1. 瘋癲老人日記
老人の性に対する執着を描いた、谷崎らしい内容の作品。 いかにも下世話なお話に成り下がりそうなテーマですが、情緒のある風景や街並みなどのシーンが用意されていて、さりげなく生と死、老いへの苦悩や葛藤を描いていた点はよかったです。 息子の嫁を演じる若尾文子の小悪魔的女王様役は、もうはまり役。もはや汚れ役と言ってもいい、老人役の山村聡もがんばっています。 主人公の滑稽さ、悲哀さがよく表現されていました。 [DVD(邦画)] 5点(2015-07-22 07:27:48) |
2. 愛欲(1966)
二人の女のあいだで揺れる男の苦悩と葛藤を描いた、一応メロドラマのジャンルなのでしょうが、 高度成長期の時代背景を舞台に企業ドラマ的な要素も入っています。 それがストーリーに厚みを持たしている部分でもあり、妙につまらなくさせている部分でもあるのかなと。 佐久間良子役の女性のキャラ設定は、とてもオーバーで、どうにも強引すぎる感が……。 一応成人指定らしいのですが、過激なラブシーンなんてひとつもないです。 総体的に、とても暗い内容と展開の映画でした。 [DVD(邦画)] 3点(2015-07-06 01:13:11) |
3. 黒部の太陽
邦画発のスペクタクル映画。とても長い上映時間の映画だけど、俳優陣も豪華で、とても見応えがあります。 ただ実録ドラマに近い作りなので、いい意味で裏切ってくれたというような展開面での面白みはないです。 主人公と父親の関係がストーリーに厚みを加えており、「巨人の星」の飛雄馬と一徹の関係を彷彿とさせてくれます。 ひと言で言ってしまえば、熱いスポ根ドラマを観賞しているような作品でした。 [DVD(邦画)] 5点(2015-06-17 02:00:05) |
4. さらば恋の日
「青い体験」を真面目に作ったような雰囲気の映画で、エッチなシーンはあまりないです。 十代少年の鬱屈とした心情や、自分のことしか考えられない未熟さはよく表現されていると思うけど、 全編に亘ってそればかりなので、かなり重苦しく、青春映画特有の切なさは感じませんでした。 ラストはタイトルどおりなんだけど、ちょっと唐突すぎかな。 ジーナの妖艶な魅力と、主人公の暗い目つきが印象的な映画でした。 [DVD(字幕)] 4点(2015-06-07 05:13:15) |
5. 処女の泉
古い映画だけあって、かなり真面目に作られた作品。それでも、当時としては衝撃作だったんでしょう。 真面目に作られているぶん、これまでの映画やビデオ等で、さんざん見飽きてきたシーンがとても残酷でショッキングに映ります。 宗教色がかなり色濃く、「善と悪」というわかりやすい状況設定のもと、「罪と罰」というテーマが丁寧に表現されていました。 日本人には、ちょっとピンとこない部分はあるんですが……。 [DVD(字幕)] 5点(2015-05-25 03:58:29) |
6. 軽蔑(1963)
互いに理解し合えない男と女。 永遠のテーマとも言える題材を、卓抜な演出で描いたゴダール作品。 夫婦間の心の内の変化を軸に、ギリシャ神話「オデュッセイア」のオデュッセウス、ペネロピ夫妻のエピソードを絡め、アンニュイな雰囲気、美しい映像、独特の色彩感覚で仕上げています。 安直なラストだけは「?」だったけど、その他の見所は、妻役を演じるブリジット・バルドーの魅力。それ以外では、「メトロポリス」(1926)の映画監督、フリッツ・ラングが本人役で出演していたことに驚きました。 ドラマチックな展開はいっさいなし、絵画的、芸術的、前衛的な作品なので、この手の映画が苦手な方はご注意を。 [DVD(字幕)] 8点(2015-04-15 11:59:04) |
7. 蛇娘と白髪魔
楳図かずお原作の二作品を組み合わせた設定の映画で、ホラーというよりはスリラー色が強い。 子供向けの作りなので怖さはないけど、最後の展開はまったく読めず、まさかちゃんとしたオチを用意していたとはちょっとびっくりした。 ストレートな人生訓まで織りこんでいるのは、とても良心的。 ヒロインの女の子は、「河童の三平 妖怪大作戦」でカン子役を演じていた子ですな。 妙に懐かしかった。 [DVD(邦画)] 3点(2015-01-09 08:36:04) |
