1. オーソン・ウェルズのフォルスタッフ
《ネタバレ》 映像革命の「市民ケーン」、長回しの「黒い罠」。 鬼才オーソンウェルズは、令和の人たちは、どれくらい知っているだろう? 彼がシェイクスピアに傾倒していたのは、観ていないが、「オセロ」「マクベス」を 映画化したくらいの傾倒ぶりみたいだ。 シェイクスピア大好き黒澤明にも、大きな影響与えたのではないだろうか? 本作は英仏百年戦争時代の歴史劇「ヘンリー4世」の魅力的な脇役フォルスタッフを主役にした映画。 とにかくキャラが濃い。オーソンウェルズ自身が。すごく! こんな人にこんなすごい映画が撮れちゃうの?て思ってしまう。 余談だが、本作は日本では室町時代のころのお話。 ここまで建築物がすごいのが西欧だったというのは、やはり恐ろしい歴史的事実。 [DVD(字幕)] 9点(2025-04-05 16:47:48) |
2. 素晴らしい風船旅行
《ネタバレ》 これは、素晴らしい! 本当にこのシャシンを実現させたフランス人に驚嘆します。 まるで絵本のような世界を、映像で魅せます。 宮崎駿監督、この映画にかなりインスピレーションをもらったでしょう! この映画を観てて、彼のアニメを思い出しました。 80分の尺ながら、ハラハラドキドキする展開もあり、 素晴らしい映像にメリハリをつけてます! 今ならドローンで、できるかな? [ビデオ(字幕)] 8点(2025-03-26 23:32:55) |
3. ひなぎく
《ネタバレ》 ひどい映画。 だが、共産主義の国が、自由とはなに?と問うた映画と思えば、意味がある。 自由になれば、あんなこと、こんなこと、出来て楽しいな?あれ?あれ?え?これで幸せなの? そんなラスト。 「自由」についての考察が足りないといえば、そうなのだが、制作されたのは、1966年。 この2年後に、チェコでは、「プラハの春」事件が起きる。 民主化への波が来るのだが、ソ連によって、あっという間に潰される。 今の時代には、あまりにもいろんな考えがアップデートされておらず、 何も知らずにみると、不快なだけの映画。 ただ、あくまでも、これはイチ男の意見です。 追伸)その後、この映画について書籍にて調べました。 チェコでは、1989年までの社会主義時代、すべての映画が国家予算で創られており、 この映画の食べ物を粗末にするシーンなど、国会で是か非か真面目に議論されたらしいです。 しかし、労働者には受けが良かったらしく、作家のミラン・クンデラも擁護して、 1968年のプラハの春を準備したと言われているそうです。 [ビデオ(字幕)] 7点(2025-03-22 00:02:06) |
4. 秋日和
《ネタバレ》 いやぁ、小津さんの巧さは、本当に凄い! 可能な限り、登場人物を少なくして、その中でうまく片付けてる。 本当に見事! 小津さんのこういう手さばきは、「浮草物語」が一番と思ってたけど、本作もお見事! 「晩春」と対をなしてる。父と娘、本作では母と娘。 母と息子と言えば「一人息子」、父と息子と言えば「父ありき」。 家族の全パターンを、ぐるりと小津さんが料理してくれた。 実に旨いお酒だなぁ・・ [DVD(邦画)] 8点(2025-03-19 00:00:29) |
5. 青春残酷物語
《ネタバレ》 学生運動のなか、何が正しいか分からなくなった時代。 どうあがいても、現状は変わらない。 そんな若者の焦りが、痛々しい結末になる。 アメリカ映画では、「追憶」に当たるのかなぁ バーブラストライザンドと、桑野みゆき。この二人の違いが、 アメリカ人女性と日本人女性の違いと言えるのか・・ 何かそんなこと考えた・・ 桑野みゆきは可哀そうとしか言えない。 でも久我美子にも、妹と恋人の生き方を見て、昔の恋人に会いに行かせるところが大島渚らしい。 やらしいんだね。 [ビデオ(邦画)] 7点(2025-03-17 23:47:20) |
6. 暗殺(1964)
