38.《ネタバレ》 この頃のジャッキーは意外と皮肉屋な男を演じる事が多いのですが、その最たる例が本作における「アジアの鷹」でしょうね。
単なる「良い人」ではなく「俺が信じる神の名は『金』さ」と嘯き、時には卑怯な真似もやってみせる。
それでいてジャッキー特有の「愛嬌」「優しさ」は失っていないというバランスが絶妙であり、凄く魅力的。
後に本作がシリーズ化して三部作となるのは、映画の面白さだけが理由では無く、この「アジアの鷹」というキャラクターの魅力に依るところも大きかったんじゃないかな、と思えます。
それと、本作においては主人公ジャッキーと、親友のアラン、敵の人質になっているローレライ、金持ちお嬢様のメイによる恋の四角関係も描かれており「若者達による青春物語」といった趣があるのも良かったですね。
アランとローレライの絆を確かめる為、自身の失恋にケリを付ける為に、ジャッキーが悪役を演じてみせる終盤の件なんて、特に好き。
他にも、脱出機能付きの愛車コルト・スパイダーは恰好良いし、それを駆使したカーアクション有り、お馴染みのカンフーも有りで、とっても豪華な内容なんですよね。
ともすれば「ジャッキー版インディ・ジョーンズ」という一言だけで終わってしまいそうな映画なのに、単なる模倣で終わらず、ちゃんと独自の魅力を打ち出せているのが凄い。
撮影中、ジャッキーが命に関わる程の大怪我をした影響で、冒頭の短髪姿から一気に髪が伸びた形になるのが少し不自然とか、相棒役かと思われたアランが殆ど活躍しなかったのは寂しいとか、欠点と呼べそうな部分もあるんだけど、そんなの些細な問題。
当時のジャッキー映画お馴染みの「三菱マークが目立つ事」も「ちゃんと作中で宣伝しているからこそ、これだけ派手なカーアクションが出来たんだ」と思えるし「人気歌手のアラン・タムが準主役である事」も「彼ならではのミュージック・ビデオ風の演出が良いアクセントになっている」と思えるしで、なんていうか「大人の事情」が垣間見える部分も、きっちり「映画としての長所」に変えてみせたという、懐の深さが伝わってくるんですよね。
スポンサーを満足させるだけでなく、セクシーな巨乳女性軍団を登場させるファンサービスまでしてくれるし、そういった「清濁併せ呑む」スタイルが、本作の主人公の性格とも合致していて、実に良い味を出していたと思います。
コメディ面においても「アランからの手紙を読み、ホテルの二階からロビーに戻る」件はクスッとさせられたし、アクション面も「相手のドロップキックを、下から上に突き上げるドロップキックで撃退する」という場面があったりして、どちらも印象多い。
そして何といっても、主人公のガムを食べる仕草がやたら恰好良くて、自分としては、もうそれを観るだけでも満足しちゃうんですよね。
子供時代に、何度も練習して、その仕草を真似していた事を思い出します。
数あるジャッキー映画の中で「最も魅力的な主人公は?」と問われたら、本作の「アジアの鷹」を挙げたくなる。
粗削りだけど、若々しいパワーを感じる、良い映画です。