4. 未来世紀ブラジル
《ネタバレ》 居心地の悪くなるリアルで不愉快な不受理さとでもいうか、阿部公房の「壁」とかカフカとかに通じるものを感じました。 頼りなくて自分勝手で未完成でマザコンの主人公、 バトル氏の家族の慟哭に感情を左右される気配も無く、正義感もなくただ保身の為に行動し続けて、 価値観やアイデンティティに葛藤する描写も無い。社会の非人間さに憤るのではなく自分の都合に合わない事に怒り、ジルに対しても一貫した求愛の押し付けだけ。そのジルは正常な人に見えるが、彼女への感情移入を働きかける描写は全然無く、夢の中に出てくる「美女」のような象徴的な存在でしかない。 そんな中、唯一信念と人間味を感じさせるのがタトル。彼のように自由になれたらと夢を見ながら拷問椅子に座り続ける主人公。 その哀れさがリアルでぞっとしましたよ。 心の通っていない上司と部下・・・人の話を聴かない美容整形狂いの女 ・・・包装紙だけが豪華な高級品・・・そしてやたら出てくる書類、書類、そして番号。うなされ続ける悪夢のようです(笑) 個人的にはクライマックス付近、タトルの身体に纏い付き続ける紙くずの描写! あれは気持ち悪かったーー。 [DVD(字幕)] 7点(2005-12-23 18:30:38) |