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かたゆきさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1922
性別 男性
年齢 48歳
自己紹介 自分なりの評価の基準は、
10・超大好きな作品。完璧。映画として傑作であるばかりでなく、自分の好みと見事に合致している。
9・大好きな作品。完璧に近い完成度。手放しに歴史に残る傑作といっていい。
8・好きな作品。本当に面白い。欠点があるかもしれないが、それも含めて好き。
7・少し好きな作品。普通に面白い。欠点もあるかもしれないが、そんなに気にならない。
6・普通の作品。可も無く不可も無く。最後までストレスなく観られる。面白いけど、心に残るものはあまりない。
5・少しつまらない作品。最後まで観るのにちょっとストレスを感じた。面白い部分も多少はあった。
4・つまらない作品。最後まで観るのが苦痛だった。ほとんど面白いところが感じられなかった。
3・かなりつまらない作品。最後まで観た自分を褒めてあげたい。観終えた後に、怒りのあまりDVDを割りそうになった。
2・超つまらない作品。時間と金を返せ。観終えた後に、怒りのあまり製作者全員を殴りに行きたくなった。
1・絶望的につまらない作品。最低。観終えた後に、怒りを通り越して死にたくなった。
0・死霊の盆踊り。

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1.  路上のソリスト 《ネタバレ》 
LAタイムスという超一流新聞社で、多忙な毎日を過ごす敏腕記者ロペス。彼はある日、何故か路上でバイオリンを弾く一人のホームレス、ナサニエルと出会う。その奇矯な言動と特異な格好とはうらはらに、彼の奏でる美しい旋律に興味を引かれたロペスは、思わずコラムで彼のことを取り上げるとそれが静かな反響を巻き起こすのだった。本格的にナサニエルの過去を調べ始めたロペス、するとそこにはかつてその才能を認められ将来を嘱望されながらも統合失調症によって悲惨な現実を生きざるをえなかった彼の哀しい人生があったのだった――。静かな正義感を胸に秘めた新聞記者と路上という自由で孤独な世界に生きる元ソリストとの、人生の再生をかけた友情を実話を基に描いたヒューマンストーリー。丁寧に紡がれた物語と気品に満ちたクラシックの名曲群のおかげでとても美しい静謐な空気に満ちた、ジョー・ライト監督らしい佳作に仕上がっていたと思います。実話を元にしているということもあり、二人の友情物語が変にドラマティックに描かれていないところも好印象です。統合失調症を発症し、四六時中続く幻聴に次第に追い詰められてゆく若き日のナサニエルと、その後、心がすっかり壊れてしまいホームレスとなった現在の彼を見事に演じ分けたジェイミー・フォックスの熱演も見応えありました。それにしても、これまで適切な治療を受けられずホームレスとならざるをえなかった統合失調症患者は果たしてどれくらいいたのでしょう。ナサニエルのような哀しい人生を歩んでしまった人を少しでも減らすために、公的機関のサポートがもっと充実されることを願うばかりです。ただ、一本の映画としてみれば最後まであまりにも優等生的な演出が続くためちょっとパンチに欠けるような印象もなきにしもあらず。ここは好みが分かれるところでしょうね。それでも僕は、この気品に満ちた作品世界に最後までしっとりと浸ることが出来ました。ジョー・ライト監督とはどうやら相性が良いようなので、これからも観ていこうと思います。
[DVD(字幕)] 7点(2024-11-26 13:28:52)★《更新》★
2.  モンスター・ハウス 《ネタバレ》 
冴えない学生生活を送る、思春期を迎えたばかりの少年DJ。彼の唯一の親友で、お調子者で太っちょな男の子チャウダー。彼らと偶然知り合うことになる、お高くとまった生意気少女ジェニー。ハロウィンを明日に控えた夜、ひょんなことからともに過ごすことになったそんな3人。彼らはDJの家の向かいに建つ、偏屈な爺さんが独りで暮らしている怪しげな一軒家のとある秘密を知ることに。それは、この家が自らの意志を持って人を襲い食べてしまう恐ろしいモンスターハウスだという驚きの事実だった――。「大変だ!明日はハロウィンでたくさんの子供たちが飴を貰いにこの家にやってきちゃうよ!」。周りの大人たちにいくら話しても全く信じてもらえない。もう僕たちであの恐ろしいモンスターハウスをどうにかするしかない。彼らはそんなモンスターハウスへと一致団結して立ち向かってゆくのだが……。スピルバーグ&ゼメキスというエンタメ映画界の巨匠コンビが製作した、全編美麗なフルCGアニメで描き出すコメディタッチの冒険活劇。娯楽に徹したストーリー、細部にまで拘ったであろうハイクオリティな映像、さすがハリウッドの第一線を突っ走ってきた二大巨匠がダッグを組んだだけあって、映画としてある一定の水準には達していたと思います。ただ、個人的な感想を述べさせてもらうと、全体的に中途半端な印象が拭えない作品でしたね、これ。いまいち魅力に欠ける主人公の少年少女たち(なんか顔が微妙にリアルで怖いんですけど…笑)や、モンスターハウスの全然ワクワクしない地味な造形(アニメなんだからもっとはっちゃけて欲しかった)、スケールがちっちゃ過ぎてなんとも盛り上がりに欠けるストーリー……。何より致命的なのは、館がモンスターと化した原因であるお爺ちゃんとその太った妻との哀しい恋物語がかなりおざなりに描かれちゃってるとこ。どうしてあんなに太った妻をあそこまで愛するようになったのかがさっぱり分からない(お爺さんのそーゆー性癖なの?)せいで、いまいちストーリーに入り込めませんでした。とはいえ徹底的にハードルを下げて観れば、時間も90分とコンパクトだし、適度なヒマ潰しにはなると思います!
