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・・・・・・この作品のレビューは難しい。なぜかというと、観た後何だかモヤモヤした、アンビバレントな気持ちになってしまったから。確かにジェームス・スチュワート演じるスミスのひたむきな姿には感動した。ただ、彼の、アメリカの民主主義や「失われた大義」に対するあまりに無邪気で「信仰」に近いような信念に対して、「ひく」というより、恐怖に近い感情が沸き起こってしまったのも事実なのだ。21世紀に入り、様々なものを見聞きしてしまった自分は、例えば「イラクを独裁者から開放して、民主主義を授けよう」という気持ちからブッシュを支持した人々の中にスミス氏のような「まっすぐ」な善人がいなかったか?というような事を考えずにはおれない。
ただ、だからといってこの作品を「アメリカ的欺瞞」と一蹴するのもためらわれてしまう。この作品は、政治的な題材を扱ってはいるものの、そこにあるのは普遍的な人間の姿であり、普遍的なメッセージであり、人間を肯定しようとするキャプラの姿勢が現れている。それに対して斜に構えてニヒリスティックな態度を取るのは、とても淋しい事だと思ってしまうのだ。 それに何よりもまず、この作品は優れたエンタテインメントであるという事を認めないわけにはいかない。クライマックスのスミス氏がクラリッサの助けを借りて陰謀に立ち向かう姿は政治的云々より「闘う男のドラマ」として素晴らしいし、スミス氏を信じた地元の少年達の健気な姿には涙を禁じえなかった。そしてキャプラ作品に顕著なチャーミングな人物(本作では議長役の俳優が素晴らしかったと個人的に思う)も楽しませてくれる。 で、「結局どっちやねん、エエんか悪いんか、はっきりせい!」と自分でも思うのだけれど、一方で「いや、そんな簡単に白黒つけなくても良いんじゃないの?」という気持ちもあったりして、観た後「もやもや」は広がるばかりなのでした。もしこれを読んでいる人にまで「もやもや」が感染してしまったらごめんなさい。でも人生、割り切れる事だけでなく、曖昧なままで捉えなくちゃいけないときもあるし、かといって時には割り切んなくちゃあ前に進めないこともあるし、なかなか難しいもんです。 【ぐるぐる】さん 9点(2004-07-21 20:43:37)(良:1票)
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