1. 悪魔のような女(1955)
《ネタバレ》 有名な映画なのでタイトルは知っていましたが内容は全然知らず、でもそのおかげでこの映画の醍醐味を充分に味わうことができました。真相が明らかになった時は、一流マジシャンのパフォーマンスを見た時のような「ダマされる快感」に酔い痴れました。 この映画では、結末のインパクトを高めるために、見る側を騙そうとする「罠」がいくつも仕掛けられています。 まずは、鑑賞者の意識を「2人の女性の完全犯罪は成功するか否か」という視点に向かわせようとします。 汽車でタバコを吸う校長を迷惑がる2人の女性客、風呂に水を入れる音がうるさいと怒り時刻をメモする夫婦、酔っ払いが車に乗り込もうとした時に店員が確認した汚れた荷台、死体をプールに投げ込む直前に点いた部屋の電気等、「これが後でポイントになるんだよね」と思わせるシーンが次々と・・・。でもこれだけ続くとさすがに「トラップか?」と思っちゃいますね。 次は「プールに投げ込んだはずの死体が消えた」ところから、怪奇ホラー系の匂いを漂わせます。 クリーニング屋から届く校長のスーツ、校長に怒られたという少年、集合写真に写る校長らしき影・・・。安っぽい謎解きドラマだと、こんな怪奇現象は「犯行を紛らわせるためのトリック」で片づけられるのですが、本作では、このホラー的な空気が最後に活きてきます。 そしていよいよラスト。バスタブの校長よりも、自分は死んだ妻の表情の方が怖かったです。ショック死する妻、計画が成功し喜ぶ校長と愛人。でもそれは探偵が見抜いて手を打っていた・・・と、意外な真実を次から次へと畳み掛けてきます。 これでこの事件も解決・・・と思ったら、最後の最後、少年がパチンコを「校長夫人にもらった」という謎のシーン。 一瞬、実は夫人は死んでおらず、妻が探偵と結託し、校長と同じ手を使って2人を陥れ、「さらにもうひとつの真実があったのだ!」ということを表しているのか・・・とも思いましたが、校長が妻の脈が止まったのを確認しているので、これは違いますね。 そうなると、少年が見たのはやっぱり死んだはずの校長夫人だったのか・・・? あえて真実を示唆せず、最後にもう一度観客をゾッとさせる怪奇ホラーの余韻を残すことで、作品全体の印象がグッと深まりました。 最初にも書きましたが、この映画、最後の真相を知らずに観ることができてホントにラッキーでした! [CS・衛星(字幕)] 8点(2022-05-24 21:05:08)(良:1票) |
2. 少年探偵団 妖怪博士
《ネタバレ》 子供の頃、夢中で読んだ江戸川乱歩の少年探偵団シリーズ、その世界観がそのまま再現されていました。 自分が生まれるずいぶん前の映画(ほとんどテレビドラマ?)なのでツッコミポイントてんこ盛りですが、内容云々よりも、当時の日本の町の様子や昔の映画手法などが見られて思った以上に楽しめました。人物の目の輝きから車のライトへのシーン転換は、昔の海外ドラマとかでよく使われていましたねぇ・・・。 最後、明智&子供たちが石膏詰めにされかけて絶体絶命、屋敷は大爆発、二十面相は高笑い、さあどうなる!・・・・というところで「第一部 終わり」って、おいおい・・・(^^; でもまあ、続きを見るほどでもないか・・・。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2021-07-10 08:59:31) |
3. ぼくの伯父さんの休暇
ドタバタ喜劇とは違って、おしゃれな雰囲気の音楽は楽しめたものの、コメディとして見るにはさすがにちょっと厳しかったです。喜劇のお手本のようなシーンもたくさんありますが、どうにも退屈で・・・。違った気分の時に観れば、印象も変わるんでしょうか?「クスッと」よりも「イラッと」させられる方が多かったです(^^; ところで、タイトルは「ぼくの伯父さんの休暇」ですが、肝心の「ぼく」って誰??? 途中からボヤ~ッとしか見ていなかったので、見逃したかな? [CS・衛星(字幕)] 4点(2017-10-07 22:28:27) |
4. 羅生門(1950)
《ネタバレ》 カッコつけたがりの多襄丸タイプ、プライドだけは人一倍の侍タイプ、女としてのイメージと自分の都合が大事な侍の妻タイプなど、現代にも、似たような人たちがたくさんいますよね(笑) 人間って、社会や時代背景によって考え方や価値観が変わったりしますが、本質は昔も今も大差ないってことですね。 死体が発見され、殺したのは誰かを明らかにする取調べシーンでは、3人(死んだ人も含めて)とも証言がバラバラ。「自分がやったのではない!」ではなくて、みんな「自分がやった!」と言い張ります。何のために・・・? それがこの映画の主題である「人の心が信じられなくなる恐ろしい話」なんですね。 その救いの意味を持たせようとする、ラストの捨て子をめぐる三人のやりとりは蛇足のような気がしましたが、小説の面白さを映画的な面白さへと変換させた脚本は素晴らしいと思います。 始まってすぐ、内容もまだよくわからない段階で、いきなり音楽にやられちゃいました! 木こりが森にたきぎを切りに行くシーンで、ボレロ・羅生門バージョンですかー!(笑) 個人的には、これだけでこの映画に満点を差し上げたい気分でした♪ モノクロ映画だから、という理由なのか、森の中の光のコントラスト、かなり意識して作った感じですね。これも黒澤監督のこだわりなんでしょうね。 また、三船敏郎といえば、多襄丸のような「豪傑!」タイプのイメージがありますが、この映画の終盤、女にタンカを切られてツバかけられて「トホホホ・・・」という表情、これは最高でした! この作品を含めて、昔の日本って、かなりの映画先進国だったのでは? 今の時代からは決して生まれてこないような、骨太の作品がたくさんあるように思います。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2017-10-03 22:08:15) |
