Menu
 > レビュワー
 > ゆき さんの口コミ一覧。4ページ目
ゆきさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 614
性別 男性
自己紹介  洋画は字幕版も吹き替え版も両方観た上で感想を書くようにしています。
 ネタバレが多い為、未見映画の情報集めには役立てないかも知れませんが……
 自分と好みが合う人がいたら、点数などを基準に映画選びの参考にしてもらえたら嬉しいです。

表示切替メニュー
レビュー関連 レビュー表示
レビュー表示(投票数)
その他レビュー表示
その他投稿関連 名セリフ・名シーン・小ネタ表示
キャスト・スタッフ名言表示
あらすじ・プロフィール表示
統計関連 製作国別レビュー統計
年代別レビュー統計
好みチェック 好みが近いレビュワー一覧
好みが近いレビュワーより抜粋したお勧め作品一覧
要望関連 作品新規登録 / 変更 要望表示
人物新規登録 / 変更 要望表示
(登録済)作品新規登録表示
(登録済)人物新規登録表示
予約データ 表示
評価順1234567891011121314151617181920
2122232425262728293031
投稿日付順1234567891011121314151617181920
2122232425262728293031
変更日付順1234567891011121314151617181920
2122232425262728293031
>> カレンダー表示
>> 通常表示
61.  ホーム・アローン 《ネタバレ》 
 クリスマスの定番「何も考えずに観ても面白いし、観賞後は幸せな気分に浸れる」というタイプの映画なのですが、此度久し振りに観賞して、その丁寧な作りに驚かされました。   観客側が「何も考えずに楽しめる映画」を完成させる為には、作り手側は考えに考え抜いて作る必要があるのだと教えられたようであり、本当に頭が下がる思いでしたね。  特に感心させられたのが、状況設定の上手さ。  停電が原因の朝寝坊とか、人数の数え間違いとか、二台ある車とか「幼い男の子が一人ぼっちで家に取り残される」状況への持って行き方に、ちゃんと説得力があるんです。  脚本だけでなく、演出も冴えており、とにかくスピーディーに描き切って、すんなり観客が受け入れられるよう仕上げているんだから、これは凄い事だと思います。    序盤の会話にて「蜘蛛」や「ミニカー」が伏線として張ってある辺りも上手いし、人が沢山いて騒がしい家と、誰もいなくなって静かになった家とを対比させるシーンも良いですね。  意地悪かと思われた姉のミーガンが、置き去りにされたケビンを心配しているギャップなんかも、心地良い意外性、ツンデレなキャラクターの魅力を感じられて、実に自分好み。   恐らく本作は、殺人鬼のサンタと主人公の少年が豪邸の中で戦う「ウォンテッド Mr.クリスマス」(1989年)が元ネタの作品であり、しかも内容をマイルドに調整しているもんだから、普通なら物足りなく思えちゃうはずなんですよね。  でも、そこをしっかり「本作独自の魅力」が感じられるよう仕上げてある。  それは勿論、主演のマコーレー・カルキンの力に因るものなのでしょうが……  自分としては「一人きりになった家の中で、好き勝手やる楽しさ」が描かれている点も大きかったんじゃないかな、と思っています。  勝手に部屋に入って、家族の秘密を暴いちゃうという陰性の楽しみ方から、アイスを山盛りにして食べながら映画を見るという陽性の楽しみ方まで、丁寧に描いてあるんですよね。  特に後者のシーンに関しては(あぁ、子供の頃にコレを観て、何時かは自分も山盛りアイスクリーム食べてやるんだと思ってたなぁ……)(でも、気が付けばその夢を叶えないまま、子供の頃ほどアイスが好きじゃない大人になってたな)と思えたりして、妙にしみじみしちゃいました。   また、本作は少女を観て愛でる「ロリコン映画」と同じように、少年を観て愛でる「ショタコン映画」としての魅力を備え持っている辺りも、重要なポイントじゃないかと思えましたね。  今更言うまでもなく、主演のマコーレー・カルキンは美少年だし、その仕草や、物事に対する反応なんかが、凄く可愛らしい。  劇中で映画(しかも恐ろしい怪物が出たりする訳ではない、単なるギャング映画)を観て怖がる演技なんかは特に秀逸で「生意気で口も悪いけど、意外と可愛い奴だ」と思わせてくれるんだから、お見事です。  家に人が沢山いると見せかける為、音楽のリズムに合わせて人形を動かすシーンも楽し気で良かったですし、サンタの恰好をした男に対し「アンタが偽者なのは分かってる。ボクはもうガキじゃない。でもサンタに雇われてるんでしょう?」と話したりする、絶妙なマセ具合も可愛かったですね。  彼が一世を風靡した名子役となったのも、大いに納得。   そんなカルキンの存在に頼り切り、ひたすら子供目線の「キッズ映画」となっていてもおかしくなかったところを踏み止まって「我が子を想い、何とか家に帰ろうと奮闘する母親の物語」という側面を付け足し、大人目線でも楽しめる「ファミリー映画」に仕上がっている点も、これまた素晴らしい。  「地下室の怪物」の恐怖を乗り越えるエピソードも(確かに子供の頃は、ああいう謎の恐怖心みたいなのがあったなぁ)と思えて説得力があったし、近所の老人との心温まる交流も、如何にもクリスマス映画らしく思えて、ほのぼのさせられました。   一応、難点も挙げておくと、元ネタでは殺人鬼だったのを泥棒に変えた事による弊害か、諸々のトラップに「やり過ぎ」感があり、悪役である泥棒達が可哀想になってしまうって点が該当しそうなんですが……  まぁ、これに関しては「勧善懲悪」の枠内に収まる範疇だし、ギャグっぽく描かれているのでギリギリセーフ、と思いたいところ。   ラストシーンにて、再会した家族には「一連の泥棒退治」について話さず秘密にしておく辺りも「ケビンと観客だけの秘密の共有」感があって、好きですね。  ベタな表現になりますが「クリスマスが来る度に観返したくなる」という、そんな愛着のある映画です。
[ブルーレイ(吹替)] 8点(2018-12-25 23:59:03)(良:2票)
62.  コネクテッド 《ネタバレ》 
 「セルラー」(2004年)ほどのスタイリッシュな魅力はありませんが、アジア映画らしい泥臭さが濃密に盛り込まれており、あちらに負けず劣らずの傑作に仕上がっていますね。   勿論、全編に亘って改良が施されているという訳ではなく(ここは「セルラー」の方が良かったなぁ……)と思える部分もチラホラ見つかってしまうのは、非常に残念。  恐らく「セルラー」で不自然だった箇所を、なるべく自然にしようと改変を行ったのだと思いますが、それによってテンポが悪くなっていたり、逆に説得力が失われていたりもするんですよね。  この「悪くなっている部分」さえ無ければ、あの「セルラー」を越える傑作だと、胸を張って紹介出来た気がします。   中でもキツかったのが「監禁中のヒロインの手枷を解いてあげる犯人達」という場面。  確かに「セルラー」に対しても「なんでヒロインの手を縛っておかなかったんだよ」というツッコミは成立する為「最初は縛っておいた」という形にするのは分からないでもないんですが……それによって「わざわざ一度縛ったものを、何故解いた?」という、より強いツッコミ所が生まれているんだから、本末転倒じゃないかと。  無理矢理に推測するなら「手枷を解いてやる事によって飴を与え、自白させやすくする」という効果を狙ったのかも知れませんが、ちょっと分かり難かった気がします。  「セルラー」では「犯人達が手を縛る事を思い付かなかっただけ」という事で、ギリギリ納得出来る形だった訳だし、ここは変えなくても良かった気がしますね。   と、そんな具合に冒頭部で(こりゃあダメじゃないかな……)と失望させられたりもした訳ですが、その後にどんどん挽回。  気が付けば画面に釘付けになっていたんだから、やはり凄い映画なんだと思います。   先程は「セルラー」に比べて悪くなっている部分を述べましたが、それと同じか、あるいはそれ以上に良くなっている部分も多かったんですよね。  まず、主役格の「青年」「女性」「警官」の三人が、不自然な程に有能過ぎない、等身大な存在となっている点が好ましい。  中でもヒロインのグレイスが「教師だから色んな事に精通していて、何でも出来てしまう」という万能属性を取っ払われて「設計士だから電話を直す事が出来た」「男との揉み合いで勝利出来たのも、偶々刃物が血管を傷付けたから」といった感じに改変されており、これは凄く良かったと思います。  警官に関しても「これまでロクに銃を撃った事も無いはずなのに、何故か物凄く有能」というキャラから「性格に難があって降格させられている元敏腕刑事」という設定になっており、グッと説得力が増している。  極めつけはルイス・クー演じる主人公の青年であり「如何にも頼りない眼鏡姿」「でもやる時はやるという精悍な顔立ち」「経理関係の仕事をしており、頭も良い」「これまで息子に嘘を吐き続けていた為、今度こそ約束を守ろうと奔走する」というキャラクターになっていて、実に自分好みでしたね。  