8. みな殺しの霊歌
設定は面白くて興味を惹くのに、主人公の人となりが丁寧に描かれていないので、彼の行動が今ひとつピンとこない。一応理由づけはちゃんと用意されてるんだけど……。 倍賞千恵子演じるヒロインとの関連性も、ちょっと不明瞭かな。 ストーリーの展開に、「?」と思うシーンも。 モノクロの映像、演出は、映画らしくてとてもよかった。 [DVD(邦画)] 4点(2013-08-24 06:07:31) |
9. ガス人間第一号
非常に地味な特撮だが、そのぶんドラマ性が強く、刑事ドラマのような展開でストーリーが進む少々毛色の変わった作品。 内容が内容なだけに、さすがにヒロインの心情描写には物足りなさを感じるけど、八千草薫が若くてきれいだった。 能楽の師匠というキャラ設定がお話にうまく絡んで、一応切なさやもの悲しさは伝わってくる。 この手の作品にしては演出も凝っていて、逆に「ガス人間」という設定が稚拙というか、浮いてしまったのは仕方がないかな? [DVD(邦画)] 4点(2013-07-27 01:41:03) |
10. ゼロの焦点(1961)
言わずと知れた、松本清張ベストセラー小説の映画化。 原作自体の出来がいいこともあるんだけど、シナリオもうまくまとめたなぁという印象。 ただし上映時間が短い分、登場人物たちの人間関係における心理描写などは、やはり薄いというか物足りないです。 一応ラストは盛りあがりの見せ場を用意したものの、逆にそこだけが浮いてしまって、結局芥川也寸志の音楽が一番ドラマチックだったという皮肉な結果に。 それでも推理要素が多分に織り込まれていて、普通に満足できるサスペンス作品ではあるかと。 [DVD(邦画)] 5点(2013-06-23 13:51:42) |
11. 昼顔(1967)
女の性をテーマに、淫らな妄想に苛まれる若妻の姿を描いた作品。 一見下世話で終わりそうな内容を、美しい映像と演出で文芸的な色合いを濃く押し出し、フランス映画らしい作品に仕上がってます。 現実なのか夢うつつなのか、心象風景での描写など、全体の雰囲気やストーリーはぼんやりと霧がかかったかのよう。ラストも、ちょっとわかりづらかった。 それでも、カトリーヌ・ドヌーヴの魅力は十分堪能できる作品かと。 [DVD(字幕)] 5点(2013-06-09 14:18:51) |
12. 恐怖の岬
二大俳優グレゴリー・ペックとロバート・ミッチャムを配したサスペンスドラマで、 ロバート・デ・ニーロ主演「ケープ・フィアー」のオリジナル版。 細かい設定やエピソードはリメイクのほうが凝っているが、大方のストーリーはほとんど変わらず、狡猾な復讐男がじわじわと迫り来る展開はやはり見応えがある。 本作ではあくまでペックが主人公なのだが、復讐鬼を演じるミッチャムも飄々としていて不気味な雰囲気を醸し出し、デ・ニーロとはひと味違った悪役ぶりを見せてくれる。 モノクロ映像は、ラストの対決がちょっと暗くて観づらかったのが残念。 オリジナルもリメイクも甲乙つけがたい出来映えで、見比べてみるのも面白いかも。 [DVD(字幕)] 6点(2013-05-26 05:42:26) |
13. 日本のいちばん長い日(1967)
戦争終結の日、激動の一日をドキュメントタッチで描いたドラマ。 緊張感がひしひしと伝わってくる見応えたっぷりの内容に、著名な俳優さんたちが多数出ていて、それぞれが重厚な演技を見せてくれます。 配役の中では、少佐役の黒沢年男が一番印象的。声がでかくてやたらうるさくて、自分の信念だけで突っ走る妄信タイプ。こういう人、当時はたくさんいたんだろうな。 結末はわかっていても手に汗握る、あっという間の2時間40分。お薦めの邦画。 [DVD(邦画)] 7点(2013-03-31 08:30:41) |
14. ロミオとジュリエット(1968)