5. 穴(1957)
複雑に絡み合った話だったため、やや説明的なセリフが多かった印象がありますが、テンポ感やメリハリの効いた演出で、最後まで突っ走りましたね。アイディアや音楽も良く、古い映画なのに何ひとつ色褪せた感がなく、楽しめました! [CS・衛星(邦画)] 7点(2017-08-14 19:19:52) |
6. シンバッド七回目の航海
ストーリーは、いろいろとツッコミどころ満載で、主役のシンドバッドも印象が薄く、見どころはどうやら怪物などの特撮のようですが、残念ながら大した魅力も感じられませんでした。 もし子供の頃に一度でも見ていれば、印象も変わっていた・・・かも? [CS・衛星(字幕)] 3点(2017-07-04 18:59:05) |
7. サザエさん(1956)
《ネタバレ》 あの時代の空気の記憶が少しでも残っている人にとっては、懐かしさでいっぱいだったと思います。あのサザエ、前半は「知的レベルはバカボンのパパ並みか?」と思うほどで、イライラさせられっぱなし。お転婆というより、ただのバカという印象でしたが、でもあの時代は、ああいうのが面白かったんですよね。 仲代達矢のノリスケやダークダックスの御用聞きに「おぉ~」と驚かされますが、一番印象的だったのは、松島トモ子のワカメがクリスマスパーティーの余興で歌った「♪私の名前ワカ~メちゃん~」という曲。今も耳に付いて離れません・・・(^^; これも一応、ミュージカル映画というジャンルに入るんですかねぇ?(笑) 映画の出来そのものはこんなものでしょうが、昔の庶民の生活など、文化的考察という観点で当時を検証する記録映像としては、貴重だと思います。 なによりもすごいと思ったのは、この映画のサザエのキャラクターが、現在(日曜夜6:30)まで変わらずに受け継がれていること。この映画を観て改めて「サザエさん」という漫画の偉大さを思い知ることができました。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2016-04-11 20:55:43) |
8. お早よう
ご近所の様子を淡々と描く、一見「無駄」のようなあいさつや井戸端会議が、実はコミュニケーションの潤滑油となって社会の軋みを防いでいる、無駄の大事さを説いているように思えました。 これを観ると、現代の、無駄なものは一切排除という風潮が、なんだかギスギスした社会を作ってしまったような気がします。「テレビは一億総白痴化の元凶」というのも、その通りになってますね。次男のアイラブユーがウケているようですが、自分は序盤の「オフコース、マダム」で吹き出しました(笑) [CS・衛星(邦画)] 7点(2015-12-18 18:58:20) |
9. 青空娘
話そのものは失笑モノのレベルですが、最初から最後まで若尾文子の魅力をたっぷり味わうことができました。最近は「この人さえ出ていれば、たとえどんなマヌケなストーリー展開でも最後まで観ちゃう!」と思わせてくれる役者なんていませんよね。そういう意味ではすごい女優さんだと思います。 内容的には、有子のように「もっとスカッと生きようぜ!」という気分にさせてくれただけで充分。映画としてどうのこうの言うような作品ではありません。 それにしても、セクシーシーンなんて全然ないのに、あんなにエロい雰囲気が漂う若尾文子って・・・。特に最初のセーラー服姿なんて、フェロモン爆弾ですね! そういう人が、元気ハツラツさわやか娘を演る、というギャップも面白かったですが、意地悪な継母や姉を最後に不幸のどん底に陥れる・・・という脚本なら満点でした(笑) [CS・衛星(邦画)] 7点(2015-11-08 12:24:03) |
10. 突撃(1957)
《ネタバレ》 戦争が、いかに人間を愚かな方向に導くかということを痛感させられる映画でした。日本もそうでしたが、戦争になれば、理不尽な命令や滅茶苦茶な裁判、見せしめの処刑なども当たり前、真っ当な理屈がまかり通る状況ではありません。もちろん、兵士の命などどうでもいいんです。処刑される一人が「なぜ何もしていないオレが殺されなきゃならないんだ」と泣き喚きますが、同情する気にはまったくなれません。理由はどうあれ、戦争に参加したということは、相手を殺します。まだ殺していなくても、そういう状況になれば、相手と殺し合いを繰り広げます。そういう人が「何もしていないのに殺さないで」などど言わないでほしいですね。もちろん誰も好き好んで戦争に参加しているわけではありませんが、戦争に参加して死ぬくらいなら、戦争を止めようとして死んでいく方がよほど「名誉な死」、キューブリックが言いたかったことって、こういうことなのでは?と、見終わってふと頭を過りました。キューブリックの作品、そんなにたくさん見たわけではありませんが、キューブリックって「いい映画を作る」ことより、自分のメッセージを、いかに強く伝えるか。そのために映画を作ってるんじゃないか、と思える作品でした。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2015-03-01 21:35:16) |
