1. 火垂るの墓(1988)
(ネタバレ注意) 昭和10年生まれの高畑勲は、昭和5年生まれの野坂昭如と違い、学童疎開を経験したはずだ。清太の取った行動に疑問を抱かずにはいられなかったと推察できる。●原作にはないシーン (1)防空壕に住んでから、いよいよ食糧が底をついたとき、清太たちは世話になっている農家の親父のところへ行く。親父は言う。「よう謝って、あの家に置かしてもらったほうがええ」清太は他をあたると言って立ち去る。親父は「しっかりせなあかんで」と言い、清太を心配そうに見送る。 これは高畑監督の清太に対する気持ち、そのものではないだろうか。 (2)防空壕に近所の子供たちがやってくる。その一人がカエルの干物を見つけ「疎開行っとる弟たちも、こんなもんばっかり食うとるんやろか」とつぶやく。 疎開先での食糧事情の悪化、地元の子供たちとのケンカやイジメなど、高畑監督の体験が垣間見えるように思える。 学童疎開では、清太たちのように逃げ出すことはできなかった。 (3)清太たちが未亡人と衝突して食事を別々にすることになったのを知り、娘は「お母ちゃん、またキツイこと言うたんちゃうの?」と心配そうに言う。別のシーンで娘は、上汁だけで飯のない雑炊を食べる節子を横目で見て、申し訳無さそうな顔をする。 つまり、この家の娘は清太たちの味方であるかような描き方をしている。しかし原作では特にそんな描写はない。 原作ではもうひとり、下宿人の男が住んでいて、娘に気がある。闇ルートを知っていて、貴重な食糧を未亡人に贈って御機嫌を取る。 当然、清太たちの分はない。 野坂昭如は、清太と節子がこの家を出て行くのはもっともなことだ、といった感じに描いている。 9点(2002-12-21 04:19:38) |
2. バーバレラ
物語はどうでもいい。 スケルトンのレバー、シースルーのコスチューム、毛皮張りの宇宙船の内装、ドリーム室内一面に広がる液体映像、等等……美術デザインのセンスが個性的で十分見ごたえがある。とは言え、いちばん楽しませてくれるのはジェーン・フォンダのかわいい仕草だが。 8点(2002-12-21 04:02:47) |
3. クール・ワールド(1992)
傑作とは言えないが実写のシリアスドラマと、バクシのふざけ倒したアニメとのミスマッチ感覚が最高に心地よい。ラストのしめ方も好き。 8点(2002-12-21 03:59:53) |
4. 太陽の王子 ホルスの大冒険
(ネタバレ注意) この傑作アニメの最大の欠点は主人公・ホルスに魅力がない、ということだろう。狼の群れを相手にピンチになったときは岩男に助けられ、グルンワルドにはあっけなく谷底に落とされ、オバケかますは自滅したにすぎず、ヒルダとの出会いではリードされっぱなし。さらにヒルダがひとり思い悩んでいるところへどこからともなく現れて、よせばいいのに勇気づけようとする。(こういうときにはそっとしておいてやるものだろう) いちばん魅力的な登場人物はヒルダだと思うが、忘れてはならないのが彼女のマスコットでもあるリスのチロ。端役でありながらこの物語のテーマそのものを熱弁するおいしい役だ。 7点(2002-12-21 04:23:31)(笑:2票) |
5. BROTHER
死と隣り合わせの緊張感が心地良い! それまでの北野映画と違うのは、寺島進も大杉漣もビートたけしも、それぞれの場面で逃げようとはせずに、自ら死に向かって行くという点だ。大陸国のアメリカ人は逃亡を選ぶが、島国の日本人は死を選ぶ。 7点(2002-12-21 04:11:40) |
6. ピアノ・レッスン
不埒な母と、大人びた娘の関係が良かった。 特に感動的だったのは、エイダがベインズの家にやってきて ベインズが「愛していないなら出て行け」というシーン。 7点(2002-12-21 04:06:42) |
7. HANA-BI
妻の病気・子供の死という肝心な設定を、説明だけで済ませてしまったのが残念。例えば、それらの回想シーンがあれば、ラストの感動はより大きくなるはずだと思った。 5点(2002-12-21 04:14:48) |
8. メトロポリス(2001)
雑多なエピソード、いくつもあるテーマ。ケン一とティマとの物語だけにしぼってほしかった。 いい意味でも悪い意味でも、原作マンガとは大きく異なるテイストだ。 4点(2002-12-21 04:08:45) |