[DVD(字幕)] 5点(2024-11-24 14:28:17)《更新》
3.  ヒトラーのための虐殺会議〈TVM〉 《ネタバレ》 
ここは、ドイツの大自然に囲まれた閑静な保養地バンゼー湖畔。1942年1月20日、この地に建てられた大邸宅にその日、アイヒマンをはじめとするナチス高官や親衛隊、政府の官僚らが集まってある会議が行われた。議題は、「ユダヤ人問題の最終解決」。ナチスがヨーロッパ各地で拘束したユダヤ人はいまや莫大な数にのぼり、もはや収容所に収まる規模ではなくなっていた。ヒトラーの命により集められた15名のナチス高官たちは、将来的なユダヤ民族抹殺のための第一段階として「移送、財産没収、強制労働」と、その先にある「最終的解決」の具体的な方法を話し合う。多少の反対意見や小さな議論が起こることもあったが、特に大きな混乱もなく、会議はただ淡々と90分ほどで終わった。これにより、約600万人のユダヤ人たちのその後の運命が決定してしまうのだった――。本作は第二次大戦中、ドイツの静かな湖畔で行われた「バンゼー会議」の全貌を実際に残された議事録に基づいて映画化したものである。本当にそれ以上でもそれ以下でもない。面白くもなんともない会議の様子がただ淡々と進められてゆくだけ。喧々諤々の議論もなければ、怒号が飛び交う訳でもない。一滴の血も流れることもなければ、銃弾が発射されることもない。ユダヤ人の悲痛な叫びが聞こえてくることもないし、ましてやその死が描かれることもない。なのに、この全編に漲る圧倒的なまでの緊張感は凄かった。これから数百万のユダヤ人――もちろん女子供も含めてが無残にも殺されてゆくことを分かっていながら、彼らは古い友人と挨拶を交わし冗談を言い合い、気に喰わない相手の席順をわざと下座にずらしたり、ワインや軽食を嗜みながら、ただ淡々とその具体的な方法を議決してゆく。人間はどうしてここまで冷酷になれるのだろう。「親を殺された子供は生きていけない。だから子供を殺すことはむしろ慈悲だ」「これから冬になれば食料がなくなり彼らはいずれ餓死してしまうだろう。だから今のうちに特別処理してしまうことが人道的にも良い」などと平気で言ってのける彼らに、嫌悪感を通り越してもはや虚無感すら抱いてしまう。会議の終盤、偶然開発されたガスを転用すれば、より多くのユダヤ人を効率的に処分できることをまるで斬新なアイデアであるかのように称賛しあう彼ら。人間の愚かさを極めて冷徹に見つめた、この監督の視線の鋭さには敬服せざるを得ない。2024年現在、昨年から始まったイスラエルによるガザ侵攻は今も続いている。子供を含めた犠牲者数はもはや3万人に迫ろうとしている。ホロコーストを生き延びた彼らの子孫は、ユダヤ民族の地を守るためと称してこれから先も軍事作戦を続けていくと宣言してはばからない。イスラエル政府の高官や軍幹部も同じような会議を開き、そして淡々と議決して、この結果を導き出しているのだろう。ますます混迷の度を深めてゆく現代社会に於いて、本作は真に観るべき映画の一つと言っていい。
[DVD(字幕)] 8点(2024-11-20 13:13:38)《更新》
4.  レジェンド・オブ・フォール/果てしなき想い 《ネタバレ》 
雄大な大自然に囲まれたモンタナを舞台に、同じ女性を愛してしまったラドロー家の3兄弟の愛憎渦巻く確執をドラマティックに描いた大河ドラマ。若き日のブラッド・ピットとアンソニー・ホプキンスが主演を務め、監督がけっこう好きなエドワード・ズウィックだったので昔から気にはなってたんだけど何となく未見のまま放置していた本作、たまたまネットの観放題にあったので今回鑑賞。いやー、もんのすごくメロドラマでしたね、これ。しかもけっこう低レベル(苦笑)。とにかく登場人物が全員そろいもそろって魅力なし!世の中にはもっとえー男や女がいっぱいおんのになんでそんな近場の相手ばっか選ぶねん!!ってくらい面倒臭い恋愛を繰り返すこいつらには全くもって感情移入できませんでした。末っ子は婚約した彼女と結婚もエッチもしないまま何故か他の国の戦争に志願して出発しちゃうし、そんな弟の彼女を寝取っちゃった次男はもう抱いたら面倒臭くなったのか「俺は自由が好きなんだ」とばかりに世界に旅立っちゃうし、金も名声も手に入れた長男は何故かそんな尻軽女にひたすら執着してて気持ち悪いし、ヒロインである彼女もそんな3兄弟に言い寄られたらその時その場の空気に流されてエッチしちゃうし、父親は単なる頑固者の偏屈ジジイだったし、母親はひたすら空気だったし……。まぁ欲求不満気味のマダムにとっては、「とにかく色んな男前に言い寄られて、最初の童貞彼氏とは手を繋ぐこともドキドキなプラトニックな恋愛を楽しみたいし、次のブラッド・ピットみたいなワイルドで危険な男とはさんざん情熱的なエッチをしまくって、でも最終的には安定した生活を保障してくれる無難な男と結婚したいわぁ」という願望を叶えてくれるからこれでいいんでしょうけど。女性向けメロドラマを撮ろうという目的で作ってるんだから、ズウィック監督の狙いは成功してるのかな。とにかく自分の求めているものとは違った内容でございました。映像はキレイだったし、ブラッド・ピットやアンソニー・ホプキンスの脂の乗り切った演技は見応えあったしで、5点!