小道具として「バットマン」を巧みに活用し「ヒーローに憧れているはずなのに、現実と妥協して情けなく生きてきた主人公が、今度こそ本物のヒーローになる」というカタルシスを生み出している辺りなんて、見事としか言いようがないです。   誘拐犯のリーダーも貫禄があって良かったし、香港映画らしいカーアクションが盛り込まれている点も、嬉しい限り。  空港での犯人達との駆け引きも緊迫感がありましたし「一件落着かと思いきや、実は……」という、どんでん返しのやり方も上手かったと思います。   ヒロインは人妻ではなくシングルマザーなので、この後に主人公と結ばれる未来が示唆されているんですが、それも直接そうとは描かず、あくまで「結ばれるかも?」と思わせる程度に留めている辺りも、上手いバランスでしたね。  最後に息子に理解してもらえて、親子で抱き合うハッピーエンドになるのも、実に気持ち良い。  人質の命を救う為、止むを得ず息子との約束を破ってしまう主人公の姿が切なかっただけに、この「和解」のシーンは、本当に心に響くものがありました。  (あんなに約束を守ろうと頑張ったのに……)というやるせなさが強かっただけに、約束を破ってでも他人の命を救ってみせた主人公の恰好良さと、それが息子に伝わって仲直りする事が出来たという感動も、更に際立つという形。   「バットマンに転職したら?」との言葉通り、この後の主人公は、貧乏な家族を泣かせるようなヤクザ紛いの仕事なんて辞めちゃって、警官になっていたりもしそうですよね。  あるいは息子をロビン役にして、クライムファイター的なヒーローになるかも?  なんて妄想まで出来ちゃう、実に面白い一本でした。
[DVD(吹替)] 8点(2018-12-19 21:30:31)
63.  セルラー 《ネタバレ》 
 「別れのワイン」もそうでしたが、ラリー・コーエン関連作だと彼が「脚本」を担当した品よりも「原案」を担当した品の方が、傑作が多い気がしますね。  根本となるアイディアを思い付く能力と、それを形にする能力とは別なのだと示す好例であるように思えます。   実際、本作においても「携帯電話が紡ぐ物語」を魅せる演出が、アイディアに負けず劣らず素晴らしかったですからね。  とにかく展開が早くて、映画が始まって三分程でヒロインの女性が拉致される様を描く辺りなんて、実に気持ち良い。  本作は「ある日突然、謎の連中が家に押し入って来て監禁された」というヒロインと「ある日突然、謎の電話が掛かって来た」というヒーローの二人によるダブル主人公制になっているのですが、この二つの導入部を立て続けに見せられると、普通ならダレちゃうはずなんです。  なんせ「一人の主人公」「一つの導入部」に比べて、単純計算で二倍の時間が必要になるし(さっき導入部やったのに、また別の主人公でやるのかよ)という観客の苛立ちだって、無視出来ませんからね。  にも拘らず、本作はとにかくスピーディーな演出で乗り切って、観客に余計な事を考えさせず、そのまま映画の世界に引きずり込んじゃう訳だから、見事という他ないです。   主演がクリス・エヴァンスにキム・ベイシンガーと、アメコミ映画好きには嬉しい顔触れが揃っている事。  更に、ジェイソン・ステイサムやウィリアム・H・メイシーまでいて、脇役陣に至るまで非常に豪華な事も、嬉しい限り。  本作は主役側の「青年」「女教師」「警官」の三人が、揃いも揃って有能という、都合が良過ぎる内容なんですけど、それに対する違和感が少なくて済んだのは、演者さんの力が大きかった気がします。   それと、普通ならエヴァンス演じる青年に視点を絞り「ある日突然、謎の電話が掛かって来た。受話器の向こうにいる彼女は何者だ? 監禁されてるというのは本当なのか?」という謎解きの物語にするところだろうに、ダブル主人公制にして、事前に答え合わせを済ませてある辺りも、本作の凄いところですよね。  「謎解きの魅力」は潔く振り切って「事件を解決しようと奔走する面白さ」を重視した作りになっており、それゆえに新鮮で、十五年近く経った今でも古臭さを感じさせない。    「携帯切れよ、運転に集中しろ!」と言いつつ、自分も携帯電話とハンドルを手放せない主人公の姿とか、非常事態ゆえのギャップの面白さを描いている点も良いですね。  大変な事件が起こっているのに、それを知っているのは主人公だけで、周りは理解してくれないというシチュエーション。  だからこそ「すれ違いコント」のような笑いがあるし、孤軍奮闘している主人公の事を、観客も応援したくなるという図式。   携帯のバッテリーを調達する為、止むを得ず店から強盗する際のカメラワークなんかも、凄く良いですね。  あえてシンプルに、画面を左から右へと移動させ、その後にまた右から左に戻すという形で「車に行って銃を取り、店に戻って来る」という主人公の動きに、完璧にシンクロさせている。  主題歌の使い方も抜群に上手くって、視覚的に印象に残る場面と、聴覚的に印象に残る場面、その両方が揃っているってのは、かなり凄い事なんじゃないでしょうか。   そんな中でも特に好きなのは、人質を取られているのを承知の上で「交渉決裂だな」と一度電話を切り、犯人側が再交渉を持ち掛けてくるのを、祈りながら待つ主人公という場面。  とにかくエヴァンスの演技が素晴らしくて、本当に感情移入させられるし、犯人側が折れる電話を掛けてくるまでの「間」も完璧で、緊迫感が凄かったです。  敵側が悪徳警官である事を活かした「(人質には)手を出さないと誓う」「市民を守ると誓ったように?」というやり取りも、皮肉が効いていて素敵でしたね。  クライマックスにおいても、アラームを駆使して敵の位置を知らせたり、ビデオ録画で証拠を押さえたりと、最後まで「携帯電話」というアイテムをフル活用している辺りも、実に見事。   ヒロインは人妻なので、ロマンスに発展したりはしないんだけど、最後は感謝を込めたキスで終わって、ハッピーエンドとなる辺りも好みですね。  携帯電話の画面を使ったスタッフロールに至るまで、とことん楽しむ事が出来た、満足度の高い一品でした。
[DVD(吹替)] 8点(2018-12-17 03:30:50)(良:2票)
64.  グリース 《ネタバレ》 
 青春映画の金字塔、なんていうベタな一言が似合う作品ですね。  日本での知名度はさほどでもないような気がしますが「後年の映画において頻繁に名前が出てくる事」「パロディの対象となるのも多い事」が、その影響力の強さを窺わせてくれます。   思うに、主人公とヒロインが最初から両想いであり、彼らの恋の行方そのものよりも「本当は真面目な自分」「でも仲間の前では強がって、不良ぶってみせる自分」という二面性の葛藤がメインになっている辺りが、当時としては新しく、革命的だったのではないでしょうか。  後の「ハイスクール・ミュージカル」「glee/グリー」にも通じるテーマ性があり、映画史やドラマ史について考える際にも、本作の存在は無視出来ないように思えます。   ……とはいえ、そんなアレコレは無視しちゃって、映画単体として観賞しても、しっかり楽しめる内容となっていますよね。  体操着姿が全然似合わないトラヴォルタが、彼女の為に不良からスポーツマンに生まれ変わろうと悪戦苦闘する姿は微笑ましいし、ラストにて不良少女なファッションに身を包むオリヴィアの姿も、実にキュート。  やたらと登場人物が多い映画なのですが、この主役二人のキャラがしっかり立っている為、安心して観賞出来た気がします。   俳優達が老けていて高校生役は無理があるとか、ラストまで引っ張った挙句に「妊娠してなかった」の一言で済ませちゃうのは酷いとか、欠点も色々目に付いちゃうんだけど、そんな完成度の低さ、隙の多さが、また「青春映画」らしくも思えるんですよね。  ダンスにレースと、山場が二つある事に関しても(どっちか片方に絞った方が、綺麗に纏まったんじゃない?)って感じてしまうんですが、そんな野暮な観客の疑問に対し「ダンスシーンもレースシーンも、両方やりたかったんだよ」と、作り手が堂々と答えているかのような大らかさ、潔さが画面から伝わってくるんです。   時代遅れなはずのファッションも、四十年後の目線で見れば斬新で恰好良く思えたりもするし、とんでもない火力のライターを使って煙草を吸うシーンなんかには、憧れちゃうものがありましたね。  ミュージカル部分も素晴らしく、ボロボロの車を綺麗に作り直して「グリース・ライトニング」と名付ける場面は本当にテンション上がったし「美容学校を落第」なんていう歌詞の曲を、物凄くロマンティックに唄ってみせるシーンなんかも、惚けた魅力があって好き。  ドライブインシアターで「絶対の危機」の予告編が流れているのも(監督の趣味なのかな?)と思えたりして、微笑ましかったです。   そんな中でも特筆すべきは「教師キャラ」の描き方であり、本作は不良少年達を主役にしておきながら「悪い大人」である教師が一切登場していないんですよね。  校長も、体育教師も、車の改造を手伝ってくる女教師も、揃いも揃って良い人であり、憎まれ口を叩く事はあっても、決して主人公達を見放したりはせず、温かく見守ってくれる。  それゆえに本作においては「大人は分かってくれない」と少年達が絶望する事もなく、悲劇的な結末は迎えずに、ハッピーエンドへと着地してくれるんです。  この手の「不良少年もの」で、ここまで優しい大人達が揃っている作品は初体験だったもので、本当に斬新に感じられたし、その歪さを感じさせない公正な世界観が、凄く心地良かったです。   卒業カーニバルにおける「生徒が教師にパイを投げつけるゲーム」も、そんな本作の「教師と生徒の関係性」を象徴する一幕であり(仲が良いなぁ……)と、観ていてほのぼの。  ラストにて「卒業したら、バラバラになるのよ」「そうなったら、もう会えないかも知れない」という会話シーンがあり、しんみりした寂しい別れが描かれるのかなと思ったところで「いや、心配ないって」と主人公が言い出し「いつまでも、みんな仲間」という歌詞の曲を歌って、明るく楽しく終わってみせるのも、実に気持ち良かったですね。   最後は主人公カップルが車に乗って、空を飛んで終わりというのも、普通なら(もしや、卒業式の夜に事故死して天国へ行ったという寓意?)なんて考えてしまいそうなものなのに「いや、この映画に限って、それは無い」と断言出来てしまうような、力強い明るさがある。  眩しいくらいの輝きを感じさせる、素敵な映画でありました。
