1. パッチギ!
《ネタバレ》 たしか、アメリカの精神科医の老女性で、今でいうホスピスの開祖みたいな女性が、自分自身、末期がんに罹ると、やはり、とりみだし「こんなにがんばった自分に、こんな仕打ちをする神を呪う」と言った。彼女の、これまでの人生は忙しさにかまけて家族ほったらかし。あげく離婚。不思議なのは、こっからで、普通、死に際して、そういうジタバタした態度は、世間から隠したがるはず。だが彼女は平気でインタビューにも撮影にも応じる。そういうジタバタしてる自分を、ちっとも恥と思ってない感じなのだ。意外なことに、彼女の病名を知ったとき、元夫と子供が戻ってきて看病し、その死を看取っている。中年に差しかかった息子がインタビューで言っている。「正直、母と完全に和解したかというと、ちょっと複雑な気持ちです。でも自分も大人になって、いろいろ解ってきたこともあります。母はいろいろと欠点もありました。・・ありましたけど、結局は、自分なりに懸命に生きた人なんだなあ・・ということです。」「なにか、お母さんの事で印象に残る事はありますか?」「そうですねえ・・ある日、見舞いに行くと、母が妙なTシャツを着てたんです。なにか格言みたいなものが印刷されてました。」 “あなたも不完全、わたしも不完全。でも、それでダイジョウブ!” 在日朝鮮の老人は、葬式の席で、日本の青年に到底受け止め切れない程の恨み怒りをぶちまける。日本の青年は、歌を通して、わかりあえる、といった自分の甘さを思い知る。が、次の瞬間、歌に対する確固たる信念もつラジオのディレクターに出会う。でも、そのディレクターは中途採用。Hをしたいだけで孕ませた彼女はバスの中で破水。孕ませた本人は、川原でケンカ。毛沢東命の教師は、ストリッパーの紐。みな未熟で不完全な奴ばかりだ!だが、その不完全な奴らが青白い光を放って魂をぶつけ合うとき、そこには何か充実した風景が出来上がる。だが、ただ、ぶつかれば充実した風景が出来上がるのか?そこには、なにか大切なものが介在するはずだ。それは、愛だろうか?誠実さ?自分に正直に生きる?それぞれ言い当ててるようで、そのものズバリを、表現出来ない。それは、それぞれの人生のなかで感得すべきものであって言葉で言い表せるものではないのかもしれない。それにしても「世の中に歌っちゃいけない歌なんて、ねえんだよ!」という大友康平のタンカには、本当にスカーっとした! [DVD(字幕)] 9点(2005-08-11 23:01:48)(良:1票) |
2. 茶の味
いやあ~、なんだかわかんないんだけど、面白かった。変な人達や、変なエピソードが、淡々と語られていくのだが、まったり見れて、ほのぼの感動した。こういう、ちょっとねじれた話ってのは、日本映画で見た記憶だと、だいたい未消化で「なんだか、気取ってんな・・」って印象を持つんだが、この作品は、それがちゃんと味になってる。「ちょっと、やりすぎかな・・」というシーンもあるのだが、気になるほどでもない。外国の映画だとコーエン兄弟ってところか?ちょっと違うか・・。それにしてもラストの、じいちゃんのパラパラまんがは、やっぱりジーンと来た。変な感動。しめっぽくないのがいい。・・ところで、あのアニメーターのじいちゃんは、真っ白なボサボサ髪と、ぶっとい眉毛は、なんだかフッと宮崎駿を連想してしまって、一人で受けてた。 8点(2005-03-04 23:20:44) |
3. プリティ・イン・ニューヨーク
ミラが、普通の女の子の役を、やってるってんで、借りてみた。 おお、ホントだ!普通の恋愛映画の、普通の女の子だ。なんだか、新鮮だな~。銃をぶっぱなす訳でもないし、精神状態が飛んでる訳でもないし、衣装も普通だ! 普通の女の子の役を、ちょっと照れながらも、嬉々としてやってる感じがして、とても初々しくて、かわいらしい。 お話は、可もなく不可もなくってところ。もうちょっと、面白ければな~。 ミラの、こういう役、もっと増えんかな。 5点(2005-02-18 23:31:27) |
4. 花とアリス〈劇場版〉
