1. Dolls ドールズ(2002)
狂おしいまでにピュアな、しかし報われない愛。いわば、究極の愛。映像は、ただ美しい。ただ、くどさは否めないし、ある映画雑誌にあったように文学的陶酔に過ぎる感は否めない。国内では評価されず、海外で評価された面があると思うが、これをオリエンタリズムというコンテキストで考えてみると面白い。 [映画館(字幕)] 7点(2005-08-08 19:17:13) |
2. テキサス・チェーンソー
《ネタバレ》 この映画で僕がおぞましいと感ずるのは、全編に漂うおどろおどろしさよりも、青春真っ只中の若者たちが絶望していく様である。“死体を放置できない”といった良心が仇となっていくのも見ていて辛いし、特にモーガンが保安官に理解されず追い込まれていく過程は恐怖とは違った“やるせなさ”を深く心に刻み込む(この意味で、その保安官の正体の意外性は不要に感ずる)。加えて描かれる、閉鎖性が生むレザーフェイス一家の狂気。直接的なグロ描写はほとんど無いにもかかわらず、“嫌なものを見た”という気持ちになるのはこうした“精神的グロ”とでも呼ぶべきプロットのせいだろう。映画としての完成度で言えば10点でも良いのかもしれない。ただ、全くのフィクションをホントの話のように見せ掛け恐怖感を煽るのは卑怯(よくあることなのかもしれないが、この映画は程度が甚だしい)。もう1点不満を挙げれば、レザーフェイスをモンスターのように見立てるよりは、前半の”見えない恐怖”をもっと前面に出しても良かったのではないかと思う。多分本作は2度は見ないだろうが(ちょっとしたトラウマ)、いつかオリジナルは見てみたい。 8点(2004-09-15 01:01:46)(良:2票) |
3. 殺人の追憶
激動の時代は、得てして迷宮入りに終わるおぞましい事件を生む。日本とて例外なく同じ経験をしているんだよね。最後に無垢そうな子が言う犯人像には、やられた。現代的な捜査法を否定している刑事が最後に頼るのがまさにそれであるというのも、過渡期である時代、新しいものが生まれゆく時代の象徴であろう。変わるものと、変わらないもの。失ったものと、得たもの。パク刑事の家庭の描写も、また象徴的である。 9点(2004-09-14 06:49:47) |
4. ホワイト・オランダー
《ネタバレ》 美しさと鋭いトゲを併せ持つ母と、自分自身もトゲを持ちながらも母のようになりたくない、と自身のアイデンティティーを模索する娘。母に待たされる車中など、アストリッドが主観的に長く感ずる部分は贅沢に時間を取り、それ以外は思い切ってカットしているように思うが、それだけにアストリッドの心の変遷が浮き彫りになっていたと感ずる。“強い母”が、変わったアストリッドを見て言葉を失い、娘を責めるよりは自分を責めたのが印象的である。ラストの“どんなに私を傷つけようと、母は私を愛している”というアストリッドの帰結に、親子の絆の強さと同時にその哀れさを感じた。静かに心に染み入る1本。 8点(2004-09-14 06:47:10) |
5. ファインディング・ニモ
実物よりも綺麗なんじゃないかと思わせる程の芸術的CG(特にクラゲ!)と、マンガ的なキャラクター(特に表情)が見事に融合しているのがすごい。“主に子供向き”のストーリーであることは確かだけど、まあアニメ見るときぐらい童心に帰りたいものです。 8点(2004-08-31 12:46:47) |
6. シカゴ(2002)
セクシーながら力強いキャサリン・ゼタ・ジョーンズのパフォーマンスから見事に引き込まれる。ミュージカルの部分をキャラクターの心情を表すものとし、物語の進行と完全に分けた展開が新鮮。レニー・ゼルウィガーをここまで魅力的に撮るとは!風刺がきいていて毒がありながらも、本当に楽しめる。後味の良さは不思議なくらい。ミスター・セロファン大好き! 9点(2004-08-31 12:34:15) |