[DVD(吹替)] 8点(2018-11-14 01:37:37)(良:2票)
65.  サンダーアーム/龍兄虎弟 《ネタバレ》 
 この頃のジャッキーは意外と皮肉屋な男を演じる事が多いのですが、その最たる例が本作における「アジアの鷹」でしょうね。   単なる「良い人」ではなく「俺が信じる神の名は『金』さ」と嘯き、時には卑怯な真似もやってみせる。  それでいてジャッキー特有の「愛嬌」「優しさ」は失っていないというバランスが絶妙であり、凄く魅力的。  後に本作がシリーズ化して三部作となるのは、映画の面白さだけが理由では無く、この「アジアの鷹」というキャラクターの魅力に依るところも大きかったんじゃないかな、と思えます。   それと、本作においては主人公ジャッキーと、親友のアラン、敵の人質になっているローレライ、金持ちお嬢様のメイによる恋の四角関係も描かれており「若者達による青春物語」といった趣があるのも良かったですね。  アランとローレライの絆を確かめる為、自身の失恋にケリを付ける為に、ジャッキーが悪役を演じてみせる終盤の件なんて、特に好き。   他にも、脱出機能付きの愛車コルト・スパイダーは恰好良いし、それを駆使したカーアクション有り、お馴染みのカンフーも有りで、とっても豪華な内容なんですよね。  ともすれば「ジャッキー版インディ・ジョーンズ」という一言だけで終わってしまいそうな映画なのに、単なる模倣で終わらず、ちゃんと独自の魅力を打ち出せているのが凄い。   撮影中、ジャッキーが命に関わる程の大怪我をした影響で、冒頭の短髪姿から一気に髪が伸びた形になるのが少し不自然とか、相棒役かと思われたアランが殆ど活躍しなかったのは寂しいとか、欠点と呼べそうな部分もあるんだけど、そんなの些細な問題。  当時のジャッキー映画お馴染みの「三菱マークが目立つ事」も「ちゃんと作中で宣伝しているからこそ、これだけ派手なカーアクションが出来たんだ」と思えるし「人気歌手のアラン・タムが準主役である事」も「彼ならではのミュージック・ビデオ風の演出が良いアクセントになっている」と思えるしで、なんていうか「大人の事情」が垣間見える部分も、きっちり「映画としての長所」に変えてみせたという、懐の深さが伝わってくるんですよね。  スポンサーを満足させるだけでなく、セクシーな巨乳女性軍団を登場させるファンサービスまでしてくれるし、そういった「清濁併せ呑む」スタイルが、本作の主人公の性格とも合致していて、実に良い味を出していたと思います。   コメディ面においても「アランからの手紙を読み、ホテルの二階からロビーに戻る」件はクスッとさせられたし、アクション面も「相手のドロップキックを、下から上に突き上げるドロップキックで撃退する」という場面があったりして、どちらも印象多い。  そして何といっても、主人公のガムを食べる仕草がやたら恰好良くて、自分としては、もうそれを観るだけでも満足しちゃうんですよね。  子供時代に、何度も練習して、その仕草を真似していた事を思い出します。   数あるジャッキー映画の中で「最も魅力的な主人公は?」と問われたら、本作の「アジアの鷹」を挙げたくなる。  粗削りだけど、若々しいパワーを感じる、良い映画です。
[DVD(吹替)] 8点(2018-09-25 12:55:33)
66.  フィリップ、きみを愛してる! 《ネタバレ》 
 「愛」と「脱獄」を描いた映画として、非常に良く出来ていると思います。   始まって十分程で「言い忘れてたけど、俺はゲイ」と主人公が告白し、本作における「愛」とは「同性愛」であると分かるんですが、それでも戸惑いは最小限で、楽しく観賞出来ちゃうんですよね。  冒頭、自分を養子に出した母親との対面シーンだけでも「ジム・キャリーだからこその魅力」を堪能出来ましたし「可憐な乙女」としか形容しようのないフィリップ・モリスを演じ切ったユアン・マクレガーも、これまた素晴らしい。  この二人が主演だからこそ「男同士のカップル」という際どい役どころでも、自然に感情移入出来た気がします。  ・それまでの恋愛対象は髭を生やしたタイプだったのに、女性的なフィリップに主人公が一目惚れするのには戸惑う。 ・「叫び屋」を殴らせた件でフィリップが感激しちゃうのは、違和感あり。 ・ゲイの男性って、ゴルフを毛嫌いするのが普通なの?   などなど、不可解さを感じる部分もありましたが、それらを差し引いても面白い作品でしたね。  フィリップと出会う前の恋人であるジミーが、死の床にて「僕は生涯の恋人と出会ったけど、君は未だ出会ってない」と語り、自分の死後に出会うパートナーを大切にして欲しいと訴える場面は、特に感動的。  作中にて「フィリップ、きみを愛してる」と告げるシーンが二回ある訳だけど、最初の場面は思い切りドラマティックに叫び「燃え上がる愛」を感じさせて、二回目の場面では「愛の終わり」を連想させるような、静かな雰囲気の中で呟かせるという対比も、凄く良かったです。   そんな「愛」に比べると「脱獄」の方は添え物というか「フィリップに愛を伝える為には、脱獄する必要がある」という程度の描かれ方なんですが、これがまた滅法面白いんですよね。  最後の大技と言うべき「エイズ詐欺」も良かったけれど、ハイテンポで描かれる「判事の書類を偽装して保釈させる」「刑務所内で働く医療スタッフに変装して逃げ出す」「セクシー(?)な職員に変装して逃げ出す」という三つの脱獄シーンも、同じくらいお気に入り。  本当に、あの手この手で刑務所を抜け出そうとする様が愉快で、痛快でさえありました。   「約束を守る」事に拘って、看守達に止められても最後まで音楽を流そうとする囚人仲間も良い味出していたし、食堂にて特別に豪華なメニューを食べる事になり、フィリップが喜んでいる場面なんかも印象的。  ラストシーンにて、愛しい彼を忘れられない主人公が、再び脱獄騒ぎを起こし、笑いながら走る姿で終わるというのも良かったです。   実際の「フィリップ・モリス」が主人公の弁護士役としてカメオ出演している為「決定的な嘘をつく訳にはいかない」という配慮もあってか、最終的にフィリップ側は主人公に愛想をつかしたとしか思えない作りになっているのは、悲しいけれど……  それもまた、本作の魅力の一つと言えそうなんですよね。  実話ネタだからこその、ハッピーエンドになりきれない切なさが、物語に上手く作用していたように思えます。   たとえ愛を否定されたとしても、それでも求めずにはいられない男の愚かさ、滑稽さを、空に浮かんだ不思議な雲が、優しく見守っている。  この映画に相応しい、惚けた魅力のある終わり方でした。
[DVD(吹替)] 8点(2018-09-14 10:09:36)(良:1票)
67.  マーヴェリック 《ネタバレ》 
