1. 砂の器
《ネタバレ》 嗚呼、駄目。昔観た時同様、“宿命”が流れる、あの回想シーンでやっぱり大号泣。「会いたかったでしょうね」この台詞もよく覚えてます。ええ、会いたかったでしょうとも!正直、シャツはそんな簡単に見つからないよなとか、刑事らの必死の捜査など、描写不足かなとも思う箇所もあるとは思うのですが、寧ろこの上映時間でまとめたところを評価すべきなのかも。思いっきり情を曲にのせて描写した部分に、こちらも思う存分グッと情に流されるというか。私の中では、松本清張の映画=野村芳太郎監督=まずコレです。 [DVD(邦画)] 9点(2014-05-05 01:29:12) |
2. ハロルドとモード 少年は虹を渡る
《ネタバレ》 キュートさと瑞々しさと切なさがギュッとつまったファンタジー。Cat Stevensの歌も合わせて、胸をつかまれちゃいました。ハロルドの葬式ごっこ、ブルジョワだけど空虚で暗い色調のハロルドの家、無気力なハロルド、緑に囲まれたモードの住い、カラフルなモードのファッション、破天荒でチャーミングなモード。そこかしこに生と死と、対称的に意識された作りも素晴らしかったし、何よりかつて死の恐怖の体験と、だからこそ今現在の生を謳歌しようとし、幕を閉じようとするモードと、彼女を通して本当の生と死を知るハロルド、2人に心動かされずにはいられませんでした。彼女の過去に気付き、そっと肩を引き寄せるシーンと、コインを贈って花火を見つめるシーンと、2人の後ろ姿が目に焼き付いて離れません。出来れば20代の時に観たかったような気がします。 [映画館(字幕)] 10点(2010-09-12 21:31:16) |
3. ミツバチのささやき
好奇心旺盛な少女が、死』に興味を持ち、出会う。それを台詞で具体的に描くのではなく、象徴的に比喩的に描く。ミツバチの羽音、風の音、草原の音、汽車の音、時計の音、陽の光、月の光、焚火、灯の光・・感覚が研ぎすまされた、非常にデリケートな作品。言葉では表せないものを、スクリーンに映し、そして語る。アナ・トレントのつぶらな瞳は、とても印象的。素晴らしい作品です。 [映画館(字幕)] 9点(2009-04-18 20:58:49) |
4. 鏡
ううん、難解でした。主人公(もしくはその父)の映像がサワサワと多様に被さり、白昼夢を観ているような感覚に陥りました。どれが現在なのか過去なのか、現在で夢なのか、否、本物ということに意味はあるのか?言葉で語ることに意味はあるのか?と、風に草がなびくように、観客に揺らぎを与える一作。 台詞や自然描写(水、火、草)、映像の美しさ、繊細さは相変わらず溜息もの。でも難しかった…これが正直な感想です。 [ビデオ(字幕)] 6点(2009-02-11 10:47:51) |
5. 惑星ソラリス
台詞や登場人物、映像の1つ1つが全て謎掛けのようで、とても神秘的。同時に、リンゴを齧ったり腕を洗う母親や最後の場面の父親に宗教めいたものも感じつつ。ソラリスがつくり出す存在について、ある者は良心の問題として自らを罰し、ある者は単に物質化したもの、客人として扱う。クリスはそこに懺悔や贖罪を負い、魂の救済と安らぎを求めていく。図書室で、ブリューゲルの絵(雪の中の狩人)をじっと見るハリーの目。自然の秘密を暴いていくのが科学だとすれば、「知識は不幸を招く」と呟き、死などの所謂“神の領域”はそのままに秘密裏に伏すべきなのか。思索に富んだ作品でした。 [ビデオ(字幕)] 10点(2009-01-31 01:00:54) |