ラブ・レター、四月物語、花とアリス、と、少女漫画っぽい映画撮らせたら、この監督は、うまいな~と思う。でも、3つの作品の中では、いちばん散漫な気もして、スケッチ風の映画だから、それも仕方ないのかな?とも思うけど、それならそれで、もちっと短くして欲しかった。トランプとか紙コップバレエとか、思わず、うなっちゃうシーンがあるので、ついつい最後まで見ちゃったが、やっぱ少々長い。見終わったあとの独特の後味の良さは、健在で、満足感はあるのだが、もう一回見るとなると、やはりきつい。見るとしたら、自分の好きなシーンまで、飛ばして見ちゃうだろうな。この映画で「蒼井優かわいいな~」と思って、テレビドラマなどで、チェックしてたんだけど、そのとき見た印象は、驚くほど地味で普通。なんの魅力も感じない。やはり女優ってのは、監督によって、輝いたり地味かったりするんですな~。 7点(2004-12-23 21:36:04) |
5. ラブストーリー
《ネタバレ》 途中までは、まあ、それなりのラブ・ストーリーとして見ていたが、後半が、やっぱり引っ掛かった。ジュナには奥さんいるし、ジュヒはテスと結婚してるんでしょう?まあ、テスはやさしいから、そういうジュヒの気持ちもひっくるめて、愛したのかもしらんけど、それにしてもなあ・・。特にジュナは、死んだ自分の骨を、ジュヒとの思い出の場所に流したんでしょう?奥さん哀れじゃん。目の見えない彼を助けて人生をともに過ごしたのは、彼の奥さんだぜ?一人息子を妊娠したときなんか、つらかったろうなあ・・だんなは、目見えないし、自分はつわりで、ゲーゲーいってるし。なんか、想像が、生々しいとこいっちゃったけど、そういう周りの真心にいっさい気づかず、お互いのロマンスと感傷に浸りきっちゃってる二人はどうなんだろうか?周りが目に入らず、イチャイチャ、チューチューやってるバカップル(でも、いいなあ・・)じゃないんだから、もっと、大人の恋をしなさい、大人の恋を。二人の子供も子供だ!普通、あんな話を聞いたら、「お母さん(お父さん)が、かわいそう!」って思うんじゃないか?ラストの「実は・・」って、ところは、もうホントに、でんぐり返しのビックリ宙返りで、げっそりだ! 2点(2004-07-20 10:37:58) |
6. ミシェル・ヴァイヨン
ひさびさにムカッ腹立てながら見た。いくらマンガが原作とはいえ、レースの勝ち負けでスカッとする次元の話じゃないでしょうこれは。そういうものをレースに持ち込む精神自体がおかしい。レースやってる人とかファンは、激怒するんじゃない?これは、幼稚な刺激だけを求めた、モータースポーツに愛のない映画。ムキになって子供っぽいけど、ひさびさに腹立ったもんで、つい。 0点(2004-07-15 16:00:19) |
7. 息子のまなざし
《ネタバレ》 ある事実(じゃないけど)というか出来事を、あそこから、こっちまで、きっちり切り取って、まんま、ゴロンとフィルムに焼き付けた感じ。最初は、ちょっと、かったるかったけど、元奥さんが、子供に無理やり名前を聞こうとするシーンから、何だか静かに凄くなってきて「おいおい、どうなるんだ?しゃれにならんぞ・・」と、はらはらしながら、見てた。下の人も書いてるけど、音楽いっさいなしだし、説明的な演出もまったくなし。観客は、訳も分からず、いきなり物語の中に、放り込まれる感じで、不親切極まりない。でも、この監督からすれば、音楽による感情の盛り上げや解説は、かえって、この物語を歪める、と判断したように思う。事実、見終わったあと、なにやら有無を言わさぬ事実をドスーンとぶつけられたようで、登場人物たちが、「ああすれば、よかった。こうすれば・・」なんて感想が、まったく思い浮かばない。いや~、下腹に、こたえます。でも、いい作品。 8点(2004-05-14 13:55:33) |
8. ぼくんち
原作のマンガのほうは、爆笑しながら、なおかつ悲しくて涙が出たという稀有な経験をした大傑作。映画の予告編のほうも「僕たち貧乏なんですー。」「はいれ!」で、うわ~ロックンロールしてる~、と、期待で胸ワクワクしてたのに・・・な、なんだ~、この、タルイ展開は~!原作のスピード感のかけらもないじゃないか~!「生きてゆく中華料理店」のあの凄まじい生き様は、どこいったんじゃ~!こういち君の「実はいい人」というのも描き方が、あま~い!それにラストの、あの妙に捻った小ざかしい展開は、なんじゃあ~!・・・ついつい激昂してしまったが、原作と映画は別物とはいえ、あの変わりようには絶句してしまった・・。みなさん、原作は面白いっす。大傑作っす。映画で判断しないようにお願いしやす。 2点(2003-12-15 08:43:18) |