[インターネット(字幕)] 5点(2024-11-20 12:50:41)《更新》
5.  パニッシュメント(2013) 《ネタバレ》 
それはいつものように平凡な一日になるはずだった――。PM2:00、自堕落な母親とまだ生まれたばかりの病弱な赤ん坊と共に暮らしている少年コリーは、とても手が出そうにない高額な薬を手に入れるため銃を手に薬局へと向かっていた。2:02、違法な荷物ばかりを扱うバイク便の女運転手アレクサは、ギャングに追われていた謎の青年をひょんなことから後ろに乗せて助けてやるのだった。2:01、政府のテロ対策捜査班として相棒と共に任務を遂行中のマーティは、爆弾テロを計画中らしき容疑者のアジトへと乗り込んでゆく。2:03、元全国ネットのニュースキャスターだったもののいまや落ちぶれてホームレスとなってしまったドークは、同じくホームレスの友人と共に警官の銃を盗むのだった。2:04、小さな街で、そんなまったく関係なさそうな人々の物語が、「口の中を噛んだことがある?」と何度も問い掛ける黒人の女の子フューによって、とある奇跡へと収斂されてゆく……。都会の片隅で刹那的に生きる様々な人々の夢と現実が複雑に交錯しあう群像劇。明らかにデビュー当時のタランティーノの影響を色濃く受けているであろう、この全編に漂う猥雑な雰囲気は良かったと思います。実力派の役者陣が織り成す渋い演技も見応え充分。ただ、残念ながら本家に比べて圧倒的にセンスが不足しているせいで、奇を衒っただけの単なる凡作どまりの出来に終わってしまったのが本作の残念ポイント。まず、音楽が超ダサい。タランティーノ目指すなら、これは致命的でしょう。そして小さな街の中で様々な人々のくだらない物語が、最後、キリストの奇跡へと繋がってゆくといういかにも〝パルプ・フィクション〟な展開も完全に無理ありありで、見事なまでに破綻しております(笑)。でもね、頑張ってるのは分かるんですよ。全編にわたって、タランティーノを少しでも追い越せるような映画を創りたい!という意欲だけはビシバシ感じます。そんな監督の頑張った感と髭もじゃクリスチャン・スレーターの最近の半端じゃない落ちぶれた感にエールを込めて5点!
[DVD(字幕)] 5点(2024-11-20 12:34:17)《更新》
6.  デッドマン・ダウン 《ネタバレ》 
ボスの命令なら簡単に人を殺すことも厭わない凶悪なギャング組織のメンバー、ヴィクター。数ヶ月前から謎の脅迫を受けるボスの忠実なしもべとして組織の中でめきめきと頭角を表していた彼だったが、ある日致命的なミスを犯してしまう。向かいのマンションに住む女性に人を殺すところを見られてしまったのだ――。女性の名は、ベアトリス。顔の目立つところに大きな傷跡のある孤独な女性だった。「このことを警察に知られたくなかったら、あたしの顔を傷物にしたあの男も殺して!」と、飲酒運転によって彼女の顔に傷を負わせた男への復讐を強要されるヴィクター。仕方なく承諾するヴィクターだったが、彼もまた数年前に起こった悲劇的な出来事によって心に深い傷を負った復讐者だった……。都会の片隅で孤独に生きる男と女の互いの過去と未来がスリリングに交錯するクライムサスペンス。何の予備知識もなく今回鑑賞したのですが、都会の夜の空気を濃厚に漂わせる大人な雰囲気とまったく先の読めないストーリーとで、僕は最後まで面白く観ることが出来ました。うん、なかなか良かったですよ、これ。感情を必死に抑制しながら淡々と復讐をこなしてゆくコリン・ファレルがけっこう嵌まり役で相変わらずカッコ良かったし。彼が、組織の一員を演じながらビルの屋上から仲間を狙撃するシーンは、まあベタっちゃあベタですけど素直に手に汗握っちゃいましたもん。そんなヴィクターに結果的に騙されてしまうことになる親友役のドミニク・クーパーも、いかにも情熱的な若いチンピラって感じで良い味出てました。まぁあんなに綿密に考え抜いた作戦(いくらなんでも回りくど過ぎるんちゃう?って突っ込みはナシよ笑)が狂っちゃったからって最後は一人で乗り込んでいって、「オラオラオラ!!」って銃ぶっ放してぜんぶ力ずくで解決しちゃうってとこはアレでしたけど(笑)。それでも静かな怒りを胸に秘めた男の重厚な復習劇としてだけじゃなく、心に癒しきれない傷を抱えた男女の大人なラブストーリーとしてもよく出来ていたと思います。うん、7点!