《ネタバレ》 篠田正浩監督への辛口コメントが多いのは、期待が大きすぎたためであろう。 「乾いた花」で描いた賭博場の緊張感を、時代劇に持ち込んだらどうなるか? それがまさに本作であった。 そして、その凄まじい出来栄えに当時の映画界は息を呑んだろう。 白黒の緊張感を、武士の殺し合いに応用した本作は、まれにみる時代劇となった。 時は、幕末。幕府と朝廷の間に緊張感の生まれた、あの複雑な時代である。 日本を分裂させるかのように混乱させた黒船。 そこから桜田門外の変、公武合体へとつながる流れの中で 有名な新選組の出番のちょい前、尊王攘夷の志を持つ清河八郎への暗殺が描かれている。 監督の奥さんとなる岩下志麻も出ている。 監督にとって、転換期の作品と言える。 のちの時代劇に、平安時代や近松へのアプローチを見せ、天才新人の名に恥じぬ仕事を していながら、それでも観客は、この緊張感を描いた映画を欲したのだろう。 令和の今、これだけの仕事をする人がいたというのは、驚きでしかないが、 ファンというものは、もっともっと凄いものを、と欲しがるものらしい。 それか、岩下志麻に持ってかれた才能を惜しんだか・・(笑) [ビデオ(邦画)] 8点(2025-03-15 21:48:20) |
7. 乾いた花
《ネタバレ》 石原慎太郎原作。 「狂った果実」同様、独特の女性像。 加賀まりこの存在感がすごい。 花札賭博のシーンの緊張感は、「麻雀放浪記」を思い出した。 遠景からのショットを入れずに、白黒画面で、登場人物の顔を写し出して、 緊張感を醸し出す。 後の篠田監督作品は、時代劇が多いせいか、 世界観を出すために、遠景からのショットが多く、 本作は、彼の若い頃の才気走った演出が面白い。 [ビデオ(邦画)] 7点(2025-03-15 01:09:32) |
8. 網走番外地(1965)
《ネタバレ》 何という傑作!面白い! 全然、飽きさせることなく、見事に魅せる。 でもシリーズ化?こんなにいいラストなのに、どうつながる? 性根の腐った腐れ縁の相方に、最後の高倉健の気づきに泣ける。 泣かない奴はいないんじゃないかな・・ ちなみに、よく似た話の「暴力脱獄」が、あとから創られたことに、 日本の方が先を行ってたことに驚き! ただし、手錠でつながれたままの脱走は、「手錠のままの脱獄」のアイデアの方が先です(汗) [DVD(邦画)] 10点(2025-02-21 23:20:12) |
9. 博奕打ち 総長賭博
《ネタバレ》 無駄のない展開で、あっという間に映画が終わる。 悪役が、本当に分かりやすいのも、この映画を面白くしている。 筋を通す、それは大事だが、その落とし前にお命頂戴が、令和の今では、受け入れられない話だが、 でもそれ以外は、整理された話に驚きます。 いや、でも最後はこうなるんだろうな、って分かりやすい分野の映画だから、 ここまで整理されてるのかな・・ 話作りの際、現代の会社組織の人間関係にも、使える展開じゃないかな、この映画。 アクションで興味深かったのは、若山富三郎が座頭市みたいに現れるシーンが良かった。 [DVD(邦画)] 7点(2025-02-18 21:02:46) |
10. 不良少年(1961)
《ネタバレ》 この年、黒澤監督の「用心棒」が上映された。 しかし、キネマ旬報ベストワンに輝いたのは、本作である。 ドキュメタリー畑からの殴り込みだった。 久里浜少年院での生活を描いている。 戦争で父を亡くし、母とも連絡取れず。 就職したものの長くは続かず、ぶらぶらしているところを補導されたのだ。 戦後間もないころ、こんな少年は多かったと思われる。 映画も、本当に非行歴のある少年を使っているという。 鑑賞後、少年のまっすぐな瞳に、 いい大人になっていてほしいと思わずにはいられない。 そんな世の中であってほしいとも思う。 [DVD(邦画)] 7点(2025-02-07 22:44:03) |
11. 他人の顔