7. ルール2
出たぁ、腎臓泥棒(笑)!!!ラスト、レベッカ・ゲイハートの登場もそうだけど、(前作の)ファンをニヤリとさせるこういうの、大好きです。前作に比べれば凡作の印象は拭えないものの、都市伝説の扱い方を1とガラッと変えることで全くマンネリ化していないのはすごいと思う。都市伝説の意義が薄れてしまっているってのは事実だけど。前作同様、ロレッタ・デヴァインが見事に笑いの要素をプラスしていていい。昔のパム・グリアーの映画見てみようかな。。。3以降は実際は続編でないので要注意。意図的に翻訳を改変してる箇所もあるし、、、映画の製作者たちと違って日本の映画会社にはガッカリですよ、ホント。しかし皆さんの点数低いですね(笑)。。。 8点(2004-08-18 04:14:05) |
8. ルール
ファーストシーンが素晴らしい映画は素晴らしい(by おすぎ)!初っ端から一気に引き込むプロットの巧みさ、“身近な恐怖”である都市伝説の要素を見事に加えたストーリーの斬新さ、そして何よりレベッカ・ゲイハートのラストの演技がすごい!“Ding, ding, ding, ding, ding!(字幕は‘ピンポーン!’)”のとこは思わず巻き戻して繰り返し見ちゃったからね。エログロのツボもしっかり押さえてると思うし、スクリームもいいけど(1のみ)こっちもいい!って褒め過ぎかなぁ。 8点(2004-08-18 03:55:11) |
9. ロスト・イン・トランスレーション
ドナルド・リッチーが、日本はアイデンティティーを模索するのに良い場所である、みたいなことをどこかで書いていたが、日本が順応しにくい国であるとすると確かにそうなのだろうな、と思う。本作におけるボブとシャーロットも、日本という異国で自分自身と向き合うことになる。そして孤独を心に秘める者同士、お互いを愛すでもなく、その孤独を癒しあうでもなく、ただ惹かれあう。そうした微妙な心理を映像や音楽で伝えるのは確かにうまいが、しかし本作の描く日本人像は意図的過ぎると僕は感じる。確かに“ある光景”ではあるかもしれないが、閉鎖的でオタク的な部分、側面のクローズアップは不快であった。更に言えば、ジョンやケリーのアメリカ人像もオーバー過ぎるだけで全然笑えない。日本人らしさとアメリカ人らしさの狭間で揺れる2人の姿を浮き彫りにしたかったのだろうが。日本のお笑いがくだらなさを強調して出てくるが、本作の笑い、例えばボブの部屋に来る女などは同じくらいくだらないと思ってしまった。締め方は天才的!だと思うけど。 6点(2004-08-18 03:38:46) |
10. APPLESEED アップルシード
2Dはアンリアルな面こそが良いのであって、そこにモーション・キャプチャーを入れたり、3Dの背景を合わせたりするのはどうなんだろう。動きが変にリアルな2Dのキャラクターにむず痒い感じがしてしまった。100%CGの海と実写と思われる海が1本の映画で両方出てくるのも統一感が無いように感じられて何とも。また、車やビルの反射が不必要に多く、いかにも“すごいだろー”って感じで、いわば“技術の押し売り”のような感覚を覚えてしまった。確かにすごい技術の高さなんだろうし、潜在可能性を大いに感じさせはするんだけど。ストーリーは、途中まではくだらないと思いながら見ていたが、中盤からはそのくだらなさはわざとだったんだ、と思わせる展開になり、悪くないと思う。 7点(2004-05-04 04:49:27) |
11. ブルース・オールマイティ
俳優ジム・キャリーもいいけど、やっぱりコメディアンとしての彼も良い。しっかり笑えて、しっかり泣けて。途中素晴らしき哉~がテレビに映るのも、オマージュの示し方として良いと思う。戸田さんは上手い字幕を作っていると思いますが、出来れば英語で見たいですね。にしても、神が黒人というのは何か示唆的だなぁ。 8点(2004-05-04 04:10:26) |