[DVD(字幕)] 7点(2024-11-20 10:37:32)《更新》
7.  デ・ヴィル家への招待状 《ネタバレ》 
芸術家を目指しニューヨークで孤独に生きる若い女性イヴィー。唯一の肉親であった母親を病気で亡くしてから、彼女は天涯孤独の身となってしまった。そんな中、DNA鑑定を実施しあなたの知らない親戚を探し出してくれるというサイトを見つけたイヴィー。興味を惹かれた彼女は、自分のDNAを提出し調べてもらうことに。結果は、海を越えたイギリスに遠い親戚がいるというものだった。思わず連絡を取ってみると、なんといきなり明日行われるという結婚式に招待されてしまう。怪しいものを感じながらもイヴィーはさっそくイギリスへと向かうのだった――。辿り着いた先は、森の奥深くに幽玄と佇む豪邸だった。百年以上も前に建てられたというこの歴史ある建物に住むのは、何代も続く由緒ある貴族デ・ヴィル家。自分は高貴な血を受け継ぐ上流階級の一員だったのだ。何十人もの親戚たちに歓待され、執事や使用人にまるでお姫様のように扱われ、すっかり有頂天になるイヴィー。だが、肝心の新郎新婦だけは何処にも見当たらない。いつしか彼女は、親戚のみなが自分を物欲しそうな目で見つめてくることに気づく……。都会で鬱屈した日々を送っていた平凡な女性がある日招かれた上流社会、そこで体験する恐怖の一夜を濃厚に描いたゴシックホラー。とにかくこの細部にまで拘ったであろう、創り込まれた世界観は大変グッド。メインホールや廊下、階段に置かれたいかにも歴史を感じさせる家具調度品、手摺や窓枠に施された精巧な彫刻、各部屋に繋がる電気のない時代に作られたであろう呼び鈴……。まぁ新味はないですけど、このおどろおどろしい雰囲気はなかなか好みでした。そこに集うデ・ヴィル家の面々もみな、怪しさ爆発でちゃんとそれぞれにキャラ立ちしてるのも良かったですね。ただ、肝心のお話の方は恐ろしく普通。ぶっちゃけて言うと『トワイライト』シリーズ系のいわゆる女性向けヴァンパイアもの。とにかく最初から最後まで何処かで見たようなシーンのてんこ盛りで驚きというものが一切ない。いつも胸元はだけた白いワイシャツを着こなし、ジゴロのように主人公を口説いてくる当主の男も笑っちゃうくらいベタだし。生成AIに「吸血鬼もの映画の脚本を書いて」とお願いしたら5分で完成しそうな超ベタベタな内容でございました。さすがにもうちょっと一捻りというか、この作品ならではという新しい部分が欲しかったですね。あと、全体的に画面が暗くて見辛い点も大いにマイナス。せっかくここまで美術を頑張ってるのにすごく勿体ないです。とは言え、最後までそこそこ楽しんで観られたのは確か。暇潰しで観る分には充分及第点だったんじゃないでしょうか。
[DVD(字幕)] 6点(2024-11-20 09:54:31)《更新》
8.  オン・ザ・ロード(2012) 《ネタバレ》 
第二次大戦終結後のアメリカ。作家を志す貧しい青年サルと、目の前にある快楽にただひたすら溺れる破天荒な生活を送る青年ディーン。未来も過去もなく、ただ“いま”という時間を実感するためにある日、彼らは何も持たず路上へと旅立ってゆくのだった。生きる喜びを全身全霊で感じるために――。酒とドラックとセックスに明け暮れる若者たちのアメリカ全土を巡る無軌道な旅路を乾いた映像とノリの良い音楽で刹那的に描き出す青春ロードムービー。日本でも根強い人気を誇るジャック・ケルアックの有名な小説を豪華キャストをそろえ映画化したということで今回鑑賞。監督は、若き日のチェ・ゲバラの青春バイク旅を乾いたタッチで描いたロードムービーの佳品『モーターサイクル・ダイアリーズ』を撮ったウォルター・サレス。相変わらずこの監督の南米特有のドライな映像のなかにときおり垣間見せる、詩情豊かシーンは心惹かれるものがありますね。前作の雰囲気がけっこう気に入っていた自分としては、こちらのセンス溢れる映像や音楽もなかなか堪能できました。ただ、ずっと昔に原作は読んだのだけど、はっきり言ってその良さがさっぱり分からなかった自分としては映画化された今作のストーリーもやっぱり受け付けませんでした。べつに僕は必ずしも映画にモラリティを求めているわけではありませんが、それでもこの誰であろうと気に入った女が居ればすぐに口説いてセックスし、友人を含めて乱交やりたい放題、知り合いが後部座席に乗っていようが構わず運転中に女にフェラさせ、金に困れば男とでもやる彼らの姿は、もう倫理観の欠落というより単なるケダモノとしか思えません。確かに映画としてある程度完成度は高いのでしょうが、彼らにこれっぽっちも感情移入できなかった自分としてはそこまで高評価できませんでした。『モーターサイクル~』のチェ・ゲバラのように、長い旅路の果てに未来に繋がる大切な希望のようなものを手に入れるだとか、あるいは自堕落な生活の果てに自業自得の絶望のどん底へと堕ちてしまうとか、そういった心に残る意味のあるラストが欲しかったです。
[DVD(字幕)] 5点(2024-11-15 14:14:23)
9.  ランナウェイ/逃亡者 《ネタバレ》 
年の離れた妻を交通事故で亡くしたものの遺された可愛い盛りの娘と共に充実した日々を送る弁護士ジム。だが、彼には30年間隠し続けてきた過酷な過去があった――。それは理想に燃えて身を投じた学生運動の暴走の果てに銀行強盗を行い、人を死なせてしまったという残酷な事実だった。以来、警察の手を逃れ名前も経歴も捨て別人として生きてきた彼だったが、地方紙の新聞記者によってそんな過去が暴かれてしまう。「自分はまだ捕まるわけにはいかない……」。愛する娘を弟に預け、FBIや新聞記者の追撃を逃れながら彼はかつての仲間たちの元を訪ねてゆく。固く閉ざされた真実を求めて……。娘のために孤独な逃避行を続けるある一人の男を淡々と見つめた社会派サスペンス。監督・主演は往年のハリウッドスター、ロバート・レッドフォード。なんだかいかにも彼が好みそうな真面目なキャラクターばかりが登場し、まるで映画学校の教科書のような超オーソドックスなストーリーが展開されてゆくなんとも地味な作品に仕上がってましたね、これ。うーん、さすがにちょっと古臭いっすわ~。てか、これってハリソン・フォード往年の名作『逃亡者』と展開がほとんど一緒ですやん。それならそれでもっと個性的なキャラクターを登場させるだとか、もっと政治的に物議を醸しそうな先鋭的なテーマを扱ってみるとか、他にはないこの作品ならではという個性が欲しかったです。あまりにも地味で古臭いという印象が強いせいで(それにちょっぴり冗長だし)すぐに記憶から消え去りそうな残念な作品でありました。レッドフォード作品ってどれも作りが優等生に過ぎて、僕とはあまり相性がよくないみたいです。あ、あと内容とは全く関係ない話なんですけど、レッドフォードの11歳の娘を演じた女の子が同じ歳ぐらいの頃のクロエ・グレース・モレッツにめちゃくちゃそっくり(血縁関係があるんじゃとさえ思っちゃいました)な、かなりのカワイこちゃんだったのがびっくり!久々に、僕のロリコンレーダーにビビッとくるなかなかの美少女に出会えてラッキーでした。おわり。
