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《ネタバレ》 何処に居ても誰と居ても、自分が「よそ者(アウトサイダー・はみ出し者)」と感じてしまう種類の人間が居る。人間嫌いでも協調性が無い訳でもないにも関わらず、周囲に溶け込み、馴染む事が出来ない。彼もしくは彼女にとって「居心地の良さ」は居心地の悪いもので、むしろ「居心地の悪さ」に居心地の良さを感じてしまう。そういう人間が一般的な意味で社会の成功者(いわゆる“勝ち組”―何とも嫌な響きの言葉だ)になる事は難しい。本作の主人公モンドはそういう類の人間のファンタジックな具現化である。とある街にフラリとやって来てそのまま居着いてしまう、というシチュエイションは、あたかもミヒャエル・エンデの「モモ」の様だが、エンデの創造した、モモを温かく迎え入れる古き良き街に比べ、モンドがやって来る街はいかにも現代的だ(人々が雑踏を足早に歩いていくシーンで不協和音めいた音楽が流れるのが象徴的)。モンドに優しい態度で接するのは主に浮浪者や大道芸人、ベトナム生まれの老婦人など、マイノリティ(すなわち自己も“よそ者”である者達)だ。いわゆるマジョリティにとって、モンドの存在は目に入らないか、入ったとしても異質な、排除されるべき(もしくは“保護”の名目で収容されるべき)存在に映る。かくして、人々の優しさに触れながらも、いつも「ここではないどこか」を夢想していた少年モンドは街から消えてしまう。そして街の人々は初めて、自分が失ってしまったものに気付くのである。さしずめモンドは「時間どろぼう」が時間を盗み終えてしまった後、遅れてやって来てしまった「モモ」なのかもしれない。
【ぐるぐる】さん 8点(2004-02-19 16:26:45)(良:2票)
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