1. あ・うん
今さらながら初見。原作は未読。しかし、けっこう面白かった。 懸命に市井の人を演じる高倉健が新鮮。容姿やキャリアで〝損〟しているだけで、こちらのほうが素に近いんじゃないかという気がします。いずれにせよ出来すぎな男ではありましたが。一方、板東英二の評判が悪いようですが、個人的に違和感はありませんでした。いかにも小市民的でありながら実直に生きている様子に好感が持てます。 で結局、お話としては特に何も起きません。世間一般的には誰も見向きもしないような、ごく小さいコミュニティの友情や愛情や心の揺れが細やかに描かれるばかり。でもそれがいいんでしょうね。 ただし、高倉健も板東英二も真木蔵人も、およそ性欲(エロさ)というものを感じさせてくれません。「プラトニック・ラブ」もいいですが、聖人君子は見ていて飽きます。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2025-04-26 04:25:49)★《新規》★ |
2. こんにちは、母さん
《ネタバレ》 驚くほど何も起きません。リストラも離婚も退職も、あるいは老いらくの恋も、ドラマでも現実でもよくある話。今さらもったいぶって見せられても、という気がしないでもありません。さすが大御所監督になると、何のヒネリがなくても映画になっちゃうんですねぇ。 見どころがあるとすれば、大泉洋と宮藤官九郎と吉永小百合がどう絡んでどんな演技をするか、ということぐらいでしょう。これはこれでけっこう楽しめましたが。 まったく余談ながら、この作品で田中泯が演じる浮浪者の名が「イノ」さん。たまたま少し前に見た「学校」で田中邦衛が演じた浮浪者も「イノ」さん。何かこだわりがあるんですかね。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2025-04-16 00:25:39) |
3. アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル
前代未聞の衝撃的な事件を、軽いコメディタッチで描いているところがいい。たった1人のサンプルから十把一絡げに語るのは誤解の元ですが、こういうのを見ていると、やっぱりアメリカ人は逞しいなと思います。さんざん世間から叩かれて、さらに世界中から笑いものにされて、なおかつ自己主張を崩さないわけで。日本人なら、何はともあれ最初に謝って、あとはひっそり隠遁生活を送るんじゃないでしょうか。どちらが良い悪いという話ではありませんが。 余談ながら、毒親を演じられた方、かつてアメリカのドラマ「The West Wing」で大統領報道官を颯爽と演じられて、非常にカッコ良かった印象があります。この作品と立場的には真逆ですが、自己主張が強い点、けっして謝らない点ではやはり共通している気がします。そういえば失政で世界経済がどんなに破壊されようと、トランプも絶対に謝りそうにないですね。 [インターネット(字幕)] 8点(2025-04-13 22:16:58) |
4. 陽炎(1991)
過去の同系統作品のどれよりも豪華キャスト(仲代達矢と緒形拳がとうとう競演とか、すごくないですか?)でありながら、過去の同系統作品のどれよりも軽い感じ。一生懸命重々しそうに演じてはいても、セリフが浮ついているというか。それにお話も「仕事人」的で深みなし。時代が昭和から平成に代わり、こういう映画も時代遅れなったということですかね。 [CS・衛星(邦画)] 3点(2025-04-07 02:12:14) |
5. トゥー・ウィークス・ノーティス
ラブコメの王道なんでしょうが、両者が惹かれ合う理由がよくわからない。2人ともそれほど魅力的な人物には見えないし、グッと距離が近づくようなシーンもなかったような気がするのですが。まあ蓼食う虫も好き好きということで。 いっそトランプに〝上納〟してやれば、今ごろ「関税措置」の発動を抑えてくれたかもしれません。いやその前に環境云々で即座に「fire!」でしょうけど。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2025-04-05 01:28:11) |
6. 未来世紀ブラジル
《ネタバレ》 ジョージ・オーウェルの『1984』のディストピアな世界観を映像化・コメディ化したような作品。たった1文字の誤記が引き起こす大騒動は、笑えるようでもあり、AI時代の昨今なら現実に起こりそうで背筋が寒くなるようでもあり。ラストの主人公の魂を抜かれたような笑顔が印象的です。 で、ディストピアといえば超管理社会のような描き方が多いように思いますが、これからの世界は真逆もありかなと。つまり政府にいっさい認知されない、税金を取られない代わりに社会保障も受けられない人が巷に溢れるような無管理社会もあり得る気がします。さながら「マッドマックス」の世界のように。トランプのMAGAとかを見ていると、やがて政府からは権威も人材も予算も失われ、嫌が上にも「小さな政府」にならざるを得ないかなと。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2025-04-04 05:19:21)(良:1票) |