[DVD(字幕)] 4点(2024-11-15 13:04:11)
10.  シック・オブ・マイセルフ 《ネタバレ》 
芸術家を目指し、都会で長い下積み生活を送る若い女性シグマ。だが思うような結果が残せず、いまだカフェでバイトしながらただぼんやりと毎日をやり過ごしていた。周りを見れば友達誰もがみんな楽しそうで、SNSでは充実した毎日を送る人がそんな自分を見せびらかしている。同棲している同じく芸術家である彼氏も、近々個展を開くことが決定している。自分だけ、どうしてこんなにも上手くいかないんだろう――。そんな思いに捉われた彼女はある日ネットで、副作用から皮膚に強い疾患が起こるという違法薬物を目にするのだった。原因不明の皮膚病を発症したもののそれでも困難に負けず活動する若手アーティスト。そんな自分をSNSで発信すれば、自分はもっと注目を集めるかもしれない。そう直感したシグマは、誰にも内緒でその違法薬物を手に入れ、密かに服用し始めるのだった……。何の予備知識もなく今回鑑賞してみたのですが、いやはや、なんとも人をイヤ~~~な気持ちにさせる映画でしたね、これ。映像はすごくキレイで洗練されていてクラシカルな音楽も品が良いのに、語られるエピソードはどれも不快感マックスなものばかり。そのギャップが人をなんとも言えない気持ちにさせる。なんなんですか、この感じ(笑)。色んなとこからモノを盗んできてそれを勝手に作品にして芸術だと言い張る彼氏も意味不明だし、犬に噛まれた人を助けた時の返り血を浴びたままバスに乗って帰る主人公も訳わかんない。人から注目集めるためだけに顔中できものだらけになった主人公が嬉々としてネットに画像をアップしまくり、後で反応を確かめてうっとりするとかシュール過ぎて…。この監督、そうやって人を不快にさせながらも何故か人を惹き付ける絶妙なラインの画作り、お話作りがすごく上手い。彼女と専属契約する障碍者専門のモデル事務所の社長が、あえて雇った目の見えない秘書をこき使うシーンなんて、そーゆーことに最近やたらうるさいポリコレ信者を爽快にぶっ飛ばしてます(笑)。んで後半、いよいよ顔面が崩壊し、もはや周りがドン引きしてるのにそれでもまだ認めてもらいたいと嘘を重ねる主人公。アホやなと思いながらも、どこかちょっと気持ちが分かるように描いてるのも良いセンスしてる。そんな中、主人公が夢見る理想の自分をときどき妄想で描くのも、このイヤ~~な感じをますます増幅してますね。この監督、性格悪すぎだわ。でも、このキレイな映像と胸糞なお話のギャップがクセになって、最後はもはや心地良くなってる自分がいました。監督はこの後、同じく胸糞映画界の俊英アリ・アスターに見出され、ニコラス・ケイジ主演でハリウッドデビューを果たしたとのこと。今度はどこまで嫌な気持ちにさせてくれるやら。胸糞映画界の新たなる才能の出現を素直に喜びたいと思います。
[DVD(字幕)] 8点(2024-11-15 08:13:01)
11.  レンフィールド 《ネタバレ》 
彼の名は、ロバート・モンタギュー・レンフィールド。パワハラ・モラハラ当たり前のとんでもないモンスター上司に苦しめられる今どきの若者だ。上司からくだされる無理難題に日々心をすり減らしながら、それでも辞めることが出来ないでいる。何故なら、彼の上司は、かの有名な吸血鬼ドラキュラだからだ――。百年近く前、ドラキュラに半ば強制的に悪魔の血を飲まされ、永遠の命と引き換えに絶対服従の誓いを立てさせられたレンフィールド。以来彼は、食料となる善良な人間たちをさらってきてはドラキュラのために献上してきた。今夜も彼は、更なる獲物を求めて夜の街をを駆けずり回っている。「こんな生活もう嫌だ!」。我慢の限界に達したレンフィールドは、一大決心して召使を辞める決意をするのだった。当然、ドラキュラはそんな彼を容易に解放するわけもなく……。今も様々な分野に影響を与え続けている怪奇小説の古典『吸血鬼ドラキュラ』、その中に登場する召使レンフィールドを主人公にしたホラー・コメディ。今回ドラキュラを演じるのは、もはやB級映画界の帝王の名をほしいままにする名優(怪優?)ニコラス・ケイジ。ちゅーわけで完全なるB級なんですけど、良い感じに力の抜けた感がけっこう面白かった。なんといっても、横柄で自己チューで部下に無理難題を押し付けるとんでもないパワハラ上司なのに、何処か憎めないドラキュラを演じたニコケイがまさに嵌まり役!吸血鬼ハンターとの闘いで痛手を負った彼が、「力を取り戻すためにもっと善良な者の血を!バスいっぱいのチアガールの血があればすぐに私は復活できる!」とか言い出した時は思わず笑っちゃったよ。「出来るか!」とふて腐れながら飲み屋にやって来たレンフィールドの前に、何故かチアガールたちがバスいっぱい乗り込んできた時は、バカバカしすぎてもう爆笑。そんなご主人様に振り回されるニコラス・ホルトのヘタレ具合も負けず劣らず嵌まり役でナイスでした。切られたお腹からはらわた振り乱しながら街のチンピラたちとバトルするシーンは、適度なグロさとキレのいいアクションで終始テンション上がりまくり。特に中盤、アパートでの血みどろグチャグチャバトルは、これぞB級って感じのはちゃめちゃっぷりで思わず拍手!敵の両手を引き抜いて振り回して武器にするとか、どんな発想やねん(笑)。いやー、良いですね~、このくだらなさ。唯一の難点は、ヒロインを演じた小太りのアジア系女優が若干ミスキャストなとこかな。最後のオチもベタながら爽快感抜群!いや~~、大変楽しい90分を過ごさせていただきました。7点!