 ポーカーを題材にした映画は色々ありますが、その中でも本作が一番好きですね。   といっても、単純に「ポーカー映画」と評するのも躊躇われる程に色んな要素が盛り込まれており、それら全てが喧嘩せず綺麗に纏まっているんだから、これは凄い事だと思います。  最後の「実は親子だった」というオチも鮮やかに決まってるし、何より映画全体から「観客を騙そう」という意思よりも「観客を楽しませよう」という意思が伝わって来るんですよね。  自分は、この手の「どんでん返しオチ」に対しては拒否反応を抱く事もあるんですが、それって要するに「作り手が観客を楽しませる事よりも、観客を騙して悦に入る事を優先させている」と感じてしまうからこそ嫌な気分になる訳で、本作には、そういう気配が全く無いんです。  なんせメインとなる「ポーカーの勝負」に興味無い人でも楽しめるよう「銃撃戦」「暴走した馬車を止めようとするアクション場面」「ヒロインとのロマンス」などを、合間合間に盛り込んでるくらいですからね。  此度、久々に観賞してみて(こんなにポーカー以外の要素が多かったのか)と驚きましたし、多彩な魅力をバランス良く提示する監督の手腕には、改めて感服させられました。   メル・ギブソンも飄々とした主人公を魅力的に演じてるし「木曜日の夜に脚本を読み、金曜日の朝にOKの返事をした」というジョディ・フォスター演じるアナベルも、とびきりキュート。  原作ドラマで主人公ブレット・マーヴェリックを演じたジェームズ・ガーナーが「主人公の親父」役で登場するというファンサービスも、心憎いですね。  西部開拓時代の世界も雰囲気たっぷりに再現されており、音楽もそんな世界観を壊さぬようクラシカルな選曲がされている訳だから、もう画面を眺めているだけでも楽しくって……観賞中は、とても充実した時間を過ごす事が出来ました。   そんな中、あえて気になる箇所を挙げるとすれば「主人公のブレットが、弟のバートと名前を間違えられる理由」「ダニー・グローヴァー演じる銀行強盗の正体」の二つの謎が、作中で解き明かされていないという、その辺りが該当するでしょうか。  恐らく「原作ドラマ版では、兄弟によるダブル主人公であった為、本作の主人公が兄のブレットとも弟のバートとも解釈出来る余地を与えておいた」「実は生きていたポークチョップ」が正解だとは思うんですが、出来れば明確な答えを示して欲しかったです。   それと「エンジェル達が入念に身体検査して金を奪わなかったのは不自然」「ディーラーがトランプの束を摩り替えるシーンが分かり易過ぎる」って辺りも、不満点と言えそうですね。  前者に関しては、マックス・A・コリンズの小説版ではキッチリ金を奪われるシーンがあっただけに、余計に「なんで?」と思えてしまうし、あれだけの大金を奪われずに済む展開なら、もうちょい理由付けが欲しい。   また「最後にマーヴェリックがスペードのエースを引けた理由」に関しても、小説版では「母親が病死する際にも、母の為にスペードのエースを引いてみせると予告したのに、引けなかった過去がある」というドラマ性「保安官が密かにスペードのエースに摩り替えておいた」という裏付けがあったのに比べると、本当に「魔法で引き当てた」としか思えない作りになっており、ちょっと物足りなさがありましたね。  小説版では、第二のヒロインとして「蛇使いのバアさん」が登場し、この「とうとうスペードのエースを引き当てる事が出来た場面」を大いに盛り上げていたりもするので、興味が有る方には、是非ご一読してもらいたいです。  映画と同じくらい面白くて、オススメですよ。
[DVD(吹替)] 8点(2018-08-16 22:36:38)(良:2票)
68.  セブンティーン・アゲイン 《ネタバレ》 
 バスケだけでなく、ダンスを披露するシーンまであるのは「ハイスクール・ミュージカル」ファンへのサービスなのでしょうか。  当時ザック・エフロンは既に二十歳を越えていた訳だけど、十七歳の主人公を爽やかに演じ切っており(やはり、この人は学園映画だと輝くなぁ……)と、しみじみ思えましたね。  本作のラストにおいて、主人公はバスケ部のコーチに就任していますが、ザック・エフロンがコーチ役を務める学園スポーツ物なんかも、何時かは観てみたいものです。   そんな与太話はさておき、映画本編はといえば「安心して楽しめる青春映画」そのものという感じ。  「もう一度、高校時代に戻って人生をやり直したい」という後ろ向きな願望を満たしてくれる内容なんだけど、しっかり前向きな結論に達して終わる為、後味も良いんですよね。  「これまでの自分が積み重ねてきた過去は、決して間違いじゃなかった。だから、やり直す必要なんて無い」という着地の仕方は、予定調和ではあるんだけど、やっぱり清々しくて気持ち良いです。  ・息子と友達になり、一緒にバスケ部に入って活躍する。 ・娘に惚れられ、近親相姦に陥りそうになる。 ・妻に愛を語ったら、熟女マニアと罵られてしまう。   といった具合に「家庭を持つ中年男が、十七歳に若返ったら……」というシチュエーションならではの面白い場面が、ちゃんと盛り込まれているのも嬉しいですね。  どれも目新しい展開という訳ではなく「こういう設定なら、当然こうなるだろう」と思えるような王道展開なのですが、そのベタさ加減が心地良い。   主人公の親友ネッドと、美人校長とのロマンスも良いアクセントになっており「主人公と妻は、どうせ復縁するだろうけど、こっちの恋が上手くいくかどうかは分からない……」という意味で、適度な意外性を与えてくれた気がします。  校長の台詞「孔雀ってるの?」という表現には笑っちゃったし、通信教育で習得したというエルフ語をキッカケに意気投合する流れも微笑ましくて、自分としては、もう大好きなカップルです。   ネッドに関しては、十七歳時点での小柄なオタク少年姿も可愛らしかったので、作中で大人の姿でばかり出ているのが、ちょっと勿体無いようにも思えましたね。  「一緒にカンニングしてバレた」「レイア姫をプロムに誘った」などの断片的なエピソードだけでも面白かったし、やり直す前の「一度目の高校生活」についても、もっと詳しく観てみたかったものです。   その他にも「主人公と選手交代した息子が試合で活躍して、勝つところまで描いて欲しかった」とか「娘の彼氏だったスタンと喧嘩したまま終わっているのが気になるので、和解するなり何なりして関係に決着を付けて欲しかった」とか、色々と不満点は見つかるんですが、それも「この映画の、ここが嫌」という欠点ではなく「ここは、もっとこうすれば良かったんじゃない?」という類の不満点に止まる辺り、自分好みの映画だったんでしょうね。   良い映画、好きな映画に対しては「これ一本で終わる映画ではなく、何十話も続くドラマであって欲しかった」と思う事があるんですが、どうやら本作もそれに該当する一本みたいです。
[DVD(字幕)] 8点(2018-07-30 08:36:59)(良:2票)
69.  団塊ボーイズ 《ネタバレ》 
 「Wild Hogs」という原題が恰好良過ぎるので、邦題もそのまま「ワイルド・ホッグス」にして欲しかったなぁ……なんて、つい思っちゃいますね。  かつて「バス男」が「ナポレオン・ダイナマイト」と改題し再販されたように、こちらも再販して欲しいものですが、流石に難しいでしょうか。   そんなタイトルに関するアレコレはさておいて、映画本編はといえば、実に心地良い「旅行映画」であり「青春映画」であり、自分としては、もう大満足。  ツーリング中の風景は美しいし、音楽も良い感じだし、何より「水場を見つけて、そこで泳ぐ」「テントを張って、皆で焚き火を囲む」などのお約束場面が、しっかり盛り込まれているんですよね。  こういった映画である以上「良いなぁ、自分もツーリングしたいなぁ」と感じさせる事は必要だと思いますし、それは間違いなく成功していたんじゃないかと。   主人公のウディは「破産」に「離婚」にと、様々な問題を抱えているのに、ラストにおいてもそれらの問題が一切解決していないというのも、本作の凄い部分ですよね。  それが決して投げっ放しにならず、劇中で語られた通り「たとえ仕事も家族も失っても、俺には仲間がいる」という前向きな結論に繋がっているんだから、お見事です。  聞くところによると続編の予定もあったそうで、諸々の問題については、その続編にて解決するつもりだったのかも知れませんが、これ一作でも充分綺麗に纏まっていた気がしますね。  この「仲間がいる」という結論は「仲間との絆さえあれば、どんな逆境でも乗り越えられる」というメッセージに繋がっているように思えて、本当に好きです。   一緒に水浴びしたハイウェイポリスをはじめ、同性愛ネタが多いのは鼻白むし「イージー・ライダー」を鑑賞済みじゃないとクライマックスで盛り上がれないんじゃないかと思える辺りは欠点なのでしょうが……それでもやっぱり好きなんですよね、この映画。  特に後者については、元ネタありきのパロディ展開なのを承知の上でも、観ていて熱くなるものがありました。  ピーター・フォンダって、恰好良い歳の取り方をしているなぁって、惚れ惚れしちゃいましたね。   腕時計を投げ捨てて旅に出る「イージー・ライダー」と重ね合わせる為、携帯電話を投げ捨ててから旅に出るシーンも面白かったし、それを踏まえての「時計を捨てろ」というラストの台詞も最高。  敵役となるデル・フェゴスのアジトを爆発炎上させちゃったのは「やり過ぎ」感があり、これじゃあ主人公達が悪者みたいでスッキリしないなと思っていたら、最後の最後で「以前より素敵な住処をプレゼント」というフォローが入っていたのも嬉しいですね。  その後、仲間達による乾杯シーンで終わるというのも、凄く気持ち良い〆方。  この「後味の良さ」は、偉大な先達である「イージー・ライダー」には備わっていなかった部分であり、本作が単なる模倣ではない、オリジナルの魅力を備えた品である事を証明している気がします。   「バイク好き限定」「中年男限定」などの枠に囚われず、女性や子供が観たとしても結構楽しめるんじゃないかな、と思えてくる。  とても愉快な、浪漫のある映画でした。
[DVD(吹替)] 8点(2018-07-23 05:17:06)(良:3票)
70.  ベガスの恋に勝つルール 《ネタバレ》 