7. 櫂
《ネタバレ》 昭和初期の男尊女卑社会を煮詰めたような作品。その理不尽さに、意地を張って抗った1人の女性というのがテーマかなと。名取裕子とか石原真理子とかが意外に活躍せず、ひたすら十朱幸代がクローズアップされる感じ。なかなかの熱演でした。 この手の作品の場合、たいてい緒形拳が途中で没落したり病魔に冒されたりして云々という展開になることが多い印象ですが、この作品はさにあらず。ビジネス的にはほぼ一本調子で成功した様子。その分、夫婦関係の破綻をじっくり描き込んだということでしょうか。最後の緒形拳の暴れっぷりを見て、世の女性たちはようやく留飲を下げることができるかもしれません。 しかしまあ、今さら見て面白いかといえば、そうでもないかな。こんな時代もあったね、ということで。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2025-04-01 02:22:58) |
8. ジャンゴ 繋がれざる者
これぞ痛快娯楽アクション映画という感じ。黒人奴隷の話を絡めつつ、けっしてその問題に真正面から取り組むわけではなく、正義を振りかざすわけでもなく、暗くも重くもならず、そんな時代にこんな黒人がいたら面白いよね、というノリが心地いい。単純なストーリーの中で何度も驚いたりハラハラしたり。 けっこう長尺で、そろそろ中だるみかなと思ったところでディカプリオ登場。またアクの強い演技で興味をつないでくれます。主人公とは対照的な存在として描かれるサミュエル・ジャクソンには、ある種の哀愁が漂います。 何度となく描かれる銃撃シーンでは肉片と血しぶきが盛大に飛び散るわけですが、リアルというより誇張が過ぎる感じなので、かえってグロテスク感が軽減されているように思います。これも監督ならではの計算なんでしょうか。 [インターネット(字幕)] 8点(2025-03-30 03:38:01) |
9. 野良犬(1949)
高評価が続く中で申し訳ないが、私はダメでした。古いので仕方のない面もありますが、とにもかくにもセリフが半分ぐらいしか聞き取れない。字幕を付けるぐらいの配慮が欲しかったかなと。 お話としても、「野良犬」的な執拗さは見どころの一つでしょうが、「まあがんばって」という感じ。いろいろ展開はしても、やはり時代のせいもあってテンポが遅く感じるんですよね。 ただし、戦後間もない日本(東京?)の様子がわかるという意味では非常に面白かった。家屋とか食事とかが軒並み貧しそうなのは当然としても、すでに風俗店が盛況で、バスや電車もほぼ満員。そして何より、あの満席の巨人戦がすごい。〝敗北を抱きしめて〟復興に向かう日本人の、底知れぬエネルギーを目の当たりにした感じです。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2025-03-25 04:33:07) |
10. フォールガイ
これまでエミリー・ブラントの出演作を何本か見てきましたが、もっとも年齢を重ねているはずのこの作品が、もっとも若々しく、かわいらしく見えました。女性は(おそらく男性も?)、実年齢や化粧具合より置かれた環境によって輝きもすればくすみもするということで。 作品自体はお気楽な痛快アクションものという感じ。ふだん見過ごしがちですが、たしかにスタントマンというのはすごいなと敬服するばかりです。 しかし考えてみれば、世の中のサラリーマンというのも、会社やそのトップや上司のスタントマンのようなもの。どんなに活躍しても当たり前のように受け流され、逆に失敗すれば自己責任。そんなことをふと思いつつ物語を追っていると、ついライアン・ゴズリングを必死で応援したくなります。 ただスタントマンも、安全第一の観点から、AIにどんどん置き換わるかもしれません。ちょうどサラリーマンがAIに仕事を奪われるように。 [インターネット(字幕)] 7点(2025-03-22 02:07:01)(良:1票) |
11. 鬼龍院花子の生涯
《ネタバレ》 今さらながら初見。聞きしに勝る傑作でした。とにもかくにも仲代達矢がいい。威厳や怖さを存分に放つ一方で、妙にコミカルで単純でエロさもある。実に人間味溢れる親分でした。そして終盤の没落と、殴り込みと、落胆しつつ去る姿がまた美しい。 それから鬼龍院花子=夏目雅子だとばかり思っていたのですが、冒頭で違うと知って驚き。むしろ花子の出番は少なく、ほとんど夏目雅子が主役でした。しばしば訪れる涙を流すシーンも、有名なタンカのシーンも、これまた美しさに溢れています。 しかし、やはりこの物語はこのタイトルでしかあり得ない気がします。結局、仲代達矢も夏目雅子も岩下志麻も、花子に翻弄される人生でした。それからもう1つ、この映画では描かれていない部分があって、邪道ながら最後まで見た後で冒頭のシーンを見返すとはっきりします。一連の騒動の後、花子がどういう「生涯」を辿ったか、どんな境遇で手紙を残したか、想像するだけで息が詰まりそうになります。40年も昔の映画に感情移入するのもアレですが。 [CS・衛星(邦画)] 9点(2025-03-18 03:07:42)(良:1票) |