[DVD(字幕)] 7点(2024-11-15 07:57:58)
12.  ABC・オブ・デス 《ネタバレ》 
世界各国から集められた26人の俊英監督が、与えられたアルファベット一文字から始まる言葉を選び、自らの才能を自由に駆使して“死”の物語を創り上げた。これはその集大成である――。と、いう訳で2時間強という枠の中に5分前後のお話が26個も収められたホラーオムニバス作品。さすがに物語性のある内容を5分という短さに纏めるのって無理があったんじゃないかな。とにかくみんな、短い持ち時間の中に自分の個性を残そうとするあまり、どれもこれも奇を衒っただけのエログロへと走っていてとにかく下品極まりない作品の連続でありました。血液、ゲロ、唾液、おしっこ、うんこ、おなら、精液、肉片……。ばっちい物が延々と飛び散る映像がひたすら続いてもううんざり!こんなのABC・オブ・エログロじゃん!辛うじて人に見せるレベルに達していたのは、屈強な男と小汚い犬とのボクシングをスローモーションを多用した乾いた映像とそれに見事にマッチしたカッコいい音楽で描いたDの「ドッグファイト」のみ。後はもう映画学校の生徒が卒業制作で創ったような酷い駄作のオンパレードでした。特に日本人監督が製作したいかにもサブカル的悪乗り作品なんて撮ってる現場は楽しかったかも知れんが(レズっ子女子高生が大好きな女教師のおならを嗅いでるうちに肛門へと入っちゃったんだよ、どう?面白いっしょ、あはは~てアホか!)、観ているこっちは不愉快千万!でもまあ、こういう挑戦的な試みをちゃんと映画として成立させたところだけは評価出来るかなぁと4点付けようと思っていたのだけど、最後にどこの馬の骨の日本人が撮ったか知らんが、サブカル風味のくだらない映像で311や原発事故を茶化したような作品が出てきて、もう怒り狂いそうになっちゃいました!理不尽な津波に一瞬にして呑み込まれ怒りや哀しみの声を発することなく海の藻屑と消えざるをえなかった全ての人々や、原発事故で愛する故郷から離れざるをえなくなった人たちを愚弄しているとしか思えず、不快感の塊になって映画を観終えました。最後のZ作品だけでさらに-1点じゃ!!
[DVD(字幕)] 3点(2024-11-12 12:34:51)
13.  サイド・エフェクト 《ネタバレ》 
4年前、証券会社に勤める夫がインサイダー取引によって逮捕され有罪判決を受けたことをきっかけに鬱病を患ってしまったエミリー。無事服役を終え、ようやく帰ってきた夫と共にこれから失われた人生を取り戻そうとする彼女だったが、鬱という厄介な病は簡単には治まらず、車で自殺未遂を犯してしまう。そんなエミリーのことを診察することになった精神科医バンクスは、彼女にとある新薬を処方するのだった。だが、まだ誰も知らなかった。その抗鬱薬には未知の恐ろしい副作用があることを――。ある夜、夢遊病に似た症状に陥ったエミリーは、心神喪失の状態でなんと夫を刺し殺してしまう。有罪か無罪か。責任の所在は、処方したバンクス医師にも向けられ、彼らの平穏な生活は次第に壊れ始めてゆく……。エンタメ映画界の重鎮スティーブン・ソダーバーグ監督が放つのは、そんな謎が謎を呼ぶミステリアスなストーリーが不穏に展開されるサスペンス作品でした。この、いかにもソダーバーグらしいお上品な雰囲気と極めて分かりやすいストーリーテリングの安定感といったらもはや職人技の域に達してますね。二転三転する脚本の妙もあり、最後までなかなか面白く観ることが出来ました。いつもの如く、彼お得意のハリウッド人脈がなせる技なのかキャスティングされた豪華な役者陣も華があって良かったです(いかにも鬱って感じの情緒不安定なルーニー・マーラと相変わらずセクシーダイナマイトなキャサリン・ゼタ・ジョーンズのレズ絡みシーンはなかなかエロくてたいへん良い感じでした!笑)。まぁ後で思い返してみれば細かい部分に粗が目立つし、いまいち心に深く残るものもないまま最後までさくさく進んで終わるため、速攻で記憶から消え去りそうな薄味作品ではあったけどね。
[DVD(字幕)] 6点(2024-11-12 12:02:28)
14.  インスペクション ここで生きる 《ネタバレ》 
ゲイであることを理由に、狂信的なまでに保守的な母親に捨てられ、以来何年もホームレスとして暮らしてきた黒人青年フレンチ。そんなどん底を這い回るような惨めな生活を変えようと、彼はアメリカ海兵隊に入隊することを決意する。必要な書類を貰うために数年ぶりに会った母親からは相変わらず邪険に扱われながらもフレンチは無事、海兵隊に採用されるのだった。早速始まる数週間にも及ぶ新兵訓練プログラム。厳しいしごきに耐え、日夜罵倒をくりかえす上官たちにも我慢しながら、フレンチはただ人並な人生を取り戻そうと努力していた。だがある日、彼がゲイであることがバレると上官や同僚たちの彼の見る目が途端にかわってしまい……。本作がデビュー作となる監督の実体験をもとに、ただゲイであるというだけで様々な困難に直面する一人の青年の自立と再生を描いたヒューマン・ドラマ。確かに描きたいテーマも分かるし、淡々としながらも最後まで観客を惹き付けるこの監督のセンスの良さも充分に認めるところなのですが、正直、自分はいまいち嵌まれませんでした。この映画、とにかく暗いんですよね。画も暗ければ音楽も暗いし、登場人物も暗い人たちばかりだし、主人公なんて最後までほとんど笑わない根暗の極みみたいな人で自分はまったく感情移入できませんでした。もう少し遊びの部分と言うか、人間臭いとこが欲しかった。なんだか戦争映画の快作『フルメタル・ジャケット』のハートマン軍曹のパートをひたすら真面目にリライトしたら物凄く暗くなっちゃいましたって感じかな。それにしてもベトナム戦争の時代から、アメリカ海兵隊の新兵訓練のやり方ってまったく変わってないんですね。下ネタがマイルドになったくらいで、あのランニング中の歌とかまんまじゃん。そんなわけで、アメリカ軍の内部事情――と言うかアメリカ社会のマイノリティに対する根強い偏見は未だ変わっていないという事実を告発するという点において充分価値は高いのでしょうが、自分の好みとは全く合わない作品でありました。