11. 現金に体を張れ
無駄なシーンや余計な装飾が一切ないので、良いテンポで最後まで一気に楽しめました。登場人物の心理や生活背景的な描写は必要以上に出さずに、淡々と話を進めたからこそ面白かったのだと思います。シンプルな中にも犯罪もの・サスペンス的な面白さを凝縮したという点で、まったくジャンルは違いますが江戸川乱歩の「二銭銅貨」という小説に通じるような気がしました。この作品に影響を受けた犯罪・サスペンス映画、多いのではないでしょうか? [CS・衛星(字幕)] 7点(2015-02-10 19:18:08) |
12. 恐怖と欲望
キューブリックの映画は「2001年~」だけは観たことありますが、正直、どんなにすごい人なのかよく知りません。有名な人の初監督作品というふれこみでしたが、ストーリーは平凡だし、心理描写の表現も共感できないし、退屈でした。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2015-02-07 20:10:07) |
13. 情婦
弁護士の風体や法廷シーンの駆け引きなど、まるでポワロのようでしたね。評判通りの出来でしたが、ラストシーンは、締め方としてはちょっと乱暴かも・・・。法廷もの・サスペンスものという視点で観れば、今はもっと優れた作品がありますが、それも、この時代にこういうクオリティの作品があってこそなんでしょうね。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2014-06-07 16:19:42) |
14. 死の十字路
原作の面白さを上手に映像化した、いい作品だと思います。証拠物件やら目撃者やら都合よく出てき過ぎる・探偵が行方不明の兄さんにソックリ等、やや強引な設定ですが、犯人当ての内容ではなく、完全犯罪のつもりが徐々に綻びを見せ始め、追い詰められていくところが見どころだと思うので、それほど気にはなりませんでした。乱歩の作品の中ではちょっと異色というか、やけに現代的でリアリティのある作品です。それにしても大坂志郎、ちょっとタバコ吸い過ぎ(笑) [CS・衛星(邦画)] 7点(2013-12-07 15:28:50) |
15. 二十四の瞳(1954)
《ネタバレ》 初めて観たのは小学生の頃で、「感動して泣く」ということが自分的に恥ずかしいと感じる年頃だったにも関わらず、号泣でした。数年後にももう一度観ましたが、初めて観た時の感動をそのまま持っていたいので、もうそれ以来観ていません。この作品を子供の頃に観たのは運が良かったと思います。もしいま初めて観たとしたら、しょーもない映画論や大人的な理屈を持ち出したり、素直に感動する心がなくなっていて、10点はつけられなかったかもしれません。 [地上波(邦画)] 10点(2013-10-28 21:15:34)(良:1票) |
16. 点と線
おそらく原作は面白いのでしょうが、映画としての面白さがまるでなく、薄っぺらい脚本がせっかくの原作を台無しにしたのでは?と思える内容でした。事件の謎解きと人間模様、もう少し見せ方に工夫がほしかったです。 [CS・衛星(吹替)] 4点(2013-02-12 11:54:46) |
17. 十二人の怒れる男(1957)
《ネタバレ》 とても96分とは思えないくらい濃密な内容でした。まるで自分があの部屋にいるような錯覚を覚えるくらい引き込まれました。脚本、演技、演出が優れていれば、ここまで面白くなるという、映画のお手本のような作品です。いい映画って、どんなに時代が変わっても、色あせることがないですね。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2011-09-15 17:31:09) |
18. 80日間世界一周
《ネタバレ》 原作も映画も、どちらも面白いという貴重な作品。大抵はどちらかがつまらないことが多いですね。出発して、ヨーロッパ・アジアまでは面白かったですが、アメリカに渡ってから、やや雑な感じになってしまったのが残念です。でも全体的に、とても楽しい映画でした。2時間半以上の長さがあったからこそ、壮大な旅をした気分になれたんでしょうね。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2011-08-20 00:35:25) |
19. 張込み(1958)
《ネタバレ》 刑事が張り込んでいる。ただそれだけのシーンが延々と続き、途中まで大した動きもないのに、なぜか飽きずに最後まで楽しめました。それが監督の手腕、ということでしょうか。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2011-07-25 17:15:27) |
20. 知りすぎていた男
とにかく、シーンが次から次へとどんどん展開していくテンポ感・スピード感で、見ている側をグイグイ引っ張っていました。この時代のサスペンスって、シンプルなんだけど、サスペンスとしての面白さが凝縮されている、特にヒッチコック作品はそのように感じます。まるで江戸川乱歩の「二銭銅貨」に通じるものがあるように思えました。 [ビデオ(字幕)] 7点(2011-07-21 00:15:51) |