9. ヘヴン
《ネタバレ》 破滅へと向かう恋愛映画というのは、いくつか見たが、これは一番説得力があった。寡黙な厳しい映像で、淡々と説得力あるエピソードを積み重ねて行く。有無を言わさぬ事実を見せ付けられたようで、納得はいくのだが、やはり、無残な感じがするよな~。ブランシェットが、きれいなだけに、後半ぼうずになるあたりは、もう、痛々しくて。いくら最後に二人が抱き合い思いを遂げても、天国へ向かうように、ヘリが上へ上へと上昇したファンタジックな映像があっても、暗く陰残なものが残って、やるせない。この、気のめいるような救いようのなさは、なんだろうと考えるんだけど、それは、やはり、冒頭で彼女がテロリズムを行使してしまったことに尽きるだろう。その瞬間から彼女は「幸福になれない、救われない」という決定されたトーンが、この映画の底に付きまとい、自分の気を滅入らせるのだ。・・・そう、どんなに、この恋愛が崇高なものでも、それがあるために、酔えない、美化できないのだ。人物とか一人一人しっかり描いてて、いい味だしてんだけどなあー、この映画。特に心の沁みたのは、主人公のお父さんで、逃亡中の息子に分厚い札束を渡しながら「自分はなんにもできない」とつぶやくところなんかは「そうだろうな~、・・でも、いい親父だよな~」と思いながら見てた。 7点(2003-12-08 06:23:48) |
10. めぐりあう時間たち
《ネタバレ》 傑作であることは、なんとなく、うかがい知れるのだが、やっぱり、もう一つ入っていけなかった。自分が男だからだろうか、感情のままに見ると、ヴァージニア・ウルフやJ・ムーアの役柄は、自分の自我に神経質過ぎて、他人をこころみる余裕もなくて、こちらとしては腹が立ってきさえする。んが、簡単に「おまえら、ふざけんな!」とは、簡単に言えない重みが、この映画にはあって、特に、J・ムーアが、おばあちゃんになって出てくると、「不幸ではあるが、後悔もしていない」様子が感じられて、それはそれで、潔いようで、「う~ん」と考えてしまう。本当に、ああ生きるしか道はなかったんだろうか?「自分に正直に生きる」ことは、たしかに大切な事だが、「空腹を満たす」事と「食べ物を味わう」事、そして「生きるために食べる」事は、微妙に違うんじゃなかろうか?彼女達は、あまりにも「空腹を満たす」事にこだわり過ぎたんじゃなかろうか?自分達の欲求を満たすというよりは、飼いならすための知恵というか、選択肢が少なすぎた気がする。・・・とは、言いつつも、これも理屈っぽ過ぎるきがする。この映画では、そういうふうに、ダークに考え込んでいる時間が多かったのだが、唯一、ほっとしたシーンは、クレア・デーンズだ。いい女優さんになったなあ・・と思う。青春時代にちゃんと悩んで、それを通り抜けてきたような、凛としたあったかさと、繊細さと、美しさが、あると思う。いっぺん、彼女の、ごくごく普通~の恋愛映画が、見てみたいな。ディープでなくコメディーでなく、ふつ~のやつね。PS、この映画で、レズ的な描写というのは、必要だったんだろうか?ちょっと、とまどった。・・・とゆーよりか、ひょっとしたら、下のアネモネさんが書いてるように「レズって、つらいよね」って映画なのか?ウヘッ!そうなのか?・・・だとしたら、俺は、とんでもない勘違いをしているぞ・・・ あっ、あっ、ヒ汗が出てきた・・。 8点(2003-11-28 22:56:21) |
11. スコルピオンの恋まじない
ベテランの演技陣が、肩の力を抜いて楽しみながら演じたようで、こちらも気楽に楽しめる。シンプルでいい。 個人的にヘレン・ハントは、生活感があって、あったかみがあって、いいなあ、と思う。 7点(2003-11-28 21:35:22) |
12. たそがれ清兵衛
丁寧に作った、いい作品だと思います。でも、藤沢作品になじんだ自分には、やっぱり少し違和感があった。叙情性も、ちょっとじめっとしていたし、それに、なによりも藤沢作品独特の、とぼけたユーモアがなくて、それが残念。真面目すぎ。クライマックスのチャンバラは、凄みがあった。ラスト、わざわざ、あそこまで話を広げることないんじゃないの? 6点(2003-10-24 03:06:08) |