 色んな意味で「夢を叶えてくれる映画」って感じですね。   ベガスで一攫千金、お金持ちになりたい。  美女(美男子)と一緒に暮らしてみたい。  そんな庶民の願望を疑似体験させてくれる、心地良い映画だったと思います。   スロットで大当たりする場面もテンポ良く、気持ち良く描いているし、自宅でのパーティーや社員旅行などのイベントの件も、とても楽し気で良かったです。  二人が同棲する事になる部屋も「ここに住んでみたい」と思わせるような魅力があって、好きなんですよね~  ヒロインは嫌がっていたけど、バーカウンターやピンボールの台があるなんて素敵じゃないかと思えるし「ドアを開けると、そこからベッドが飛び出す」ギミックなんかも好み。   「相手に浮気させようと互いにアレコレ画策する」「便座の上げ下げを巡って争う」「夫婦カウンセリングに向かう二人」などの夫婦喧嘩パートも、軽快なBGMに乗せて楽しく描かれており、良かったと思います。  テーマがテーマだけに、ここで攻防が陰湿になり過ぎて観ていて引いてしまう可能性や、主役二人が「嫌な奴」に思えてしまう可能性もありましたからね。  そこを暗くなり過ぎず、明るく能天気なテンションで描き切ってみせた事には、大いに拍手を送りたいところ。   「自分でサイコロを振る勇気すら無かったけど、とうとう起業を決意した主人公」「仕事に依存していたけど、仕事が好きという訳じゃなかったと気が付くヒロイン」などの真面目な部分を、ライトなノリを失わないまま、さりげなく描いているのも良かったですね。  お約束だけど「今回の騒動を通して、二人は大金よりも価値のあるものを手に入れる事が出来た」と感じさせるものがあって、凄く後味爽やか。   主人公の男友達と、ヒロインの女友達も魅力的であり、喧嘩してばかりだった二人が、最終的にはカップルみたいに仲良くなっちゃう結末も、ハッピーエンド感を高めてくれたように思えます。   その他にも「夫婦どちらも『レイダース』が好きだったと分かる」「結婚指輪を填めた薬指を、中指を立てるようにして旦那に見せ付ける妻」など、印象的なシーンが幾つもあって、本当に観ていて楽しい。  夕暮れを迎えた海辺での「結婚してくれませんか、もう一度」という二度目のプロポーズも素敵で(あぁ、良いなぁ……良い映画だなぁ)なんて、しみじみ感じちゃいました。   あまり評判は良くない(ゴールデンラズベリー賞にノミネートされてる)のを覚悟の上で観賞したのですが、意外や意外、本当に面白くて、楽しくて、吃驚させられましたね。  やはり世間の評判なんかに左右されず、自分の感性で判断しなきゃ駄目だな……と、そんな当たり前の事を再確認させてくれた、非常に価値ある一本でした。
[ブルーレイ(吹替)] 8点(2018-07-12 08:54:37)(良:2票)
71.  ハリウッド的殺人事件 《ネタバレ》 
 映画好きなら誰しも「世間の評価は芳しくないけど、自分は好き」という映画を胸に抱えているものだと思いますが、本作が正にそんな一本。   副業で不動産を扱っているベテラン刑事に、俳優志望の若手刑事という二人によるバディムービーなのですが、彼らの年齢差が丁度親子くらいで、会話にも何処となく疑似親子めいた匂いが漂っているのとか、凄く好きなんですよね。  若手の方が「刑事を辞めて、本格的に俳優をやりたい」と将来についての展望を語ったり、初老のベテラン刑事の女性関係を心配してみせたりと、二人のやり取りが実に微笑ましい。   特に、若手刑事のコールデンを演じたジョシュ・ハートネットに関しては、本作が歴代でもベストアクトだったんじゃないかと思えるくらいですね。  「このまま刑事を続けていて良いのか」という作中の悩みが、現実世界の彼が当時抱いていたという「このまま俳優を続けていて良いのか」という悩みとも重なり合っているように思え、非常に説得力があったかと。  ラストにて「役者の才能は無いみたいで……刑事止まりかな」と、何処か照れくさそうに語る辺りなんかも、コールデンの「なんだかんだ言っても、刑事という職業が好き」という気持ち、そしてジョシュの「俳優という職業が好き」という気持ちが伝わってくるかのようで、凄く良い場面だと思います。   脚本担当の方も「実際に不動産の副業をしつつ刑事をやっていた」「その時の相棒は俳優志望だった」というキャリアの持ち主のようであり、そういった現実とのシンクロ具合が、本作に適度なリアリティを与えていた気がしますね。  破天荒な設定の、コメディ仕立てな刑事物なのに、地に足が付いている感じで安心して楽しめたのは、そういった裏付けがあったからこそなのかも知れません。   ハンバーガーのトッピングに、携帯電話の着メロといった小道具の使い方も上手いし、マジックミラー式の取調室のシーンなんかも、コミカルな魅力があって好きですね。  カーチェイスや銃撃戦に迫力が無いという、根本的な欠点もあるのは分かりますが、それさえも 「女の子用の自転車や、タクシーを使って追跡するのが面白い」 「俳優志望だからこその演技力を駆使し、相手を騙してから撃つのが痛快」  なんて具合に、好意的に捉えてしまうんだから、本当に自分と相性の良い映画なんだと思います。   115分で終わるのが勿体無くて、この二人を主役とした刑事ドラマを、何十話分でも観てみたくなるような……独特の魅力を備えた一品でありました。
[DVD(吹替)] 8点(2018-06-13 17:43:55)
72.  ギャラクシー・クエスト 《ネタバレ》 
 「スタートレック」のパロディ作品なのですが、どちらかといえば「サボテン・ブラザース」の影響の方が色濃いようにも思えましたね。   「物語の中のヒーローが、本物のヒーローになる」という筋書きが全く同じであり、その枠組みを「西部劇」から「スタートレック」に置き換えただけ、という感じ。  である以上、既視感だらけで退屈な映画になりそうなものなのに……なんと吃驚。  これがまた、元ネタに優るとも劣らぬ傑作に仕上がっているのですよね。  自分の場合「サボテン・ブラザース」を観賞済みだったので、ある程度展開が読めてしまった部分があるのですが、そういった予備知識無しで観ていたら、本当に衝撃的な面白さだったんじゃないかと思います。   ストーリー展開が読めているのに、何故こんなに面白かったのかと考えてみたのですが、それに関しては「登場人物が魅力的である」という一点が大きかった気がしますね。  往年のSFテレビドラマ「ギャラクシー・クエスト」の栄光に縋って生きている、売れない俳優達。  互いに喧嘩したり、仕事に対する文句を言ったりはするんだけど「基本的には良い奴等」という線引きが絶妙であり、観客としても素直に彼らを応援出来るんです。   特に感心させられたのが、序盤にて主人公のジェイソンがファンに八つ当たりしてしまう場面。  ここって「主人公達は現状に不満を抱き、鬱屈としている」「そんな彼らが、この後ヒーローになる」という事を示す為、決して外せない場面だと思うんですが、一歩間違えば序盤の段階で「こいつは嫌な奴だ」と観客に悪印象を与えてしまう、非常に危うい場面でもあるんですよね。  でも、この映画ではヒロインのグエンが「ファンを相手に、あんなにカッとするなんて初めて」と驚く展開が用意されている。  それによって「主人公はファンサービスを大切にするような、優しい男である」「そんな彼が思わずファンに八つ当たりしてしまうほど、現状に対しては不満を抱いている」という二つの情報を、同時に観客に与える事に成功しているんだから、これは本当に上手かったと思います。   「ドラマでは直ぐに死ぬ端役だが、現実の世界では今度こそヒーローになろうともがいている男」を、ゲスト枠のような形で参戦させているのも良いですね。  主人公達が「ドラマのようにヒーローになる」という展開ならば、彼に関しては必然的に「ドラマと同じように死んでしまうのでは?」と思わされるし、その存在によって、適度な緊迫感が生まれてる。  女性型宇宙人とのロマンスを繰り広げる技術主任なんかも、程好いアクセントになっていたかと。   彼らに助けを求める宇宙人側の描写も、これまた良いんですよね。  「コスプレかと思ったら、本当に宇宙人だった」という序盤の展開だけでも面白いし、歩き方や笑い方がぎこちないという、わざとらしい「宇宙人っぽさ」の演出も素敵。  リーダー格のマセザーが、ジェイソンから「本当の俺達はヒーローなんかじゃない。全ては作り物だった」と告白されて、凄く切ない反応を返す場面も、忘れ難い味がありました。   「サリスの船から盗み出したテープ」「小さな猿のような生物」など、要所要所でハッとさせられる場面があり、コメディでありながら油断出来ない、シリアスな物語としての魅力が充分に備わっている点も、見逃せない。  そんな魅力がピークに達するのが「ドクター・ラザラスに憧れていた青年」の死亡シーンであり、彼を看取りながら「役者のアレクサンダー」が「ヒーローであるドクター・ラザラス」へと生まれ変わる流れは、本当に感動的だったと思います。   無名時代のジャスティン・ロングがオタク少年役で出てくるサプライズも嬉しかったし「いつも一秒で止まるのよね」などの台詞も、ユーモアがあって好み。  仲の悪かったジェイソンとアレクサンダーが、咄嗟の機転で一芝居打ってみせ、窮地を脱する辺りも面白かったですね。  無事に悪者を退治した後「ギャラクシー・クエスト、十八年振りのシリーズ復活!」「かつての端役が、今度はレギュラーに抜擢」「技術主任と女性宇宙人も、ラブラブなカップルに」といった映像が次々に流れるハッピーエンドも、非常に後味爽やか。   気になる点としては、切り札であるオメガ13の使用シーンにて(明らかに十三秒以上、時間が巻き戻ってない?)とツッコまされる事。  そして、上述のオタク少年も皆を救った功労者なのに、それが認められる場面が無かった事なんかが挙げられそうですが、精々そのくらいですね。   元ネタありきの内容でありながら「これは元ネタより面白いんじゃないか」と思わせてくれる。  非常に貴重な映画でありました。