[DVD(字幕)] 5点(2024-11-12 09:48:12)
15.  ゴジラ-1.0 《ネタバレ》 
ゴジラが特段好きというわけでもないんですけど、アカデミー視覚効果賞受賞ということで今回鑑賞。世界を制しただけあって、ハリウッド映画と比べてもなんら遜色ない迫力の映像は凄かった!日本映画にありがちな生活感を必要以上に感じさせる暗くて所帯染みたところもなく、青を基調とした映像はなかなかスタイリッシュ。特にゴジラがいよいよ東京に乗り込んできて放射能をぶちかますシーンは、鳥肌立つくらいカッコよかったです!対してお話の方は……、日本映画にありがちな生活感を必要以上に感じさせる暗くて所帯染みたところがてんこ盛り(笑)。役者陣が悪いのか、監督の演出が悪いのか――恐らく後者だろうけど、なんかみんなすんごく芝居がクサいと感じたのは僕だけなのかな。ここまで全員クサいとちょっとコント感が出ちゃって、自分はいまいち物語に入り込めませんでした。最後の無理やりなハッピーエンドもなんだかなぁ~。とはいえ前述のとおり、映像はすんごく迫力があってそこは充分楽しめましたです、はい。
[地上波(邦画)] 6点(2024-11-06 09:03:51)
16.  デスパレート・ラン 《ネタバレ》 
彼女の名は、エイミー・カー。何処にでもいるような平凡な主婦だ。高校生の長男とまだ小学生になったばかりの娘と郊外の静かな田舎町で暮らしてる。ただ、その生活は決して順風満帆とは言えなかった。何故なら一家の大黒柱である夫が一年前、急な交通事故でこの世を去ってしまったから――。父親っ子だった長男ノアはそれ以来精神的に不安定となり、塞ぎこむ日々が増えてしまった。母として何とか生活を立て直そうと努力しているのだが、それでも難しい年頃であるノアとはいつも擦れ違ってばかり。その朝もノアは自室に引きこもり、学校には行かないと言って寝込んでしまった。心配しながらも日課であるジョギングに出かけるエイミー。誰もいない森の散歩道をただひたすら走り続けていたそんな時、彼女のスマホに信じられないような連絡が届く。なんと息子の通う高校で銃乱射事件が起こり、今も犯人は人質をとり教室に立てこもっているというのだ。息子に連絡を取ろうとするも何故かまったく繋がらない。すると刑事を名乗る男から電話があり、「あなたの息子さんが学校にいる」と告げられるのだった……。舞台となるのは閑散とした森の中、登場人物もほぼナオミ・ワッツ演じるこの母親一人のみ、あとはただたすらスマホで色んな人とやり取りするだけでストーリーを進行させるこの作品。思い出させるのは、『オン・ザ・ハイウェイ』や『ギルティ』などのワンシチュエーションスリラーでしょう。こーゆーほぼ一人芝居となる映画って、やはり主役となる役者の演技力がポイントとなるものですが、そこはさすが百戦錬磨の名優ナオミ・ワッツ。愛する息子を救うために奔走する母親を熱演していて大変見応えありました。最初はただ息子の安否を知るために奔走していたのに、刑事からもしかしたら犯人はあなたの息子さんかもと告げられた時の茫然自失となる姿なんか見てらんない。それでも息子の留守電に「もちろん信じてないけど、もしそうなら終わらせて……」と悲痛なメッセージを残すシーンなんて思わずウルっときちゃいました。その後、とにかく愛する息子の為にもはや暴走してしまう彼女には痛々しいと思いながらもいたく共感。ともすれば退屈になりがちお話なのに、最後までずっとハラハラドキドキしながら観られたのは、このナオミ・ワッツの熱演と監督のツボを押さえた演出力の賜物。まぁ突っ込みどころは満載ながら(朝のジョギングに8キロも離れたこんな森の奥深くまでくる?とか、容疑者の母親かもとなったらさすがに警察がすぐ迎えをよこすだろ!とか)、エンタメ映画としては充分及第点。自分は面白く観ることが出来ました。
[DVD(字幕)] 7点(2024-11-06 08:54:22)
17.  カード・カウンター 《ネタバレ》 
罪を犯し、長年刑務所に収監されていた孤独な男、ウィリアム。刑期を勤めあげ、ようやく娑婆に戻ってきた彼は誰に会うこともなく、街のカジノへと足を運ぶ。時間だけはほぼ無限にあった刑務所の中でウィリアムはひたすらカードテクニックを磨き、出所後はギャンブラーとして生きていくことを決意していたのだ。人並外れた記憶力を駆使し、ブラックジャックやポーカーで着実に儲けを出してゆくウィリアム。そんな中、カークと名乗る謎の青年が彼に接触してくる。カークは、ウィリアムが刑務所に入ることになった過去の出来事――アブグレイブ捕虜収容所での虐待事件のことを話し始めるのだった。なんとカークの父も同じ刑務所での罪を責められ、以来家庭がむちゃくちゃになったという。「あんたや僕の父に罪を着せ、一人だけのうのうとのさばっているあの元上官に一緒に復讐しよう」。過去は捨てたつもりでいたウィリアムだったが、そんなカークの提案に心搔き乱されてゆく……。ノワール映画の名作『タクシー・ドライバー』の脚本を書いたポール・シュレイダー、彼が監督を務めたという本作はいかにも彼らしい重厚な作品でありました。