《ネタバレ》 安部公房と勅使河原監督のタッグ、いいよなぁ。 この世界を自分なりにのみこんで、その後に、世界に実験または装置をしかけて、 そこから人間、とくに現代人の孤独を浮き彫りにしていくという、世界へのアプローチがいい。 「砂の女」では砂地獄に作られた家であり、本作でいえば顔を変えることができるという技術であったり・・ 自分の顔にコンプレックスを抱いてる男が、顔を手に入れた後、 やってみたかったこととは? そこに何とも言えぬ現代の哀しさが出てる。 もう一組、顔に傷のある女性も出てくるが、 こちらはテーマのために作られた設定のようで、未消化だった。 面白い!良作! 豆情報・・診察室のデザインは、建築家の巨匠磯崎新によるものらしい。 [映画館(邦画)] 8点(2024-12-19 22:27:53) |
12. 砂の女
《ネタバレ》 面白い! 最初は、男と女の寓話かと思ってた。 確かにそうなのだが、人生ってこんなもんじゃね?みたいなラストがいい。 岸田今日子が、実にはまり役。 なんというか、あんなひどい環境で、女として生きてる感が出てて、巧い。 ただ、今までの死んでいった男たちとは、子ども出来なかったのかな? 今までの男たちの末路が知りたい。 [映画館(邦画)] 10点(2024-12-11 20:29:24) |
13. ハタリ!
《ネタバレ》 こんな映画を撮っちゃうアメリカ映画の凄さに驚く。 とにかく映画のためなら、ここまでやるという意気込みがすごい。 動物園に連れていくために、サバンナで動物を捕獲する男たち。 現代では、動物愛護団体が黙っていないだろうけど・・ 子どもの時、「野生のエルザ」ってドラマをテレビで見たが、その感じがサバンナ一帯に展開する。 仔象と女性のエピソードがほのぼの。 男と女は別れられるが、動物の愛は一途なのだ。 それがラストの大騒ぎとなり、ラストはさてさて? スピルバーグは「ジュラシックパーク」で、恐竜版「ハタリ!」を創りたかったんじゃないかな? デジャブ感あるなと思ったら、「ジュラシックパーク」だった。 しかし、本作は、CGなんかじゃなくて、本物ですからね!凄いデス。 [DVD(字幕)] 7点(2024-12-09 21:41:58) |
14. レマゲン鉄橋
《ネタバレ》 戦争映画にも、史実ものと作り物の2タイプがありますが、 これは戦時中、実際あった攻防みたいですね。 最初は、ロバートボーンが主役で、前線の橋を爆破前に、味方のドイツ軍を 橋を渡らせようとする話かと思いました。 ところが、目線は連合国側に行き、橋を敵が爆破するのを阻止するとか、いきなり 上司の命令で方針が変わったりして、現場が混乱する様子が描かれます。 この部分が、実話ベースなので、かなり説得力というか迫力ある場面です。 さて、橋はどうなるのか?ってな話であります。 考えさせられたのは、戦争という破壊活動の中で、 高価な人形が壊れたことを気にする役人が出てきたり、 装飾された西洋建築が、ボコボコ破壊される場面がでてきて、 戦争ってそういうもんだよなぁと改めて思ってしまいます。 [DVD(字幕)] 7点(2024-11-09 22:07:49) |
15. 風林火山
《ネタバレ》 日本映画の戦国合戦場面で、一番愛されてるのが川中島。 衣笠の「川中島合戦」(未見)、「戦国自衛隊」そして、この後の長篠では「影武者」。 映画に愛されてる信玄と上杉。 しかし、稲垣監督は主人公を山本勘助にした! この人物、講談の作り上げた人物かと思いきや、 実在してる信玄の書状に「山本菅助」なる名前が・・! 実際に信玄の身近に仕えて、使番(つかいばん)を務める人物であったことが分かってる。 もうね第四次川中島と言えば、山本勘助がやられる合戦。 その前の勝頼とのエピソード、板垣の父と思ってましたの言葉。 もう涙なしでは見られない。 案の定、戦況は不利に・・(涙) この作品を観て、黒澤さん負けず嫌いに火がついたんじゃないかなぁ・・ [DVD(邦画)] 8点(2024-10-06 23:50:12) |
