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カンヌにおける不評(実際にはそれ程でもなかったらしいが)、アメリカ本国での劇場未公開、更には大スター初監督作品(コケるのが期待される)、とどうにも分が悪いこの作品。でも僕は、自分がジョニー・デップ兄貴の大ファンであることを差っ引いてもこれ、傑作だと思う。これは、シビアな現実を背景にしているけれど、というより、そういったどうしようもない現実を背景にしていればこそ説得力を持つ「寓話」なのだ。ジョニー・デップ兄貴演じるラファエルは、つまりは愛する事にも生きる事にも不器用なダメ男(ダメ親父)の象徴。彼の行動が適切であるかどうか問われれば、答えは否だ。しかし、彼の不器用な愛情表現(手作り遊園地や、スーパーでの子供じみた買い物の仕方)は、それが不器用であるからこそ、痛々しく、切ない。それに、例えば夕日をバックにラファエルが妻と愛を交わすシーンの、幻想的な影絵のような美しさといったらどうだろう。ストーリー云々よりまず、この映画は「美しい」のだ(それにはジョニー兄貴の盟友イギー・ポップの音楽の力も大きいが)。これからこの作品に接する方、或いは改めて観直そうと思っている方は、どうか現実的な倫理観はひとまず脇に置いて観て頂きたい。改めて言うけれどこれは(たとえばフェリーニの「道」と同じ様な)「不器用な愛の寓話」なのだから。こんな事を言うと笑われるかもしれないけれど、監督としてのクリント・イーストウッドの後継者を一人選ぶとすれば、それはジョニー・デップ兄貴を置いて他にないだろう、と断言する。しちゃうんだから。
【ぐるぐる】さん [DVD(字幕)] 9点(2005-11-16 16:28:35)
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