12. 彼岸花
“親バカ”とよく言うけれど、その意味でバカでない親なんて多分いないんだよね。有馬稲子がキレイ。情感豊かに、哀愁たっぷりに物語を紡ぎつつも、ベトベトしない小津のストーリーテリングはさすがという他は無い。僕はこれが日本映画の最高傑作のうちの1本であると信じて疑わない。 10点(2004-05-04 03:29:35) |
13. フレディVSジェイソン
推敲を重ねたと伝えられる脚本だけあって、現実と非現実を同軸で描き、確かに話は割と凝っている。それぞれの作品群のファンを満足させつつ(僕は正直よく分からないんだけど)、全く知識が無い層もしっかり楽しめるようになっていると思う。ただ、ジェイソンの過去をああいう形で映像化してしまうと人間臭さが際立ってきてしまって、ジェイソンの猟奇性が半減してしまったように思う。そうでなくても、本作においてフレディもジェイソンもホラーっぽくないのに。いや、これはコメディだと思えば良いのかな。あと、フレディ強すぎます。途中までね。 7点(2004-05-04 03:12:56) |
14. 猟奇的な彼女
エンターテインメントのツボをしっかり押さえながら、ちゃんとホロリとさせてくれる。オーバーでシンプルな演技、プロットが逆にすごくいい。終盤の韓国のラブストーリーに多いネチネチ感は個人的に好かないが、全体としてみればラブコメの傑作だと思う。男がそれ程カッコよくないのが良いね。 9点(2004-05-04 03:05:29) |
15. めし
地味ながら情感豊かな良作だと思う。ただ、成瀬は女を撮るのに長けていたと聞くが、僕はその点では小津の方が上だと思う。本作での原節子は何かゴツい。強そう。今の時代こういう話を作るとフェミニストがうるさいんだろうな。良くも悪くも日本的な妻像ですね。 8点(2004-05-04 03:01:11) |
16. 早春(1956)
ドロドロの人間関係をサラッと描いてしまう小津の凄さ。戦争の傷跡を小津が(主テーマではないとはいえ)割と直接的に描くのは珍しいのではないかと思ったのだが、まだまだ小津作品を見足りない証拠なのだろうか。様々な複雑な感情を内に秘めながらも爽やかに蛍の光を合唱するシーンが印象的である。毎度のことであるが、カットバックの妙が冴える。 8点(2004-05-04 02:23:25) |
17. 遠い空の向こうに
心から良いと言える映画、誰にでも薦められる映画ってそう無いと思う。60年代アメリカのテイストを見事に再現している点も素晴らしい。空を見上げながらリフトで降りてゆくホーマーのショットは、映画史に残る名シーンだと思う。 10点(2004-04-16 20:53:32) |
18. バック・トゥ・ザ・フューチャーPART3
今度は西部劇テイストと、客を楽しませる為に都合良くタイムスリップしたもんだと思わざるを得ないが、やっぱり面白いので許せる。運命なんか無い、というのはタイムトラベルものには陳腐なメッセージであるが。 9点(2004-04-16 20:10:01) |
19. バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2
1週明けのテレビドラマよりも不親切な、前作から直結させるオープニングはある意味挑戦的であるが、1との有機的なリンクの暗示であるとも言える。異なるストーリーを見事に交錯させる巧みさが、本作を極上のエンターテインメントとすることに成功させている。 9点(2004-04-16 20:08:04) |
20. 28日後...
人類滅亡を目前の危機としても、利害を一致させず殺し合う人間の哀しさ。前衛的な映像感覚と手持ちカメラのリアルさが人間の底にある欲、本能を暴き、“人間らしさ”とは何かを問いかける。10点と迷う。 9点(2004-04-16 20:01:25) |