2. 十二人の怒れる男(1957)
《ネタバレ》 入り方がいきなりアリバイや証拠の列挙から入るので面食らってしまい、ついていけないのでは?と不安になったが、そんなことはお見通しの構成で、親切に何度も何度も状況を説明してくれる。 無罪と判断する人間が一人また一人と増えていくところでこの映画の行き着く先が読めるが、それでいてどんな展開を見せるのかが気になってしまうところがまた見事な引き込み方だった。 低予算映画なのかも知れないが、脚本と演出がよければ弁論の応酬で十分見応えのある映画になることがわかった。 演技に関しても舞台演劇のように大きな演技が目立つので、陪審員劇という一見難しそうなテーマに反して、十分わかりやすい。 ただ、後から後から有罪を否定するようなネタが出てくるのはちょっと後出し感があるので残念だけど、推理ものの宿命として仕方ないかな。 この作品がこの類型の元祖だとしたら、当時の観客は感嘆しただろうと想像する。 よくまとまってて完成度は高い。 自分の偏見と向き合うことの大事さも教えてくれる。 巧妙なのが、無罪派とて「少年は無罪である」とは主張せずに「有罪と認定するだけの証拠と証言がなく、わかっている材料は全て不正確、不明瞭である」という疑義に基づき、有罪の認定を否定しているところ。 これがあるおかげでただの人情劇の御涙頂戴という安い映画にはなっていない。 ラストの名前を聞かれるシーンも良かった。 最後まで反対していた12番目の男がなぜあの展開で主張を変えたのか、という考察もまた面白い。 [インターネット(字幕)] 8点(2024-04-29 00:02:46) |