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1.  生きる 《ネタバレ》 
30年役場で惰性のみで仕事をしてきた課長が余命半年を告げられ、これではいけないと突然市民のために生きる事に目覚めて実現困難な公園新設を死ぬまでにやり遂げた映画・・と考えると多分誤りで、平和な現在を基準に考えるとわざわざ映画にするような題材に思えません。 映画にも一部描かれますがこれが作られた昭和27年と言えば、主人公の年代の人は戦前の二・二六事件などの緊張した時代から戦争で肉親が出征、戦死したり、はたまた空襲で街が焼け野原になり、近隣の人が死に、戦後は食糧難と復興で観客も含めて皆「生き延びる」だけでも大変であった時代と思います。主人公も無表情のまま「とにかく忙しくて・・」とその人生を語っていますが、時代に流されるまま「生き延びる」ことにはその場その場で「必死に対応して生きて来た」と言う事だったのではないかと思います。そうして必死に生き延びた人生が「後半年」と宣告された時に、「何か」が芽生えて、生き延びるために生きるだけではない「何か」を若い小田切君に魅入られるように模索した結果が「公園建設」だったのだろうと思います。 「何か」が見つかった後はいきなり葬式の場面になって、公園建設に奔走する様は関係者の回想で断片的に語られるだけなのですが、建設のストーリーは問題ではなくて「精神」だけ描きたかったのだと思います。その「精神」も市民のため云々という奇麗事ではなくて、生き延びるためだけではない「生きる」の「何か」がこんなであった、というのが主眼で「夕焼け」と「雪中のブランコ」のシーンにその精神が集約されたのかも知れません。「何か」は見る人それぞれ何でも良くて、当時の状況からは「革新的な思想」や「新興宗教」はたまた一攫千金を夢見た「起業」かもしれませんが、作者はその何かを模索して欲しいと思ったのでしょう。とても良い映画ですが、現在から見るといろいろ考えないと解り難いという事ではこの点で。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2018-01-09 14:29:22)
2.  羅生門(1950) 《ネタバレ》 
「さっぱり解らない」「恐ろしい」という杣売りの繰り返される嘆息は「登場人物が自分勝手に事件を解釈して訴えている」というどこにでもありそうな題材を、荒れた時代(応仁の乱の頃?)に「盗賊が強姦にまつわる殺人をした」というこれまた陳腐な事件について語るにしてはあまり共感できない感じがしました。確かに映画としての撮り方、京マチ子の麻呂みたいな眉しかないのにあの妖艶さは「すごい」と言わざるを得ませんが。武士と妻のきちんとした身なりと、その他の人達の襤褸をまとった超格差ぶりがある状態であのような人間愛憎劇が成り立つものかなあという感想もあります。1950年というまだ日本が戦後の貧しかった時代に、貧しいなりに清濁併せ持って僅かであっても希望を持って一生懸命生きる、という日本人を描くという背景を考えると納得できる面もあります。ということでこの点で。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2015-03-25 17:23:54)
3.  トコリの橋 《ネタバレ》 
F9Fパンサーなどの初期ジェット艦上機の実機が空母に離着艦するシーンだけでも航空ファンには貴重な作品。しかし私は敵を悪、我を善として描いた第二次大戦ものや西部劇、或いは一部の対テロ戦争映画と違い、対朝鮮は軍人達の複雑な思いを描ける所に意義があると思う。「何故戦わねばならぬのか」の主人公の問いに「ここが朝鮮(戦場)だから」という苦しい答えしか出せず、記者会見で「ソ連との代理戦争だと口走ったとたんに追い出された」と苦笑する艦長の姿はこの映画作成を全面支援した米軍人達の、当時正面切っては言えない本音だったのではないか。横須賀から出港する夫の乗った空母を見送るグレースケリーの後ろ姿は一幅の絵画を見るようで美しく切ない。最近の勧善懲悪的娯楽三流戦争映画にはこのようなシーンはない。二人の息子を戦争で亡くして家庭が崩壊している艦長、部下を庇って上官にたて突いたため昇進を逃す隊長、疑問を抱いたまま朝鮮の泥の中で戦死する主人公、私は生き方が下手な真面目な軍人を描いた作品が好きである。
[DVD(字幕)] 9点(2006-12-27 16:22:46)
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