12. 哭声/コクソン
スティーブン・キングと「エクソシスト」を混ぜたような感じ。見る者を怖がらせ、あえて混乱させることが主たる目的で、事の真相とかは「勝手に想像してください」ということかなと。いろいろ聖書に則った伏線とかがあるそうで、知識がある人にはピンと来るらしいのですが、たぶんそれもある種のこじつけで、全体的な整合性はないでしょう。 それを差し引いても、すっかり怖がりつつ混乱させてもらいました。このじっとり暗い雰囲気と、物語がグイグイ展開する勢いと、冬の設定なのに汗臭いほどの熱演と、最後までつきまとう「?」と、それだけで十分です。もう1回見たいとまでは思いませんが。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2025-03-14 03:47:09) |
13. トゥルーライズ
今さらながら初見。可もなく不可もないド定番のアクションコメディという感じ。個人的に面白かったのは序盤。ホテル内でのバイクと馬の追いかけっこはなかなか迫力がありました。奥さんが絡むあたりからが本筋でしょうが、むしろスケールが急に小さくなったようで肩透かしを食らい、終盤の派手なドンパチや救出劇に至っては「ああまたか」という感じ。相変わらず夫婦愛・家族愛を高らかに歌い上げるのがお好きなようで。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2025-03-11 01:52:50) |
14. エクストリーム・ジョブ
これは面白い。見たことのある役者はゼロながら、最初からバタバタした世界観に引き込まれます。笑わせる気満々で、徹底的に荒唐無稽に振り切っている感じがいい。登場人物のキャラも立っているし、しかも終盤には定番の激しい暴力シーン付き。なーんにも考えずに見たいとき、必要十分な作品です。 [インターネット(字幕)] 8点(2025-03-09 20:56:10) |
15. 正体
原作もドラマ版も知りませんが、現実に冤罪事件も誤認逮捕も逃亡劇も起きていることは、周知のとおり。それぞれいろいろな要素が絡み合って、こういう社会的エラーに至っているのだと思います。 この作品もそんな現実をフィクション化したような感じですが、お話があまりに単純過ぎませんかね。一見単純に見えるこの事件には、こんな裏があったんだよと見せてくれるのがフィクションの醍醐味じゃないかなと。複雑だったかもしれない要素をごっそり削ぎ落とし、登場人物をくっきり善人と悪人に分けてしまうと、それはもう「水戸黄門」とか「暴れん坊将軍」とかの世界です。そういうのが見たい場合はいいけれど、せっかく直近の新作で、しかも話題の役者がゴロゴロ出ている以上、もう少し今風のヒネリを期待していました。 ついでに言うと、これだけ話題の役者がゴロゴロ出ているのに、レビューの数がこんなに少ないのはなぜでしょうか。誰も見ていないのか、見ても評価に値しないと判断されたのか。 [インターネット(邦画)] 4点(2025-03-07 01:55:14) |
16. スパイダーマン:ホームカミング
《ネタバレ》 アベンジャーズの世界観とか、よく知らないままに鑑賞。それでもそれなりに楽しめました。 まず、あれだけ痛めつけられてなお元気はつらつなスパイダーマンの身体構造はいったいどうなっているのか、ぜひ知りたいところ。 それから面白いのは、こういうアクションものには珍しく、敵味方ともたった1人の犠牲者もいないこと。何らかの配慮なんでしょうか。 そしてもう1つ、配慮といえば「多様性」への配慮も見逃せません。憧れの女性が黒人(と白人のハーフ)、親友がアジア系、その他クラスメート等や敵方にもヒスパニック系や黒人などいろんな人種が実にバランスよく配置されていた気がします。こうでもしないと面倒くさい筋からクレームが来たりしたんでしょうか。 しかし今や「トランプ皇帝」の時代。これから似たような作品が作られるときは、もう容赦なく白人だらけかもしれませんね。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2025-03-01 01:37:06) |
17. 工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男