多くは語らず、都会の夜の空気を濃厚に漂わせる映像とジャジーな音楽とで構築されたこのハードボイルドな世界観、自分はけっこう嫌いじゃない。カジノと言う華やかでありながら何処か闇を感じさせる世界で刹那的に生きる男たち……。いやー、渋い。主人公を演じたオスカー・アイザックのダンディな魅力も相俟って、なかなか見応えのある作品に仕上がっていたと思います。社会に恨みを抱き、ただ復讐のためだけに生きる青年を演じたタイ・シェリダンも負けず劣らず渋い。そんな男臭い世界の中で、主人公に思いをよせるパトロン的な役を演じたティファニー・ハディッシュの存在が良いアクセントとなっておりました。ただ問題は、肝心のギャンブラーとしてのし上がってゆく主人公の物語と復讐に命を燃やす青年の物語が有機的にうまく絡まっていないところ。特に最後、優勝を掛けたポーカーの試合を投げ打って、青年の復讐のために会場を去る主人公の感情がうまく受け取れませんでした。え、どうして今?んでウィレム・デフォー演じる元上官はなんであんな簡単に拷問を受け入れたの?ここらへんをもっと丁寧に描いてほしかった。ダークでスタイリッシュな世界観は好きだっただけに、なんとも勿体ない。
[DVD(字幕)] 6点(2024-11-06 08:41:22)
18.  ダンサー イン Paris 《ネタバレ》 
怪我が原因で引退を余儀なくされたバレエダンサーが、療養で訪れた田舎町で様々な人々と接してゆくうちに次第に立ち直ってゆく姿を瑞々しく描いたヒューマン・ドラマ。何の予備知識もなく今回鑑賞したのですが、いやー、いかにもフランスって感じのオッシャレーな映画でしたね、これ。湿っぽい部分なんて一切なし、知的でエレガントな人々が繰り広げるお洒落で洗練された生活を終始キレイな映像とお上品な音楽で彩った内容。確かに、ここまで洗練された世界観を構築できるのは凄いことだと思います。この監督のセンスの良さが随所に光っていて、自分は最後まで心地よく観ることが出来ました。まぁ、誰も彼もがそれなりに幸せになって終わる最後は若干腹立つくらいでしたけど(笑)。
[DVD(字幕)] 6点(2024-10-30 09:59:39)
19.  MEMORY メモリー 《ネタバレ》 
若年性アルツハイマーを患う殺し屋とメキシコの人身売買組織、そしてそんな彼らを追うFBI捜査官の三つ巴の戦いを濃厚に描いたクライム・アクション。正直、さっぱり面白くありませんでした、これ。なんかお話のテンポが恐ろしく悪いし、やたらと登場人物が多いからか話が分かりづらいし、肝心のアルツハイマーを患う主人公という設定もうまく活かされてないし……。子供だから殺さなかったターゲットが次の日、やはり殺されていたとニュースで知った主人公が、朦朧とする記憶のせいで「もしかして俺が殺したのか」と煩悶するシーン。「おぉ、なんか面白くなりそうじゃん」と思ったのに、次の瞬間、殺したのは別の殺し屋だってすぐ種明かしするとか、なんでこんな勿体ないことしちゃうんだろうって思いました。そんなわけで自分は最後までいまいち嵌まれなかったです。ただ、お歳を召してますます渋さを増すリーアム・ニーソンは相変わらずかっこ良かった。あと、『メメント』で記憶を失ってゆく男を演じたガイ・ピアーズが今回記憶を失う男を追う刑事役というのは、なんか感慨深いものがあります。ま、そんなとこかな、はい。
[DVD(字幕)] 4点(2024-10-30 09:46:03)
20.  キャプテン・フィリップス 《ネタバレ》 
それはいつものように平穏な船路になる予定だった――。フィリップス船長率いる大型貨物船アラバマ号はその日、大量の積荷と20人の船員を載せてアフリカのソマリア沖を航海中、武装した4人の海賊に乗り込まれシージャックされてしまう。持てる限りの知略と勇気、そして普段からの訓練を活かしてそんな絶体絶命の危機を脱しようとするフィリップス船長。たが、決死の遣り取りの果てになんとか海賊たちを追い返すことに成功しようとした矢先、彼は人質として連れ去られてしまうのだった。同胞の命を救うため、直ちに現場へとやって来るアメリカ海軍。彼らと小さな救命艇に乗り込んで逃亡を図る海賊たちとの決死の攻防をスリリングに描き出すトゥルー・ストーリー。かつて、911で乗っ取られた飛行機に偶然乗り合わせた乗客たちと凶悪なテロリストの攻防をリアルに描いた政治アクションの佳品「ユナイテッド93」を撮ったグリーングラス監督。その海上版とも言える今作も、全編に半端じゃない緊迫感が漲る良質の社会派アクションドラマに仕上がっておりました。相変わらず、観る者をまるでその場に居合わせたかのように思わせる、息をも吐かせぬリアルな描写はさすが。貧しさゆえ海賊行為へと手を染めざるをえなかった痩せ細ったソマリア人たちと対照的にでっぷり太ったアメリカ人船員との静かでリアルな駆け引き。そこからアメリカ巡視艇との迫力の攻防戦へと一気に雪崩込む後半の展開は見応え充分でした。政治的背景は匂わせるだけで、海賊たちとの戦いに特化した見せ方も良かったです。まあ、全編を覆うあまりにもアメリカ礼賛な空気が若干鼻につくきらいはあったものの、船長とは言え平凡な会社員でしかないトム・ハンクスの演技も良かったし、広大な海上でうねるように波打つ美麗な水飛沫の描写も今にも潮の匂いが漂ってきそうだったし、うん、なかなか面白かった。暑い日が続き、夏本番を迎えつつある今日この頃、こういうのを見るとなんだか無性に海に行きたくなりますね(海賊とかは、マジ勘弁だけどさ!笑)。
[DVD(字幕)] 7点(2024-10-25 14:38:57)(良:1票)
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