優れていてサム・ロックウェルのほとんどひとり芝居でここまで濃密なドラマを創ったのは大したもんです。 確かに月面を動き回るメカのミニチュアワークなどにはローバジェットぶりが漂いますが、かえってジェリー・アンダーソンの『謎の円盤UFO』の特撮を思い出させてくれてなんか懐かしさを感じてしまいます。あのガーティのキャラと予想を裏切る行動は、なかなか良いアイデアですよ。そしてその声をケヴィン・スペイシーが担当しているというのが泣かせます。この新しい才能を助けるために一肌脱いだという彼の男気に感動です。ただラストの株価がどうたらというところは余計でした、必要なかったと思います。 [インターネット(字幕)] 8点(2010-10-26 01:24:33)(良:2票) |
1960. 悪いことしましョ!(2000)
《ネタバレ》 なーんにも考えずに単純に楽しめる映画を撮らせたら、やはりハロルド・ライミスの右に出る者はいないですね~。ブレンダンくん、悪魔にいろいろお願いをするけど彼女のハートをつかむことができず、最後に「願わくばアリソンを幸せにしてください」と言わせるオチは、『バタフライエフェクト』を彷彿させてくれました。ブレンダン・フレイザーって二枚目俳優だとばっかり思っていましたが、こんなに気持ち悪い男だったとはと言いたくなるほどコメディ演技が上手いですね。エリザベス・ハーレィとの掛け合いは実に傑作、と言うよりもハーレィの凄まじいフェロモンに頭がくらくらでした。 本作はダドリー・ムーアとピーター・クックが主演した1967年版のリメイクですが、そちらでは悪魔は男でピーター・クックだったそうです。チラッと出てきたハーレィが連れてきた犬の名前がダドリーとピーターで、楽屋オチしてました。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2010-10-24 21:43:33) |