| 作品情報
レビュー情報
これの原作(というより元ネタ)「金魂巻」は1984年のベストセラーだそうな。この本が出た頃僕は小学生で、それについては全く記憶が無いのだが、(金)・(ビ)(マルキン・マルビと読む)という流行語は微かに覚えている。今考えるとこの頃は「一億総中流化」てな事が言われて、尚且つ日本がバブル経済の階段を上り始めた頃。つまり日本がやっとこさっとこ「貧乏」から脱出して経済的には均一的になる中、人々が何らかの形で他者に対する優位性を見出そうとした時代だった、と思う(つまり、経済格差がなくなってきた中で「でも自分は他の奴とは違うんだよ!」と思いたがってたって事。そー言えば「ネクラ・ネアカ」「ナウい・ダサい」という言い方が流行ってきたのも確かこの頃だ)。景気の方向は正反対ではあるけれど、「勝ち組・負け組」なんて言葉が蔓延する現在(2005年)に、相通ずる所もある気がする。で、この作品(おそらく製作側が流行に便乗しようとした、極めて志の低い企画モノだと思うのだけれど)、はっきり言って面白くないとか完成度が低いとか言う前に、全編笑えないギャグ・下ネタのオンパレードで、文字通り見ていて苦しい=見苦しい。もしこれが井筒作品でなかったとしたら途中で鑑賞を止めていたと思うのだが、観ていくうちにふとフェレーリの「最後の晩餐」を思い出した。あの作品も登場人物が「食って出して、ヤッて死ぬ」という、ひたすら下品な描写で世間を風刺した作品だった。思うにこの最低の企画を持ちかけられた若き日の井筒監督は、当時の世間の下品さを過剰にディフォルメして描く事で世の中に異議申し立てをしようとしたのではないか。つまり劇中で主人公がソープランドにバキュームカーで襲撃したように「ウルァ!こぉのクソッタレ共がぁ!これがお前らのクソじゃああ!」と言いたかったのでは、と思えてきた。そういう意味で、この作品は正しい意味で「クソ映画」だと思う。ちなみに、同じく「クソッタレの世界」への異議申し立てを掲げた日本を代表するパンクバンド、ザ・ブルーハーツが結成されたのも、この作品の公開と同じ1985年のことであった。
【ぐるぐる】さん [ビデオ(字幕)] 6点(2005-05-09 20:11:55)
ぐるぐる さんの 最近のクチコミ・感想
|