[DVD(吹替)] 8点(2018-05-29 14:19:58)(良:4票)
73.  アフリカン・ダンク 《ネタバレ》 
 「才能」を発掘する喜びを味わえる映画ですね。   冒頭、生意気な新人選手と対決する件では主人公を応援したくなるし、舞台をアフリカに移してからの敵となる「町の顔役」も憎たらしいので、勝利の瞬間には大いにカタルシスを得られるという形。  「ディフェンスは息するより大事」などの台詞も印象深く「身体能力は高いが、粗削りなメンバーを磨き上げる」楽しさが、しっかり描かれていたと思います。   第二の主人公と言えるサーレが一度わざと下手な振りをして、落胆させた後に本気のプレイを披露し「やっぱり駄目かと思ったのに、本当に凄かった!」と歓喜させてくれる流れも上手いですね。  観ている側としても(アフリカの奥地に物凄い才能を持ったバスケットプレイヤーがいるだなんて、そんなに上手い話があるのか?)という疑いの念を抱いてしまうのは避けられない訳で、それを逆手に取っている。  「嘘みたいなストーリー」だからこそ出来る、気持ち良い展開でありました。   実はサーレーの兄もバスケが上手いという点に関しては、もうちょっと伏線が欲しかった所ですが……気難しい父と和解し「ウィナビに戻す」と宣告される場面が凄く良かったので、あんまり気にならなかったですね。  アメリカ人の主人公と、現地の部族が交流し「水道を作ろう」「それじゃあ、皆で一緒に水を運ぶ事が出来なくなる」という会話を交わす件も、現代人の価値観に違う方向から光を当てる効果があり、良かったと思います。   部族の仲間入りを果たす為、チャンピオンリングを空に捧げる場面も、雄大な自然を感じられて心地良いし「振り回し」のテクニックが、主人公からサーレーに受け継がれた事を証明して、試合に勝利する流れも素敵。  展開が王道、お約束に沿っている為、意外性や斬新さには乏しいかも知れませんが、その分だけ安心して楽しめる一品でありました。
[DVD(吹替)] 8点(2018-04-04 05:18:53)(良:1票)
74.  映画ドラえもん のび太の宝島 《ネタバレ》 
 初代アニメ版ドラえもんを盛大にリスペクトした「奇跡の島」に続いて、二代目アニメ版、所謂「大山ドラ」をリスペクトした内容となっている本作。   とはいえ「野沢雅子が主役級のキャラとして復帰」というほどの衝撃は無く、リスペクト度合いとしては低めに感じられましたね。  一応、キャラデザには「大山ドラ」調のテイストも取り入れられており、特に主人公のび太とドラえもんの造形が前作までとは異なっている為 (せっかく2006年から原作通りのキャラデザになったのに……)  という抵抗も大きかったのですが、脚本や声優陣はキチンと「現行アニメ版」の空気を保持している為、安心して観賞する事が出来ました。   ちょっとメタ的な分析をすれば 「フロックは新世代ファンの象徴」 「ジョンは旧世代ファンの象徴」  であり、この映画はそんな両者の和解を描いている……なんて事も言えそうなのですが、そんな事よりも何よりも、純粋に娯楽映画として「面白い!」と言える作品であった事が、嬉しかったですね。  上述の通り、脚本や声優陣の力も大きかったのですが、何と言っても、これが映画デビュー作である今井監督の演出が素晴らしい!   特に、クライマックスの流れは、本当に手に汗握るものがありましたね。  ドラえもんが地球を守る為に奮闘し、スーパー手袋やタケコプターが壊れていく中でも、身一つで頑張り続け、とうとう意識を失う。  それを受けて、のび太が怯える我が身を勇気でもって抑え込み、危険を顧みず奈落の底に飛び込んでみせる。  どちらも非常に熱い演出であり、普段のテレビ放送回にて今井監督が見せている切れ味を、映画という舞台でも如何なく発揮してくれた事が、心底嬉しかったです。   単なる「可愛いマスコット枠」かと思われたミニドラが、のび太達を救ってみせる際の、絶望の中に光を差し込ませる演出も良いんですよね~  船で旅をする魅力、皆で外泊する魅力、美味しそうな食事シーンの魅力と「ドラえもん映画なら、ここは押さえておいて欲しい」と思える要素が、きちんと揃っている辺りも良い。  挿入歌「ここにいないあなたへ」の使い方も上手くて、その曲が流れる親子の和解場面では、涙で画面が滲んでしまった程です。   そんな具合に、褒めだすといくらでも褒められる映画なのですが……欠点というか、気になる部分も多かったですね。  まず、主題歌の「ドラえもん」に関しては、ドラえもんという作品そのものをテーマにした曲である為「映画宝島の主題歌」という感じがせず、ラストに流れても今一つピンと来なかった事。  名曲「夢をかなえてドラえもん」が流れなかった事。  「ここは俺達に任せて、先に行け」という場面が二つ存在し、最初のジャイアンとスネ夫の方は凄く熱くなれたのに、二回目になるマリアさん達の場面では(それ、さっき同じ展開やったばっかりじゃん)と思えてしまい、白けてしまった事。  そして、静香ちゃんとセーラが瓜二つである理由について、説明が為されていない事が挙げられるでしょうか。   最後の点に関しては、過去作の「奇跡の島」において「のび太とダッケが瓜二つである理由」を、タイムマシンを絡めて劇的に説明してみせた前例があるだけに、実にもどかしい。  恐らく「人のしあわせを願い、人の不幸を悲しむことのできる人」という劇中の台詞からすると、フロックもセーラもジョンも、のび太と静香ちゃんの子孫なんだよって事だとは思うんですが、そこはもっと断定的に表現して欲しかったです。  この描写だと、観賞中に(これって多分、のび太達の子孫って事だよな……いや、深読みし過ぎか?)とアレコレ考えてしまい、せっかく感動しているのに、気が散る形になっているんですよね。  ここでハッキリと「のび太とフロック達は血が繋がっている」と確信させてくれる描写さえあれば、思う存分映画に没頭して、より感動出来ていた気がします。   総評としては、前作の南極が「完成度の高い傑作」であったのとは対照的に「欠点も目立つけど、長所がそれを補って余りある傑作」であるように思えましたね。  ラストに金貨を手に取り、冒険の日々を思い出して笑顔になるのび太達という「本当の宝物は、金貨じゃなくて、そこに込められた思い出だった」と示す終わり方も、凄く良かったです。   ……そして、来年は八鍬監督による「異説クラブメンバーズバッジ」を題材にしたオリジナル映画であるらしく、こちらにも大いに期待!  予告映像からすると、再びキャラデザも原作準拠な形に戻るようですし、心から楽しみに待ちたいと思います。
[映画館(邦画)] 8点(2018-03-03 12:33:13)(良:1票)
75.  刑事ジョー/ママにお手あげ 《ネタバレ》 
 劇中にて、ママが見せる幼少期のジョーの写真が「ロッキー」で飾られていた写真と同じであるというだけでも、何だか憎めなくなってしまう映画。   実際、自分が大のスタローン贔屓である事を差し引いても、結構面白いと思うんですよね、この作品。  思っていた以上に「刑事物」としての要素が濃いし、母子によるバディムービーとして、きちんと成立している。  ちょっと年増なヒロインの警部補さんもキュートで、彼女と主人公との恋の行方についても、素直に応援する事が出来ました。   オムツ云々の件は(そこまでやらなくても……)と感じるし「母親を撃ったの」が最後のオチというのは弱いと思いますが、それも御愛嬌。  なんていうか(映画に点数を付けるなら、ここはマイナスポイントだな)と思う箇所ではあるんですが(ここの場面は苦手だ)(この映画のココが嫌いだ)とまでは思わないラインに留めているという、非常に自分好みな作りなんです。  だから安心して観られるし、短所は受け流して、長所だけを受け止めるような形で、楽しむ事が出来る。   真面目な熱血漢なのに、恋愛に不器用で、ママに対してはとことん弱いという主人公ジョーのキャラクターも、非常に魅力的。  普段は素っ気無くても「プレゼントがある」と聞かされると、子供っぽく喜ぶ辺りなど、ママが溺愛するのも納得な愛嬌があるんですよね。  「愛から逃げる事」が貴方の欠点だと諭されるシーンでの、寂し気にママを見つめる表情なんかも、凄く好き。  アクション部分でもなく、コメディ部分でもなく、ここの真面目な母子の対話シーンこそが、本作の白眉であったように思えます。   ちょっとボケ気味かと思われたママが、実は驚異的な記憶力の持ち主だったと判明する件も気持ち良いし「お大事に」という台詞の使い方も上手い。  序盤と終盤、銃を撃った後の仕草が母子でそっくりであった点なんかも好きですね。   上述の通り「(その犯人は)母親を撃ったの」というオチに関しては、少し弱いと思っているのですが、それでもジョーの「おや、まぁ……でも、気持ちは分からんでもないよ」と言わんばかりの、複雑な笑顔を見せられちゃうと、何だかそれだけで(まぁ、良いか)と納得し、満足してしまう。  ダメな子ほど可愛い、なんて言葉に倣い「ダメな映画かも知れないけど、自分は好き」と主張したくなるような、そんな一品でありました。
