1. 晩春
説明セリフが一切なく設定もキャラ紹介も全て何気ない会話や仕草で説明している。紀子の結婚相手を一切登場させていない点を一例として、伝えたい物語の芯の部分に集中してドラマを展開させている。日本家屋の美しさを存分に生かした計算された構図設計。よく言われる小津映画の特徴が最も端的に現れている入門編ともいえる作品。ラストの親子の会話、特に父親の言葉はあまりに美しすぎ、人生の本質的なものを見事に表現していると思う。人生とは別れであり残酷なものだけれどそれを受け入れてこそ幸せを感じることができるのではないか・・・というような(言葉にすると非常にくさいというかうっとおしいわけですが)ことを言葉ではなく映像で魅せていく、これはやっぱり芸術でもあり大衆の心を揺り動かす一級のエンタメ映画だと思います。この作品を観ないで人生を過ごすのはあまりに勿体ないと感じてしまう。ドラマチックな要素がなく退屈だとかいろいろ文句をつけることはたやすいが、人生とか人間とか幸せとかいろいろ悩む全ての人に一度は観てみることをお勧めしたい。 [DVD(邦画)] 8点(2007-12-27 16:15:32) |