《ネタバレ》 スパイものらしいハラハラドキドキ感は今ひとつながら、地に足がついた安定感があります。無理な設定や異次元なハイテク機器が登場しないところも好感が持てます。トム・クルーズにはぜひ見習ってほしいところ。大統領選をめぐって韓国与党と金正日が連携していたというのも面白い。どこまでが本当かは知りませんが、あり得ない話ではないかなと。 それはともかく、北朝鮮が登場する韓流映画はいろいろありますが、たいていパターンは一緒のような気がします。国家としては対立しているものの、人レベルでは友情とか愛情とかが芽生えて葛藤したり共闘したり。そしてけっして優劣の決着はつけません。相手が日本だとコテンパンに叩いたりするわけですが。ここには願望が少なからず込められているのでしょう。 で、この作品でも終盤に双方が「祖国のために」などというセリフを吐くわけですが、これはそれぞれの国ではなく、いつか実現してほしい統一朝鮮のことを指しているのかなと。昨今の状況を鑑みるに、まあ当面無理でしょうけど。 [インターネット(字幕)] 7点(2025-02-26 02:55:33) |
18. ハリウッドランド
《ネタバレ》 要するにハリウッド版「羅生門」のような感じ。やはり結論は出さず、「勝手に解釈してください」というわけで、見終わってもあまりスッキリしません。それに「羅生門」と違って途中も地味なシーンの連続なので、あまりパッとしません。実話ベースの限界でしょうか。 しかしこれ、2つの物語がパラレルに進行するわけで、それぞれをもう少し深堀りしたくれたら面白くなった気がしないでもありません。1つは役のイメージが付きすぎた役者の悲劇。映画会社のトップの奥さんが愛人というのも、プラスなのかマイナスなのか微妙なところ。この設定だけで、いかようにも展開しそうでゾクゾクします。 もう1つはやさぐれた探偵の徒労感。カネにならない事件をなぜ追い続けるのかといえば、おそらくはスーパーマンの死に落胆する息子のため。2つの物語に共通するマントを燃やすシーンで、なんとなくそう匂わせているように感じました。脅されて泥酔した状態で真っ先に向かったのが息子のところというのも、心情的にはわかります。 そしてラスト、結局何も得られないまま終わりますが、一転パリッとネクタイまでして息子を迎えに行くわけです。父親として矜持を見せたのかもしれませんが、どう心のオトシマエをつけたのかはよくわかりません。 というわけで、なんとなく面白そうかなという期待感は持たせてくれましたが、期待感だけで終わりました。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2025-02-24 03:14:32) |
19. 北の螢
《ネタバレ》 別にどうでもいいのですが、唯一聞き覚えのある「永倉新八」でざっと調べたところ、仲代達矢が演じた人物にはモデルがいたんですね。しかもたいそう立派な人物で、現地の地名になっているし像まで立っているらしい。それがこの作品では、やたら粗暴な人物として描かれていました。物語としてもひたすら過酷で暴力的。フィクションとはいえ、知っている人が見たらずいぶん違和感を覚えたことでしょう。 で、そもそも岩下志麻がミスキャストのような気がします。「極道の~」のイメージが強すぎるせいか、京都から囚人の男を追いかけてくるような健気な女性には見えない。それに露口茂も、あっさり寝取られ、しかも目の前でイチャイチャされて嫉妬心メラメラなはずなのに、そのあたりがまったく描かれていません。 何か悪巧みをしてくれそうだった成田三樹夫も小池朝雄も丹波哲郎も早々にいなくなるし。全体として消化不良な感じです。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2025-02-21 03:08:39) |
20. ペイ・フォワード/可能の王国
《ネタバレ》 ケヴィン・スペイシーがケヴィン・スペイシーらしからぬ役どころで残念。彼にはもっとイヤらしくひねくれてもらわないと、本領を発揮できない気がします。単なる厄介者のボン・ジョビというのも珍しい。 それはともかくこの作品、よく言えばねずみ講の逆流バージョン、悪く言えば新興宗教誕生物語という感じ。いずれにせよ違和感が募ります。インネンレベルのケチをつけるとすれば、善意の境界線が恐ろしい。電車で3人の老人や妊婦さんに席を譲ったら、もう義務は果たしたとばかり、それ以上は譲らなくていいってことにもなりかねません。 そして他の方も指摘しているとおり、少年の死が唐突すぎます。察するに、〝信者〟が一堂に会する感動演出をラストシーンにするためには、〝教祖様〟に殉教してもらうのがもっとも手っ取り早かったってことかなと。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2025-02-16 09:45:18)(良:1票) |