[地上波(吹替)] 8点(2017-12-27 19:48:13)
76.  ジングル・オール・ザ・ウェイ 《ネタバレ》 
 毎年クリスマスが近付く度に観返したくなる映画。   正直、色々と粗も目立つ作りなのですが、何となく好きなんですよね。  仕事では有能だけど、そのせいで忙しくて、家族との間に溝が出来てしまっている主人公。  そんな彼が、幼い息子と約束したプレゼントの「ターボマン人形」を求めて、クリスマスイブの街を駆け回る事になる……という、そのプロットの時点で、もうハートを鷲掴みにされちゃう感じ。   主人公は、ちょっと感情的だし、息子の為とはいえ色々とマナー違反を犯す事になる訳ですが、演じているシュワルツェネッガーの愛嬌ゆえか、ちゃんと感情移入出来るようになっているのも上手いですね。  象徴的なのが「隣家の子供のプレゼントを盗もうとした場面」で、観ている側としても、これまでの交通違反やら行列の割り込みやらと違い(それだけは、やっちゃいかんだろう)という気持ちになるんです。  で、そんな場面では主人公も思い止まり、良心に従って、盗んだプレゼントを返そうと引き返す事になる。  そういった「やり過ぎない」バランス感覚が、絶妙だったと思います。   作中で「不人気」扱いされているブースターが、可哀想になってしまう事。  そして「クリスマスプレゼントを貰えなかった子供は、将来ロクな大人にならない」というメッセージが感じられる事などは気になりますが、どちらもコメディタッチで明るく描かれている為、後味が悪くなるという程じゃなかったです。   「一番のお客様」という仕事相手に対する決め文句を、妻に対しても言ってしまい焦る場面とか、寝室の灯りを消した後の顔芸とか、ちゃんと「シュワルツェネッガーがコメディをやっているからこその魅力」が感じられる辺りも嬉しい。  回る車輪と、時計とを重ね合わせる演出も好きだし、喧嘩したトナカイとの間に友情が芽生える場面なんかも、ベタだけど良かったですね。   そして何といっても、紆余曲折の末、主人公がターボマン人形を手に入れた時の達成感が、実に素晴らしい。  その後、人形を受け取った息子が、自分以上に人形を欲しがっている人を見つめ「メリークリスマス」という言葉と共に、笑顔で人形を譲る結末となるのも(うわぁ、良い子だなぁ……)と思えるしで、ここの流れが、本当に好きなんですよね。  何ていうか、凄くクリスマスらしい気分に浸れる感じ。  プレゼントを贈るという行為は、受け取る人だけでなく、渡す人をも幸せにするんだな、と思えます。   映画のラスト「息子のプレゼントに感ける余り、妻へのプレゼントを忘れていた」というオチは弱いようにも思えますが、この後に再び主人公が奔走する姿を想像すると、実に微笑ましいですね。  今度は息子の為でなく、妻の為にプレゼントを探し歩く続編映画が、頭の中で上映されるかのよう。   そんな素敵な妄想、映画が終わった後もまだまだ楽しめるという余韻こそが、本作からの最大のプレゼントであったのかも知れません。
[地上波(吹替)] 8点(2017-12-20 16:39:03)
77.  IAM A HERO アイアムアヒーロー 《ネタバレ》 
 とうとう日本にもゾンビ映画の傑作が誕生したんだなぁ……と、感無量。   邦画にも面白い作品は沢山あるけれど、その中で「ゾンビ映画」というジャンルは非常に頼りなく、胸を張って「面白い」と言える作品は、これまで無かったように思えますからね。 「火葬の風習がある日本では、死者蘇生がイメージし難い」 「銃器が身近に存在しない」  等々、ゾンビ映画を作る上では不利なお国柄なのに、そんなハンデを乗り越え、これほど面白く仕上げてみせたのだから、もう天晴です。   二時間という尺の都合上、どうしても原作漫画の要素は色々と切り捨てられてしまう訳だけど、その取捨選択も見事でしたね。  原作においては、丸々一巻分かけて「売れない漫画家の鬱屈とした日常を描いた漫画」と思わせておいて「実はゾンビ漫画だった」と一巻ラストにて種明かしするという、非常に面白い構成となっているのですが、これを再現するのは潔く諦め、十五分程で「ゾンビ物ですよ」と種明かし。  謎の存在「来栖」や妄想の産物「矢島」も登場させず「主人公の英雄」「ヒロインである比呂美と小田」の三人を中心とした作りにして、分かり易く纏めてある。  英雄の恋人である徹子の描写が大幅に削られており、彼女を殺してしまった事への葛藤すらも失われているのは気になりましたが……まぁ仕方ないかなと、納得出来る範囲内でした。   そもそも原作においては作者自身が「作中に散りばめられた謎を解く事」を放棄したフシがあり「適当にそれっぽい言葉を並べておけば、信者が勝手に深読みしてくれる」と、作中人物に嘯かせているくらいですからね。  よって、原作における「来栖とは何なのか?」「ZQNとは何なのか?」という謎解き部分を徹底的に排除したのは、もう大正解だったかと。   日常がゾンビの発生によって崩壊する様も、真に迫って描かれていましたし「日本」という身近な世界が舞台になっている分だけ、その臨場感も倍増。  ここの辺りのスピーディーさ、動きを伴うからこその迫力は、漫画には出せない、映画ならではの魅力だったと思います。   ロレックスの伏線が三重、四重になっている脚本にも、非常に感心。  「原作では準主役格だったりする中田コロリ先生が、ロレックスを付けている」→「それを気にしていた英雄が、文明崩壊後の世界では簡単にロレックスを拾える事に拍子抜けする」と、ここで伏線の回収が済まされたと油断していたところで「英雄がロレックスを大量に装備し、それが腕のガードになっていたお蔭で、噛まれても助かる事になる」「最終的には、我が身を守る虚栄心の象徴のようなロレックスを外して、射撃に専念する」ってオチに繋げてみせたのには、もう脱帽です。   ボス格の敵キャラとして「高跳びゾンビ」をチョイスするセンスも良いし、そして何といっても……終盤のショットガン描写が、素晴らしい!  それまで発砲する事が出来ず、躊躇い、怯えていた英雄が、ヒロイン達を守る為、ラスト二十分程で、とうとう引き金をひいてみせるんだから、本当に痺れちゃいましたね。  溜めて、溜めて、解き放つというカタルシスがある。  連射系の武器ではない、一撃の威力が大きいショットガンと、非常に相性の良い演出だったと思います。  襲い来る大量のゾンビに対し、素早くリロードしながら迎え撃つ英雄の姿も恰好良かったし、最後は「弾切れの銃で、敵の頭部にフルスイング」という倒し方なのも、実に痛快で良い。   原作においては「富士山に行けば助かるというのは、ガセネタだった」「実は英雄も感染していた」などの情報が明かされ、この後どんどん絶望の匂いが濃くなっていく訳ですが、本作においては「富士山に行けば、何とかなるかも知れない」「比呂美の存在によって、ワクチンが作れるかも知れない」という希望を残した段階で完結しており、その点でも好みでしたね。  最後の台詞通り「ただのヒーロー」になった英雄なら、きっと彼女達を守り抜けるだろうなと思える。  良い終わり方の、良い映画でした。
[DVD(邦画)] 8点(2017-12-01 04:19:50)(良:2票)
78.  オースティンランド 恋するテーマパーク 《ネタバレ》 