16. 影の軍隊(1969)
《ネタバレ》 レジスタンスの映画。 見どころは、女性しかも母親が戦士になっている点。 むちゃくちゃ優秀なのだが、捕まって子どもを人質に取られると、かくも簡単に落ちてしまう。 この点において、やはり戦いに女性は使えないということかもしれない。 その女性、マチルダの練る作戦は、ものすごく優秀。 リノヴァンチュラが捕まった時に見せた作戦は、凄かった。 そのリノが、前半の主役である。 独特の風貌に似あう戦士ぶり。 しかし、映画は、アクションものではない。 レジスタンスの静かな戦いを描いている。 メルヴィルの作品。再評価の必要性があると思う。 どうでもいいが、手塚治虫のキャラクターにランプという人がいるが、リノヴァンチュラだと思う。 もう一つ、影の軍隊と言えば、我々昭和っ子には、漫画「男組」を思い出させる。 当時のワイルド7はじめ、こういう映画の影響が、漫画に強く出てたと思う。 [DVD(字幕)] 7点(2024-10-06 01:08:53) |
17. モラン神父
《ネタバレ》 持っているものがアレっぽち! ここで生活していく気持ちのない人に説教されても、 そりゃ胸には響きませんよね。 神さまに捧げているから、何もいらないってことでしょうか。 カトリックって厳しいんですね。 モラン神父が女性に興味を持たれてるとこから、どんなドラマが展開するか? そこがポイントでした。 神と女性、これを描いた映画は、古い映画ですが、「雨」という名作があります。 しかし、この映画は、ひたすらまじめな神父でした。 ただ、若さの価値を、あまり考えてない発言が多いですね、この人。 彼女の涙は、神父のけなげな気持ちが神さまにのみ独占されてるからでしょうか・・ 「来世」を重んじる思想は、今を大事にしないのでは? 次の赴任地へ旅立つ神父さんは、神の世である世界全部が、ひとつの生活地点となるのでしょうか? 土着に生きる女性には、理解できないズレが面白かったです。 [DVD(字幕)] 7点(2024-10-02 00:35:56) |
18. セックス・チェック 第二の性
《ネタバレ》 総理大臣すら女性になりかねない、この時代、この作品がお叱りを受けずに済むだろうか? セックスチェックで両性具有の人間が、セックスしまくって、晴れて完璧な女性になる、とか こんな話、海外の変態作家の作品でもお目にかかったことない展開。 やっぱり、海外メディアが言うように、日本の女性は軽視されているのか? 結構、皆さま、大きな顔をされてますが・・ まあね、これが封切りされた頃は、今とかなり違うんだと納得してしまおう。 [DVD(邦画)] 7点(2024-09-27 23:18:31) |
19. 新源氏物語
《ネタバレ》 ご贔屓の川口松太郎の原作というので鑑賞。 すっきり分かりやすい。 源氏物語の最初のほうを整理してくれてる。 千年以上、日本人に愛された文学。 小生、軽々しいことは言えないが、高校の教科書でおなじみの小林秀雄は、 源氏物語を「もののあわれ」と言っていたのを思い出した。 [DVD(邦画)] 7点(2024-09-03 12:40:22) |
20. シェルブールの雨傘
《ネタバレ》 全編、セリフが歌。 ミュージカルは数あれど、ここまで、歌に徹してる映画は稀。 でも、これが飽きさせない。 キレのいい音楽も混ぜ、何となく「ラ・ラ・ランド」の演出のヒントにも なったのではないか?と思った。 それにしても、カトリーヌドヌーブ、お美しいですね~ 我々の世代では、おばちゃんのドヌーブしか知らないから、 実世界での周りのおばちゃんたちも、若い頃は相当きれいだったんだろうなっと。 オゾンの「しあわせの雨傘」と比べて観ると、面白いデス [ビデオ(字幕)] 7点(2024-08-22 15:42:40) |