ストーリーはもう誰もが知っている、シェークスピア原作の悲恋もの。 古典戯曲として映画化や舞台化も幾度かされているようだけど、「ロミオとジュリエット」と言われて思い出すのはやはりこの作品。 衣装、美術背景など、当時の雰囲気がよく伝わってきて、映像や音楽もきれいだったという記憶もあるが、何と言ってもヒロインのオリビアが愛くるしい。 凝った演出を排除したクラシックな作りが、名画という印象を与えてくれます。 [地上波(字幕)] 5点(2013-03-17 05:50:13) |
15. 招かれざる客(1967)
ほとんどのシーンが室内で撮られている、密室劇に近い作品。 人種差別を根幹にした作品だが、ファミリードラマ仕立て、かつTV映画のような雰囲気なのでとても鑑賞しやすい。 ただ物語が進むにつれ、娘とその恋人の無茶な設定が徐々にクローズアップ。 突然という流れのほうがストーリーに入りやすいのはわかるんだけど、二人を取り巻く状況はちょっと極端すぎという感も。後半からは、娘の我が儘ぶりが鼻についてしまった。 題材とアイデアの面白さ、また両親役の俳優さん二人の落ち着いた演技が見所の佳作。 [DVD(字幕)] 6点(2013-03-09 04:09:23) |
16. 秋津温泉
岡山のある温泉場を舞台に、昭和二十年から三十七年までの、男と女の恋愛模様を描いたやや文芸色の濃いドラマ。 ストーリーがとても暗く、ヒロインのキャラも今の時代では違和感を感じるも、岡田茉莉子はひたすらきれいに撮られている。長門裕之もこの役柄には合っていたかと。 演出がよく、映像もきれい。音楽もなかなか良かったと記憶してます。 やはり岡田茉莉子の美しさが一番見所の作品かな。 [DVD(邦画)] 5点(2013-02-11 07:02:42) |
17. 妻は告白する
若尾文子という女優さんの魅力を、たっぷりと堪能できる映画。 彼女は悪女なのか、純粋に生きる女なのか。 彼女のクールなまでの美貌、ややオーバー気味の演技が物語にサスペンス性を与え、ひいてはどろどろとした女の情念をこれでもかと表現しています。 ヒロインのキャラは好き嫌いがはっきり分かれそうだし、ストーリー自体に大きなヒネリやオチはないけど、一人の女の生き様を描いた作品として見応えあり。 [ビデオ(邦画)] 5点(2013-01-24 01:52:01) |
18. ロリータ(1962)
キューブリックらしい演出は、ピーター・セラーズが絡んでくるシーンで顕著に見られるが、物語の核である中年男がロリータに惹かれていく経緯や心理描写が薄くて粗い。 古い映画で、しかもテーマがテーマだけに、ロリータの魅力を表現するにも限界はあるんだろうけど、主人公がトンマなおっさんに見えてしまうことも……。 女の子はかわいいし、中年男の悲哀さと情けなさは十分に伝わりました。 [DVD(字幕)] 5点(2013-01-19 08:29:23) |
19. 野生のエルザ
実話ベースの映画化作品。原作がヒットして、かなり話題になっていた覚えが。 人間とライオンとの交流を描いたストレートな感動もので、もちろんテーマはよく伝わってくる。 でも結局は人間のエゴのほうが遙かに目立っていて、ライオン側にとってはいい迷惑だとしか思えない。 自然の中で生きている野生動物に、わざわざ人間のほうから近づいていく必要もないと思うんだけど……。 オーソドックスな作りのファミリー向け映画。 [DVD(字幕)] 3点(2013-01-15 09:33:04) |
20. 娘・妻・母
成瀬監督の描く、辛口のホームドラマ。 豪華スター競演ということで、登場人物が多いため、お話がやや分散傾向を感じさせるも、各エピソードが隔たりなくバランスよく描かれてます。 鑑賞後にタイトルを見ると、確かにちゃんと表現されていたなぁと感心するばかり。 こういう内容の映画はまとめるのが難しいとは思うけど、やはり監督さんの手腕が一番印象に残る逸品だった。 [DVD(邦画)] 6点(2013-01-06 10:29:01) |