 ちょっと評価が難しい一品。   それというのも、この映画って観客が「女性である事」「作家ジェーン・オースティンのファンである事」を想定して作られている感じなんですよね。  なのに自分と来たら「男性」「オースティン作品は映画やドラマでしか知らない」という立場な訳だから、流石に門外漢過ぎる気がします。  ……でも、そんな自分の価値観からしても、面白い映画であった事は間違い無いです。   監督はジャレッド・ヘス(代表作「ナポレオン・ダイナマイト」)の妻である、ジェルーシャ・ヘス。  元々、夫の作品で共同脚本を務めていた為か、これがデビュー作とは思えないほど自然な仕上がりとなっており、落ち着いて観賞する事が出来ましたね。  低予算な作りであり、イギリス摂政時代を完全に再現しているとは言い難いのですが、それが却って劇中の「オースティンランド」の小規模さとシンクロし、リアルな箱庭感を生み出していたと思います。   主人公のジェーンが(何か、思っていたのと違うなぁ……)と失望しちゃう気持ちも分かるし(でも、せっかく全財産を注ぎ込んで訪れたんだから、楽しまなきゃ!)と自らに言い聞かせるようにする辺りなんかも、凄く小市民的で、好感が持てました。   ストーリーの流れとしては、所謂「幻想の世界に浸っていた主人公が、現実と向き合う話」「オタク趣味から卒業する話」な訳だけど、主演にケリー・ラッセルという美女を配する事によって、あまり痛々しい印象を与えない作りになっているのも、ありがたい。  短い出番ながら、元カレが最低な奴だとハッキリ伝わってくるのも良かったですね。  主人公が現実に失望して、何時までも幻想の世界に閉じ籠っていたくなる事に、説得力が増す感じ。   映画の途中から「貴族であるノーブリー様との幻想の恋」「使用人であるマーティンとの現実の恋」が逆転していく流れも、鮮やかでしたね。  劇中のジェーン同様「マーティンも役者であり、最初から彼と結ばれるよう計画されていた」「実はノーブリーとの交流こそが、演技ではない本当の恋だった」という二段仕掛けの真実には、見事に驚かされました。   まず、最初に映画に登場するのはマーティンの方であり、観客としても自然と彼の方がメインかと思うよう誘導しているのが上手い。  そして、園内の役者達が休憩中に交わす会話に違和感があって、その違和感が伏線となっている辺りなんて、本当に感心しちゃいました。   マーティンは役者ではなく、本当にジェーンを好きになった純真な男であるはずなのに、彼女の名字を憶えていなかったりする。  その一方で、彼女に興味無いかと思われたノーブリーは、しっかり憶えている。  そういった伏線が効果的に盛り込まれているからこそ「裏切られた」という不快感ではなく「そう来たかぁ!」という快感に繋がってくれる形です。   素顔のマーティンは女に困らない陽気なプレイボーイ、素顔のノーブリーは親友と婚約者に裏切られて傷心中の真面目な男、という設定なのも、これまた絶妙。  あんまりノーブリーを「王子様キャラ」として描かれちゃうと、同性の自分としては鼻白むものがあるし、何より「現実と向き合って幸せを手に入れた」という映画の結論も、嘘臭くなっちゃいますからね。   そもそも、反発し合っていたはずの男女が惹かれ合うのも「高慢と偏見」のダーシーとリジーそのままだし「貴方は、このお屋敷のダーシー様」という台詞もあるしで、本作品って「オースティン作品の幻想から抜け出したと思ったら、ダーシー様のような素敵な男性と結ばれた」という、都合が良過ぎる結末なんです。  だからこそ、その現実世界における「素敵な男性」を、なるべく嘘っぽくせず、リアルに感じさせる必要がある。  彼は美男子だけど、不器用で、不幸な女性経験があって、歴史の教授だから金持ちでもない、という辺りが、程好い「身近な存在」っぷりで、良い落としどころだなと思えました。   あえて気になった点を挙げるとしたら「妊娠中の友達が、あんまりストーリーに絡んでこない事」「エリザベスとアンドリュー大佐の仲がどうなったのか、曖昧なまま終わる事」などが該当しそうですが、欠点とも言えないレベルでしたね。  それよりも、気に入った部分の方が、ずっと多い。   主人公カップルを祝福したくなるような、良い映画でした。
[DVD(吹替)] 8点(2017-11-08 08:40:11)(良:1票)
79.  RV 《ネタバレ》 
 「ロビン・ウィリアムスの映画で一番好きなのは?」と問われたら、本作の名前を挙げます。   感動して泣いちゃうとか、ギャグに大笑いしちゃうとか、そういう訳じゃないんだけど、とにかく「面白い」というより「好き」な作品なんですよね。  良質な家族映画であり、旅行映画であり、何度も観返したくなるような魅力がある。   何故こんなに好きなんだろうと理由を分析してみると「RVの魅力を、きちんと描いている事」が大きい気がしますね。  飛び出すリビング機能とか、キッチンもシャワーもトイレも付いているとか、小さなTVで映画も観られるし、後部にあるベッドで休む事も出来るとか、そういった性能面について、自然な流れで紹介してみせている。  凄ぉ~くベタな感想だけど「こんなRVで旅行してみたいなぁ」って思わせる力があるんです。   勿論、コメディのお約束で劇中の旅はトラブル続きであり、ともすれば悲惨で笑えない空気にもなりそうなんですが、そこをギリギリで踏み止まっているのは、主演俳優の力が大きいのでしょうね。  ロビン・ウィリアムスの、あの笑顔と、飄々とした演技のお蔭で「何があっても、最後はハッピーエンドを迎えてくれる」と、安心して観賞する事が出来る。  この「安心させる」って、観客を泣かせたり、笑わせたりするよりも、ずっと難しい事でしょうし、そう考えると、やっぱり凄い俳優さんなのだなと、改めて実感します。  「反抗期を迎えていた娘が、幼い頃と同じように心を開いてくれる」 「キャッチボールを通して、息子とも仲良くなる」  といった具合に「家族の再生」が優しい空気の中で描かれているのも、凄く心地良い。  序盤は下品なネタが多かったり、中盤以降はカーアクションもあったりと「笑い」の部分は派手で尖っていただけに、そういった真面目な部分は奇を衒ったりせず、落ち付いて、穏やかに描いているのが、良いバランスだったように思えますね。  序盤の車中では、各々違う歌を好き勝手に唄っていた家族が、終盤には同じ歌を合唱してみせる演出も、非常に分かり易くて良かったです。   準主役級のゴーリキー家族も魅力的だったし、ネルソン・ビーダーマン四世ことウィル・アーネットが悪役を楽し気に演じてくれているのも嬉しい。  「やぁ、ローラ。妻はいないよ」とか「バーベキューセットを買ったからね」とか、台詞による小ネタの数々も好み。  家族に隠れつつ企画書を書き上げた時の達成感に、悪魔の峠を越えて間一髪で間に合った瞬間の安堵感なども、忘れ難いものがありました。   仕事人間だった主人公が、土壇場で良心を優先させて退職を選び、その後にちゃっかり新しい勤め先を見つけたりと、あまりにも予定調和過ぎて、都合が良過ぎるオチが付くのも、この映画らしいですね。  天丼の「勝手に動くRV」ネタを挟みつつ、最後は家族皆で笑って、楽しく唄って終わり。  ハッピーエンドが似合う、良い映画です。
[DVD(吹替)] 8点(2017-10-25 01:31:52)(良:1票)
80.  スパイダー パニック! 《ネタバレ》 
 これは好きな映画ですね。  手に汗握る緊迫感とか、物凄いセンスの良さがあるとか、そういう訳じゃないんだけど、定期的に観返したくなるような魅力がある。   分析してみるに、やはりモンスターである蜘蛛の描き方が良かったんじゃないでしょうか。  見た目も怖過ぎず、気持ち悪過ぎずで、そこはかとなく愛嬌があるし、殺し方もそこまで残酷じゃない。  銃を持った人間と一対一なら負けちゃうけど、数の力を活かせば圧倒出来る。  移動速度も素早く、徒歩の相手なら楽勝で追い付き、バイク相手なら逃がしてしまう事もある。  知能は道具を扱える程ではないが、原始的な狩りの術は習得済み。  そしてオスの三倍も大きいメスという、視覚的にも分かり易いボス格の存在……  様々な点でバランスの良い、名敵役といった感じでした。   主人公側の戦力も程好いバランスでまとまっているし、何と言っても主武装がショットガンというのが自分好み。  モールに立て籠り、襲い来る蜘蛛の大群をショットガンで迎え撃つ場面とか、もう本当に大好きなんですよね~  こういうゲームがあったらプレイしてみたいなぁ、なんて思っちゃいます。   人物設定も良くって、男性主人公と、子持ちのヒロイン、幼い息子、年頃の娘と、もう完璧な布陣。  何でなのか分からないけど、こういう組み合わせって琴線に触れるものがあるんですよね。  「君も子供達も、纏めて幸せにしてみせるよ」という、男としての自尊心みたいな物が満たされるからかな?  息子くんの背伸びしている感じや、娘ちゃんの思春期な感じも、実に好ましかったです。  ・バイクに乗ったままジャンプし、空中で蜘蛛に蹴りを食らわせる。 ・金網越しに突き出た蜘蛛の足を、チェーンソーで一気に斬り落とす。 ・武装しろと言われた男が、ホッケーマスクにチェーンソーという「ジェイソンのようでいて、実は武器のチョイスがジェイソンじゃない」恰好をしてみせる。   等々、印象的な場面が色々と配されていて、観ている間ずっと飽きさせないのも良い。  客が少ないモールに、蜘蛛から逃げてきた人々が大挙して押し寄せるのを見て(ようやくモールに客が来たか)と喜ぶ町長のシーンなんかも、惚けたBGMと併せて、味わい深いものがありました。   誰も本気にしていないと思っていた「エイリアン襲来を警告するラジオ」のリスナー達が、終盤に駆け付けてくれるのも良いし「巨大蜘蛛に立ち向かうよりも勇気が必要な告白」をヒロインに対して行ったら、アッサリ受け入れてもらえて拍子抜けしつつ死地に赴く主人公って展開も、これまた素晴らしい。   無事に敵を一掃し、お約束のハッピーエンドを迎える結末まで、とても楽しい時間を過ごせました。
[DVD(吹替)] 8点(2017-05-03 07:40:53)(良:1票)
030.49%
110.16%
230.49%
3172.77%
4437.00%
512420.20%
620633.55%
712320.03%
86510.59%
9203.26%
1091.47%

全部

■ ヘルプ
© 1997 JTNEWS